ヒトヒトの実 超人種モデル ゴールドマンを食った男の話 作:アルピ交通事務局
「!……ここは」
「目が覚めた様だな」
船の一室に寝かしていた侍が目を覚ました。
ベッドの上から上半身を起こして周りを見渡せば何処なのだろうかと疑問を抱いているので侍に声をかければ侍は反射的に刀を求めるのだが刀が無い事に気付く。
「僕の則宗を何処にやったんですか?」
「安心しろ。この船が出ていく時には返してやる」
「……僕がこうして生き残っている。その話は信じますよ」
自分の一番の刀が無くなったので何処かを聞くのでゼロ・オリジン号が出ていく時に返還する事を伝える。
侍は自分が殺されずに生き残っている事から私の言っていることは確かだと信じようとしている。暴れる事は無かったのでザウスが用意した白湯を渡した。
「改めて聞くが……貴様は侍で間違いないのか?」
「……どうでしょうね。僕に、侍なんて名乗る資格があるかどうか」
偉大なる航路の後半、新世界にある鎖国国家、ワノ国。
特殊な海域であり妙な立地条件に加えて、侍と呼ばれる別格な剣士達が国を守っている。開国を迫った国々は尽く侍に蹴散らされている。
改めて侍かどうかを聞いてみれば、男は少し自虐的になった。
「最初の剣もそうだが、どれも今までで2番目に強い剣の使い手だと感じさせる物だったぞ」
「……2番目?」
「この世界で一番の剣の使い手を私は知っている。そのものにはやや負けているが、別格の強さを持っている」
ミホークを比較対象に出すのは残酷であろうが、ミホークと比べればこの男は剣士として弱い。
それでも剣士としては別格の強さを持ってはいるのは事実であり、2番目と言う言葉にピクリと反応を示していた男は割とあっさりと受け入れた。
「僕を生かしてなんのつもりですか?くだらない情けなら、無用ですよ……僕にだってワノ国の侍としての覚悟が、ゲホッゴホッ……」
「自分で侍かどうか分からんと言っているのにこういう時には侍と言うか」
「持ってきたぞ」
くだらない情けは無用!と言いたいが病が体を蝕む侍。
ザウスが部屋に入ってきたと思えば土鍋を持っており、パカっと蓋を開けばお粥が入っていた。
「その弱った体では、それが限度だろ」
「……」
「お前は……ワノ国から違法出国した者の1人だな」
「……なんで分かるんですか?」
「極稀にワノ国から出ていく者が現れる。大抵は今の地獄なワノ国から逃げる為だが、それよりも前に勝手にワノ国から出て行った者達が嘗てワノ国の料理のレシピを残していった事もある」
侍はザウスが持ってきたお粥に疑いの眼差しを向ける。
ザウスは侍がワノ国を違法出国した者だと見抜いた。侍はなんで分かったのかを聞いてくるのでザウスは稀にワノ国から違法出国する人間が居ることを教える。ザウスをスカウトした際に玉子ふわふわと言う料理を知っていたからか、ザウスはワノ国の情勢について多少は知っている様だ。
「ワノ国は確か」
「カイドウのお膝元だ」
「っ!」
今のワノ国の情勢について思い出そうとするザウス。
百獣海賊団を率いている海の皇帝の1人、カイドウのお膝元だ。それを口にすれば侍は闘志を剥き出しにするが、私もザウスも気にしていない。
「取りあえずは食べろ……色々とあるが、話はそれからだ」
「……いただきます」
ザウスの用意したお粥を口にする侍。
一口食べれば無言を貫いてスプーンを持つ手が止まった
「この味は……」
「味付けに昆布茶を使った粥だ。ワノ国の料理、お茶漬けに近いだろう?」
ザウスの作ったお粥はお茶漬けに近い味のお粥だった。
侍はバクバクと食べていく……涙を流している。
「まさかお茶漬けを食べれるだなんて……ありがとうございます」
お茶漬けの味に仕上げているお粥を食べ終えれば満足そうにしている侍。
ザウスに対してお礼を言ったがザウスは大きなリアクションを見せず土鍋を片付ける為に部屋を出た。
「そう言えばまだ名乗っていませんでしたね。僕は宗次と言います……料理人の方が察していた通り、ワノ国から出て行った侍です」
「ワノ国から出て行った侍か……何をする為に出て行った?」
「……ワノ国の将軍オロチ、そしてオロチの背後にいる龍王カイドウを討つ為にです」
「ならば尚更、ワノ国に居るべきであろう」
ワノ国を支配している2名を討つ為だと教えるが、討つ為ならば出ていく方がおかしい。
最もな事を指摘してみれば宗次は少し黙った……
「貴方はさっき、僕の事を2番目の剣士と言いましたね……その通りです」
「そこを頷くのか?」
「ええ。だって一番の剣士はワノ国の将軍になる筈だったおでん様ですので」
「……光月おでんか」
「驚きましたよ。おでん様の海外での暴れっぷりは」
侍は懐に手を入れて一枚の手配書を取り出す。
手配書に写っている男は光月おでん、ワノ国に偶然上陸した白ひげ海賊団について行ったワノ国の侍で、ロジャー海賊団の1人でもあった男……そしてとっくの昔に亡くなった人間だ。
「世界一周を成し遂げたロジャー海賊団の一員であり未だ空席な白ひげ海賊団の嘗ての二番隊隊長であった侍か……ワノ国はカイドウの支配下にあり、悪政を行う愚かな将軍といったところか」
「ええ……おでん様はカイドウに負けた。けど、最後の希望はまだ残っている……赤鞘の侍達が」
光月おでんがカイドウに負けたが、最後の希望はまだ残っていると拳を握る宗次。
最後の希望は自分でなく、赤鞘の侍達が居ると希望を抱いている……発言をしているが、心が沈んでいる。
「希望はあると言っているにも関わらず、酷く落ち込んでいるな……ワノ国を違法出国したのは理由があるのだろう?」
「……おでん様やあの料理人が言っていた違法出国した人達はなんとも言えないですけど、おでん様が亡き後のワノ国は春が訪れない冬そのもの。飢えて苦しみ病に苦しみ奴隷の如く働かされる。赤鞘の侍達が現れるという希望を抱いていますが、その話すら信じられなくなる者達も続出するほど。ワノ国の腕自慢の侍達はカイドウに挑んだけど、結果はこの通り」
今もまだ世界に名を轟かせているカイドウが居る。誰もカイドウを倒せていない。
侍は悔しそうにする。
「オロチはカイドウと結託して色々な事をしている……カイドウの勢いは止まることを知らない。若い侍達は外国に出て力を蓄えようと決めました」
「……お前だけだが?」
「ええ……ワノ国は特殊な海域と立地にある国で、航海術を学べるところが無い。航海術を持たない僕達はなんとかワノ国を出た……そしてカイドウの強さを改めて思い知った。ただの戦闘力じゃない、その悪名の高さに怯えている者達やその悪名の恩恵を受けている者達がいた……カイドウを倒す為に力を蓄えようと仲間を増やそうとしましたが、何処も頷いてはくれませんでした」
ワノ国を違法出国した者達と言っているが、侍と呼べる人間はこの島には宗次しかいない。
その事について指摘すればカイドウを倒す為に外国に出て、カイドウの力を思い知らされた。仲間を集ってと考えていたが、カイドウの名を聞けば何処も首を縦に振らない。海軍もカイドウやビッグ・マムクラスの海賊は手を出したくてもだせない。
ワノ国には色々と価値あるものが眠っている。貿易をする事が出来れば色々と国が豊かになるだろうが……後ろにカイドウが控えている。裏社会の住人や世界政府の汚い仕事をする者ならばともかく、一国の王がすんなりとカイドウの元に行くわけにもいかない。軍事力を提供することも出来ない。
「1人、また1人と倒れていき……最後に残ったのは僕1人」
「……お前がか」
「ええ……ワノ国の環境は汚染されている。その汚染が僕の体にも回っていて僕の体を蝕んでいた事を気付かず、ワノ国を出ていってから病弱になった足手まといの僕を抱えて各地を渡り歩いて……最後に残ったのは僕だけです」
宗次はそう言うと拳を強く握った。プルプルと震えている。
病弱な自分の体や、命懸けでワノ国を出ていったのにこの体たらくぶりを情けないと心底感じている。
「僕はワノ国の侍だ……死ぬことは怖くはない。でも……決戦の時が来る前に死にたくない。未来に現れる赤鞘のお侍達と共に戦いたい!僕は、侍として戦い、侍として終わりたい!」
「……長くはないのか」
「自分の体は自分が一番分かっています……賞金を稼いで医者に当たってみましたが、僕の病はもう末期でした」
侍としての決戦の日は確かにやってきている。だが、宗次の体はそこまで保たない。
死ぬことが怖いのでなく戦うことが出来なくて悔しいと言う気迫を宗次から感じ取れる。
「宗次、お前はどうしたいのだ」
「……戦いたい。僕は、いや、僕達はあの時のおでん様を馬鹿にしていた。おでん様は人知れずオロチを相手に戦っていたにも関わらず、それに全くと言って気付かなかった!僕は戦わないといけない……そうじゃないと僕が最後まで生き残って技を受け継いだ意味が無い」
「技だと?」
「僕の剣は元々はワノ国で実戦最強と言われている天堂無心流を基本にした物……天堂無心流は学び終えればそこから各々が得意な技術を必殺の型に昇華させる流派……カイドウの戦力を少しでも削る為に戦っていった皆が残していったんです。己の必殺技を僕に」
「なるほどな……どうりでお前の剣とは違うなにかを感じるわけだ」
宗次と戦った時に感じている違和感、宗次が積み上げてきた剣術とはまた異なる物が混ざっていた。
宗次のものでない剣術の正体は、文字通り宗次のものでない剣術……宗次を残して散っていった侍達が唯一未来に託すことが出来る必殺技だった。
宗次だけの剣術ならば硬度調節機能が破壊される程の深手は負わない。
だが、私はワノ国の侍達が残した遺産を持った宗次を相手にした。散っていった侍は残っている侍が後を託した。後を託された侍はその思いを引き継いだ。そしてそれが数珠繋ぎとなり最後の宗次に託された。
「病はもう手遅れなのは分かってて……強敵との戦いを楽しんでいた。侍としての戦いを求めていた……船長さん、頼みがあります」
「なんだ」
「切腹を手伝ってください」
「……正気か?」
「ワノ国を出た本来の目的を果たすことが出来ず、このまま無様に生き恥を晒していくのならば……最後は侍らしく終わりたいです」
ワノ国を出たのはカイドウの討伐の為に力をつけることだ。
それが出来ずに賞金稼ぎとなっていて強い相手との戦いを求める日々に切り替わっている……最後ぐらいは侍らしく生きたいと宗次は願った。
「ふん……美しく最後を飾る暇があるぐらいならば、最後まで生き抜く覚悟を見せろ」
「無理ですよ……」
最後を決めて終わらせようとする宗次に最後まで生き抜き足掻けと言うが宗次は分かっている。どう足掻いても仕方がないと。
延命の措置を取ったとしても、赤鞘の侍達が現れるまでに病で死んでしまうというのは体が訴えかけている。
「貴様は、侍なのだろう……己が戦いたいと願う決戦の日があるならば己の刃を磨き続けろ」
私は宗次の切腹を断った。
己の刃を磨き続けるという話をすれば宗次は両手を見つめるが……落ち込んでいる。
「こんな体で、どうしろって言うんだ……」
「見る者が見れば笑う体たらくっぷり……侍らしい最後を迎えたいと願ったのは貴様だ。そんな貴様に最後を飾る暇があるならば足掻けと言ったのは私だ」
私は自分の顎に手を当て……将軍の頭部に中に隠されている黄金のマスクを見せる。
「フェイスフラッシュ!」
フェイスフラッシュを使う。
眩い光が宗次を包む。宗次は胸を抑える……頃合いだと感じればフェイスフラッシュをやめる。
「肺が……鉛の様に重かった体が……」
「貴様が一番強いと認めている光月おでんはカイドウに敗れた。今の貴様は猛者と呼ぶに相応しいが、海の皇帝の1人であるカイドウには遠く及ばんだろう」
フェイスフラッシュをやめれば宗次の病や病弱な肉体が治った。
最後の足掻く権利を私は宗次に与えたので私は部屋から出て宗次の刀を取りに行った。
「中々に粋な計らいをするじゃない」
「……まったく、くだらん真似を」
ハナハナの実の能力を使って会話を盗み聞きしていたロビンは微笑んでいた。
くだらない真似をとロビンに呆れながらも宗次の愛刀を手にして宗次に返した。
「貴方達が出る前に渡すんじゃなかったですか?」
「そうしようとは思ったが、気が変わった……」
「そうですか。なら僕も少し気が変わりました」
宗次はそう言うと刀を鞘から抜いた。
闘志をギラギラと滾らせていると思えば……部屋から出ていき、ゼロ・オリジン号の外に出た。
それから2日間は何事も無かった。
賞金稼ぎ達が襲ってくることは特になくパルフェ島の
「最初の島は中々に悪くなかったな」
宗次という侍との戦い、良い思い出になった。
ゼロ・オリジン号を出航させる為に錨を引き上げていれば……物凄い速さでなにかがこちらに向かってくるのを感じ取った。
「ハヤト、急げ!なにかがやってくる!」
「副船長、無茶言わないでくれよ」
見聞色の覇気で物凄い速さでなにかがやってくる事に気付いた貴虎は出航を早くしろと言うが、風が言うことを聞いてくれなければならない。ハヤトは無茶な注文を受けていると感じながらも船を操縦していき、パルフェ島を出航する……が、遅かった。
「もう、酷いですね」
「お前は、宗次……なんの用事だ!?」
宗次が海の上を恐ろしい速度で走っていきゼロ・オリジン号に飛び乗った。
貴虎は近づいて来ているのが宗次だと分かったが、なにをしに来たのかが分からないので聞いた。
「体の悪いところが治って、最後まで戦える様になったけど……次の島に行く船が無くて」
「ここは商船ではありませんよ?」
「勿論、知ってますよ……船長さん、貴方の船の料理人が僕にお粥を作ってくれました。一飯の恩は忘れませんのでコレを持ってきました」
「ほぉ、随分と高い食事代だな」
「僕の貯金と船長さん達を襲おうとしていた賞金稼ぎを倒して巻き上げたお金ですよ」
袋に入っている約1000万ベリーを見せる宗次。
ザウスに作ってもらったお粥の代金……かなり貯め込んでいた様だが、治せる物が居なくて腐っていた金だろうな。
「食事代として支払うのならばありがたく貰おう……それで?」
「この船で修行をさせてください」
「ふん、私に恩義を感じたと言うつもりではないだろうな?」
「最後まで足掻ける力をくれたのは船長さんです……だったら、決戦の日が来るまで腕を磨きたい。パルフェ島に居ても賞金は稼げますけど、強くなる事は出来ませんから」
宗次が貯め込んでいた貯金を見せればザウスは受け取った。しかしそれだけか?とザウスは聞いた。
宗次はこの船で修行をさせてくれと言うので恩義を感じたという話ならば蹴り落とすかと考えていたが、最後まで足掻ける力を託した事を指摘される。
「……まぁ、いい……貴様を船に乗せてやる……精々決戦の日が来るまで足掻いてみせろ」
宗次はゼロ・オリジン号に乗ったが、鬼出しの釜は使わない。
ロビンと同様にこの船に乗っているだけの人間であり、悪魔超人軍の1人ではない。
「では、雑用係として頑張ってもらいますね」
戦闘員兼雑用係の1人が入ったと孔明は遠慮なくこき使う。
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