ヒトヒトの実 超人種モデル ゴールドマンを食った男の話 作:アルピ交通事務局
「あまりいい空気じゃないな」
「一触即発の空気もあるな」
貴虎はリグレットと宗次を引き連れてヒューマンオークションにやってきた。
オークション会場の空気を感じ取った貴虎はここを長居するのは嫌だと思い、リグレットもなにかあれば大きな喧嘩になる一触即発の空気を醸し出している事に気付く。
「どうします?全員の首、狩っちゃいます?」
「少しは抑えろ」
「お前は確かに強いが、あくまでも個の武力での話……ここに居るのはそれとは別種の力を持っている者達だ」
宗次が闘志を剥き出しにしている。
オークション会場に来ている人間の首を狩って無理矢理にでもこのオークションを終わらせるかどうかを提案するが貴虎は呆れて気持ちを抑えろと言う。リグレットも宗次の強さは認めてはいるが、それとは別種の力を持っている者達が集まっていて一度に相手にすると厄介な事で派手に動くことが出来ないと釘を差す。
「でも、見てますよ?」
しかし宗次は感じ取っている。
これからオークションが始まるというのに、商品である奴隷に期待をせずに周りにいる人達を警戒している客じゃない者達が居るのを。当然と言うべきか貴虎もリグレットもそれは見抜いている。見抜いているが、無駄に大きな争いを巻き起こすわけにはいかない。
「表で繋がりを見せることは出来ない裏の主達か……」
直ぐ隣のエルデンランドは世界政府加盟国、世界政府加盟国にはちゃんと法律がある。
今回オークションにやってきている者達の大抵は表社会ではいい顔をしているもしくは悪名が高く付き合いたくないと思われる者達、しかしその実態は裏社会や裏の世界の住人としては仲良くしておけば何かとお得な存在ではある。
エルデンランドのヒューマンオークションは裏社会の住人達と仲良くしようという友好の証。
エルデンランドが開けば文句を言うがエルデンランドの隣に偶然にも存在するエルデンランドの領地と扱わない島で行われていたのならばなにも問題は無い。なんという汚い手口。
「……泣いているってより、諦めてるって気配を感じますね」
奴隷のオークションが始まった。ニヤニヤと笑いながら裏社会の住人達が値段を言ってくる。
宗次は売られている奴隷達が恐怖に染まっているのでなく、自分はもう終わりだなと思っている事に気付く。
「ここに居るのは裏社会の住人が大半だ……まだ天竜人が居ないだけマシだ」
裏社会の住人が奴隷を買っている、まだマシ。
本当に危ないのは天竜人が奴隷を買って文字通り好き勝手にすること。貴虎は過去に1回だけ天竜人が奴隷でも何でもない人間を買うと言い出して実質的に奴隷の立ち位置にして永遠に苦しめて飽きたからと捨てられ、最終的には首を吊った事件のファイルを見たことを思い出す。
「アレが居たら、終わりだ」
「奴等は来る時は来ると言ってくる……」
「さぁさぁ!本日の目玉商品!ピチピチ採れたての人魚!バンドウイルカの人魚だよ!」
天竜人が居ない事に関してリグレットと貴虎は少しボヤけば今回のオークションの目玉商品である人魚が出される。
絶世の美女であり、一般的な人が想像する人魚の通り美しい人魚だった。金魚鉢の様な見た目の水槽に入れられている人魚の目は死んでおり諦めている。なにかパフォーマンスをするのかと思ったが水槽の中に入っている。
水の中で呼吸をしている事から正真正銘、本物の人魚だ。
滅多な事では地上では人魚が見られない。年老いた人魚でなく若くてスタイルも良くて美しい人魚だ
「最初は1000万ベリーから!」
オークションの司会が法槌を鳴らす。
最初は1000万ベリー、かなりの値段をしているのだが裏社会の住人達は一斉に手を挙げた。
「1500万」
「2000万」
「3000万!」
「3500万!」
「5000万!」
裏社会の住人達は迷いなく値段を述べる。
それに負けるかと値段は段々と釣り上がっていき、最終的には120,000,000ベリーと言うとんでもない大金で競り落とされた。
「人魚だ……ただの人魚じゃない、イルカの人魚だ……」
人魚を競り落とした裏の世界の住人は満足そうな表情をしている。
人魚にあの手この手とスケベな事や馬車馬の如く働かせようと考えている。
「宗次、気持ちは分からなくもないがまだ」
「違います。僕、何もしてませんよ」
宗次の愛刀がカタカタと音を鳴らしている。
宗次の闘志が漲っているから動くつもりかとリグレットがなにかをする前に動くなと言うのだが、宗次は刀に触れていない。宗次の刀は一定のリズムで揺れていた。
「コレは信号か?」
「信号?」
「特定のリズムを送って文字を伝える技術だ……まさか」
宗次の震える刀を見て一定のリズムが刻まれている事に貴虎は気付く。
何かしらのモールス信号を送っている……が、宗次の刀は良業物ではあるが何か不思議な能力を持っている刀ではない。誰かが外部から干渉して宗次の刀を揺らしている。そんな事が出来そうな人間はこの場には居ない。だが、人間でない存在ならば居る。
「確かイルカは超音波で会話をすると聞いたことがある」
売られている人魚はバンドウイルカの人魚。
バンドウイルカの能力を全てとは言わないが一部は使えるのかもしれない。貴虎は一定のリズムで揺れ動く宗次の刀を見る。
「
宗次から出ている信号を見てSOSのサインだと貴虎は気付く。
しかしどうしたものか、暴れようにもと考えているとオークションは続き、次の商品が……ワトソンが出品される。
「犬の人間?」
「アレは……まさか」
「知っているのか?」
「多分、ミンク族です」
ワトソンを見て犬みたいな人間だと感じている貴虎を横になんでここにいるんだと宗次は驚いた。
見たことがないのでリグレットは知っているのかを聞けばミンク族と種族を答えた。
「ミンク族は新世界のゾウと言う場所に居ます……基本的には外に出ないのに……まさか、僕と同じ?」
赤鞘侍九人男の内の2人がミンク族だ。
ワノ国とミンク族もといモコモ公国は深い関係性にある国であり、赤鞘の侍達が現れる決戦の時までミンク族の面々も何かしらの形で腕を磨いている。まさか自分と同じで腕を磨く為にモコモ公国から飛び出したのか?と宗次は推測する。
「すみません。ミンク族を見てしまえば、黙ってられません」
「まぁ、このままだと将軍様が何時になるか分からないからな」
人魚ならばまだ耐えることが出来たが、同志であるミンク族が居たのであればこれ以上は我慢出来ない。
元々はこのオークション会場を滅茶苦茶にする予定であり、宗次は愛刀を抜いた。リグレットは悪魔将軍の姿が一向に見えないので、ここはいっそのこと暴れるかと考えて銃を取り出す。しかし
「まったく、遅いぞ」
宗次やリグレットが動こうとする前にオークション会場内に覇王色の覇気が放たれた。
今から暴れてやろう!と言う時に覇王色の覇気が飛んできた。飛ばしたのは言うまでもなく悪魔将軍で、貴虎が悪魔将軍の覇王色の覇気を放つタイミングが少し遅かった事について文句を言いながらも戦極ドライバーを取り出して腰に装填する。
「宗次!」
「ええ、わかってます」
覇王色の覇気を放ったが流石は裏社会を生きる者達と言ったところだろう。
腕に自信がある護衛は雇っており、本人達も多少は威圧されようとも圧迫感は感じるが意識を失わない。リグレットは気絶していない者達が居ることを伝えようとするが宗次はそれに気付いていると目にも止まらない神速の動きで斬り倒していく。
「プルプルプル プルプルプル」
「っち……コイツには無理だったか」
神速の剣術で護衛や護衛対象を蹴散らしていく宗次。
裏社会の住人の1人が小型の電伝虫を持っており、何処かに対して電話を取ろうとしている。リグレットはそれを見て電伝虫の電話の先に居るのはエルデンランドの要人、もしくは何処かで隠れている海軍に通じていると気付いた。
「大丈夫ですか、ミンク族のおじさん?」
「君は……侍かい?こいつは驚いたな」
ミンク族のおじさん、もといワトソンに声をかける宗次。
ワトソンは宗次の容姿を見て侍かと推測して驚いた顔をしているので頷いた。
「ええ、侍ですよ……と言っても、今は海賊の船に厄介になっていますが」
「そうか」
「おじさんはミンク族ですよね?……どうしてここにと聞きたいところですが、今はここから出ていく事を」
「いやぁ、地獄に仏とはまさにこの事だ……でも、私だけじゃない。あの娘も助けてはくれないか?」
ワトソンは助かったと落ち着くが直ぐに自分だけでなく人魚も助けてほしいと願う。
勿論と宗次は刀を構えてオークション会場を破壊していき人魚の前にたった。
「SOSでしたっけ?」
「待って!……抜け出せないの」
「……?そこから出ればいいじゃないですか」
人魚にSOSのサインを貰ったこと、オークション会場を滅茶苦茶にしたからもう逃げても大丈夫と伝えようとする。
しかし人魚はここから抜け出すことが出来ない。金魚鉢の様な見た目をしている水槽だから簡単に抜け出るだろうと宗次は言うが、人魚は悲しそうにする。
「この首輪には爆弾が仕掛けられているの……無理矢理外そうとしたり、水槽から抜け出たら爆発して」
「成る程……と言うことは貴方のもですね?」
「ああ……私の首輪もこのオークション会場から無理矢理出ていけば爆発する」
付けられている首輪はただの首輪でなく、逃げ出さない様にする為に爆弾が仕掛けられている爆弾だと人魚は教える。
宗次はヒューマンオークションで売られていた奴隷達が人魚と同じ首輪をつけているので逃げたくても逃げられない状況だと気付く。
「ここにいる奴等は全員売られる予定だった物だ!だったら何処かに鍵がある筈だ!」
「これのことか?」
リグレットはオークションの運営スタッフの身包みを漁って鍵がないのかを確認する。
中々に見当たらないので何処だとなっていればエコガインダーの見た目になっている悪魔将軍が無数の鍵を持って現れた。
「……将軍様?」
「出来ればこの姿ではエコガインダーと呼んでもらいたいな」
「じゃあ、エコガインダーさん。ミンク族のおじさんと人魚さんの首輪を」
「ふむ……ふん!!」
エコガインダーの見た目をしている悪魔将軍を見るのは初めてであるリグレット。
一応の確認をすれば悪魔将軍で間違いないがエコガインダーと呼んでくれと言ってくる。
宗次はエコガインダーと悪魔将軍を呼んでワトソンと人魚の首輪を外してくれと頼むので、悪魔将軍は力んだ。
オーバーボディであるエコガインダーの姿を脱ぎ捨てて手につけられていた普通の手錠を粉々に粉砕して悪魔将軍の姿に戻った。
「やり方は知っているが、実際にやるのは初だ……なに、安心しろ」
「船長さん、鍵の意味は!?」
首輪の鍵を使って首輪から解放するのでなく悪魔将軍はダイレクトに人魚の首輪を掴んだ。
ビコンビコンと警戒音が鳴っていて人魚は震えているが、悪魔将軍は首輪を握り潰して外して即座に捨てれば爆発を起こした。
宗次は鍵を持ってきた意味が無い!ともっともらしいツッコミを入れているが悪魔将軍は気にせずにワトソンの分の首輪も破壊し、オークション会場で意識を失っている者達が持っている金を集めた。
「その人魚とワトソンには世話になったからな。後は自分達で外せ」
悪魔将軍は他の奴隷達に鍵を投げた。
この首輪を外すことが出来れば自分たちは晴れて自由の身だと鍵を拾っていき自分の首輪に合う鍵を探していく。
「お前達、よくやった……それなりには稼げた」
「億は余裕であるが……運べるのか?」
悪魔将軍が貴虎達を褒めた後に大量の金が入った袋を担ぐ。
オークション会場にやってきていた者達から巻き上げた物でかなりの量だ。貴虎は悪魔将軍に運べるのかを聞いた。
「外の連中がどういう風に動くのかが問題だが……中々に強い力が2つ、感じれるな」
電伝虫でオークション会場が襲撃されたという報せは既に届いている。
直ぐ隣のエルデンランドから海軍が飛んでやって来るのは目に見えている。そして実際にこのオークション会場の目の前まで海兵はやってきている事を悪魔将軍は見聞色の覇気で感じ取っていた。
「船の準備は?」
「将軍様がお戻り次第、何時でも出航可能です」
「となると……後は行くだけか」
船が出航する事が出来るかどうかの確認をすれば何時でも行けるとリグレットは答える。
出航が可能ならばなにも迷うことはないとオークション会場を出れば海軍に囲まれていた。
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