ヒトヒトの実 超人種モデル ゴールドマンを食った男の話 作:アルピ交通事務局
「……ここは……」
「目が覚めましたか?」
「お前は、確か……」
「ここは貴方達の船です。私達が貴方を治療しました。船長さんから許可は貰ってます」
ゼロ・オリジン号の一室で眠っていた貴虎が目を覚ました。
何時起きても問題は無いように貴虎を私とワトソンが見ている。貴虎は意識を取り戻したのでワトソンが軽く簡単な問題や意識を失う少し前までの出来事を何処まで覚えているかの質問をした。
ゲネシスドライバーでデュークに変身した男にやられた。
戦極ドライバーではゲネシスドライバーに勝てないと言わんばかりに力を見せつけられたのを思い出し貴虎は傷口に触れる。
「すまない……俺とした事が足手まといになって」
「気にするな。少なくともあの場ではお前が戦わなければ負けていただろう」
宗次やリグレットがデュークに挑んでも普通に負けている未来しか想像する事が出来ない。
足を引っ張った事について謝罪をしてくるが、怒る理由も特に見当たらない。気にするなと私は軽く流す。
「まさか戦極ドライバーに後継機が出来ていたとは」
「別に驚くほどじゃない。あのベルトは科学の武器で科学の世界は常に日進月歩……元々はバージョンアップも予定にあっただろ」
「ああ……少し横になる」
「ならばザウスになにか……リゾットでいいか?」
「それで頼む」
ワトソンの検診の結果、脳などに異常は無いのが分かった。
一日中寝ていたので貴虎は空腹だろうとザウスに何かを作ってもらうかと考え、リゾット辺りがちょうどいいと決めた。貴虎は横になった。寝息を立てているので熟睡しているなと分かったので医務室を出た。
「患者の意識は戻った。記憶障害等は一切なく、このまま行けば問題無く回復に向かうっと」
「わざわざカルテまで書いているのか」
「医者の基本ですぜ、船長さん」
ちゃんと貴虎のプロフィールに合ったカルテを書いているワトソン。
切り傷がメインなのでそこまでしなくてもいいと言おうとしたのだが、これは医者の基本だとワトソンはカルテを素早く書いていく。
「将軍、貴虎は?」
「目を覚まして軽く検診した後に眠った……目を覚ます頃に胃に優しい食事を、リゾット辺りは可能か?」
ワトソンと一緒に出てきたのだが、ワトソンでなく私に貴虎の容態を孔明は聞いた。
簡潔に容体や状態を述べればホッとする孔明。私はザウスに向かって起きた時に胃に優しいリゾットを作れないのかを聞いた。
「胃に優しいリゾットか……そうだな」
「貝類を食べれば元気になるんじゃないかしら?」
「貝類って、何処にあるんだい?」
「任せて!」
リゾットと言うが具体的な具材は決まっていない。
ザウスはなにを材料に使うのかを考えていればカレンが貝類を食べれば元気になると言う。しかしワトソンは貝類が何処にあると聞くのでカレンが海に飛び込んだ。10分後にカレンは無数の黒鮑を持って戻ってきた。
「ほぉ、中々に極上の鮑……とは言え、下処理が出来ていないな」
「寝ている時間をそれに使える筈よ」
「ふむ……ならばリゾットを中止にしてアレを作るか」
「…………おい」
「コックさんが決めた事だから問題は無い……と思うわ」
カレンがザウスと何事も無かったかの様に会話を進めている。
当初の予定ではリゾットだったがザウスはこの極上の黒鮑ならば別の料理にするかとメニューを変えた。あまりの出来事にリグレットがカレンを睨むのだがカレンはザウスが決めたことで、問題は無いと言い切る。
「貴虎が目を覚まして傷の回復……は分かりました。なので一昨日から放置していた問題を解決しましょう」
「お前達、何故この船に乗り込んできた?」
貴虎が目を覚ましたので先延ばしにしていた話、ワトソンとカレンが勝手に乗船している事について指摘する孔明。
リグレットは色々と逃げる方法はあったのに迷いなくこの船を選んだワトソンとカレンを怪しいと疑いの眼差しを向けている。それに気付いたワトソンは直ぐに慌てる。
「待ってください。私はなにも悪いことをするつもりはありやせんよ……ただ、この船に侍が乗っている事が気になってそのままついてきたんです」
「僕はこの船で修行させて貰ってるだけで海賊じゃないですよ」
「ですが、侍が外に居るのは驚きで……もしやと思って一か八かに賭けて乗船しました……貴方達にとっては不服かもしれませんが、副船長さんが怪我をしていて結果オーライではありませんか?」
侍である宗次が乗っているから気になって便乗してゼロ・オリジン号に乗った。
色々と思うところはあるが、傷ついた貴虎を見て即座に治療を施してその上にカルテまで書いた。私のフェイスフラッシュを使えばあっという間に治るものの、船に医者は居なかった上で海軍に追われていた。結果的にはワトソンが処置を施した事で怪我が治療を施されている。
「貴様の言い分は分かった……それで、カレン。お前は?」
「……その…………ここなら大丈夫かって」
「この船は商船でも客船でもない。貴様達を解放する前から悪魔超人軍は世間一般では賊の身だぞ?」
ワトソンが船に乗り込んできた理由も分かったし、恩もある。
しかしカレンには無い。あのまま海軍の船に追われたとしても逃げることは出来ていた。海流を無理矢理前進させて海軍の船と大きく距離を開いたのは助かったが、それはそれ、これはこれだ。
カレンから何故この船に乗船したのかを聞けば、何を思ったのかこの船ならば大丈夫と思って乗った。
それを聞いたリグレットは呆れながらこの船は悪魔超人軍の船であることを告げる。
「ええ、分かってるわ……」
「まぁまぁ、将軍さん。いいじゃないっすか!人魚が仲間になるなんて最高っすよ!」
「っ!?」
「あ……すんませんっす」
ここが世間的には海賊船と見られる船である事を警告すればカレンは分かっていると頷いた。
舵輪から手を離して何時ものハヤトに戻っているハヤトは美しい人魚が仲間になるなんて最高と鼻の下を伸ばしている。それを聞けばカレンはピクリと反応してナイフを取り出した。ハヤトはナイフを向けられるが威嚇のつもりであることを直ぐに見抜いたので怯える事はせず謝るだけで終わった。
「確か人魚は魚人島に住んでるって聞いたけれど、どうしてこんな所に居るの?」
「ちょいとお前さん。そいつは野暮ってもんだよ……私もこの子も珍しい存在だからって奴隷商に拐われて売られたんだよ」
人魚と言えば魚人島を住処にしている。
ここは偉大なる航路の前半の中でもまだまだ前半の海であり人魚は見かけるのが非常に珍しい。ロビンは遠慮なく聞けばワトソンがそれを聞くのはやめろとカレンの代わりに説明をした。
「人魚が人攫いに?」
「割とよくある話ですね……人間族以外の人間は売れる。その中でも特に女性の人魚は高額で……悪魔の実の能力者も高額でしたね」
なんで人魚が人攫いにと疑問を抱くハヤトに孔明は軽く解説を入れる。
人魚や悪魔の実の能力者が高値で売れる。現にカレンも億単位で人身売買されており、その事を思い出して震えている。
「なんで人魚なのに人攫いに拐われるんすか?そりゃあ地上だったら今の僕でも捕まえれそうだけど、海の中じゃ無敵っすよね?」
「…………のよ……」
「?」
「……魚人の中に、人魚を攫って高値で売っている奴等が、マクロ一味が居るのよ」
地上でならともかく海でならば早々に負けることが無いと考えるハヤト。
カレンは少し震えながらも、自分が魚人に拐われて人身売買された人魚である事を告白する。
「貴方達が思ってる程に魚人や人魚の世界は甘くないの……魚人達が高値で売れるからって人魚を攫って売ることなんてよくある事。私はマクロ一味って奴等に売られてあそこに居たの……っ……」
「ふん…………嘘ではないか」
ナイフを取り出してカレンは威嚇してくる。
この船ならば安心して乗れると言っているのだが、心の何処かでマクロ一味の事を覚えており、反射的に武器を構えてしまう。
戦場で銃が当たり前過ぎて、平和になっても銃を手から離す事が出来なくなったという話は割と聞く。それと同じでカレンも安全な状態に身を置いているにも関わらず、心の何処かで怯えていて武器を離すに離せない。
カレンの口から出ている言葉に嘘は無い。無意識の内にナイフを取り出していることも見聞色の覇気を通じて分かった。
「どういたしますか?」
「貴虎の治療や船を押して貰った恩はある。今すぐに海に投げ捨てる程に私は非情な人間ではない」
「つまり」
「だが、この船に乗るという意味を分かっていない。それが分かっておらず乗せてくださいと頼み込むのはお門違いだ」
カレンとワトソンの処遇についてどうするのかを孔明に尋ねられた。
恩はしっかりとあるのでそれですんなりと追い出すほどに私は落ちぶれていない。それを聞けば船に乗せてくれるのかとワトソンやカレンは嬉しそうな顔をしているが、宗次の様に正式に船に乗ることすら許可していない。
最初に言ったようにここは商船でも客船でもない。
悪魔超人軍が活動する為に使っている船である……はいそうですかで乗せるほどに甘くはない。
「奪った金は?」
「2億5000万程……元からある貯金を合わせれば3億は越えますね」
奪った金が幾らぐらいなのかをリグレットに聞けば悪魔超人軍の貯金が3億を超えた事が分かる。
純粋な純金等でなくベリーと言う紙幣で強奪していてアタッシュケースに入っているか財宝を手に入れた!と言う感覚が薄い。
しかし3億を超えた……これでやっと最初のスタートラインに立てたに近い。
このゼロ・オリジン号を何れは乗り捨ててウォーターセブンで宝樹アダムで出来た船を何れは作る。宝樹アダムを購入するだけの代金は一応は手に入れた。
だがあくまでもアダムを購入するだけの代金だ。
船の設備の代金等はまだまだだ。ザウスは調理場を大きくしてほしいと思っている。まだ居ない船医の為に薬を管理する部屋を用意しなければならない。他にも風呂やら部屋やら色々とある。設備の代金も大事だが、それを管理出来る船大工も必要だ。
「将軍さん、海賊船がやってきやすぜ」
「ほぉ……」
「こっちに近付いてくるわ」
まだまだ金が必要で、他にも人員は必要だなと考えていると海賊船がやってきた。
見たことがない海賊旗だなと思っていると孔明が手配書を持ってきた。賞金2000万ベリーの男が船長を務める海賊船だと直ぐに分かった。
「孔明、雨を」
「はい」
こちらに向かってこようとしている相手の船を見て孔明に雨を降らせる様に指示を出す。
ウェザリア科学兵器で雨雲を作り出せば相手の海賊船限定で雨が降った。突然の雨なので驚いている海賊達だったが特に私達は気にしない。
「宗次、マストを斬れ」
「倒さなくていいんですか?」
「それだけの存在か?」
「いえ、全然ですね」
突然の雨に驚く海賊達。
船は着実にこちらに近づいてきているので宗次に相手の船のマストを斬る様に命じれば、宗次は海賊達を倒さなくていいのかを聞いた。襲ってこようとしている海賊達がそれだけの価値がある存在かと聞けば、宗次は海賊達から強い気配を感じ取る事が出来ないので首を横に振る。
愛刀を鞘に納刀したまま走ってジャンプする宗次。
孔明が巻き起こした雨により火薬の類が使えなくなっているので海賊達は刃物を持っているが宗次は軽々と攻撃を回避し、一閃。相手の海賊船のマストを一刀両断にした。ついでだと言わんばかりに宗次は刀を鞘に納刀したまま海賊達を殴打して蹴散らした。
「宝とか、奪わなくてよかったんですか?」
「今は貴虎を休ませるのが第一だ……それに今回得た金と比べれば微々たる額だ」
相手の海賊船の船員を蹴散らした宗次が戻ってきた。
海賊ならば海賊らしく略奪とかしなくてよかったかについて聞いてくるので、今は派手な戦闘よりも貴虎を休ませるのが一番だと伝えておく。
「下処理が終わったからな……手伝ってもらうぞ」
相手の海賊船が見えなくなり、巨大な岩を発見した。
岩にロープを巻き付けて錨をおろして船を停めていればザウスはカレンが持ち帰った複数の鮑の下処理が終わったことを伝え卸金を持ってきた。
カレンとワトソンに卸金と殻から身のみを剥き出し下処理を終えた黒鮑を渡した。
ザウスはお手本だと黒鮑の1つを目にも止まらない速さで摩り下ろしていき、黒鮑で出来たトロロが出来た。
「お前達はこの船に乗せてもらっている状態だ。手伝ってもらうぞ」
ザウスはそういうとキッチンに向かった。
黒鮑のトロロを使う何かしらの料理の仕込みに向かった。
「……これもこの船に乗せてもらうため」
カレンはボソリとそう呟けば黒鮑を持って卸金で黒鮑を擦り下ろす。
しかし知っての通り鮑は硬い食材であり、最初は勢いがあったもののカレンは途中で腕が痛くなったのか手を止める。
「無茶はいかんよ」
一方のワトソンは物凄い速さでなく一定の速度で黒鮑を擦り下ろしていた。
ザウスが現れて2人が黒鮑を擦り下ろした物を山芋をすり下ろしたトロロと出汁を混ぜ合わせて、黒鮑のトロロが完成する。
「これならば胃に優しく栄養も高いだろう」
黒鮑のトロロを使って軍艦巻きを作った。
ザウスは貴虎の元に持っていけリゾットじゃなかったのかを聞かれるが、メニューが変更したと軍艦巻きを渡される。
「美味いな……」
軍艦巻きは胃に優しく栄養が豊富で傷ついた貴虎の体だけでなく心も癒した。
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