悪魔超人軍総帥 悪魔将軍   作:アルピ交通事務局

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世のための発明家!の巻

 

 雑渡昆奈門を船内へ運び込んだ後、ワトソンはすぐに治療へ取り掛かった。

 先程まで敵として悪魔将軍の首を狙っていた男だ。普通ならば拘束して事情を聞くなり、警戒しながら治療をするなりするところだろう。だが、ワトソンは医者だった。敵か味方は関係ない。目の前で怪我をしている人間がいる。それだけで治療する理由としては充分なのだろう。

 

「これは……随分と酷い火傷ですな」

 

「いえいえ、もう傷跡が残っているだけですよ」

 

 ワトソンが昆奈門の身体を診察する。

 忍者のような服装をしていた時には気付かなかったが、包帯に巻かれている部分には酷い火傷の跡があった。

 

 普通の人間ならば、その傷跡を見るだけで顔をしかめるだろう。だが、昆奈門本人は特に気にした様子もない。

 

「この火傷は、いつ負った?」

 

「昔ですよ。色々とありましてね……その時にね……」

 

「痛みは?」

 

「ありませんよ。見た目こそ酷い火傷の跡ですが、見た目だけで完治はしてますよ」

 

「身体を動かす際に支障は?」

 

 昆奈門は肩を回してみせる。先程まで貴虎と戦っていたこともあってか、身体を動かすことそのものには何の問題もないようだった。

 ワトソンも火傷については気になっているようだったが、それが現在進行形の怪我ではなく、昆奈門が言っている様に見た目だけの火傷の跡であり問題無く体を動かせている。

 

「……随分と無茶をしてきた身体ですな」

 

「医者にそう言われると、少し耳が痛いですね」

 

「少しどころではありませんよ。貴方、傷だらけじゃないですか」

 

「この火傷の跡に関してはまぁ、名誉の負傷ですよ」

 

 昆奈門は苦笑した。

 どうやら本人にとっては珍しいことでもないらしい。 ワトソンは呆れたように息を吐きながら、貴虎から受けた傷の治療を続ける。

 肩を撃ち抜かれたわけではない。無双セイバーの弾丸が掠めた程度ではあるが、普通の人間ならば決して軽傷とは言えない。それでもワトソンの治療を受ければ、出血はすぐに止まり、傷口も丁寧に処置されていった。

 

「これでいいでしょう」

 

「ありがとうございます」

 

「明日までは安静にしてください」

 

「分かりました」

 

「……本当に分かってます?」

 

「もちろん……医者の言葉は信頼しないと痛い目に遭うのは経験上知っていますからね」

 

 昆奈門が笑う。どうにも掴みどころのない男だ。

 敵として乗り込んできたというのに、敗北すれば素直に降参し、治療を求め、そして今では普通にワトソンと会話をしている。

 だが、少なくとも今すぐこちらへ害意を向けるつもりはないらしい。

 

「では、私は休ませてもらいます」

 

「船室を一つ使わせる。勝手に船内を歩き回るな」

 

「承知しました、将軍殿」

 

 私はそれだけ言って昆奈門を船室へ向かわせた。今夜のところは、それ以上問い詰める必要もない。何故キテレツ斎を救おうとしたのか。何故私達の首を狙ったのか。聞きたいことは山ほどある。だが今は夜だ。昆奈門自身も負傷している。詳しい話は明日でいいだろう。

 

「おはようございます」

 

「…………」

 

 朝食の席に雑渡昆奈門がいた。

 モグモグと食パンを口にしている。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 私の隣に座っていたロビンも、向かいに座っていた貴虎も、誰も何も言わない。

 昆奈門は何事もなかったかのように朝食を食べている。昨夜まで敵だった男が、何故か一緒に朝食を食べている。普通ならば指摘するところなのだろうが、色々と気になることがあるので深くは指摘しない。

 

 私が指摘せずに普通に食事を始める。

 私が指摘しないのだから誰もツッコミを入れることは出来ない。昆奈門からは敵意らしいものを感じないので各々が普通に食事を取る。孔明に至っては最初から気にせずに何時も通りに食事をしている。

 

「ごちそうさまです……今まで色々と食べてきましたが極上の味でした」

 

「当然だ。この船のシェフは料理王の異名を持っているのだから」

 

 食事を終えればごちそうさまと言い美味かったと感想を述べる。

 ゼロ・オリジン号の料理は美味い。何故ならば料理王の異名を持っている男がシェフを務めているから。

 

「それで……話はしてもらうぞ」

 

「もちろんです」

 

 ズズーっと茶を啜る昆奈門は一息ついたので改めて話をしてもらう。

 何故キテレツ斎を救うのか、何故私達の首を狙ったのか、いったいなにが目的なのか。

 

「では、どこから話しましょうか」

 

「最初からだ」

 

「分かりました」

 

 昆奈門は頷いた。

 変なところから説明をされても困る。最初から出来る限り分かりやすく説明をしてもらいたい。

 

「まず、キテレツ斎様……栄之進様についてですが、あの方はタソガレ王国随一の天才です」

 

「それは知っている」

 

 私は奇天烈大百科の一冊を取り出した。

 まだ全てを読んでいないが1つ1つがとてつもない発明品なのは素人の目でも分かる。

 

「ええ。ですが、皆さんが思っている以上ですよ。キテレツ斎様はからくり技師です。機械を作ることを本職としておられる。しかし、あの方は機械だけに留まらなかった」

 

「農業、医療、気象、エネルギー……か」

 

「その通りです」

 

 私は昨夜見た奇天烈大百科の内容を思い出す。あの本に記されていた発明品の数々。

 感情を熱エネルギーに変える物、人体の一部を動物の変化させる道具、どれもこれも超常的な発明品ばかりだ。 

 

「農作物の品種改良を行い、少ない土地でも多くの食料を生産できるようにした。医療器具を作り、病気や怪我の治療を容易にした。農業用の機械を作り、人々の負担を減らした……この国の名産品のポークポテトもそうです」

 

「コロッケのやつか」

 

「ええ。あれもキテレツ斎様の発明の一つです」

 

「蜜柑もそうだな」

 

 ザウスが口を挟む。

 昆奈門は勿論だと頷いた

 

「特殊な音を使って果実の成長を促す装置……食材、いや、植物を熟知しているからこそ作れる物だ……見事なものだ」

 

「貴様、食べ物の話になると妙に評価が甘くならないか?」

 

「食べ物を豊かにする者を評価して何が悪い」

 

 料理王として極上の素材に拘る。

 その素材を作る作り手が色々な工夫をしているのならばそれを評価する。料理王いや、料理人としては極々普通の思考だ。

 

「キテレツ斎がタソガレ王国を豊かにした。それは間違いないのだな?」

 

「間違いありません」

 

 昆奈門は即答した。

 

「嘗てのタソガレ王国は今ほど豊かではありませんでした。世界政府非加盟国ということもあり貿易が上手く出来なかった」

 

「世界政府非加盟国……やはり、そこが問題なのですね」

 

 世界政府非加盟国と聞いて孔明は反応した。

 このタソガレ王国に上陸する際に世界政府非加盟国であった場合の危険性等をリグレットから軽く忠告を受けている。世界政府非加盟国と世界政府加盟国の間には大きな差がある。

 

「タソガレ王国は世界政府に加盟していない。故に世界政府加盟国の常識が通じない可能性がある。世界政府が非加盟国をどう扱うかは、その時々によって変わる。ある国は見逃される。ある国は監視される。そして場合によっては……何らかの理由をつけて介入されそんな国なんて最初から無かったと潰される」

 

「……世界政府加盟国の人間でない者には人権すら無いと言う馬鹿な海兵も居るからな」

 

 世界政府非加盟国であることについて昆奈門が語れば、貴虎は思い出す。

 世界政府加盟国の人間は世界政府から恩恵を受ける。しかし世界政府非加盟国の人間は一切の恩恵を受けない。加盟国でも何でもないからと言う理由で子供だろうと平然と傷つける海兵の皮を被った賊に近い存在が居る。

 

「今でこそ国として豊かになったタソガレ王国ですが、世界政府加盟国になる為の天竜人への上納金を毎回出せるほどに裕福ではありません……そこでキテレツ斎様に白羽の矢が立ちました」

 

「……嘗て世界一の天才であるベガパンクを政府の科学者にする為に逮捕したと聞く。キテレツ斎もまた、天才科学者として売ることで世界政府加盟国に入れてもらう。そんなところか」

 

 タソガレ王国が世界政府加盟国に加盟する為には大金が必要だが、そこまでの大金をタソガレ王国は捻出できなかった。

 しかし代わりにタソガレ王国随一の天才、ベガパンクに負けず劣らずの天才であるキテレツ斎と言う男が居た。キテレツ斎を世界政府に科学者として売ることでタソガレ王国は世界政府加盟国になれる。

 

「自国を豊かにした男を売り渡して、自分達だけが安全な場所へ逃げ込むつもりか」

 

「……」

 

 昆奈門はなにも答えなかった。

 答えないという事は私の言っていることが合っていると言っているも同然だぞ。

 

「しかも、ただキテレツ斎様を捕らえれば反発が起きる」

 

「だからオナラ芋か」

 

「はい」

 

 キテレツ斎が受けた裁判を思い出す。あまりにもくだらない罪状。

 物凄いオナラが出るさつまいもを作った。それを食べた者達が粗相をした。だから責任を取れ。そして発明を禁止するため、座敷牢で終身刑。

 

「……くだらない茶番にも程があるな」

 

「ええ、全くです」

 

 内容があまりにもくだらない茶番だと言えば昆奈門は否定はしない。

 その通りだと頷いた。

 

「キテレツ斎様を危険な発明家として印象付け、発明を禁じ、表向きは犯罪者として拘束する。そして最終的には世界政府へ差し出す……そうすることでタソガレ王国は世界政府加盟国として認められる手筈でした。ですが当然、キテレツ斎様は世界政府いえ、海軍直属の科学部隊に入ることを拒みました」

 

「なんでですか?海軍直属ならある程度は安全とかは保証されるっすよ?」

 

 海軍直属の科学部隊、SSGの一員になる事をキテレツ斎は拒んだ。

 キテレツ斎がタソガレ王国を出てSSGに入ったのならば、ある程度の安全は保証はされる。それだけでなく政府から潤沢なまでの研究費用が貰える。科学者としては働きやすい環境があるのだが、キテレツ斎は拒んだ。それがわからないとハヤトは聞いた。

 

「将軍殿は奇天烈大百科を持っていったのなら……これを」

 

 昆奈門は私が奇天烈大百科を持っていったことを知っていた。

 眼鏡を取り出して渡してくる。頭部の形状の都合上、私は眼鏡をつけること出来ないので貴虎につけて奇天烈大百科を見せる。

 

「回古鏡……過去を映し出すカメラ……からくり紙、折り紙の様に折ればその折った物の様に動く……犬話機……犬と会話をする事が出来る……」

 

「どれもこれもビックリな性能だな」

 

 奇天烈大百科に載っている発明品の内容を読み上げる貴虎。

 詳しい仕組みは貴虎もよく分かっていないが、内容だけは分かるもので軽く読み上げればリグレットは驚いた。

 

「……ふむ……」

 

「気付きましたか?」

 

「……コレに載っていない。もしくは……」

 

「ええ、キテレツ斎様の頭の中にあります」

 

 奇天烈大百科のページをパラパラと捲っていく中で貴虎はあることに気付いた。

 昆奈門はそれに気付いたかについて聞けば貴虎は載っていないもしくはと考え、昆奈門は頷いた。

 

「なんの話ですか?」

 

「この奇天烈大百科に載っているのは今のところは便利な発明品ぐらいしか載っていない……兵器として利用出来そうな物は無くもないが、大抵が普段の日常を豊かにする便利な物ばかりだ」

 

 話が読めないと宗次が聞けば、奇天烈大百科に載っている発明品について貴虎は語る。

 冥府刀の様な物騒な物はあるが、基本的には奇天烈大百科に載っている物は日常での便利アイテムだ。兵器として使えなくない物はなくもないが、日常での便利アイテムばかりであり……兵器としての側面を持っている物が載っていない。

 

「キテレツ斎様は兵器を作れないわけでなく、作りたくない……海軍の特殊科学班の一員になってしまえば科学を用いた危険な兵器を数多く作らされる。キテレツ斎はあくまでも世のため人のためを願いからくり技師として発明をしているのです」

 

「……だからくだらない罪に問われてもすんなりと受け入れていたわけ」

 

 科学者いや、発明家として役に立つための物を作るのがキテレツ斎のやり方である。

 そのやり方を無視して、世界政府に海軍の特殊科学班、通称SSGに売ろうと企んでいるがキテレツ斎は例え売られたとしても海軍で正義の皮を被った非人道的な行為はしたくないのだと主張をしている。

 

「……なんで、貴方はそこまでキテレツ斎さんを助けたいの?」

 

 悪魔超人軍の首を差し出して、手に入れた賞金を用いて世界政府加盟国に入ることを考えていた昆奈門。

 キテレツ斎が人格者なのは分かったが、キテレツ斎をそうまでして助けたいのかがカレンには分からなかった。

 

「救われたんですよ、私は」

 

「救われた?」

 

「ご覧の通りこの忍者の衣装の下には見るも無残な火傷の跡……当時、その怪我を負った私は手の施しようが無かったのですが、キテレツ斎様が治してリハビリまで協力をしてくれましてね……あの方には返しても返しきれない恩があるのです」

 

「……そう」

 

 昆奈門の服の下には大きな火傷の跡が残っている。

 あの火傷を受ければ再起するのは難しいが、キテレツ斎が持てる技術を駆使して特殊工作兵として蘇らせた。雑渡昆奈門と言う人間が今日こうして生きているのはキテレツ斎のおかげであり、そのキテレツ斎が不遇な目に遭うのであれば見過ごせない。

 

「でも、どうするの?……キテレツ斎さんを助けようにも……」

 

 世界政府加盟国になる為の上納金を今すぐに用意することは出来ない。

 キテレツ斎を助ける明確な方法が浮かばないのでカレンは落ち込んでいるのだが、昆奈門は懐に手を入れて……永久指針(エターナルポース)を取り出した。

 

「それは……」

 

「なんとか手に入れる事が出来たとある場所に辿り着く永久指針です……将軍殿、私とキテレツ斎様をこの永久指針の針が示す先に連れて行っては貰えないでしょうか?」

 

 永久指針をはじめてみるカレンは確かと思い出そうとする。

 それよりも前に昆奈門が私に永久指針が示す先に連れて行ってくれと頼む

 

「くだらんな……その手筈が整っているのならばわざわざ私達に頼る意味など無かろう」

 

 しかし私はその頼みを断る。

 永久指針を持っていてキテレツ斎を連れ出す算段があるのならば、わざわざ悪魔超人軍に頼む理由は無い。

 

「貴方達にとってこの永久指針が示す島は有意義な場所です」

 

「……なにを根拠に言っている?」

 

「……この永久指針が示す先、それは未来国バルジモアです」

 

「なんと!?そりゃスゴい!」

 

 永久指針が示す先が私達にとって有意義な場所と言う昆奈門。

 なにを根拠に言っているのかを聞けば、永久指針が示す先は未来国バルジモアだと教えた。それを聞いたワトソンは驚いた。

 

「なんなのそのバルジモアって?」

 

「世界一の天才、ベガパンクが生まれた国さ……ベガパンクが島を色々と改造したり研究所を構えてたって聞いたことがありやすぜ」

 

 バルジモアと聞かされてもカレンはイマイチ、ピンと来ていない。

 ワトソンがバルジモアがベガパンクの生まれ故郷であり研究所があるという事を語る

 

「このタソガレ王国の記録を溜めて次の島に進んだとしても、バルジモアには辿り着きません……バルジモアにはベガパンクの研究資料が数々あると聞きますしベガパンクについて知っています。それならばキテレツ斎様もきっと受け入れてくれるでしょう」

 

 バルジモアならばキテレツ斎を受け入れてくれると昆奈門は考えている。

 確かにバルジモアならばキテレツ斎を受け入れてくれるだろう……だが……

 

「私達が行くメリットはなんだ?」

 

 バルジモアには何れは行きたいと思っている。コレは確かにチャンスといえばチャンスだろう。

 しかしバルジモアに行ったところでこの船には船大工もなにもいない。ベガパンクが残した設計図や研究資料を見たところで何かを発明する事は出来ない。

 

「無論、タダとは言いません……バルジモアでキテレツ斎様の安全を確保する事が出来たのならば私はこの悪魔超人軍に入りましょう……こう見えてもただ忍者のコスプレをしているわけではないです。情報収集は得意なのですよ……」

 

「……ふん……まぁ、いいだろう……しかし派手に脱獄させれば世間の目につくぞ」

 

「ええ……ですので人員を少しお貸しください……キテレツ斎様の脱獄方法は既に考えております」

 

 何処までも用意周到な男だ。

 雑渡昆奈門の話を聞き入れ、キテレツ斎を脱獄させてバルジモアに向かう事を決めた。




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