ヒトヒトの実 モデル超人種 ゴールドマンを食った男の話 作:アルピ交通事務局
「クェー!!」
「む?」
もうどれだけの間、修行を続けてきたのか分からない。数十年以上ひたすらに修行に明け暮れていた。
不思議な事に肉体的な衰えを一切感じない。おそらくはゴールドマンがザ・マンから不老不死の力を得たから。その証拠か、完璧超人始祖の証であり命でも絶対の神器の1つ、天のダンベルを手にしている。
「悪いが金は持っていないぞ」
新聞を売るニュース・クーがオレに気付いて新聞を売りに来る。
ダイヤモンドパワーを会得した私ならばダイヤモンドを生み出す事が出来るが、それを金に変える事はしていない。別にそれで宝石類の相場を下げるのが嫌でなく、単純に金を使う機会が無いからだ。
新聞を売りに来たつもりだろうが生憎な事にオレは金を持っていない。その事を伝えるのだがニュース・クーは迷いなく新聞を渡す。無料でいいんだな?と一応の確認をすれば頷いて空を飛んでいった。
「ふむ……ロジャー海賊団が制覇か」
何時ぶりの新聞かは分からないが文字はしっかりと読むことが出来る。ロジャー海賊団が誰も成し遂げる事が出来なかった前人未到の偉大なる航路制覇というニュースが記されている。何故にタダだったのかと納得をする。
ロジャー達が海を制覇した時には既に船長であるロジャーは50を過ぎている初老の男だ。弟が結婚して子供が出来たとしても……オレは80年ぐらい鍛えているのか。
「まぁ、些細な事か」
ロジャー海賊団が偉大なる航路を制覇した。だからといってなにかが変わるわけではない。
今まで通りオレはオレを鍛えていく。鍛える理由?分からない。ただ超人としての本能で鍛えなければならないと思っている。力が無ければ無意味、無価値、弱い人間は何時だって食い物にされてしまう。
「今度は処刑か」
黙々と修行をしていれば今度はロジャーが捕まって処刑されたことが記されていた。
そして予想通りと言うべきか、宝が欲しければ探すがいいと宣告し……大航海時代ならぬ大海賊時代を生み出した。
ロジャー海賊団が手に入れた、いや、辿り着いた最後の島であるラフテルで見た物はおそらく純金等の誰にでも分かる明確な財宝ではない。ロジャーが病で死が近付いていたが為にロジャー海賊団は生き急いでいる。その為にロジャー海賊団は最後の島であるラフテルに早くに辿り着いた。きっとラフテルに辿り着くにはもっと色々と手順を踏む、もしくはラフテルに辿り着いてからが本番だと言うところか。
ロジャーの処刑をニュースとして見ても特に心は揺れ動かない。オレにとっては弟の子供だろうが会ったこともない……だが、ロジャーは自由に伸び伸びと生き抜いた。病に体がやられていたのは残念だが、それでもロジャーは船員を引き連れて最後の島に辿り着く事に成功した。
ロジャー海賊団の面々はロジャーの死を悲しんだ。だが、それと同時に新たに一歩踏み出そうとする者達が居る。ロジャーの意思を引き継ぐのでなく己の意思で海賊になった。新しい時代の幕開けだ。
「む……」
しかしだからといってオレが何かをする理由にはならない。
ロジャーの処刑を間近で見たわけではない。ロジャー達は早くにラフテルに辿り着いたとしか認識していない。わざわざ海に出るという酔狂な事はしない。
「明確な悪意を感じるな……まったく、余計な真似を」
見聞色の覇気でオレが上陸した島ならば大体の事は分かる。
嘗てルフィが修行した島よりも小さな島であるが為に島の外の気配もある程度は分かってしまう。そしてオレの見聞色の覇気は気配と感情、どちらも感じ取ることが上手い……こちらに向かってくるであろう船から純粋な悪意を感じる。
ロジャーの残した莫大な財宝が欲しい。だから海賊をやろう。ロジャーの死に際に放った一言が原因の為に自由とロマンをなにをしてもいいと勘違いしてしまっている者達が海を出て好き勝手に暴れている。なんともまぁ、情けない話だ。
「仕方がない……ふん!」
あまり大きな騒ぎになるのはオレは喜ばしくない。覇王色の覇気を海賊達に向ければパタンパタンと倒れていく。
オレ程度の覇王色の覇気で倒れるとは、海で戦い抜くための研鑽が圧倒的に足りん……まぁ、しかしここは最弱の海である東の海だ。弱い奴が多くて当然か。
覇王色の覇気で気絶させた海賊船はやってくる。ちょうど村があるところにだ……だが、海賊達は気絶している。ならばやることは1つ、海賊船を破壊して海賊達から略奪をし命を奪う。
海賊にも話し合いが通じる者達は居るには居るが極僅か、村の住人は海賊を毛嫌いしている。理由は至ってシンプル、海賊行為で様々な迷惑が掛けられているから。金を払う事ならばまだしも普通に略奪する。例えこの村で略奪せずに他の村で略奪した場合、その分の余波がなにかしらの形で生まれる。大抵は税金と言う形で生まれる。
海賊相手に商売をする程に商魂逞しいのは偉大なる航路の住人、と言っても彼らも彼らで腕にそれなりに自信があるが。
「ふむ……なにかオレに用事か?」
ロジャーの死後に海賊が一気に増えた。この島にやたらと海賊がやってくる。幸いにもオレの覇王色の覇気で気絶する程度の雑魚の集まりだ。ここはあくまでもオレの知っているONEPIECEの世界に似ているだけで何処かが違う世界もしくは原作で詳細については深く語られていない部分が語られている……例えばロジャーの死後に爆発的に海賊が増えた。その結果、海賊に苦しむ人達が物凄く増えた。
基本的には麦わらの一味、いや、ルフィ達視点で物語は進んでいくのでそういう部分があまり描写されない……が、されていないだけでそういう悪行をしていると言う輩が多いのは定期的に語られている。
「あ、あんただ!!」
何時もの様に自分が食べる分の肉を焼いていれば1人の少年が現れた。
何かを探しているというのが見聞色の覇気で読み取れるのだがオレを見た途端に全てが納得がいった。欲しい玩具を手に入れた子供のように笑みを浮かび上げていた。
「なぁ、あんた、護り神だろ?」
「なんの事だ?」
男が護り神だと喜んで聞いてくるのだがなにを言っているのかが分からない。
惚けているのでなくホントになにを言っているのだと疑問を抱いていれば男は答える。
「この島に近付く海賊達を倒してくれていた。俺が生まれるよりもずっと前から……山に護り神が居るんじゃないかって言われてて」
「……そうか」
見聞色の覇気で悪意等を感じ取れるようになり、覇王色の覇気の練習台だと海賊達にのみぶつけていた。目の前に居る男は少年と青年の中間ぐらいの容姿。この島に住んでいる時間だけを言えばオレの方が当然上だ。
だが、オレが島に上陸した際には既に村があった……まだその時は今ほどに海賊が居なかったが……何十年と覇王色の覇気で海賊を撃退してきた事が今になって自分に返ってきたか。
「あんたを見てなんとなくで分かる。あんたがその護り神だって!」
「なんとなくだと?」
「ああ。見るだけで美味いと分かる料理、見ただけで名刀と分かる刀、そんな物を過去に何度か見たことがある。それと同じであんたを見た際になにか別格な物を感じた!それが今まで海賊達を退けた物だって」
オレは一時期覇王色の覇気を常に自分に当て続けていた。覇王色の覇気を纏うことが出来るのを知って纏うこともした。
更には武装色の覇気を何度も入念に体全体に込めた。覇気を込め続ければ何時かは黒刀になると言うのであればオレ自身の肉体も黒刀の様に常軌を逸脱した頑強さを出すことが出来るだろうと。その為に一種の圧力を出し、コイツはそれを感じたか。
「それで、わざわざ護り神を探してなんの用事だ?護り神に捧げるというくだらない人身御供ならばさっさと帰れ」
山には護り神が住んでいるという事実が分かったとしてどうするのか?オレの頭部は純金で出来ている。売り捌く事が出来ればそれなりに金が手に入るのだが、オレとて容易く首をやるほど安い男ではない。
護り神が居るのならば命を捧げるという古臭い風習、ONEPIECE世界ならば普通にありえるので供物は要らんと答えれば男は土下座をした。
「なんの真似だ?」
「頼む!俺を鍛えてくれ!」
「何故わざわざオレに教えを請う?自らの意思で強くなりたいと願ったのならば修行をすればいい……その肉体は飾りではないのだろう?」
「ダメなんだ……強くならないと、この村を守れない!ここは東の海でも隅っこの方にある辺境の村だ。そのせいか海軍の駐屯地は無くて一番近い場所でも時間がかかるし、そこに居る海兵達は素行の悪さから左遷をくらった使えない海兵達だ……何時までも護り神に守ってもらっていたらなにも変わらない」
「変わる為にわざわざオレに弟子入りか……ふん、まぁ、いい。先に言っておくがオレは悪魔の実の能力者だ。オレ自身の強さの仕組みは悪魔の実に依存している部分もある。それでもと言うのならば鍛えてやる」
「ほ、ホントか!?」
「ああ……名を聞いていなかったな」
「シュウジだ!……えっと」
「悪魔将軍、将軍とでも呼べ」
「将軍、オレを鍛えてくれ」
こうしてオレは殆ど気紛れにシュウジを弟子に取った。
山の護り神と言う中々にめんどうな異名をつけられているのが鬱陶しい。シュウジがオレを見つけたことで山にはオレが住んでいると言う事を証明した。これからシュウジが力を得たとして自分もと言う者が現れてオレに会いに来る可能性もある。
「ひぃっ!?」
「お、鬼!?」
「違う!居たんだ、山には護り神が」
「神などという言葉を使うな……オレは悪魔将軍だ。シュウジよ、この村の長は何処に居る?」
「村長?村長なら酒場に居るよ」
「何処にあるか分からん。連れて行け」
村に降りれば村の人間に威圧感を与えてしまったのか怯えられる。
シュウジが山に住んでいる護り神だと説明をするが神と言う称号がどうにも気に食わない。オレは悪魔将軍、そこは引けない。
シュウジに村長が何処に居るのかを聞けば村長は酒場に居ると言い酒場に連れて行って貰えば酒場では酒を飲んでいる者達が居た。
「……ご注文は?」
「すまんが、村長は誰だ?」
「村長ならばあそこに」
「なななな、なにか?」
「そう慌てるな。とって食おうと言うわけではない」
酒場のマスターに村長は誰だと聞けばタルジョッキを飲んでいる初老の男性が居た。
酒場のマスターは特に怯えていないのに村長は名指しされれば怯えている。別にとって食おうと言う思いは無い……肉ならば適当に獣を狩ればいいだけなのだから。
「シュウジを弟子にした」
「え……へ……シュウジを?」
「強くなりたいと懇願してきた……断るのも可能だが断る理由も特に見当たらないのでな」
「は、はぁ……」
「わざわざそれを言いに来たのか?とでも思っているのだろう。その様なわけではない……これからはシュウジがこの村を守る。それを伝えに来た」
「えっと……どういうことだ?」
「今まで何故か海賊達が気絶していた事があっただろう。アレらはオレがしたことだ。しかしシュウジが強くなりたいと懇願し、その力を敵に振るうと言うのであればそれはもう不要な事だ」
今まではオレに降りかかる可能性がある火の粉を払っていただけに過ぎない。
シュウジが強くなりたいと懇願しオレに弟子入したのであればこれからはわざわざオレが海賊を潰す理由は無くなった。
「え?……じゃあ」
「安心しろ。シュウジはしっかりと鍛える」
「ま、待ってくれ」
「それを伝えるだけに来た……オレが居るから何とかなるという甘えた考えを持っている様だが、どうやらオレの行いは間違っていた様だな」
この島で修行をしてからもう100を越える程の海賊達がやってきた。数えるのが嫌になるぐらいに来た。
幸いと言うべきか覇王色の覇気で気絶させる事が出来る貧弱な海賊しか居なかった……だが、それが良くなかった。悪意を持ってこの島に上陸して海賊行為を企む者に対して覇王色の覇気で意識を奪い続けた結果か護り神が守ってくれるという考えを持った。その考えのせいで自らを鍛えようという考えを失った。
ならば簡単だ。覇王色の覇気を用いて相手を気絶させる行いをやめればいい。オレ自身が戦ってもいいが、オレの様に強くなりたいと願う男が1人現れた。ならばこれからはオレでなくその男に、シュウジに任せる。
勿論シュウジがまだまだ未熟なのは分かっている。如何にオレと言えども未熟な者を戦わせる程に愚かではない……だが、殻を破るには強敵達との激闘が必要になる。
「あ、悪魔将軍」
「まさか、オレに頼るつもりか?……なんの為に強くなる?」
鍛えてはやるが、オレの能力を頼るつもりならば話は別だ。自分がなにかの拍子で倒れたとしてもオレが居るからと言う考えは甘えだ。自分1人でなんでもかんでも出来るようになれとは言わない。しかし自分の足でしっかりと立ち上がり二本の足で歩く事が出来なければなんの意味も無い。
「そう……だな……何時までも、あんたに頼ってたらダメだ!」
「ならば修行に取り掛かるぞ」
「ああ!」
オレはオレが強くなる方法しか知らん。それが他の人間に通じるかも分からない……だが、意思1つで人は越えれる。超人という種族も意思1つで人間が倒すことが出来る。