悪魔超人軍総帥 悪魔将軍   作:アルピ交通事務局

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この作品、なんだかんだで面白いなと思ったのならば感想ください。感想がないと執筆のモチベーションが……


もう一つの研究所!の巻!

 ベガパンクがかつて使用していた研究所には、想像以上の数の資料が残されていた。

 最初に訪れた研究所は、人々の生活を豊かにするための研究が中心だった。

 水を浄化する装置。農作物の生育を補助する機械。医療用の診断装置。少ない燃料から大きなエネルギーを生み出す装置

 

 どれもこれも、今の世界では到底実現できそうにないものばかりだった。

 しかし、バルジモアにはそれとは別の研究施設が存在していた。

 ベガパンクが兵器に関する研究を行っていた場所。

 キテレツ斎が見つけた地図を頼りに、悪魔将軍達は雪山を越え、さらに人の気配がほとんどない山奥へと進んでいた。

 

「……ここか」

 

 悪魔将軍が足を止めた。

 山の中に隠されている研究施設、地図を頼りに向かってみれば明らかにおかしい鉄の扉が山の中にあった。

 ここにベガパンクが兵器として色々なものを作っている研究所が構えられている。悪魔将軍は扉をなんの迷いもなくぶん殴りドアを開いた。

 

「将軍さんよ、ここには人によっては宝の山があるんですぜ。もう少し丁寧に行きましょうや」

 

 乱暴なドアの開け方に苦言を呈するワトソン。

 しかし悪魔将軍は対して気にせずに研究所の中に入った。研究所の中は村の人に教えてもらった研究所と同じ内装ではあった。しかし置かれている物や設計図等は異なっており、ワトソンが近くの机に置いてあった資料を読んだ。

 

 ロビンも棚を見つめる。最初の研究所では生活を豊かにする発明品が大量に並んでいた。

 だが、この場所は違う。そこにあるものは、明確に人間を傷つけることを目的としたものが多かった。

 

「これは恐ろしい……」

 

 ワトソンが小さく呟く。

 

「薬として使えるものもあるのでしょう。しかし、使い方を間違えれば人間を簡単に殺せる」

 

 薬の調合方法が書かれた資料まで発見された。

 薬品の分量、加熱する温度、混ぜ合わせる順番、保存方法、人体へ作用するまでの時間、解毒方法。

 そこには、毒を作るために必要な情報が細かく記されていた。

 

「……これだけ詳細に書かれているとは」

 

 ワトソンの顔から笑みが消える。

 

「これは医学書ではありませんな」

 

「兵器として使うための研究資料でしょうね」

 

 ここにある物は人の命を救い心に安らぎを与えるものではない。

 ワトソンはそう感じて毒物に関して書かれている資料を机の上に置いた。孔明は冷静に兵器として使う為の研究資料という

 

「使い方によっては毒にも薬にもなるのが科学ですよ」

 

 人を殺す技術がびっしりと書かれている資料を見てワトソンは少々嫌気が差した。

 しかし孔明からすれば科学は悪でも善でもない純粋な技術や力の1つであり、使い手次第で色々と変わっていくのだとフォローを入れる。

 

「兵器として利用するために研究していたのか。それとも、兵器への対策として研究していたのか……いや、この場合はどちらもですね」

 

「どちらにしても危険な資料であることには変わりませんな」

 

 孔明の言葉を聞いて昆奈門が周囲を警戒する。 だが、その横では別の男が全く違うものに夢中になっていた。

 

「…………」

 

 キテレツ斎だった。

 彼は一冊の資料を手に取り、黙々と読み進めていた。声を出さない。周囲の会話にもほとんど反応しない。ただひたすらに紙へ視線を落とし、書かれている内容を頭の中へ叩き込んでいる。

 

「キテレツ斎様?」

 

 昆奈門が声を掛ける。

 

「…………」

 

 返事がない。

 

「キテレツ斎様」

 

「……ああ、どうした?」

 

 ようやく反応した。

 

「先ほどからずっと資料を読んでおられますが……」

 

「読んでいる」

 

「それは見れば分かります」

 

 自分が言いたいのはそういうことではなく、何故自分の言葉に反応しないのかなにに夢中になっているかだ。

 

「何か気になることでも?」

 

「…………」

 キテレツ斎は答えない。

 また資料へ視線を戻した。そこに描かれていたのは兵器の設計図だった。

 複雑な機構。特殊な動力。大量のエネルギーを必要とする装置。そして、その兵器を実現するために必要な素材。

 設計図の横には、いくつもの注釈が書かれていた。

 

 出力不足。素材の入手が困難。現段階では製造不能。理論上は可能。実用化には莫大なエネルギーが必要。

 キテレツ斎は一つ一つを確認していく。

 

「…………」

 

 ページをめくる。また別の設計図。

 巨大な砲台。自動制御装置。 特殊なエネルギー兵器。防御用の機械。無人兵器。

 どれも今の世界の技術水準から考えれば、異常とも言える発想だった。

 

「…………なるほど」

 

 今まで黙々と設計図を見ていたキテレツ斎が初めて声を出した。

 

「何か分かったの?」

 

 ロビンが尋ねる。

 

「この兵器……ベガパンクは、完成させられなかった様だ」

 

「ええ、そう書いてありますね」

 

 孔明も資料を覗き込む。

 資料には色々な文字が書かれているが殆どのところに✕印がつけられていて、少しだけが◯をつけられている。

 見たことがない兵器で聞いたこともない兵器、それはつまり机上の空論の物であり誰も完成させることが出来なかったというわけだ。

 

「動力源の問題でしょうか?」

 

「いや、それだけではない。素材も問題だ。構造上、この部分にかなりの負荷が掛かる。しかし当時の技術では、この負荷に耐えられる素材がなかったんだ」

 

「そこまで分かるのですか?」

 

「設計図を見れば分かるさ」

 

 博識な孔明でもわからないところが多々あるのだがキテレツ斎は設計図を見て何がよくてなにがダメだったのかを淡々と答える。

 

「設計者がどこで妥協したのか。どこで諦めたのか。設計図には、それが残ります」

 

 その言葉を聞いた悪魔将軍がキテレツ斎を見る。キテレツ斎は再び設計図へ視線を落とした。

 

「…………」

 

 しばらく沈黙する。

 

「……ここを変えれば……動力の負担を減らせる」

 

「本当ですか?」

 

 孔明が驚く。

「ええ。元の設計では負担がありましたが、少し弄くれば劣化品ですが実用化は可能ですか」

 

 キテレツ斎は近くにあった紙を一枚取り出した。

 簡単な図を描く。さらに書き加える。悪魔将軍達は発明家ではないのでこれで具体的にどの様なパワーアップはチューニングがされるのかは分かっていないものの、キテレツ斎はこの通りに開発をすれば多少は劣化品になってしまうがベガパンクが実現出来なかった発明品を作れるという

 

「これなら多少スペックは落ちますが理論上は作ることは可能です」

 

「理論上はか……」

 

 悪魔将軍はボソリと呟いた。

 ベガパンクが机上の空論として作っていた発明品の設計図を見て、キテレツ斎は補填をする。

 ベガパンクが作りたかったものをそっくりそのまま作り上げることは出来ない。多少はスペックが落ちてはしまうものの、キテレツ斎の頭の中では完成品が浮かんでいる。

 

「これほどの発明品を作れるとは……流石は世界一の天才」

 

 キテレツ斎の発言に誰も言葉を挟まなかった。

 キテレツ斎は黙々と設計図を比較している。その目は輝いていた。しかし、興奮して叫ぶわけではない。ただ静かに。ひたすら静かに。ベガパンクが残した研究成果を読み込み、自分の知識と照らし合わせ、頭の中で再構築していく。

 

「……う〜む…これも……」

 

 キテレツ斎は目を細める。

 

「少し手を加えれば……」

 

 また紙を取り出す。筆を走らせる。

 線を引く。消す。また描く。そして設計図の一部分を見つめる。

 

「可能かもしれない」

 

「キテレツ斎様」

 

 昆奈門が嫌な予感を覚える。

 タソガレ王国から出したのはキテレツ斎が作りたくない物を作らせない為だ。キテレツ斎の作りたくない物、それは兵器だ。

 

「兵器を作るおつもりですか?」

 

 昆奈門が指摘すればキテレツ斎の手が止まった。

 

「…………」

 

 しばらく沈黙する。

 

「分からない」

 

「分からない?」

 

「私は兵器を作りたいわけではない」

 

 キテレツ斎は設計図を見る。ベガパンクが残した設計図。その中には、完成させられなかったものが大量にある。

 あと少しだったもの、理論上は可能だったもの、技術が足りなかったもの、素材が足りなかったもの、資金が足りなかったもの。

 そんな届かなかった発明が、ここには大量に眠っている。この人が、あと少しで完成させられたものを見てしまった

 

「……どうしても続きを考えてしまう」

 

 ロビンが微笑む。

 

「発明家だものね」

 

「ああ、恥ずかしい話、私は何処まで行ってもからくり技師の様だ」

 

 キテレツ斎は苦笑した。兵器そのものを作りたいわけではない。

 人を傷つけるための道具を欲しいわけでもない。ただ、目の前に後少しで完成する技術がある。

 それを見てしまった。ならば、その先を考えたくなる。それが発明家という生き物だった。

 

「…………」

 

 悪魔将軍は何も言わなかった。キテレツ斎が何を考えているのか、理解していた。

 そして悪魔将軍自身も、ここへ来た目的を忘れてはいない。

 

「必要なものを記録しろ」

 

「将軍殿?」

 

「ここにある資料を持ち帰る」

 

 悪魔将軍は周囲を見る。

 

「全てを持ち帰るのは難しい。だから必要なものを選べ」

 

「コピーを取るということですね」

 

「そうだ」

 

 孔明が頷いた。

 

「原本を持ち出せば、研究所から資料が失われたことに気付かれる可能性があります。写しだけならば、いくらか安全でしょう」

 

「じゃあ、必要な資料を選びましょう」

 

 ロビンも動き始める。

 それからしばらくの間、研究所の中は静かな作業場となった。

 設計図を確認する。重要な資料を選別する。

 必要なページを複製する。毒物などの危険な資料についても、ワトソンが必要な情報だけを確認する。

 キテレツ斎は兵器の設計図を中心に選んでいった。

 

「…………」

 

 キテレツ斎は最後まで無言だった。だが、資料をめくる手は止まらなかった。必要な資料のコピーを終える。

 

「これでいいでしょう」

 

 孔明がまとめた紙の束を見る。

 

「かなりの量になりましたな」

 

「それだけ価値のある資料があったということよ」

 

 ワトソンの言葉にロビンが答える。

 

「では、一度船へ戻りましょう」

 

 昆奈門が提案した。

 

「ここに長居する理由もありません」

 

「ああ……色々と有意義に時間を過ごせた」

 

 悪魔将軍が頷く。

 六人は研究所を後にした。外へ出れば、相変わらず雪が降っている。

 来た道を戻り、山を下りる。そして村へ向かった。村へ到着すると、キテレツ斎が突然足を止めた。

 

「少し待ってください」

 

「どうしました?」

 

 昆奈門が振り返る。

 この村にやってきたがあくまでも通り道なだけで、目的地はゼロ・オリジン号だ。

 急に待ったをかけたキテレツ斎に対して昆奈門は疑問を抱いた。

 

「紙が欲しい」

 

「紙?」

 

「ええ」

 

 キテレツ斎は頷いた。

 

「まだまだ資料を記録するのですか?」

 

「違います」

 

 孔明の問いかけにキテレツ斎は首を横に振った。

 

「自分で考えたものを書きたい」

 

 その言葉に一同は黙った。 村の店を訪れ、紙を購入する。大量の紙を見た店主が少し驚いた。

 

「随分と買いますね」

 

「ええ。仕事で使うもので」

 

 キテレツ斎はそれだけ答えた。

 紙を抱え、一行はゼロ・オリジン号へ戻る。船では他の仲間達が待っていた。

 

「おかえりなさい!」

 

 カレンが声を掛ける。

 

「どうだった?」

 

「色々と収穫はありましたよ」

 

 孔明が成果があったとコピーした資料を見せて答える。

 

「ベガパンクの研究資料をかなり確認できたよ……いやぁ、いいもん見れましたよ」

 

「本当!?」

 

「ああ」

 

 ワトソンはいい成果を上げれたとカレンに報告をする。

 しかし、その横をキテレツ斎が無言で通り過ぎていく。

 

「キテレツ斎さん?」

 

 カレンが呼び掛ける。

 

「…………」

 

 反応がない。キテレツ斎は自分の部屋へ向かう。

 そして机の上に、村で買った大量の紙を置いた。椅子に座る。鉛筆を手に取る。

 

「…………」

 

 紙を一枚その中央に一本の線を引く。

 次に歯車を描く。動力機構を描く。エネルギーの流れを描く。そその横に小さな文字で計算式を書く。

 

「…………」

 

 消しゴムを使う。また描く。ベガパンクの設計図を横に置く。

 自分の知識を書き加える。別の紙へ移る。そしてまた描く。時間が経つ。

 外では雪が降り続けている。船が僅かに揺れる。それでもキテレツ斎は顔を上げない。

 

「…………ここをこうして……」

 

 小さく呟く。

 

「いや……これでは負荷が大きすぎる」

 

「ならば……」

 

 別の構造を描く。さらに別の紙へ。そのうち、机の上には紙が次々と増えていった。

 ベガパンクの設計図のコピー。キテレツ斎自身が描いた図面。計算式。素材に関するメモ。動力についての考察。それらが机の上を埋め尽くしていく。

 

「…………」

 

 キテレツ斎は黙々と描き続ける。その顔には、久しく見せていなかった表情があった。

 発明家としての顔。座敷牢の中で諦めかけていた男ではない。自分の知識を使い、新しいものを生み出そうとしている男の顔だった。

 ベガパンクの設計図を参考にする。しかし、そのまま写すわけではない。

 自分の技術を加える。自分ならどうするかを考える。実現不可能と書かれていた部分を見れば、なぜ不可能なのかを考える。

 

「……出来るかもしれない」

 

 キテレツ斎が呟いた。

 

 まだ完成したわけではない。実験もしていない。成功する保証もない。それでも、理論上は可能性が見え始めていた。

 

「…………」

 

 キテレツ斎は再び鉛筆を走らせる。外では雪が降り続けている。

 ゼロ・オリジン号は静かに海に浮かんでいる。船内の誰もがそれぞれの時間を過ごしていた。

 だが、その一室だけは違った。紙に鉛筆を走らせる音が、いつまでも続いていた。

 キテレツ斎はもう、過去を振り返ってはいなかった。ベガパンクが残した実現できなかった発明を前にして一人の発明家として、もう一度、自分の未来を描き始めていた。




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