悪魔超人軍総帥 悪魔将軍   作:アルピ交通事務局

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この作品、なんだかんだで面白いなと思ったのならば感想ください。感想がないと執筆のモチベーションが……


絡繰技師奇妙奇天烈奇々怪々のキテレツ斎!の巻!

 翌朝。

 

 ゼロ・オリジン号の食堂には、朝食の準備が整えられていた。

 

「いただきます!」

 

 カレンが元気よく朝食を食べ始める。

 

「今日は何をするんです?」

 

 ハヤトが尋ねれば、孔明が昨日持ち帰った資料を整理しながら答える。

 

「まずは昨日の資料を整理する必要がありますね。量が量ですから」

 

「私は医療関係の資料をもう少し確認したいですな」

 

 ワトソンもそう言って資料の束を見る。

 

「……あれ?」

 

 カレンが周囲を見回した。

 

「キテレツ斎さんは?」

 

「そういえば、まだ来ていないな」

 

 リグレットもキテレツ斎の姿がないことに気付く。

 普段ならば、食事の時間には遅くとも顔を出す。昨日は研究所から戻ってきてからずっと部屋に籠もっていた。

 

「……まさか少し様子を見てきます」

 

 嫌な予感がする。昨日の様子を思い出せば、何となく理由は想像出来る。

 昆奈門はキテレツ斎の部屋へ向かった。扉を軽く叩く。

 

「キテレツ斎様。朝食の時間です」

 

「…………」

 

 返事がない。

 

「キテレツ斎様?」

 

 もう一度呼び掛ける。やはり返事がない。

 

「失礼します」

 

 昆奈門は扉を開けた。そして、絶句した。

 部屋の中は、昨日とは比べ物にならないほど酷い有様になっていた。

 机の上、床、棚、ベッドの脇。ありとあらゆる所に紙が置かれている。

 ベガパンクの設計図をコピーしたものキテレツ斎自身が描いた図面。それらを何度も書き直した跡。

 

「…………」

 

 昆奈門は机へ近付いた。

 その中心には、キテレツ斎が昨夜描いていた設計図があった。

 

「これは……」

 

 昆奈門は一枚を手に取る。

 専門家ではない。そのため、具体的に何を作ろうとしているのかまでは分からない。

 しかし、それでも分かる。

 

「……凄い」

 

 キテレツ斎が描いた設計図には、無駄がほとんどなかった。

 ベガパンクの設計を参考にしながらも、そのまま真似しているわけではない。構造を簡略化し、必要なエネルギーを減らし、当時の技術でも実現出来る可能性を探っている。

 

「流石はキテレツ斎様」

 

 昆奈門は感心する。座敷牢に閉じ込められていた頃には、こんな顔をすることはなかった。

 諦めていた。自分の発明を誰かに利用されることを恐れ、奇天烈大百科の存在すら隠し、発明家としての人生そのものを終わらせようとしていた。それが今は違う。

 

「……本当に、楽しそうですね」

 

 昆奈門が小さく呟いた。

 

「……うぅ……」

 

「!」

 

 机に突っ伏していたキテレツ斎が僅かに動いた。

 

「キテレツ斎様、起きてください」

 

「…………ん?……昆奈門?」

 

「はい」

 

「どうした?」

 

「どうしたもこうしたも、もう既に朝食の時間です」

 

「………………もう朝か」

 

「もう朝です」

 

「そうか……」

 

 キテレツ斎は窓の外を見る。既に朝になっているぼんやりと呟いた。そして机の上を見る。

 

「……しまった」

 

「何がです?」

 

「途中で寝てしまった」

 

「それは見れば分かります昨日からずっとここで?」

 

「ああ……気付けば時間を忘れていたよ」

 

 昆奈門は頭を抱えたくなった。

 この人は夢中になることがあれば時間というものを簡単に忘れてしまう。そういう人だ。昔よりはマシになってはいるが、それでもあいも変わらず酷い有様だ

 

「とにかく、朝食を食べましょう」

 

「しかし、まだこの設計が」

 

「朝食です…………キテレツ斎様、貴方のそれは悪癖ですよ」

 

「ああ、分かった」

 

 渋々ながらもキテレツ斎は立ち上がった。そのまま昆奈門に連れられて食堂へ向かう。

 

「おはよう」

 

「おっ、来ましたね!」

 

 ハヤトが顔を上げる。

 

「キテレツ斎さん、遅かったですね」

 

「ああ……少し寝てしまってな」

 

「少し?」

 

 ハヤトがキテレツ斎が遅かったことについて聞けば少しと茶を濁そうとするキテレツ斎。昆奈門が呟いた後に少しだけため息を吐いて何があったかを説明した。

 

「昨夜からまともに一睡もせずに設計図を書いていたようです」

 

「ええ!?寝てないんですか!?」

 

「……途中で寝た」

 

「机でですけどね」

 

 昆奈門の言葉にキテレツ斎は何も言い返せなかった。

 

「取りあえず座れ……お前の分の食事は残っている」

 

 リグレットが席に座るように言った。キテレツ斎は席に座る。

 

「では、いただきます」

 

 朝食が始まる。キテレツ斎も箸を手に取った。

 ザウスの料理は今日も極上の料理だった。

 

「…………」

 

 ザウスの料理には何一つ問題は無かった。だがしかし、キテレツ斎はどこか浮かない顔をしている。

 食事をしているものの、視線が時々遠くへ向かう。

 

「……キテレツ斎様」

 

 昆奈門が声を掛ける。

 

「なんだ?」

 

「本来の目的は、お忘れではありませんよね?」

 

「…………」

 

 キテレツ斎の箸が止まった。

 

「バルジモアへ来た目的です」

 

 昆奈門は責めるような口調ではない。

 ただ、確認する。

 

「貴方は、この島へ移住するために来たのです」

 

「…………ああ、分かっている」

 

「本当に?」

 

「分かっているとも」

 

 キテレツ斎はもう一度頷く。

 

「私は、この島で暮らす発明のためだけに来たわけではない」

 

 そう答えたものの、キテレツ斎の表情は晴れなかった。

 悪魔超人軍がバルジモアに来たのは本当に色々な偶然が重なったからだ。だがしかし、バルジモアに行ってくれと頼み込んだのは昆奈門であり、バルジモアにキテレツ斎を住ませる為だった。しかし、そのキテレツ斎が今揺れ動いている。

 

「なぜそんな顔をしている?」

 

 リグレットが尋ねる。

 

「……昨日、あれほどのものを見てしまったからな」

 

 キテレツ斎は呟く。

 

「ベガパンクの研究所にあった発明品。そして、彼が完成させられなかった数々の設計図……私は……久しぶりに、発明家として心から楽しいと思った」

 

「……キテレツ斎さん」

 

 キテレツ斎は自分の手を見る。

 

「また私は、発明に夢中になってしまっているのではないかと……発明品を完成させて色々と使ってほしいという欲求に駆られている」

 

 昆奈門は黙って聞いていた。

 

「だが……それをやめてこの島で細々と暮らしていく……その為に悪魔超人軍に無理を言ってバルジモアへ連れてきてもらった。今の私は発明品を作りたいという科学者としての欲求と平穏を求めている欲求に板挟みだ」

 

 科学者、いや、からくり技師として数々の設計図を見せられた。

 これを見せられた以上はからくり技師としての心が揺れ動かないわけがない。気付けば自分ならばこのシステムをこういう風に改良して居ると設計図を大量に書き上げていく。

 

 自分の技術力が狙われて世界政府に売られかけた経験がある。

 ならばこれからは下手に技術を見せつけることはせずに細々と暮らしていくのが一番でバルジモアがそれに適している。しかしそのバルジモアにはからくり技師であるキテレツ斎にとって宝の山の数々があった。

 

 普通に生きるのか、からくり技師として更に発明をするのかでキテレツ斎は悩んでいた。

 

 

「発明をすることと、ここで暮らすことは両立出来るでしょう」

 

 昆奈門は両方は出来ると主張をする

 

「……そうだな」

 

 ようやく、少しだけ表情が柔らかくなった。

 このバルジモアこそが新しい新天地なんだとキテレツ斎は必死になって割り切ろうとしているが心の中でモヤッとしている。

 

「では、まずは家を探さなければな」

 

 心の中に迷いを持ちながらもキテレツ斎は家を探さなければならないなと作り笑いをした。

 

 

 ※

 

 私と貴虎、リグレット、昆奈門、そしてキテレツ斎の五人は船を下りた。目的地はバルジモアに存在する街の一つだ。

 雪に覆われた大地を歩きながら、私は前方に見えてくる街並みを眺めていた。冬島らしい白銀の景色。

 建物の屋根には雪が積もり、煙突から白い煙が立ち上っている。道を歩く人々は厚手の防寒着に身を包み、商店の前には雪を避けるための屋根が設けられていた。昨日まで私達がいた研究所とは違う。

 あそこには、ベガパンクが残した知識と技術が眠っていた。ここにあるのは、人々が実際に暮らしている生活そのものだ。

 

「……思っていたよりも大きな街ですね」

 

 昆奈門が周囲を見回しながら言った。

 

「ああ」

 

 私は頷いた。

 

「キテレツ斎がここで暮らすなら、生活に必要なものも揃っているだろう」

 

「そうですね」

 

 リグレットも頷く。今回、我々がこの街へ来た理由は単純だ。

 キテレツ斎の住居を探す。それだけだった。世界政府に技術を狙われ、タソガレ王国で座敷牢に閉じ込められていた男。

 悪魔超人軍はキテレツ斎を脱獄させて、これから先はバルジモアで静かに暮らしてもらうつもりだった。本人も、それを望んでいた。少なくとも、昨日までは。

 

「……からくり技師なら、金物屋か機械屋にでも話を通してみるのがいいでしょうな」

 

 昆奈門がキテレツ斎へ話しかけた。

 

「技術を持っている方ですから、店の仕事を手伝いながら生活していただくのが一番自然かと」

 

「そうだな」

 

 私は昆奈門の意見に同意する。キテレツ斎ほどの技術者ならば、バルジモアの職人達も歓迎するだろう。

 何もせずに暮らせというのも、奴にとっては苦痛になるかもしれない。だから、仕事を持つこと自体は悪くない。

 

「…………」

 

 当の本人は、先ほどからほとんど喋っていなかった。

 

「キテレツ斎?」

 

 リグレットが声を掛ける。

 

「どうした?」

 

「……いや」

 

 キテレツ斎は街を眺めながら、困ったような顔をしていた。

 

「何でもない」

 

「何でもない顔ではないだろう」

 

 なんでもないとキテレツ斎は否定するが明らかに浮かない顔をしていることを貴虎が言う。

 

「昨日からずっとそんな顔をしているぞ」

 

「…………」

 

 キテレツ斎は返事をしなかった。

 だが、私は分かっていた。昨日、研究所から戻ってきた後の奴の姿を思い出す。

 大量の紙を買い込んだ。そして一晩中、設計図を描き続けた。ベガパンクが残した設計図を横に置き、自分ならどうするかを考え、何度も書き直していた。あれは単なる研究ではない。自分の手で作りたいという顔だった。

 

「……金物屋にでも話をつける、という話でしたね」

 

 キテレツ斎がぽつりと言った。

 

「ああ」

 

「それでいいと思います」

 

「……本当にそう思っているのか?」

 

 私は問い返した。

 

「…………」

 

 キテレツ斎は黙った。その反応だけで十分だった。本人も自分の中にある迷いを理解している。

 

「嫌なのか?」

 

「いえ」

 

 キテレツ斎は首を横に振った。

 

「バルジモアで暮らすことが嫌なわけではありません」

 

「ならば何を迷っている?」

 

「……それが分からないのです」

 

 キテレツ斎は悩んで壁にぶち当たっていた。

 

「昨日までは、ここで静かに暮らそうと思っていました。金物屋でも機械屋でもいい。からくりを修理したり、道具を作ったり……そうして普通に生きていけばいいと思っていた」

 

「だが?」

 

「ベガパンクの設計図を見てしまった……あれを見てしまったんです」

 

 キテレツ斎は自分の手を見る。

 手には金物細工や筆を使った際に出来るタコが出来ている。

 

「完成しなかった発明が、あれほど大量に残されていた……そして私は……どうすれば完成するのかを考えてしまった」

 

 私は黙ってキテレツ斎を見つめる。

 

「最初はただ読むだけでした。凄い技術だと思った。それだけだった。ですが、一つ見つけた。ベガパンクが実現困難と判断していた箇所があった。そこを見ていたら……」

 

「自分ならどうするか、考えていたか」

 

「ええ」

 

 即答だった。

 キテレツ斎はベガパンクの研究を見て自分ならばどういう風に発明をするかというのをついつい考えてしまった。その結果が無数の設計図だろう。

 

「気が付いたら紙を探していました」

 

「そして一晩中、設計図を書いていたわけですね」

 

 昆奈門がため息を吐く。

 しかしそれでこそキテレツ斎と嫌悪はしていない。

 

「……面目ない。ですが……これを、作ってみたい」

 

 その声は小さかった。だが、はっきりと聞こえた。設計図を書くだけではなく……実際に作ってみたいと

 

「発明家として、からくり技師として、それは極々普通の欲求だと思うのです」

 

 キテレツ斎の言葉を聞いた私は考える。

 キテレツ斎の欲求はその通りだ。設計図を描き、それが本当に動くのか確かめる。

 それは科学者や技術者にとって当然のことだ。だが、キテレツ斎には過去がある。 自分の技術を悪用されることを恐れ、発明家として生きることそのものを諦めた過去が。

 

「……私は、どうすればいいのでしょう」

 

 キテレツ斎が私を見る。

 

「もう一度、発明家として生きたいと思ってしまった」

 

「…………」

 

「しかし、私は平穏に暮らしたいとも思っている」

 

 その二つは矛盾しているように見える。 だが、必ずしもそうではない。問題は、彼が発明をすることではない。

 誰のために、何を作るのか。そこなのだ。我々は街の中をしばらく歩いた。 そして、一軒の機械屋の前で足を止めた。

 

「ここなら、話を聞いてくれるかもしれません」

 

 昆奈門が店を見る。

 

「からくり技師として働けるか、聞いてみましょう」

 

「…………」

 

 キテレツ斎は店を見つめる。しかし、入ろうとはしない。

 

「……少し、待ってください」

 

「なんだ?」

 

 店にキテレツ斎について色々と話をしようとするがリグレットが待ったをかけた。

 いきなりのことでなんなのかと思えばリグレットは説明をする

 

「次の島です。バルジモアには立ち寄る予定はありませんでしたが結果的には来てしまった次の島を示す記録は、何時ごろ溜まる?」

 

「……そういえばそれに関する情報は仕入れていなかったな」

 

 記録指針が次の島の航路を教える為の記録が何時ぐらいに溜まるのかが分かっていない。

 何時もならば孔明が情報収集していたが今回はしていない。キテレツ斎をこのまま置いていくにしても次の島に何時出航する事が出来るかの情報はなければならない。

 

 キテレツ斎の採用云々は置いておき、この島に後どれくらい滞在すれば記録が溜まるのかを聞けば後2日もあれば次の島の航路が示される事が分かった。

 

「二日……」

 

 キテレツ斎が呟く。

 

「私達は二日後にはこの島を出る」

 

「…………将軍……少し、二人で話がしたい」

 

 キテレツ斎が話し合いがしたいと申し出る。私はその表情を見た。覚悟を決めた顔だった。

 

「分かった」

 

 私は頷いた。

 

「一度、船へ戻るぞ」

 

 誰も反対しなかった。全員でゼロ・オリジン号へ戻る。

 船内へ入ると、私はキテレツ斎と二人きりになるため、甲板へ出た。雪が降っている。海面は静かだった。私とキテレツ斎は向かい合う。

 

「それで?」

 

 私は問いかけた。

 

「何を決めた?」

 

 キテレツ斎はしばらく黙っていた。そして懐から一枚の紙を取り出した。

 

「これを見てください」

 

 キテレツ斎が取り出した紙を受け取る。昨日、研究所で見たベガパンクの設計図をベースに作り上げたキテレツ斎の発明品だ。ベガパンクが不可能だったり難点だと指摘している部分をキテレツ斎自身が描いた改良案がある。いくつもの問題点が修正されている。

 

「……これはお前が?」

 

「はい。ですがこれだけではありません」

 キテレツ斎はさらに何枚もの紙を取り出した。一枚、また一枚。次々と設計図が出てくる。 昨夜、一晩で描いたものだ。

 

「ベガパンクが完成させられなかった発明です。私は、それらを見ているうちに、自分ならどうするかを考えてしまった」

 

「だから作りたい?」

 

「はい」

 

 キテレツ斎は設計図を握りしめた。

 

「しかし、問題があります」

 

「何だ?」

 

「私は一人では、これらを作れません」

 

「…………」

 

「道具が足りない。材料も足りない。設備もない。そして何より私一人では、時間が足りない」

 

 私は設計図をもう一度見る。

 最終的にはなにが出来上がるのかは分かるが、そこに至るまでの過程がイマイチ私には分からない。

 

「これを、我々の誰かが作れると思うか?」

 

「……分かりません」

 

「ならば聞こう。悪魔超人軍の中で、これを作れる者はいるか?」

 

 キテレツ斎は首を横に振った。

 

「恐らく、いないでしょう」

 

「恐らくではない。コレを作れる物は悪魔超人軍にはいない」

 

「我々には戦士は多い。医療を担う者もいる。航海、料理、諜報、教育……それぞれに優れた者がいる」

 

 私はキテレツ斎が描いた設計図を見る。

 

「だが、これを一から作れる者はいない」

 

 この船には船大工は乗っていない。

 博識な者や博学な者、冷静沈着な者まで色々と乗ってはいるがそれだけに過ぎない。

 

「タソガレ王国では、お前の技術を利用しようとする者がいた。だからお前は発明することそのものを恐れた」

 

「……はい」

 

「だが、ここでは違う。誰かに利用されるために作る必要はない」

 

「…………」

 

「お前自身が何を作るかを決めればいい」

 

 キテレツ斎は俯いた。長い沈黙。そして頭を下げた。

 

「……将軍」

 

「何だ?」

 

「一つ、お願いがあります」

 

「言ってみろ」

 

 キテレツ斎は立ち上がった。

 その顔には、昨日までの迷いが残っていない。強い意思があった。決意だ。

 

「どうか私を、悪魔超人軍に入れてください」

 

「…………」

 

 私は何も言わなかった。

 キテレツ斎は頭を下げたままだ。

 

「私は兵器を作りたいわけではありません」

 

 静かな声だった。

 

「人を傷つけたいわけでもない。ですが、私は発明をしたい」

 

 その言葉には、もう迷いがなかった。

 

「自分が考えたものを、自分の手で作りたい」

 

「…………」

 

「それを誰かのために使ってもらいたい。それが便利な道具なのか、生活を豊かにする機械なのか……あるいは、誰かを守るために必要なものなのか。それはまだ分かりません。ですが、少なくとも……」

 

 キテレツ斎は自分の設計図を見る。

 

「もう一度、からくり技師として生きてみたい」

 

 この男が求めているのは、単なる所属先ではない。居場所だ。

 発明することを恐れずに済む場所。自分の技術を奪われることを恐れずに済む場所。そして、自分が何を作るのかを自分自身で決められる場所。

 

「……悪魔超人軍に入れば、発明だけをしていられると思うなよ」

 

「分かっています」

 

「戦うことになるかもしれん」

 

「それも分かっています」

 

「世界政府に追われる可」

 

「それについては今さらですよ」

 

 キテレツ斎は一度も言葉を詰まらせなかった。そしてすぐに続けた。

 

「覚悟はしております」

 

「そうか」

 

 私は腕を組む。

 キテレツ斎の覚悟は紛れもなく本物だろう。自分の作った発明品を使ってほしいという考えを持っている……ならばと私は鬼出しの釜を出した。

 

「キテレツ斎よ、タソガレ王国で少し話はしたがこのゼロ・オリジン号は使い捨てるつもりの船だ。この世で最も頑丈な樹である宝樹アダムを用いた船、ファースト・ジェネラル号を何れは私は手に入れる」

 

「船の名前をもう決めているのですね」

 

「ファースト・ジェネラル号と言う名前だけを決めている。キテレツ斎よ、貴様が悪魔超人軍に入りたいと言うのであれば船大工として貴様を歓迎しよう。貴様が船大工としてする仕事は1つ、何れは宝樹アダムを手に入れて1から建設するファースト・ジェネラル号の設計図を作り、船大工の街であるウォーターセブンでファースト・ジェネラル号を作り上げることだ」

 

「船大工……私にとって最高の役職ですね」

 

「ファースト・ジェネラル号の完成後はお前が主体の元でメンテナンスをしろ……悪魔超人軍に入る以上は私の冒険が終わるまで戦って死ぬ以外の死は一切認めない!悪魔超人軍の船大工になるというのであれば手を入れるがいい」

 

「お待ちを」

 

 キテレツ斎は悪魔超人軍の1人になる覚悟が出来ていたのだが昆奈門が待ったをかけた。

 大事なところで水を差すとはどういう了見かと聞こうとするのだがそれよりも先に私に昆奈門は話しかけた。

 

「キテレツ斎様、私めも今日より悪魔超人軍の1人です……将軍殿、キテレツ斎様と同様に私にも任命を」

 

「よかろう……雑渡昆奈門よ、これより貴様を悪魔超人軍偵察兵に任命する……それを引き受け私の冒険を最後まで共にするというのであれば鬼出しの釜に手を入れるがいい」

 

 昆奈門も改めて自分も仲間になるという決意表明をする。

 キテレツ斎は船大工、昆奈門は偵察兵に任命し2人は覚悟を決めたので鬼出しの釜に手を入れ……晴れて正式に悪魔超人軍に入った。




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