悪魔超人軍に、二人の新たな仲間が加わった。
キテレツ斎。そして、雑渡昆奈門。
キテレツ斎は船大工として、昆奈門は偵察兵として、それぞれ悪魔超人軍の一員となった。バルジモアに到着した当初の目的は、キテレツ斎をこの島に住まわせることだった。だが、ベガパンクの研究所で数々の発明品と出会ったことで、キテレツ斎は考えを変えた。
静かに暮らすことを諦めたわけではない。
むしろ、これからは自分が何を作るのかを自分自身で決める。そのために、悪魔超人軍という居場所を選んだのだ。
ゼロ・オリジン号は、バルジモアのとある場所にひっそりと停泊していた。
港ではない。港に堂々と船を停めていれば、目立ってしまう。物資の補給も終わっている。食料、水、その他必要な物資も十分に積み込んだ。後は記録指針の記録が溜まるのを待つだけだった。
「あと一日……」
孔明が記録指針を確認しながら呟いた。
「明日になれば、次の島への航路が示されます」
「ならば、それまで大人しくしていればいい」
悪魔将軍は答えた。
キテレツ斎と昆奈門が正式に仲間になったばかり。バルジモアで余計な騒ぎを起こす必要はない。悪魔超人軍には一つ問題があった。キテレツ斎は、タソガレ王国から脱出した時点で世界政府から追われる立場になっている。バルジモアに到着してから今まで、特に問題は起きていなかった。だが、何時大きな問題が起きるかどうか分かったものではない
「……海軍?」
バルジモアの港に、数隻の海軍船が姿を現した。軍艦が雪の降り積もった港へゆっくりと入ってくる。その船から海兵達が次々と降りてきた。
「全員、周囲を確認しなさい!」
先頭に立っていた女海兵、カトリーヌが指示を出す。
「目的はキテレツ斎!この島での目撃情報があるわ!」
「はい!」
「それと、バルジモアへ向かったという不審な船についても調べます!」
海兵達が散開する。
突然の海軍の来訪に、港にいた住民達は驚いた。
「何事ですか?」
「海軍が何の用だ?」
「この島に何かあったのか?」
住民達が不安そうに顔を見合わせる。
カトリーヌはそんな住民達の反応を見ながら、持っていた資料を確認した。
「不審な船がこのバルジモアにやってきたと情報を掴んだわ」
「船の種類は?」
「詳しいことは分かっていない。ただ、通常の商船ではない可能性があるの」
カトリーヌは手元の資料を見る。
それはキテレツ斎の指名手配書、キテレツ斎は既に賞金首になっていた。
「タソガレ王国を出国した罪人、キテレツ斎がその船に乗っている可能性があるわ」
「キテレツ斎……?」
海兵の1人が出したその名前を聞いたバルジモアの住民の一人が反応した。
「……ああ!」
「知っているのか?」
「知っているも何も……確か、ベガパンクの研究所を探していた男じゃないか?」
「何?」
カトリーヌが顔を上げた。
「本当にキテレツ斎を見たの?」
「いや、名前までは知らなかったんだ。ただ……見覚えがある。その手配書の通りの見た目だ」
「他には?」
「何人か連れがいたな」
「人数は?」
「確か……五人くらいだったと思う」
カトリーヌの表情が変わる。
「五人……」
手配書に載っているがキテレツ斎が他の誰かといる。
バルジモアへ向かった不審な船。タソガレ王国を出国したキテレツ斎。さらに、複数の同行者。話がややこしくなってきているなとカトリーヌは感じる。
「その男はどこへ向かいました?」
「俺達が見た時には、街の裏の方へ歩いていった」
「なるほど……」
カトリーヌは周囲を見回した。港には怪しげな船の姿はない。
それを確認すると、彼女はある結論に至った。
「どこか人目につかない場所に船を隠している可能性があるわ」
「捜索しますか?」
「当然」
海兵の質問にカトリーヌは頷いた。
「キテレツ斎を見つけ、その船も必ず見つけ出すわ」
カトリーヌは海兵を連れてきてキテレツ斎やキテレツ斎が乗ってきたであろう船について調べようとしている。
「これはまずい事になりましたな」
その情報を聞いた昆奈門は、表情を変えた。
街の中で次の島について情報を集めていた彼の耳に、海軍が来たという話が入ってきたのだ。しかも、目的がキテレツ斎だという。
「…………」
昆奈門は周囲を確認する。
海兵達がバルジモアへ上陸しては何処かに船はないのかと探索を続ける。このままここにいるのは危険だ。
「急がねば」
昆奈門は人混みに紛れ、その場から離れた。偵察兵として正式に悪魔超人軍へ加入したばかり。
その初仕事とも言える状況だった。昆奈門はできるだけ海兵達に見つからないように街を抜け、ゼロ・オリジン号へ戻る。
船内へ入ると、すぐに仲間達を探した。
「将軍殿」
甲板にいた悪魔将軍が振り返る。
「どうした?」
「海軍が来ました」
「……そうか」
昆奈門の報告を聞いても悪魔将軍の表情が変わらない。
キテレツ斎を連れ出して出国した以上はキテレツ斎はなにかしらの罪に問われる可能性は大きい。それがたまたま今日だった。ただそれだけの話だ。
「バルジモアの港に軍艦が複数入港しています」
「目的は?」
「キテレツ斎様です。しかしキテレツ斎様を乗せた船、つまりはこのゼロ・オリジン号も探しております。港にゼロ・オリジン号がないことから、どこか別の場所に船を隠していると考えているようです」
「そうか……」
悪魔将軍は腕を組む。
遅かれ早かれこういう展開になるのは分かっていた。大きなリアクションを悪魔将軍はしない。
「こちらの存在が完全に露見したわけではない。しかし、時間の問題だな」
「はい」
昆奈門が頷く。
「どうしますか?」
リグレットが尋ねる。悪魔将軍は記録指針を見る。
まだ記録は溜まりきっていない。後1日あれば記録指針の記録が溜まり、次なる航路が示される。
「物資の補給は終わっている。必要なものも揃っている。ならば、ここを離れる必要はない」
「しかし海軍が迫っていますよ?」
「だからこそ、動かない」
海軍が迫ってきているのならば撃退したらいいのではと孔明は考える。
しかしわざわざ相手にする理由は何処にもない。悪魔将軍は静かに動かないと言った。
「下手に動けば、かえって見つかる」
「では、どうするのです?」
「外に出ない」
単純な答えだった。
「今日一日、可能な限り姿を隠す。記録が溜まり次第、出航する」
「……なるほど」
孔明が頷く。
「海軍が我々の正確な位置を把握していない以上、こちらから姿を見せなければいい。ただし……警戒は怠るな」
「承知しました」
悪魔将軍は万が一だけは想定しておく様に忠告をする。それからゼロ・オリジン号は、静かになった。 甲板に人影はほとんど出さない。船内の明かりも必要最低限。街へ出る者もいない。カレン達にも事情を説明し、今日は船内で大人しく過ごすように伝えた。
「海軍が来たんですか?」
「ああ」
「私達を探しているの?」
「正確にはキテレツ斎さんっすね」
カレンの質問を答えたハヤトがキテレツ斎を見る。
「……なんだか、大変なことになりましたね。申し訳ない」
「気にするな。私達は世間一般では賊の身だ。今更悪党が1人増えたところでだからどうしただ」
キテレツ斎の謝罪を悪魔将軍が即座に遮った
悪魔将軍にとってこれは起こっても何らおかしくないことであり、何かの責任を追及する理由にはならない。
「貴様はもう悪魔超人軍の一員だ。私の冒険の終わりまで最後に共にし見届けるのが悪魔超人軍の使命だ。くだらない理由で逮捕などされるわけにはいかん」
「将軍……」
「それに、あと一日だ」
悪魔将軍は記録指針を見る。
「一日あればこのバルジモアから出ていける」
「そうですね」
悪魔将軍の意見に孔明も頷いた。
ここで無理な戦闘をしたところで、なにも良いことは無い。
「イチイチ海軍を相手にしていたらキリがありませんね」
「では私は少し偵察に出ます」
昆奈門が言った。
「海軍の動きを確認してきます」
「無理はするな」
「承知しています」
昆奈門は再び街へ向かった。 海軍はキテレツ斎が乗ってきたであろう船を探していた。
「こちらにはいません」
「山側も確認しました!」
「港には該当する船なし!」
カトリーヌ達はバルジモアの各所を調べていた。しかし、なかなか見つからない。
カトリーヌは地図を広げた。不審な船がこの島へ向かったという情報は間違いない。それでも見つからない。思わず情報そのものが間違いだったのではと疑いを持つが、それならばキテレツ斎を見たという話は嘘になるので、その間違いは無かったと断定する。「ならば、どこかにいる」 カトリーヌは考える。港にはそれらしい船はない。
しかしキテレツ斎は何処かにやってきていて、何処かの船に乗っている。バルジモアの人間が匿っているというわけでもない。ならば。「港を使わずに船を停泊できる場所があるかもしれません」 海兵の1人が仮設を立てた。
手掛かりはないのでそれで探すのが一番だなと港以外で船を停泊させることが出来そうな場所を探す。 そして、しばらくして。「……あれは?」 一人の海兵が遠くを指差した。 雪の向こう。岩陰に隠れるようにして、何かが見える。「船……あの船は!?」 カトリーヌが目を細めた。白銀の景色に紛れている。だが、確かに人工物だった。
そしてカトリーヌは知っていた。あの船は今まで自分を何度も何度も手古摺らせていた悪魔超人軍の船、ゼロ・オリジン号なのだと。
「行きましょう」 カトリーヌ達は雪道を進む。少しずつ近付く。そして。「間違いありません」 海兵の一人が声を上げた。「あの船です!」 ゼロ・オリジン号。港から離れた場所に停泊していたため、今まで見つからなかった。「船内を調べます!」「待って」 カトリーヌが止める。「……誰かいるわ」 遠くからでも分かる。
船の中には無数の強者の気配があり、ただこのまま上陸したとしても一方的に返り討ちに遭う。中には今まで自分を苦戦させてきた悪魔超人軍の猛者達がいる。慎重になって挑まなければならないと考えるカトリーヌの目が鋭くなる。「来たか……そして例によってカトリーヌか」 ゼロ・オリジン号にいた悪魔超人軍も、海岸線から近付いてくる海軍の姿を確認した。
海軍がやってきていると聞いたので誰かと予想していたがまたまたカトリーヌだった。悪魔将軍は思わずまたかと呟きそうになるがそれをやめる。
「…………」
昆奈門が目を細める。
「将軍殿」
海軍に完全に見つかった。
まだ海軍の軍艦が取り囲むという真似はしてこないのだが、カトリーヌは明らかにゼロ・オリジン号を獲物として見ている。
戦いを避けたいと考えている悪魔将軍だったが流石にここまでくれば戦いは避けようにない。
昆奈門は戦うしかないのだと将軍に進言をしようとするが、将軍もこれ以上は戦わないという方針は不可能だなと判断した。
「相手の数が多いですからね、私にお任せあれ」
船上に悪魔超人軍が出れば望遠鏡で覗いていたカトリーヌは驚く。
賞金首の海賊達がそこにはいる。身を潜めているということは今すぐにでも出航する事が出来るんじゃないのかとカトリーヌは危惧し、部下の海兵を連れてカトリーヌはゼロ・オリジン号の元に向かう。
「そこまでよ!悪魔超人軍!」
「貴様、これで何度目の登場だ……何度も何度も出てきて。少しずつ昇級しながらも」
「海賊はここで倒す」
悪魔将軍がまたお前かと呆れているとカトリーヌはゲネシスドライバーを取り出した。
ゲネシスドライバーを取り出して装着し……マツボックリエナジーロックシードを取り出してゲネシスドライバーに装着した。
「変身!」
『リキッド!マツボックリエナジーアームズ!セイッ!ヨイショッ!……ワッショイ!!』
「……前回、貴虎が戦極ドライバーを破壊したから変えてきたか」
前までは戦極ドライバーを用いて変身していたカトリーヌだったが、前回貴虎に戦極ドライバーを破壊された。
仮面ライダーデュークに変身している男が戦極ドライバーでなくゲネシスドライバーを使っていたことからゲネシスドライバーは既にある程度は量産することが可能になっている。
「申し訳ありませんが、こちらもはいそうですかで負けるつもりはない」
昆奈門はそういうと扇子を取り出した。
扇子を開いてパタパタと扇いでいけば変身しているカトリーヌ以外の海兵達は体が痺れていく。扇子の中に痺れ薬を仕込んでおり、扇ぐと同時に相手に飛ばす。
「霞扇の術……」
「毒だなんて卑怯な」
「ご安心を、ただの痺れ薬ですよ……もっとも、この極寒に冬島で体が痺れて動かないのは苦労するでしょうが」
霞扇の術を前にして倒れていく海兵を見てカトリーヌは卑劣と昆奈門を睨む。
睨まれた昆奈門だったが対して怖いと感じていない。しかし1つだけあることは分かっている
「雑魚は大量に蹴散らしましたが、あの人は別格です……誰か、戦ってください」
「ならば私が行こう」
ゲネシスドライバーとマツボックリエナジーロックシードを使って変身しているカトリーヌ。
昆奈門は真っ向から挑んでも勝つことは出来ない。霞扇の術も変身しているカトリーヌには通じないので応援を要請すれば貴虎は船から降りてきて、戦極ドライバーとメロンロックシードを取り出す
「変身」
『メロンアームズ!天下御免!』
「……私が使っているのは戦極ドライバーじゃなくてゲネシスドライバーよ。貴方が使っている戦極ドライバーよりも性能は遥かに上回るわ」
カトリーヌは無謀な戦いだとマツボックリエナジーアームズの固有武器、影松・真と言う槍を貴虎に向ける。
貴虎は一度、ゲネシスドライバーで変身した仮面ライダーデュークに痛い目に遭わされている。ならばカトリーヌがゲネシスドライバーで変身した仮面ライダー黒影・真を相手にすれば大敗は確実だとカトリーヌは読んでいる。
「武器の性能だけが勝敗を分けるものじゃない……はぁああ!」
貴虎はカトリーヌに向かって攻撃をする。
カトリーヌも影松・真で応戦する。変身ベルトの性能では確かにカトリーヌの方が上回っているが、貴虎は黒影・真に変身しているカトリーヌと互角以上の激闘を繰り広げている。
「っ、なんで……」
ベルトの性能差ではカトリーヌの方が勝っている。
それは確かだったが、斬月に変身しているカトリーヌとの間には差はなかった。
「戦極ドライバーは様々なロックシードを用いて戦う。お前はベルトやロックシードをコロコロと変えていてロックシードに付随される武器を使いこなすことが出来ていない」
カトリーヌは戦極ドライバーを使いこなせるようにと必死になって努力して使いこなせるようになった。
ロックシードで様々な形態に変身する事が出来てはいるが、1つ1つの形態を完璧に使いこなせているわけではない。長い間、メロンアームズで戦っていた貴虎とはそこに大きな差があり、カトリーヌは苦戦していく。
「他にもゲネシスドライバーでなければ変身する事が出来ないロックシードがあるだろう、何故使わない」
「っ……」
マツボックリエナジーアームズに変身しているカトリーヌだったが、他にもまだエナジーロックシードを持っていた。
それを使えば劣勢な状況をひっくり返す事が出来ると貴虎は読んでいるのだが、カトリーヌは使わない。質問に答えず動揺している事から、まだ他のエナジーロックシードを使いこなすことが出来ていないのだろうと見抜き、貴虎は戦極ドライバーのカッティングブレードを2回倒した
『メロンスカッシュ!』
戦極ドライバーからそう音声が鳴れば貴虎はメロンディフェンダーを投げた。
カトリーヌは影松・真で飛んでくるメロンディフェンダーを弾くが次の貴虎のライダーキック、無刃キックを対応する事は出来ずに蹴り飛ばされて変身が解除に追い込まれてしまい、その際にゲネシスドライバーとメロンエナジーロックシードが外れてしまう。
「コイツは貰っていく」
貴虎はゲネシスドライバーとメロンエナジーロックシードを拾い上げた。
カトリーヌは奪われてたまるかと意識を叩き起こそうとするが貴虎から受けた攻撃は重く、体はまともに動かない。
「せめて……」
このままでは全員、このバルジモアの寒さにやられて死んでしまう。
カトリーヌは救援を知らせる簡易的な花火を打ち上げれば意識を失った。
「アレは、救援の……」
貴虎はカトリーヌが打ち上げた花火が救援を知らせる者だと気付く。
直ぐに海兵達が集まってくるのではないのかと警戒をするが、海兵達はカトリーヌ達を回収して一時撤退を選んだ。
「これで心配は無いだろう」
カトリーヌ達が襲撃してきたが、翌日にいきなり他の海兵達が襲撃するという事は無い。
悪魔将軍はそう予見し、その予見が当たっており翌日、未来国バルジモアからなんの問題もなく出航する事が出来た。