流転のベグディアス:Reborn in The Cycle of Reincarnation   作:るろうに2025

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Destiny.8 安全圏

「やっべーなあれ……」

「あんなのが当たったらひとたまりもないぞ、おい……」

 

 爆炎に赤く染まる夜空を前に、誰もが等しく震えていた。

 

 当然と言えば当然ではある。あんな熱線が学校に当たれば、私たちは校舎ごと蒸発して終了だろう。

 

 だが、どうしろというのか。もし職員室で見たロボットが本当に存在するとして、そんなものであの怪獣を倒せるのだろうか?倒して、それからは?全てが五里霧中であった。

 

 そんな中。

 

 キィン……。

 

 再び音が鳴る。

 

 ――こんな状況で……?

 

 私は押し寄せる現状に困惑しながら、皆に遅れる形で教室内にやや駆け足で入った。黒板には案の定、光の文字が書かれていた。

 

 "DESTINY.2:BORDER"

 

 "POPULATION : 36"

 

「ボーダー?」

「境界線……とかそんなんだっけ?」

 

 沙知の質問に不確かな回答で返す。ボーダーは確かに境界線という意味を持つ言葉だ。

 

 でも、境界線って?何と何の?どこかにそんなものがあるのか?

 

 そう考えた時、廊下の方から上履きと床が擦れる音が聞こえた。

 

「はあっ……みんな、はあっ……わたしの言うこと聞かなすぎ……」

 

 その声の主は、千代だった。少し不満そうな顔をしながら私たちを見つめている。

 

「単独行動は危険だってあれほど……」

「ご、ごめん……」

 

 私はどう反応するべきか分からず、申し訳程度に謝罪した。

 

「でも、あの爆発のことが気になって」

「それのことなんだけど……わたし、職員室で見つけちゃったんだ」

 

 千代の声が深刻さを帯びていく。皆が次の言葉を待った。

 

「いい?この街には、境界があるの……」

「境界?」

 

 誰かが小さく反復した。ざわめきが一瞬だけ静まる。

 

 千代は教卓の前まで歩き、少しだけ呼吸を整えてから、黒板に浮かぶ光の文字を指さした。

 

「……たぶん、これと関係ある」

 

 指先が示すのは、青白く光る"DESTINY.2:BORDER"の文字だった。

 

「職員室の中央モニター、あの爆発の後も見てたんだけど、その中に地図があったの」

「地図……?」

 

 私は首を傾げた。千代が唇をギュッと結ぶ。

 

「うん、地図。その地図にね、学校を取り囲むようにぐるっと円が書いてあったの。まるで……壁のように」

 

 教室に小さなどよめきが走る。千代は言葉を続ける。

 

「その線の外側は真っ黒で、ところどころノイズみたいに映像が乱れてた。でも」

 

 千代は一拍置いた。

 

「あの『山』は線の外側にあった」

 

 空気がひやりとするのを感じる。

 

 皆、理解していないのではなく、理解しているからこその静寂が流れた。

 

 それを破ったのは、ある男子だった。

 

「つまりさ……その円の外側にはあんな奴らがゴロゴロいるってことか?」

「違う……、いやそうかもしれないけど、もっと違う意味があると思う」

 

 千代は言葉を一語一句確かめるように発した。

 

「あの円は、安全圏を表しているんだと思う」

「安全圏?」

「うん……円のこっち側はああいう怪獣は出ない……」

「でも、さっき魔物が学校に出たじゃん」

「あれは、文字通りテストだったんじゃないかな……わたしたちを試すための」

 

 その時、私の隣にいた別の男子が声を荒げた。

 

「そんな……そんなことのために翔介は死んだのか!?」

「わたしだって分かんないよ!」

 

 千代は一瞬だけ言葉に詰まり、視線を床に落とした。それから、もう一度ゆっくりと顔を上げる。

 

「わたしだって、あの子の死を正当化したいわけじゃない」

 

 声は震えていない。だが、必死に震えを押し殺しているのが分かった。

 

「でも、あれがテストだったなら……さくらが力を得たこと自体が、その結果なんだと思う」

 

 皆の視線が私に集中する。

 

 あまりにも重たい視線が。

 

「私、そんな力ないよ……だって成り行きで手にしたものだし……」

「さくら!」

 

 千代が叫び声を上げる。

 

「あなたには、あるの!力が、責任が……」

「千代……」

 

 千代の目から涙がこぼれ落ちる。それは、無理をしていることの証拠に感じた。

 

「でも……円は完全じゃないと思う」

「完全じゃ……ない?」

 

 沙知が身を乗り出して聞く。

 

「さっきの爆発の後、円が少し欠けてた。おそらく、爆風で削れたんだと思う」

「じ……じゃあ、あれが続くと……」

「安全圏はなくなる」

 

 千代は、確かな覚悟を持ってそう言った。

 

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