1話 普通の女子高生ありけり
ゲーム内で狐モチーフのアバターを走らせる。時間ギリギリに目力も強まったが、残り10秒を切ってからなんとかクリアーした。
「オッケー」
涼し気なラストショットに、友達の
「彩葉のエイムすっげ〜」「完璧プロじゃん、プロ!」
その言葉を深呼吸しながら聞くと少し鼻が伸びる思いで、ワンルームの部屋で王様になったような余韻をもらう。
「じゃあ今日はもう落ちるね、おやすみ2人とも」
「おやすみ〜」「おやー」
VR世界から現実に戻って、スマコンの視界が草原から生活感のある部屋に切り替わると、目の前のヤチヨ祭壇が揺れて生きているように見えた。
「うお、今日もまぶたの痙攣やば」
2話 母との喧嘩
「あんたはもう音楽やらんのやからしっかり勉強するんや、ええな」
「お母さん、お母さんわたし」
腕を組み、朝からリビングで説教する母親に彩葉は勇気を出す。
「何が言いたいん言うてみいよ」
このままでは勝手に音楽をやめさせられちゃう。お兄ちゃんがいなくても、もうわたしだけで言わなくちゃ!
「わたしデスクトップミュージックをやりたいの。デジタルオーディオワークステーションっていうのが必要で、オーディオインターフェイスも、パソコンはあるから、あっでもボーカロイドっていうのもあってね、それは買わなくちゃいけないんだけど」
「お母さんピコピコのことは分からんよ! もっと国語を勉強してから言いなさい!」
(ちゃんと言えたのに分かんないと手が出る! こんな家出てってやる!)
3話 駆け抜けた上京1年目
バイト先でフォローが完璧な彩葉。
「キャーお皿がー!」「みおちゃん大丈夫!」
数学テスト100点の彩葉。
「酒寄さんまた100点なの!? すごーい!」
「たまたまだよ」
運動会の徒競走で勝つ彩葉。
「これで1年クラス優勝だー!」「酒寄さんかっけー!」
「みんなで頑張ったおかげだって」
ツクヨミ内のKASSENイベント、CRAZY MOON CUPで評価AAの彩葉。
「なんなの帝アキラって! せっかくヤチヨに認知してもらえるかって超超超注目イベントだったのにどうして参加してきたの!? あーあー初心者狩りはんたーい!! プロお断りー!! もーバカバカバカバカ!!」
4話 推し活いろはさん
「ペンライトよし、ウチワよし、光るリストバンドもつけてと」
タブレットをご飯用のテーブルに立たせて、座布団の無い床に直接座る。
「現実も気合い入れて見るからね!」
配信で告知された日から待ち遠しくて、今日のスペクタクルに向けて入念に備えた忙しい日々だった。
「今日のライブ楽しみですね」「はい、緊張しちゃいます」
たまたまライブで席が隣だった人とも感動を共有してあっという間に時間が過ぎ、ヤチヨのライブを見終えたら涙が溢れ叫んだ。
「これもう現代の静御前だろー!! その声と舞の美しさ日本一だよヤチヨー!! 恋ぞつもりて淵となりぬるー!!」
「わかりますー! お返歌くださーい!(アンコール要求)」