21話 切なめ路線
「かぐや姫じゃなさそうだもんね。竹が電柱になるのはおかしいか、竹藪なんかそこら中にあるのに」
「かぐや姫ってどんなお話?」
今が何時だと思ってんだか、さっきはチラ見せしかしてないけど彩葉は寝支度のためにかいつまんで教える。
「急に出てきた姫が色んな人を引っ掻き回したあと月に帰る、めでたしめでたし」
「まとめ方に悪意があるよ!? それは良くない終わらせ方! もっとハッピーにして!」
やかましくてワガママな宇宙人に、意地悪が効いて楽しくなったところで相手にするのをやめる。
「ぬっはっはっは〜、自分でそうしな〜私は眠いの。あー歯磨きしてから寝ないと」
「うーん、うーん、そしたらぁ、毎日通勤通学で見かけてた、気になるけどちょっと入る勇気のなかったお店が、閉店しますって張り紙をしたら潰れる前には1回は行っておこうかな、そうしないと心残りがあるよね、でようやく行って思い出を買うお話くらい幸せな方がいいよね!」
「ふぁからんふぁからん」
22話 霊長目ヒト科ヒト属
「何で分かってくれないの? じゃあ彩葉も一緒に連れてってあげるね! ハッピーエンドに!」
「普通のエンドで結構だし眠いから寝かせて! あぁもう、どこまで歯磨いたかわからなくなる!」
シャコシャコと口内炎が痛みつつ歯磨きをこなす。痛いのを誤魔化すように強めに音を鳴らすと、宇宙人は急に静かになって感じ入るように見てくる。
(どこ見てんだろ……)
眠いからもうどうだっていいやの精神で、ほとんど1人の時の感覚で独り言まで垂れ流す。
「ガラガラガラガラ、ペッ! うぇっ、また口内炎増えてるぅ」
(歯磨きとうがいって人間の証明だ! これは貴重な瞬間が見れたぞ〜!)
23話 VICTORY
「お布団しいといたよ♡」
流し台から振り向くと、宇宙人は正座して布団の上をポンと叩く。
「……まさか一緒に寝る気?」
「だってずっとそうしてきたじゃない!」
「2日しか経ってない……なんなら2日も越えてない、体感1日だぞどうなってんの……」
とりあえず文句は垂れたが、眠気にまかせてお布団に入れば心地良さが訪れる。
「……スヤァ」
「よし彩葉寝た」
お布団の空いてる側をめくって、すすっと忍び込んで一緒に寝る。天井に向かってピースを決めると、宇宙人系美少女は心の中に達成感が溢れた。
(うっほぉー♡ なんなのこの可愛い生き物♡ あったかい♡ いい匂い♡ ちょー綺麗♡ 優勝だ! 優勝だ! 優勝優勝優勝だ!)
24話 説得力
チュンチュン鳴く鳥のさえずりで目を覚ますと、いの1番に気にすべき人物を探す。
「ん? いない……」
布団や見える範囲は日常の部屋に戻っている。
「いないな、疲れすぎるとあんなもの見るんだ」
押し入れにお風呂にベランダを見て回ったが、元気の有り余ってる少女は影も形もない。
「あれ〜、じゃあお金を使ったのは現実じゃない? 今日は何日なんだ、これから三連休の続きがあるってこと? よっしゃ!」
ワンルームの真ん中でしゃがんでガッツポーズを決めると、シンクの引き出しから悪夢の続きが現れる。
「おはよう今日は元気がいいね! それじゃあ手の指先まで力を込めて、そのままぐいっと背筋を伸ばしてみよう! バレリーナからの〜、見てこれつま先を引いてスーッと歩くの! 練習してたの静かで気づかなかったでしょー!」
「ムーンウォーク……!? まさか本当に月から来たの!?」