転生したら虚だった件(勘違い) 作:奴隷貸出中
仮面が割れた。
桃の影響だろう。現在体内に流れる霊力は2種類。
醜鬼の霊力と桃の霊気。
溶け合うことなく混ざり合い流れている。
エネルギーの総量自体は増えたが、増えた分強くなれたかというと微妙。
しかし何故急に仮面が割れたのか。
可能性一。
食えば本人の望む力を授ける桃は、崩玉の劣化版みたいな性能をしているので、取り込む事によって魂の境界が崩れた。
可能性二。
食った者の願いに沿う力を与える桃の力が、人に化ける能力を中途半端に与えた。
可能性三。
今までの進化と同じで見た目が変化し、力がちょっと上がっただけ。現実は非情である。
「口元完全に割れたわね〜」
青羽が感心したように言うが、割れたのは口元だけ。そもそも肉体も大きく変化していない。
所謂成体のアランカルとは程遠い見た目。
アイスリンガー……いや、グランドフィッシャー…………よりはまだ人型。アシッドワイヤーに近いな。
「このまま桃食べてけば人間になるのかしら? だとしたら、おすすめの顔があるわ! 世界一カッコいい顔なんだけどね!」
「それ絶対お前の趣味だろ」
「てか顔って自分で決められるのか?」
顎だけだからなんとも言えないが、どうにも前世の口元と似ている気がする。ますますアシッドワイヤーじみてるな。
「取り敢えず力の制御がしばらくの課題だな」
「力の制御?」
「2つの力がグチャグチャに混じって、上手く操れねぇ。ただ放つ
強くなるより、むしろ弱体化している。とはいえ、波音が歳を取ってから若返りに利用できると考えていたように『桃』は使用者の願いに沿う力を発現しやすいという考察も、全く有り得ないというわけではない。なら桃の力を扱えるようになればあるいは………。
「でもどうやって操るんだよ?」
「古来より己の内に眠る力との向き合い方は決まっている。そう、座禅だ!」
「じゃー暫くアニキとは鍛錬できねぇのか」
「……………アニキ?」
その呼び方にココを見るとココは照れるように頬を染める。
「な、なんだよ。アタシのアニキって言ったの、あんただろ?」
「ふっ。そうだな」
「可愛いわよね、弟妹って。どうして姉や兄が先に生まれるか、知ってる?」
後方腕組み青羽がウンウンと頷きながら訪ねてくる。
「後から生まれる弟妹を守るため」
「貴方とは気が合いそうね」
すっと拳を突き出す青羽。意図を理解した護はコツンと己の拳を当てた。
「なー、アニキ。その力を操ること、本当に役立つのかよ」
「少なくとも、お前等にも役立つだろ」
「アタシ等?」
「お前等も人と醜鬼………桃と鬼の力の2つをその身に宿してんだ」
ならば2つの力の制御は彼女達にも有効な筈だ。或いは、桃の力のみを強め醜鬼の力を浄化できるようになるかもしれない。
「取り敢えず定期的に様子を見に来るが…………リーダーは青羽、お前がやれ」
「私?」
「お前が一番強いしな」
後、こんな状況でも空元気ではなく本気で明るい。
「後ココにはこれをやる」
格闘術の本だ。この前についに初級編を見つけたのだ。
「私達は私達で出来ることをしましょう!」
「え、修行以外に?」
護が精神集中できる場所を求めて静かな場所に向かった翌日。青羽が迷い込んだという広大な力空間にて、青羽が叫ぶ。
人型醜鬼達が抱える問題は複雑。この姿のまま人の世に戻る事は難しいだろう。だが、戻れないにしても、あんな扱いを受ける謂れはない。
「まずは私達の事を暴露してやりましょう。ネットに流れた情報って、一度流れたら消えないって言うしね!」
「どうやって?」
「……………………」
「ここ、ネットに繋がらないし、そもそも私達誰も携帯持ってないわよ?」
「アニキのコレクションにあったけど、もう電源入らないしな」
電池残量が消えたのはココがオフラインでも使えるゲームとかやってたからだけど。
「向こうの世界に戻るしても、
「な、なんとかするのよ!」
つまり、ノープランである。でも頑張って何とかした。情報は、完全に消されてしまったが。
まずは
水と油のように一つにならず、それでも体の中に撹拌したエネルギー。流れを作ることで2つの力に輪郭が生まれる。
もう一つのエネルギーも動かせるが、速度が違う。熟練度というより、肉体への抵抗度、或いはエネルギーそのものの密度が違うのか………。
少なくとも動かせばエネルギーが分けられるが、指先に動かしたところで動きがあるのは数秒。一箇所に動かすのでは駄目。重要なのは動きを途切れぬようにする動き。つまりは循環、すなわち回転。
胡座をかいて、へその前で両手で楕円を作る。所謂法界定印。
己の中に円を意識する。が、弾ける。
ただ放つだけより余程難解。さて、習得にどれだけ時間がかかるか。
グチャリと肉を噛み潰す音が響く。
ボタボタと口から流れる夥しい血が、それが咀嚼音であることを示す。
「ウンウン、大きく育ったね〜」
ケラケラと響く楽しそうな笑い声に、そちらを睨みつける捕食者。大口を空け体動かし、縛り付ける鎖が張り音を立てる。
「相変わらず、神たる僕の言うことも聞かないなぁ。そこまで大きく育てたのは僕のおかげなのにさ」
はぁ、と飽きれる黒い着物を着た美少女。着物、なのだがミニスカだ。人でないことを示すように髪の一部が蛇となっている。
「頑張ったよ。固有進化した醜鬼って、融合による巨大化が出来なくなるから」
隣に立つ褐色肌の露出の多い女にそつ説明する。
「幸いにも大食漢だったからねえ」
醜鬼の肉を直接取り込み、融合と似たような現象を引き起こしていた。彼女達はそこに介入し特殊個体の特異生を維持したまま通常醜鬼の巨大化を混ぜ、デカいだけの風船にならないよう調整した。
本来ならこのような進化はできなかっただろうし、仮に出来てもこの大きさなら魔防隊に見つかり処理されていただろう。通常ならあり得ぬ進化をした醜鬼。それがこの一本角。なかなかの出来だ、と満足する2人の近くの壁………そこに張り付いた一本角が襲いかかり、爆ぜた。
「取り込んだ醜鬼を強化して吐き出す。これも中々面白いよね。元が醜鬼の中でも強い個体だったのにそれを量産できるんだからねえ」
巨大、頑強、怪力。その要素に加えサイズは劣るが、それでも並の特殊個体の醜鬼よりも強い分身を生み出す増殖能力。
魔防隊を壊滅、とまでは行かなくとも一組ぐらいなら潰せるだろう。
「それじゃ、そろそろ放し飼いといこうか」
「いいのか?」
この醜鬼は更なる力を求め、人間よりも醜鬼を襲う。代わりなどいくらでも湧いてくるとは言え、減らされるのは、と思う。
「別にいいでしょ。魔防隊の方がこの子をほっとかないし、僕の目的は別だし」
間違いなく、人類の脅威。
「天然で生まれたあの子と、
それどころか人を守るような動きもする。人と敵対しないくせに力を求めて醜鬼を食らう。通常ならありえない個体。この2体が争い、どちらが生き残るのか。互いを食った時、どれだけ進化するのか。
「楽しみだなぁ」