転生したら虚だった件(勘違い)   作:奴隷貸出中

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再戦

 体内で巡る霊気の回転。2つのエネルギーが分離していく。まるで遠心分離機だ。

 

 その影響は体外にも現れ、地面に刻まれる太極図。しかしバランスが悪く、片方が強く片方が弱い。故に直ぐに不安定となる。

 

 醜鬼としての力と、桃の力。現在醜鬼の力の方が強い。この2つの境界を崩そうにも、現状では桃の力が飲まれて消える。

 

 ならば醜鬼の力を減らしバランスを整えればあるいは。

 

「…………虚閃(セロ)

 

 放たれる赤黒い霊力の塊。

 体内の醜鬼の霊力を減らすも、折角作った流れが消える。改めて流れを作ろうとする前に、流石に今の破壊で醜鬼が驚いて逃げても魔防隊が寄ってくるだろう。

 

 場所を移さねばと立ち上がる。このやり方は駄目だな。と…………

 

「…………!? なんだ!?」

 

 霊力の乱れ故にまともに機能しない探査神経(ペスキス)で感じ取れる膨大な霊力。響く地響きが巨大になっていき、洞窟が()()()()()()

 

 

 

 

「オオオオオオオオオオオ!!」

 

 仇敵の気配を感じ取り走る一本角。巨体に見合わぬ速度で駆け抜け、拳を叩きつけた。

 

「なんだ、此奴!?」

 

 デカい。

 大型醜鬼の二周りは巨大な一本角をその姿に見覚えがあった。

 

「あの時の!!」

 

 初めて現世に出た際に村を襲っていた醜鬼の群れのボス。現在まで含めて、全ての特殊個体の中でも上位に位置する醜鬼。

 

虚閃(セロ)!!」

 

 放たれる霊力の本流。魔都の岩山を消し飛ばす一撃を喰らい、煙に隠れなかった部位はしかし小揺るぎする程度。

 

 煙を突き破り巨大な手が護を握り潰さんと迫る。

 

「チッ!」

 

 あの時より進化している。より巨大に、より強靭に、より凶暴に。

 

「オオオオオオオオオオオ!!!」

「!?」

 

 一本角の先端に大気を揺らすほどの霊圧が収縮し、輝く。臨界に達したかのように放たれる光線が空間を抉る。

 

「………虚閃(セロ)

 

 理屈としては霊気を放つだけなのだから出来なくはないだろうが、まさか自分以外の使い手がいるとは。

 

 もし今のが魔防隊やココ達に向かって放たれていたら……………!

 此奴は、此処で殺す!

 

「オオオオオオオオオオオ!!」

「ゴアアアアアアア!!」

 

 醜鬼の頂点2匹が、魔都にてぶつかり合う。

 

 

 

 

「魔都にて超大型醜鬼出現! 現在特殊醜鬼と戦闘中、特徴から、『二本角』と思われます!」

 

 魔防隊一番組寮にて、真っ先にその報告が届く。その寮が一番近場だったからだ。それでも距離はあるが。

 

 距離があろうと感じる破壊音。確認出来た光線。これまで確認された特徴醜鬼など比較にならぬ規格外の醜鬼。

 

 魔防隊設立から知る彼女でも見たことがない。

 

「行くよ、あれがもしも現世に出たら、最悪だ」

 

 まるで怪獣映画のごとく、文字通り人々が踏み潰されるだろう。それだけの怪物。

 

「二本角はどうします?」

「…………………」

 

 醜鬼を狩る特殊醜鬼。山城総組長から手出し無用とされている個体だ。

 

「敵対するようなら討つよ。人に興味はないみたいだからね」

「押忍!」

 

 

 

「ねてろ!」

 

 ゴォン!! と響く轟音。一本角の巨体が揺らぐ。ナックルウォークの様な姿勢をしていた一本角の拳を起点に大地に亀裂が走った。

 

「チィ!」

 

 硬い。甲皮に罅が入ったが、全体から見れば僅かな傷。これだけの巨体でありながらとんでもない霊力密度。

 

 こんな存在が今まで何処に隠れていた!? 何かの意志の介在を感じずにはいられない。

 

「あ?」

 

 と、一本角の皮膚にめり込む足が()()()()。ゴボリと泡立ち、現れるのは小型の一本角。小型ていっても3メートルはあるが。

 

「オオオッ!!」

「っ!!」

 

 振るわれる拳。小さい分威力はないが、それで並の特殊醜鬼よりも上。それが、()()!!

 

「ヅ、アアア!!」

 

 所詮は餌だ。接近してきた個体両腕をねじ切り頭部を食らう。ゼロ距離で放つ虚閃(セロ)。余波だけで分体が消し飛ぶ。

 

「ごぉ、おお…………!」

 

 一本角の肉体もさすがに大きく削れた。だが…………

 

「ガァオオオオ!!」

「超速再生か!!」

 

 おまけに飛び散った肉体から生まれる分体。一体一体は護よりも弱くとも、数が多い。どれだけ生み出せる!?

 

「グォ!」

 

 ぶん、と体を回転させながら腕振るう。一軒家やよりも巨大な拳が護に叩きつけられる。

 

「ぐ、てぇ…………!」

 

 かなりの距離を吹き飛ばされた。巨体ゆえに一動作の範囲が広く、威力が高い。それでいて硬く、隙のない怪物。と、何かを投げるように腕を振り上げる。

 

「っ!!」

 

 振り注ぐ分体の群れ。あの距離を投げられすべて生存している。これらも並の醜鬼よりも頑強。と…………

 

「しゅ、醜鬼の群!?」

「全部、特殊醜鬼!?」

「!!」

 

 響く人間の声。魔都の奥地に!?

 桃を採取しに来た出張組か!

 

 魔都の奥地に来るだけあり精鋭なのだろうが、この醜鬼は分体でありながらかなりの強さ。

 

「硬い!? 能力が効かない!!」

 

 護を殺しに来たくせに人を見た瞬間襲いかかる。頑強な肉体に攻撃系の能力は効かず、怪力は拘束系の能力を千切り防御系能力に罅を入れる。

 

「ガアアア!!」

 

 護の爪が分体を引き裂く。幸いにも細切れになった分体からまた増える、などということは無いようだ。が、生きてる個体が分裂した。

 

 護に踏みつけられ固定された分裂が伸ばした腕から新たに生まれる分体。防御系能力が破られ尻餅をついていた女に迫り、護が頭部を踏み潰す。

 

「え? え、醜鬼が…………助け………?」

 

 醜鬼を襲い人を助ける醜鬼。その情報が共有されるのは各組長と組長の判断した数名のみ。少なくとも、出張組はその存在を知らず困惑する。

 

「っ!!」

 

 感じ取る莫大な重圧。空が落ちてくるかのような威圧感。迫りくる光弾を護の虚閃(セロ)が弾く。

 

(今の速度…………虚閃(セロ)じゃねえ、虚弾(バラ)だ!)

 

 それでいて咄嗟に放ちチャージが足りなかったとはいえ、護の虚閃(セロ)を掻き消す高威力。そして、虚弾(バラ)なら当然連射可能。

 

「ぐぅ、おお!!」

 

 あの距離からでも人間を確認したのか、次々と撃ち込まれる虚弾(バラ)の嵐。魔防隊隊員達が慌てて逃げ出すが立ちはだかる分体。

 

「ぐっ!!」

 

 そちらに向かいたいが、向かえば虚弾(バラ)を防げない! と…………

 

(なんだ、死装束!?)

 

 白い服を着た爺が分体を切り裂いた。爺、そう、爺。つまり男だ。老人の…………人間の動きではない。

 

「お前達、早く避難しな!」

 

 今度は婆さん。強化系の能力か、こちらも人の動きではないがまあ能力者なら…………いや、強化系? 霊力が爺に流れている。後女子高生? あっちも強いな。おかげで向こうに集中できる!!

 

「オオオオオ!!」

「────!!」

 

 虚閃(セロ)!!

 

 放たれた閃光は光弾を破壊しながら突き進む。が、破壊したのは岩山。一本角の姿が消え、次の瞬間影が差す。

 

(探査神経(ペスキス)をすり抜けた!?)

 

 小山のような巨体でありながら一瞬で移動した一本角が虚弾(バラ)を纏った腕を振り下ろす。

 

「ぐ、ううう!?」

 

 叩きつけられれば避難中の隊員達が消し飛ぶ!

 

 空中に立ったまま受け止めようもする護の足が折れる。腕の骨がひび割れ、背骨が軋む。赤い霊圧に触れた場所がジリジリと焼き焦げていく。

 

「ごああああ!!」

「────!!」

 

 バギッと音を立て足場が砕け、大地に叩きつけられる。轟音と閃光が広がる。

 

 金色形意拳(ケモノチカラ)! 亀!

 

 女子高生が咄嗟に出張組を庇い防御系の力を発動する。直撃ではないただの余波。それでも諸共吹き飛ばされた。

 

 巨大なクレーター。潰れたかのように血をぶちまける仇敵の姿に、一本角は笑う。そのまま踏み潰そうと足を振り下ろし…………足が消し飛んだ。

 

「おおおおおおおおおお!?」

 

 極大の光線。放ったのは、当然護。

 流れでた血を媒介に放つ強力な虚閃(セロ)。全身が泡立ち傷を癒す。それだけに留まらず、肉体は膨れ上がり角が禍々しく伸びる。

 

 伸びた尾が地面を叩いた。

 

「カハァァァァァァッ!!」

 

 口から漏れる燐光。莫大な霊力で傷を癒す超速再生。のみならず、霊力が増大していく。

 

 一本角を睨みつける瞳に知性はなく、理性を捨て去った獣の目を向ける。

 

「オオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

 響くは獣の咆哮。即ち、己の敵を殺すと言う宣誓。2匹の獣が魔都にてぶつかる。ちょうど、その頃…………

 

 

 

「…………何処だ、ここ?」

 

 護が目を覚ましたのは荒野。ただの荒野ではない。果てがすぐ近くに見える。何処かの岩山? それが複数存在し、突き刺さった鳥居から伸びる注連縄で繋がってる。よく見れば浮いてる。恐らく、今この足場も。

 

 魔都の何処かと空を見れば、思わず息を呑む。

 

「……………()?」

 

 雲の隙間から見えるのは青々とした海。どうやら此処は、空に浮かぶ岩の集まり。そして、()()()()()()()()()

 

「なんだよ、ここ…………」

 

 ザリと砂をする感覚が掌に伝わる。違和感。慌てて手を見ると、そこには人の手。顔に触れる。仮面の感触は、ない。

 

「…………前世の、俺?」

 

 水たまりに移った己の姿は、人間の、前世のそれ。元の姿に戻った?

 

「そりゃ、人の魂だからなあ」

「!?」

 

 聞こえた声に振り向くと、そこには醜鬼が一匹。

 人よりも巨大な体躯。鋭い爪。二本の角。

 

 桃の木を背に立つ異形は髑髏の仮面を被り、剥き出しの口が嘲るように笑みを浮かべていた。

 

「…………なんだ、お前」

「なんだはねえだろ、相棒………俺が手に入れるはずだった体を生まれた瞬間奪いやがったのは、テメェだろ」

「………………醜鬼!」

「この姿がそれ以外に見えるか、ああ?」

 

 ずっと疑問だったことが一つ。自分は醜鬼に転生したのか、肉体に憑依したのか。憑依したのなら、その魂はどこに行ったのか。ずっと己の中にいた、それが答えだ。

 

「じゃあ、死ね!!」

「っ!!」

 

 一瞬で移動した醜鬼に殴り飛ばされる。祠を破壊する勢いで吹き飛ぶ護。がは、と空気を吐き出すが、肉体は無事。

 

「っ!!」

 

 迫る醜鬼の爪を避ける。一足で数メートルは距離を取った。見た目こそ人だが、どうやら人間以上の身体能力を宿してるらしい。

 

「…………何のつもりだ」

「何の? 何だ、その質問?」

 

 護の疑問を醜鬼はハッ、と笑い飛ばす。

 

「テメェが人で、俺が醜鬼。世界を隔てていようが、殺し合う理由なんてそれだけで十分なんだよ!! 他に理由なんざいらねぇ、来いよ! 最後に立っていた奴が、この肉体の王だ!!」

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