転生したら虚だった件(勘違い)   作:奴隷貸出中

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鬼面

「さっきの見たぁ? 凄いねぇ。あの醜鬼を改造してなかったら決着ついてたね」

 

 醜鬼同士の殺し合いを眺める4()。魔都に響く霊力の嵐に、黒い着物を着た少女は笑う。

 

「ふむ! 醜鬼としては規格外の力を持っているようね!」

 

 騒がしく応えるのは黒と金の髪をツインテールに結った美少女。

 

「ふん、だが廃れ者共を守る為に力を振るうなど、醜鬼の風上にも置けぬわ!」

 

 そう叫ぶのは筋骨隆々の大男。

 

 と、轟音と共に魔都の大気が震える。

 

「…………大したものだ」

 

 褐色の肌に白い翼と角を持つ美女は目を細める。紫黒の改造醜鬼は元より、紫黒が目をつけていた天然物の自己強化個体。

 

 迸る霊力の総量も、振るわれる剛力、放たれる光。

 

(まるで八雷神の戦いを見ているかのようだ……………)

 

 だが現時点で、紫黒ならば兎も角より戦闘に特化した自分達には劣る。

 

 

 

 

 

 振り下ろした爪が地面を切り裂く。少し低くなった顔面に護が膝を叩き込むも、僅かに後ずさるだけで大したダメージはない。

 

 武器がいる。此処が己の精神世界で、醜鬼が醜鬼の力の化身であるというのなら!

 

「!!」

 

 桃の木から桃一つ千切る。握り潰した桃が形を変え、銅剣がその手に収まった。

 

「ああ、正解だ。そりゃテメェが取り込んだ桃の力の化身さなぁ!」

 

 醜鬼の爪を受け止める。衝撃を関節で殺し地面に逃がし、それでも重い。だが止まった。腹を思い切りけり上げる。

 

「カハッ…………ハッ」

 

 吹き飛ばされながらも笑う醜鬼。その爪が赤く輝く。

 

「──!!」

「月牙天衝」

 

 赤黒い霊圧の刃が浮遊する小島の一つを切り裂いた。

 

「テメェ、何処でその技を!」

「決まってんだろ。てめぇが覚えた時からだ。忘れたのか? 虚閃(セロ)虚弾(バラ)響転(ソニード)も、今の月牙天衝も、テメェに桃の力が混じる前に覚えた技………魂だけの異なる純粋な醜鬼の力………俺の力を利用して覚えた技だろうが、なぁ、人間!!」

 

 放たれる無数の斬撃。回避し、剣に霊力を込める。

 

「月牙天衝!!」

「馬鹿が」

 

 放たれた斬撃に向かい指を向ける醜鬼。赤い光が斬撃を破壊する。虚弾(バラ)だ。一番威力の低い技で相殺された。

 

「借り物の力で戦ってきたてめぇが、俺に勝てる筈ねぇんだよ!」

 

 一瞬で接近し護を踏みつける醜鬼。肋が軋む。息が吸えない。

 

「ぢぃ!」

 

 地面に向かい月牙天衝を放ち小島そのものを破壊する。拘束から逃れ、瓦礫の一つを掴み醜鬼に投げつける。

 

「くだらねえ」

 

 それを片手で破壊する醜鬼。此奴は自分の醜鬼としての部分と言っていた。だが、この力は何だ? 明らかに自分より遥かに強い。

 

「お前、強すぎねえか…………」

「ああ? 何寝言ほざいてやがる。テメェがこれまで、どれだけ醜鬼を喰った? その力の総量が、あんなもののはずかねえだろ」

 

 溢れ出る霊力が周囲の岩を砕く。対面しただけで磨り潰されそうになる。

 

「テメェは怯えてたんだよ、己の力に! 醜鬼の殺人衝動が顔を出すことを恐れて、()()()()()()()()()! 爪を仕舞い、牙を隠し、異形のまま人のフリを続けた! そんなテメェが、俺に勝てるわけがねえんだよ!!」

 

 醜鬼の爪が護の腹を貫く。口から吐き出した血が醜鬼の仮面を汚した。

 

「持てる力の全てを使うこともせず、全力で生きてるふりだけする。あの女ども護る? 人を助ける? それはテメェが、醜鬼(オレ)を否定するための手段だろ。人の姿を手に入れてぇのも、同じ理由だ! 力に手にすると嘯きながら、力に怯え、捨てようとしてるテメェに使われて死ぬなんて、俺はごめんだぜ」

 

 爪が引き抜かれ夥しい血が腹から溢れる。

 

「テメェの力を抑えて死ぬってんなら一人で死にな。そんな腑抜け、俺は主と認めねぇ。テメェを殺して、俺が王になる」

 

 天海反転した世界にて、空へと落ちていく護へ虚閃(セロ)を放とうとする醜鬼。球体状に収縮した霊圧が放たれようとした瞬間、醜鬼が()()()()()()()

 

「がっ!?」

 

 明後日の方向へと放たれる虚閃(セロ)。醜鬼がギロリと睨みつけると、そこには一人の男が立っていた。

 

「テメェか■■■■!! 千五百の産屋の守護者の影が、たった一人を守るってかぁ? なあ、クソオヤジ!」

「……………………」

()()()()()()()が、俺達の間に入ってくんじゃねえよ!!」

 

 男は無言で剣を振るう。

 

「此処は俺達の中だ! 天敵だろうが何だろうが、所詮欠片のテメェが此処で俺に勝てるかよ!」

「……………私達は力だ」

「ああ?」

「醜鬼の魂などと、()()()()()()、影」

「────殺す。この肉体は、俺達だけで良いんだよ!」

 

 

 

 

「────!!」

 

 ビグンと二本角の醜鬼が身を震わせ固まる。蹲り、放たれる威圧感が変動する。

 

「なんだい、何が起こってる………」

 

 一番組組長冥加りうは困惑する。出張組の避難も済み、小型の一本角達を夫と弟子と狩っていたが本体は二本角に任せるしか無かった。その二本角の気が増減を繰り返す。低い時はそれこそ醜鬼以下だが、高い時は組長クラスを遥かに上回る。

 

「オオオオオオオ!!」

 

 隙を晒した二本角を一本角が踏みつける。何度も何度も、今度こそ殺すと言わんばかりに。

 

 

 

 

「……………チッ」

「馬鹿が。言ったろうが、テメェは後から混じった異物。大海に流れた果汁が、海の水の味を変えようなんて、身の程を知らねぇな」

 

 精神世界。男と醜鬼の戦いは、醜鬼が制した。

 まるで元から一つの存在だったとでもいうように、男の体は溶け崩れ醜鬼に取り込まれていく。醜鬼の全身に負った傷から流れる血は岩場を伝い空へと落ち、別の岩に倒れる護へと垂れる。

 

「今度こそ終わりだ」

「……………身体を、取り戻して、お前はどうする」

「決まってんだろ。1000人殺す………ああ、まずはテメェの周りの女達からだな」

「!!」

「今更………手にした力を使わず、手にした力をものにも出来ねぇ。力に怯えるお前に守れるものなんざ、何もねえよ」

 

 爪が、振り下ろされ…………護は剣で弾いた。

 

「……………!」

「……………知らねぇよ」

「………ああ?」

「お前が怖いとか、力に呑まれるとか………知らねぇよ。戦わなきゃならねぇ。醜鬼(お前)がそうするってんなら、他の奴等もそうすんだろ?」

 

 立ち上がる。

 剣を構える。

 敵を見据える。

 

「俺は守るために戦う」

「……………馬鹿が。戦いに理由なんてつけてんじやねえよ! 俺達が求めるのは戦いそのもの! 余計な鞘つけて、剣を鈍らせんな! そんな剣で何を斬る!?」

「決まってんだろ…………(テメェ等)だ」

「──────!!」

 

 醜鬼の腕が切り飛ばされる。

 

「なん、だと…………?」

殺人衝動(醜鬼の本能)………戦いの衝動(俺達の本能)……ああ、全部受け入れてやるよ。お前も人のあり方(おれ)を受け入れろ」

 

 傷口から身体が崩れていく。世界を覆う醜鬼の力が減少し、人の力たる桃の力と均衡を生み出していく。

 

「……………チッ。仕方ねえな………テメェが王だったと認めてやる」

 

 崩れゆく醜鬼の身体の内から現れるのは、護と瓜二つの姿をした人の(かたち)

 

「だが忘れるな! 醜鬼(おれ)はお前だ! お前の傍らに俺はいる! テメェが少しでも隙を晒せば、その喉笛を切り裂き、脳髄を啜り、俺が王となる!」

 

 

 

 

 

「────────!!」

 

 一本角の足元が輝き現れるは太極図。黒の勢力が強い歪な文様は、しかし徐々に黒が縮小し正しく均衡の取れた循環を生み出していく。やがて()()()()()()()()()()()

 

「……オオアアアアアアア!?」

 

 湧き出した膨大な気の柱が一本角の足を消し飛ばす。

 

「な、なんですか………あれ」

 

 大河の氾濫の如き気の奔流に冷や汗を流すのは一番組副組長多々良木乃実。

 

 次期組長と目をつけている彼女が戦慄するほどの気を放つ二本角…………その体に亀裂が走る。

 

 バキバキと亀裂は広がり、陶器のように剥がれ落ち、落ちては砕け、中身が現れる。

 

「……………人間?」

 

 二本角の醜鬼を思わせる鬼面を被った一人の男が佇んでいた。

 

「ガアアアアアアアアア!!」

 

 足を再生させ、無数の分身を生み出し、ただ一つを滅ぼさんと全てを賭ける。相対する醜鬼の王は、故に剣をただ一振り。バチリと紅い紫電がはじける。

 

「月牙天衝!!」

 

 空間を蹂躙する紅の斬光。分体は消し飛び、本体は両断される。

 

 山のような質量を持つ本体が倒れ轟音が響く。瞬殺………能力による相性はあれど、一番組組長と副組長でも手こずったであろう超大型醜鬼を前に、姿を変えた二本角は苦戦どころか戦いらしい戦いを行うまでもなく倒した。

 

「………………………」

「「「!!」」」

 

 視線を向けられ構える冥加夫妻と木乃実。鬼面は、暫し3人を見つめ、唐突に姿が消えた。

 

「木乃実!」

「はい!」

 

 金色形意拳(ケモノチカラ) 犬!

 

 探知能力に優れた型で匂いを追うように気の残滓を追おうとしたが、残滓を感じ取れない。

 

「駄目です」

「そうかい………しかし、こっちは」

 

 りうは超大型醜鬼の死体を見る。彼女の弟子の一人にとって因縁深い醜鬼と似ているが…………いや、特殊醜鬼が大型化したことはない。別個体、と見るべきか?

 

 

 

 

 

「…………」

 

 鬼面は己の仮面に触れる。力を込めた箇所に亀裂が走り、やがて砕けた。

 

 右目と額を覆う一部の仮面を残し他が地面に落ちる。仮面の名残の一部として残った角に、左額に()()()()()()を合わせた2本角。

 

 醜鬼と桃………どちらの氣とも異なる霊気を纏う護は己の掌を見つめる。

 

──人の姿を手に入れてぇのも、同じ理由だ! 力に手にすると嘯きながら、力に怯え、捨てようとしてる

 

「……………捨てねぇよ。俺は、人型醜鬼(彼奴等)も守るって決めてんだ」

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