転生したら虚だった件(勘違い) 作:奴隷貸出中
魔都出現超大型特殊醜鬼報告書
出現日時
20■■年■月■日
被害状況
死者
なし。
重傷人
17名。
内10名脱退希望。
詳細
当該事件は20■■年■月■日午後■■時■■分魔都にて超大型特殊醜鬼(以降対象を乙と記載する)の出現の確認。一番組組長冥加りう、及び副組長多々良木乃実が対応に向かう。
同時刻、鬼面と思われる特殊醜鬼出現。「乙」と戦闘を開始。戦闘中、出張組に遭遇するも過去同様人類よりも醜鬼を優先的に襲う。(この際の醜鬼は「乙」及び月山大井沢事件の中心的醜鬼「一本角」に形態が酷似)。
戦闘中、鬼面が重傷を負った後凶暴化。「乙」と再交戦。
交戦中、鬼面のエネルギー量の超向上及び形態が人類に酷似した物へと変化。「乙」を討伐後、姿を消す。追跡は不可能。
追記
鬼面の戦闘能力は組長級に匹敵、或いは凌駕するものと思われる。
報告者 冥加りう
「ふぅん…………」
報告書に目を通した恋は楽しそうに目を細める。放し飼いにしていた犬が、面白い成長を遂げているようだ。
「そろそろ迎えに行ってあげるべきかしら?」
山城恋……というよりは日本政府の目的の一つである魔都の資源利用のなかには兵力も含まれる。つまりは醜鬼を軍事力として利用するのだ。現状、醜鬼を放逐、戦闘程度にしか利用方法はなかったが、護は他の醜鬼を支配する力を見せた。
しかも現状人に近い形を得たという。男だがそういう特殊な能力者として、反対派を納得させる材料になり得る。
「問題があるとすれば、野を駆け回る喜びを知ったあの子にもう一度首輪を嵌める手間ぐらいね」
そしてそれは容易くなせると彼女は疑わない。なぜなら彼女は山城恋なのだから。
「戻った」
「!? 何者!」
隠れ里に戻ると、当たり前だが誰か認識されずに警戒された。
「って、もしかして護?」
が、感知能力もある青羽が真っ先に気付いた。
「え、アニキ!?」
「うん。結構気配変わったけど、根本は変わらないというか…………護よね?」
「ああ」
「マジか」
ココはあんぐりと護を見つめる。青羽の言葉を聞いていた他の人型醜鬼達も改めて護を見る。
「え、護さん?」
「人になってる……」
「結構良いかも」
「ありよりの大有り!」
「ウチには
元より恩人。それなりに慕ってはいた相手である護が人の形を取り、キャイキャイと黄色い声を上げる。中には恩人とはいえ醜鬼の姿をした護に怯えていた者まで混じってるのを見て、ココは掌返しにムッとした。
「しっかし残念ね。人に化けるなら、私が世界一かっこいい顔を教えてあげたのに」
「前世の顔だこれは」
「あらそうなの。弟ほどじゃないけど、いい男ね」
バシンと背中を叩く青羽。相変わらずブラコンだ。
「取り敢えず、俺がこの姿になったやり方を教える。その前に、俺がいない間に変化は?」
「私達の情報をネットに流してみたわ!」
「……………どうやって?」
「この子の能力が現世と魔都を繋げる能力だったのよ」
あくまで魔都と現世を繋ぐだけで、望んだ場所に行くには魔都なら魔都、現世、魔都と言う順に移動しなくてはならないが。
「
あれもまた、魔都の持つ機能の一つ。醜鬼の………即ち魔都のエネルギーを取り込む力を一度失い、もう一度手に入れた今なら…………。
「……………いけるな」
トン、と
「私の存在意義…………」
「移動手段を持つ奴が数人いるのはありがたいだろ」
片方がいなくても片方が残っていれば避難できるのだから。
「とはいえ、ちゃんと現世に繋がってるかちょっと見てくる必要があるが」
通れば世界を渡る
「…………………久し振りだな」
陰陽寮に捕らえられる前の戦い以来の太陽の光。老若男女、正邪を分け隔てなく平等に照らす陽光を浴びながら改めて己の出た場所を確認する。何処かの家だ。
「ワンワン!」
「ガルル!」
「ん、柴犬に黒柴」
この家のペット…………いや、番犬か。突然現れた護を警戒している。あれ、この犬桃の力持ってないか?
「脅かして悪いな。すぐに出てく………働き者だな」
「クゥ………!」
護に敵意がないことを確認したのか吠えるのをやめた柴犬達を撫でる。そのまま去ろうとすると不意に耳をピンと立て護を足止めするように服の裾を加えた。
「………………知り合いじゃなかったか」
門を蹴破り、或いは塀を飛び越え侵入してくる異国の女達。全員が桃の能力者。
「犬2匹と使用人発見!」
使用人と思われたらしい。
「見せしめにしろ!」
「恨むなら山城恋を恨め!」
「………………山城恋。へぇ」
庇うように護の前に移動した賢い柴犬達の頭を撫でてから立ち上がる。女の一人が銃を撃ってきた。受け止める。
「はずした!?」
「いい狙いだったな」
ポイと受け止めた弾丸を捨てれば女達が動揺する。顔に手を当て、内から溢れる霊気を固め鬼面を作る。一護の虚化と異なり、力の増減はない。だが動揺は深まる。
「先輩方だったか。んじゃ、身の程知らずの此奴等、さっさと締めるか」
次の瞬間黒柴はドーベルマンを思わせる姿に変わり刃物を生やし、柴犬は狼を思わせる姿にかわり鬣を靡かせる。
悲鳴が響いた。
「………………使用人?」
山城恋は聞こえてきた声に首を傾げた。
「じゃあな先輩方」
「クゥン」
「ワン!」
気絶した女達が持っていたカードや金、スマホを奪った護はその場から離れる。
仮面を一時的に出せるように、仮面の名残や角も一時的に隠せるようだ。本当に一時的で、おまけに弱体化するが、人の世に紛れる分には問題ないだろう。
「………人、桃、醜鬼化………見事に何の情報もねえな」
情報は消されたか。ネットを監視する能力者でもいるのだろう。そして、その単語検索したこの端末も知られたと見るべき。すれ違い様にトラックの荷台に投げ入れておく。
次に向かったのはスーパー。さっきの海外の工作員が物資補給に利用していたであろうカードで食料や娯楽用品、ココ用の格闘技の指南書、波音用の化粧品などを買う。そのまま路地裏に移動し魔都へと帰還した。
自分達の存在を公表しようとしたりそれが無意味だったと確かめたり姉ちゃんが現世にいたり、多分現世と魔都を移動する能力者がいるんだろうな。