転生したら虚だった件(勘違い)   作:奴隷貸出中

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次に備えて

「まあ握りつぶされてたな」

「予想はしてたけど、ね!」

 

 自らの髪の毛を纏った青羽の蹴りを躱す護。その背後の地面から顔を出す波音が足を掴もうとするが上に飛び、迫るココを叩き落とす。

 

「くそ、魔防隊の奴等!」

「そういう能力者な魔防隊じゃなく公安とかに所属してんじゃねえの」

 

 ココの背中を踏みつけながら地面に向かい虚弾(バラ)。爆ぜて飛び散る瓦礫の中から波音が転がり出る。

 

「三分ケーカ!」

 

 と、場を見守り感心していた少女が砂時計を見てハッと叫ぶ。護に挑む少女達は即座に意識を攻撃から防御と回避に切り替え…………赤い線が刻まれた。

 

 

 

「…………私の美しい顔に」

「なあなあ、これ結構似合ってねえ?」

「なんで私は肉なのよ!」

 

 赤いマジックで顔に落書きされた三人娘。波音は斜めに大きく、ココは両頬にヒゲのような三本線、青羽は額に肉。

 

「波音は一番鈍いが、能力自体は回避に特化してっから余計な手間はかけない、ココは似合ってる。青羽は、反応がいちいち面白いから」

「この!」

 

 青羽は髪の毛を腕に纏い拳を振るう。人型醜鬼の中でも並外れた身体能力を持つ青羽が大型醜鬼を圧縮する強靭な髪の毛を雑に束ねた拳は、大岩さえ()()砕く。そんな拳を片手で受け止める護。

 

 元より取り込んできた醜鬼の質も数も違う。しかも無意識に抑えていたそれらの力を解放し、さらには醜鬼と桃の力の境界を越えた今の護の実力は頭一つどころではなく飛び抜けている。

 

「ていうか早く私達にも人の姿になる方法教えなさいよ。教えるって言っといて、今日で一ヶ月よ、一ヶ月」

「強くなっといて損はねえからな」

「なんでよ」

「戦うかもしれねえから」

「誰と?」

「お前等と」

 

 厳密には内なる醜鬼と。

 醜鬼の肉体に憑依し、本来の持ち主たる醜鬼が内なる醜鬼かと思っていたがあのおっさん曰くそれは嘘らしい。あれは恐らく醜鬼の力の影だ。

 

 勿論醜鬼の肉体そのものを持っていた護と違い人の体に醜鬼の力が宿った彼女達の中に内なる醜鬼がいるとは限らないが。

 

「因みにアニキの中の醜鬼のアニキはどんだけ強かったんだ?」

「基本的に俺の使える技は俺以上に使える上位互換。ついでに俺は、人の姿に戻されてた」

「でも勝ったのか」

「勝ったよ」

「すっげー!」

 

 ココは大はしゃぎ。護は頭を撫でてやる。

 

「あの、それって相手を強くするだけなのでは?」

「? お前等は桃の力があるだろ」

「……………あ」

 

 波音達の戦い方は桃の力を前提とした戦い方だ。醜鬼としての力しか使ってこなかった護とは前提条件が違う。

 

「心構えがあるとないとでもだいぶ違うしな。お前等が十分な力付けたら、気の分け方を教えてやるよ」

 

 

 

 

 

 

「「出来ない!!」」

「出来ないわね………」

「え、そんなに?」

 

 虚閃(セロ)だの虚弾(バラ)だの教え、醜鬼としての力の使い方も覚えた彼女達だが回転の流れを作るというのがまず難しい。

 

「アニキはどれぐらいで出来たんだよ」

「分離自体は三週間ほどだが、回転自体は初日から出来たぞ」

 

 護は()()()()を再現する才能タイプである。

 

「むむむ…………なんとなく流れは掴めるんだけど………分かれてる、これ?」

「流れの速度が足りねぇんだな」

 

 だから分離しない。循環にも速度が必要なのだ。最初に回転を覚えたのは青羽だが、まだまだ時間がかかりそうだな。

 

「俺はちょっと出る」

「どちらへ?」

 

 主戦力三名が座禅を組み前線から離れる中、護まで出ると聞いて不安そうな少女。

 

「…………友好的だとは思うが念の為鍛えておきたくてな」

 

 脳裏によぎるは内なる醜鬼を僅かに食い止めてくれていた男。色々知ってそうなあの男から聞き出すためにもう一度己の中に潜ろうと思っているのだが、何処まで友好的かは分からない。一護のなかのおっさんだって最初は一護を殺すことになるとか言ってたしな。とはいえ、醜鬼や桃を食っての強化は中の連中を同時に強化する。必要なのは力に依らない技だ。まあ、食うのも並行するけど。

 

 

 

 

 

 

 木乃実多々良は師である冥加りうと共に魔都をランニングしながらパトロールする。人の気配に、醜鬼が地面から飛び出してきた。

 

金色形意拳(ケモノチカラ)

 

 と、虎形を構える木乃実。迫る醜鬼達を宿した虎の力で引き裂こうとしたその瞬間、莫大な気を感じ取る。

 

「っ!!」

「さがりな、木乃実!」

 

 音もなく現れる鬼面。周囲の醜鬼を一瞬で斬り刻む。

 

「……………刀」

 

 先日は一瞬の出来事だったが、やはり獲物を持っているらしい。

 

「あ、えっと…………」

 

 醜鬼を狩る醜鬼、鬼面。その内から現れた男。

 

 醜鬼に化けていたのか、或いは醜鬼が人に化けたのか。敵なのか、味方なのか………。警戒するりうだったが木乃実の方が距離が近い。

 

「あ、その…………ありがとうございます!」

 

 醜鬼を倒してもらった事から木乃実は一先ず頭を下げる。予想外の反応だったのか暫し木乃実を眺める鬼面。

 

「……なんのようだい? 言葉は、通じるんだろう?」

 

 あの時、確かに『げつがてんしょう』という単語を叫んでいた。あれは鳴き声などでなく、明確な言葉であった。

 

「………………」

「!?」

 

 返答はない。無言でりうに向かい刀を振り下ろす。地面が砕けた。

 

「鬼面さん!? 何を!」

「醜鬼は醜鬼ってわけかい!? 仕方ないねぇ!」

 

 白の霊廟!

 

 輝く門が現れる。門が開き、現れる老人。りうの夫にして故人、冥加敏彦。死者を強化し召喚するりうの能力だ。

 

「いくよ、あんた!」

「──────!!」

「っ!!」

 

 鬼面は敏彦へ斬りかかる。今の動き、まさか、最初から狙いは敏彦?

 

 だが、何故? 人間を狙わない鬼面がわざわざ故人を狙う?

 

「──────!!」

「っ!!」

 

 空中に火花が散る。鬼面と敏彦の刀がぶつかったのだ。鬼面は敏彦の剣技に反応してみせた。

 

 そのまま切り合う一人と一匹。

 

 動きは互角。まて、互角?

 強化系能力である木乃実や()()()()()()強化したりうに視認させなかった速度で動く鬼面が?

 

 手を抜いている? 振るわれた一撃も敏彦が弾き、捌ける程度。先程のように地面を割る威力が乗っていない。

 

「!!」

 

 油断なのか、慢心なのか。兎にも角にも、やがて、敏彦の剣が吸い込まれるように鬼面の首へ向かい………皮膚に赤い線一つ刻めなかった。

 

 必殺確信した一撃。残心を怠らぬ敏彦であろうと晒してしまった明確な隙に………しかし鬼面は反撃することなく首に触れ、消えた。

 

「……………に、逃げた? なんだったんでしょう」

 

 

 

 次の日、再び鬼面が現れた。再び敏彦と交戦。()()()()()()()()()()()()を食らうとそのまま退散。

 

 次の日、りうがいないのを確認すると帰った。

 

 ある日有効な手を探るべく白以外の霊廟を発動。鬼面は帰った。

 

 次の日、ある日、ある時は

 

 斬り合う時間は、日に日に増える。

 

 

 

「押忍! こんにちは、鬼面さん!」

 

 此処数日の付き合いですっかり慣れた木乃実が挨拶する。何処か抜けてるところがあると思っていたが人の形をしているとはいえ組長が醜鬼相手に取っていい態度ではない。

 

 鬼面はジッとりうを見つめる。

 

「……………いい加減にしな」

「師匠?」

「うちの旦那をタダで良いように使おうなんて、虫がいいと思わないかい?」

「………………」

 

 その言葉に鬼面が消えて、数秒後に現れる。醜鬼の死体と桃を持って。

 

「え? え?」

「言っておくけど、あたしも旦那も、馴れ合う気はないよ。殺す気でいく」

 

 一ヶ月後。鬼面が初めて敏彦の首に刀を添えた。

 切り落とすことはせず、頭を下げ、鬼面は次の日から訪れることはなかった。

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