転生したら虚だった件(勘違い) 作:奴隷貸出中
己の内に潜る。深く深く沈み、やがて潮の匂いに目を開ける。
天海逆転した世界に浮かぶ岩島。陽光を反射する海に向かい伸びる木々の一つに腰をかける黒い男。
「よお、お早い再会じゃねえか、王」
墨をぶち撒けたかのようドス黒い服を身に纏いながら、その肌は病的に白い。瞳は黒白目に血のように赤い虹彩。容姿は護と瓜二つ。仮面の色は反転している。
「色々浅い考えを巡らせてたみてぇだが、無駄だぜ? 俺はお前の力の影。お前が得た
「……………」
つまりは向こうも剣技を習得している、と。醜鬼、桃に頼らない力として選択したのに力自体が人の力の影響を受けるなど、不公平なものだ。
「不公平なものか。そもそも其奴はお前の力だ………私と同じな」
「おっさん」
社に腰掛けた男。あの時内なる醜鬼を足止めし、しかし呑まれた筈の男だ。復活したらしい。
「生が支配すれば肉が多い、死が支配すれば骨となる。私もそいつもお前の力なれば、お前が必要としている限り消えることはない」
「………………なるほど? で、お前はまた戦うのか?」
警戒しながら内なる醜鬼に尋ねる。
「言っただろう、今はテメェを王と認めてやるってな」
「力は変わらずそこにある。目を逸らせば当然呑まれ、求めるなら応える。我等はただ、力の影でしかない」
そういえば一護の精神世界はおっさんが斬月を抑えていたのだったか。
「俺の場合抑える理由がないから両方いんのか」
「バカ言え、何年も抑え続けた力を一気に解放できるわけねぇだろ。心は力を受け入れても、肉体が力を受け付けてねぇ」
はん、と内なる醜鬼が鼻で笑う。
「たとえ此処でも出せる力に限度がある。超えりゃ肉体だけじゃなく魂も擦り潰れるからな。だから、耐えられるだけ強くなれよ。いずれ俺のものになるんだから」
「渡す気はねぇよ」
ピシッと二人の間の地面が霊圧の震えで罅割れる。力は力………求めれば従うが、怖れば呑み込む………先程の言葉に嘘はないのだろう。
「事を構えねえならそれでいいさ。此処には色々聞きに来ただけだからな」
「「…………………」」
この2人は自分以上に多くを知っている筈だから。そう思って2人を見ると醜鬼は肩を竦める。
「俺は肉体に残った醜鬼の力の影だ。お前以上に知ることなんてそんなにねえよ。そっちの親父に関しちゃ、誰かは知ってるがな」
「何故おっさんに関して………」
「そりゃお前、母様に命じられたからな。追いかけろって」
「母様?」
「今はお前の母でもある」
「その母親ってのは?」
「そりゃお前■■■■様だろ」
「……………?」
聞こえない。斬月のおっさんの場合名前が塗り潰されていたそうだが、この場合は?
「チッ。聞き取れよ…………」
「悲しいな。だが、仕方ないのことだ。言葉には力が宿り、名は意味を持つ。我等の名を知るということは、彼女の子にして我が力を受け継ぐ次なる■になる事を意味する。そうなれば未熟なお前では存在が耐えれない」
だから、存在を守るために名が届かないようになっている、らしい。つまり護が未熟だから。今後どうにかなるものなのか?
「なれよ。テメェは戦いを求めろ。力を求めろ。そのために俺達がいる」
「私達はお前の力だ。お前が扱えきれずとも、扱おうとしてくれるのならば喜んで手を貸そう」
友好的で何よりだ。主人公の中に眠る存在的なキャラはトリコのオーガさんとか斬月(おっさん)とか見習って欲しい。
「とはいえ桃の化身…………
「……………………違う」
違った。浄化の桃だからこれだと思ったのだが。
「魔都がなんなのかとかは聞けるのか?」
「知らねえ。王も家族について知ってても、世界の成り立ちは知らねえだろ」
「…………………そうだな」
「知っている。が、応える意味はない。今のお前に出来ることはないからだ」
まあ、そりゃそうだろう。
「…………桃の力が女にだけ宿る理由は? ん? てか、俺にも宿ってるのか?」
一応桃の力の影たるおっさんがいるわけだし、少なくとも桃の宿すエネルギー自体は宿している。
「『存在の変化』だ」
「んじゃご主人サマに会ったら戻されるのか」
力で護を押さえつけ主を名乗った女は、あの後も格付けと称したリンチを何度か行いその際
「桃の力で手にした炎で焼いた灰を戻す力は、あの娘にはない」
「…………………なるほど」
『肉体を変形させる』能力ならば戻されたのだろうが、存在の変化を止められても変化した結果は残るようだ。というか仮面が割れたの、桃の能力だったのか。もしや力を押さえれば仮面と角を消せるのも能力の一部? しかし、人の形得たのが能力ならば…………。
「……俺、彼奴等に無駄な修行させてる?」
「お前があの時願っていた変化は人に戻ること。人という素体が
「何よりだ…………」
少なくとも人の貌を取り戻す手伝いは出来るらしい。
「変化の速度は?」
「存在そのものを作り替えるの。緩慢たるものだ……私を宿したばかりのお前が同じ事をしても、すぐにその姿にならなかった」
内なる醜鬼を受け入れて気の力を均等にして直ぐに人の形を得る下地が出来ていた結果らしい。
「今は力が必要だ。
「そうか。その時を、待っているぞ、護」
「せいぜい死ぬなよ」
「ああ………………あ、そうだ」
と、ふと思い出したように護は内なる醜鬼と向き合う。
「鍛錬、付き合え。まともな修行相手がいないからな。お前も、剣技を覚えてるんだろ?」
「………………情けねぇ姿晒したら飲み込むぞ」
獰猛に笑う内なる醜鬼。激励でも発破でもなく、それもまた本心なのだろう。力そのものである彼が存分に己を振えるのは、戦いの中でなのだから。
「ああ、それでいい」
護はその笑みに応えるように、同じような笑みを浮かべた。
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