転生したら虚だった件(勘違い) 作:奴隷貸出中
「よぉし! やってやったわ!」
体内の醜鬼の力と桃の力を分けることに成功した。安定もしている。
「で、この後どうするの?」
「醜鬼の力を体外で別の形に収める。俺の場合
「それやって刀を折ったりしたら…………」
「無理だな。力は変わらずそこにある………この刀を消して本来の力を解放することも出来るぞ」
「おお、変身みたい!」
ココが目をキラキラさせる。
まあ、確かにあれは変身だが。
「んじゃ一人ずつやれよ。後、おい………」
「! はぁい」
もともと魔防隊を目指していたという少女がやってくる。陰陽寮から盗んだ術式の研究を担当している少女だ。
「結界頼む」
「はい!」
ペタペタと呪符を地面に張り、陣を描き結界を張る。
「なんで私だけ厳重なのよ」
ココと波音は無事醜鬼の力を体外に切離すことに成功した。因みに護が斬魄刀と呼んだら『魂を斬り離した刀』とあっさり納得してくれた。
最後に青羽なのだが、なぜか護は結界の強化と枚数の増加を提案。扱いの違いに不満を漏らす。
「当たり前だろ。お前、ココと波音…………と言うより他の皆と明確な違い忘れたか?」
「………………………?」
暫く眉間にシワを寄せ考え込み、心当たりがないというように首を傾げる青羽。
「力の暴走だけじゃなく、理性が吹っ飛びそうになってたのはお前だけだ」
それも、何年規模も。一度は魔防隊に
「他は念の為だが、お前は暴走すると俺は確信している」
「………………解ったわよ」
渋々納得した青羽。結界の中に入り座禅する。己の中に意識を向け、醜鬼の力を…………。
「結界開けろ」
「え、あ、はい」
「アニキ?」
不意に護が結界内に入る。同時に、ガクリと糸が切れたように俯く青羽。次の瞬間、膨大な霊圧が結界をドンッ! と震わせた。
青羽が俯いていた顔を上げる。顔の一部が醜鬼を思わせる仮面に隠れていた。かぁ、と開けた口に光が溜まり、放たれる。
「結構強かったな………お前の方は?」
「どれだけ私に似ていても、似ているからこそ! 弟のいない女に姉として負けるわけには行かないわ!」
よく分からないが弟の有無が勝敗を分けたらしい。因みに青羽の中の内なる醜鬼は完全に理性がなく、言葉を発しなかったそうだ。勿論桃の力の化身のおっさんもいない。
「なんであんたの方は喋るのかしら?」
「…………俺が元人間の転生者だから、とか?」
さらに言えば、誰も知らないことだが別の世界からの転生者。内なる世界が魂の世界なら、そこに取り込まれた力に影響があるのかもしれない。
「でも、完全に人の形には戻れないのね」
ココや波音は角が残り、肌の一部が黒いままだ。青羽は角はもともとないから肌の一部だけだが。後片目の色。とはいえ、ちょっとした変装で人のフリをするのは可能だろう。
「物資調達が楽になるな」
「そう言えばお金ってどうしてる?」
「海外の工作員とか、半グレとかから奪ってる」
桃の気配を探り、魔防隊関係以外の場所に一定以上の強さが集まっていればそこは高確率で魔都に侵入し桃を狙う工作員かテロリストだ。
後は人けのない裏路地などを歩いていると絡んでくる桃の能力者は国に申請し桃を食って、そこそこ攻撃的な能力を手にして、しかし魔防隊に入り戦う勇気もなく弱いものいじめをする半グレ。そういう連中は変にプライドがあるから『男にやられた』と言いふらさない。
「桃の能力者と戦う、ね。今なら負ける気しないわね」
桃と醜鬼、2つの力が混ざり合い膨れ上がったココ達。なるほど並の能力者よりは強いだろう。
「だが、青羽は兎も角ココと波音は組長クラスには劣る」
「つまり私は組長クラスってことね!」
「ああ、総組長には大きく劣る」
「……………………」
「個人的な見解だが、魔防隊の組長全員相手にする方が彼奴と戦うよりマシだぞ」
山城恋は他の桃の能力者と隔絶した力がある。
少なくとも護は風舞希9人と戦う方が山城恋一人と戦うより勝率が遥かに高いと考える。いや、組長の中で強さを知ってるのは風舞希と冥加りうだけだが。
「因みにこれが各組長達の能力な」
「何この資料」
「工作員から拝借した」
向こうも場合によっては桃を狙い魔防隊と争うことや、何なら魔防隊を直接狙うつもりのテロリストもいた。
「? 総組長の力、飛行能力ってなってるんだけど」
「ブラフだな。俺ボッコボコにされたし………確か複数の能力を使う………何だったか。万物を………何とかする、宇宙のなんとか』」
「曖昧ね」
「名前が長いんだよ。能力と繋がりもねえし…………」
そういう意味ではココの『
「まあ、名前なんてどうでもいい。要するに、勝ち目は薄いし、そもそも勝つことに意味がねえ」
「なんでよ」
「『人型醜鬼となった者は人間を襲う』って前提をつけられるからだ」
そんなもんテロリストも工作員もそうだろうと言えるが、要するに『人間扱い』をやめる大義名分を政府は手に入れるわけだ。
「次からは死者を出すような実験も平気でするようになるぞ」
「じゃあ…………どうするのよ」
「そりゃ交渉するしかねえよ。まあ、今の状況なら人類を思って〜とか適当なことを言って無視されるだろうが………」
「じゃあどうすんのよ!?」
「簡単だ。向こうが人の未来をと宣うなら、人道的に対応せざるを得ない状況を作る」
「なあ、聞いたかあの噂」
「噂?」
「魔都災害にあった隣の学校の生徒を助けてくれた奴等だよ」
「魔防隊じゃないのか?」
魔都で助けてくれるのは普通に考えて魔防隊だろう。
「それがさ、魔防隊の服じゃ無かったんだ」
「私服だった隊員がたまたまいたとか?」
「いやいや、けど制服ぽかったんだってよ」
制服とは所属を示す。つまり魔防隊以外の組織? 或いは、特別な部隊なのか。
「写真も…………あれ、おかしいな」
URLリンクを確認しても目的の画像がない。しかし人の口に戸は建てられない。
「け、けど本当なんだよ! 仮面被った連中が醜鬼を倒してくれたんだって!」
「あ、それ俺も聞いた。なんか、他の醜鬼を操ってたって戦ってたって」
「なんだそれ、俺が聞いた話では………」
「ええ、私は……」
噂は広がる。ネットに流れ、しかし消え、それでも人の口で広がる。魔防隊以外にも魔都災害から人を助けてくれる何者か達がいると。
「私、その人達の名前聞いたの…………」
「…………
全員漏れなく仮面を被った白装束の集団。醜鬼と戦えることから桃の能力者だろう。男の目撃証言もあるが………。
「そのような集団が野放しになっているのを、山城総組長はどうお考えなのですか?」
「しかし人を助けていると………」
「緊急時の能力使用ならば緊急避難の範疇でしょう。しかし彼女達は組織だって活動しています。これは明確な法律違反!」
「それならば、責任は能力犯罪対策課にあるのでは?」
山城恋に責任を押し付け操りたい者、山城恋に心酔する者と、同じ国に所属する人間でありながら言い合う者達を尻目に恋は試料に目を通す。
仮面を被った集団…………その一人の特徴は一番組の報告にあった彼に告示している。さらに言えば、恋の実家を襲ったテロリスト達の証言にあった覚えのない使用人とも。
つまりは『彼』が関わっている。
「能力は強力。拘束よりも、奉仕活動をさせたほうが良いのでは?」
「まあ、人に危害を加えたわけではないですからね」
気付けば捕まえた後の話に移行している。
「醜鬼を操ったという報告も気になりますね。醜鬼を軍事利用できれば………」
「………………………」
取らぬ狸の皮算用。しかし山城恋はそれを咎めようとは思えない。なぜなら、彼女達が皮算用をする理由はただ一つ、山城恋がいるからなのだから。
魔都災害。
今宵も一人の人間が迷い込み、醜鬼に襲われた。
「………………なんだ、相変わらず働き者だな羽前京香」
醜鬼の肉を食いながら、護は呟く。
7番隊組長羽前京香。能力は醜鬼を支配する『
「魔都で盛るとか……………本気か彼奴等」
まあ周りにいた醜鬼は処理を命じておいたが。
「おう、戻ったか………」
足音をあまり立てずに戻ってきた特殊個体。
200センチほどで、前傾姿勢で腕の長い通常醜鬼に比べ直立二足歩行。武者鎧を思わせる外骨格を持つ、護の相方である
「戻るぞ。今回は魔防隊の方が早かった」
と、背を向けると背後の地面から現れる巨大醜鬼。紅月が刀を抜こうとして、慌てて飛び退く。紅の雷が大型醜鬼を焼き尽くしたのだ。
「……………ほとんど炭だけど、食うか?」
「……………………」
紅月は首を振った。