転生したら虚だった件(勘違い) 作:奴隷貸出中
醜鬼を操る集団、
メンバー全員が仮面で顔を隠し、白装束に身を包んだ集団。
正体不明。魔都で死んだ魔防隊の怨霊とも、魔防隊とは異なる国の秘密組織とも、外国の工作員とも言われている。
「え、実在してるんですか? 都市伝説じゃなくて?」
「ああ。奴等は確かに存在している」
和倉優希。つい先日魔都災害に巻き込まれ、切り抜けるために京香の能力である『
「桃の能力を無断で使う無法集団。醜鬼を操る力を持つ奴等を魔防隊だけでなく、各国の工作員が狙い、しかし未だ一人も捕まえられない」
「な、何故」
「単純に、強い。特に鬼の面を被ったリーダー格と思われる
「………………
「ああ、片方は男と言われている………」
今の世界が女尊男卑に傾いた原因である女しか能力を得られない、という事実を否定するように数多の能力者を返り討ちにする男。魔防隊相手には逃げて、工作員は手足をへし折って魔防隊の寮近くに捨てていく。
「なんか、魔都の影で動く秘密組織みたいですね」
「ね〜、かっこいいよね〜」
優希の言葉に組員の駿河朱々が能天気は事を言う。
「ちょっと、人助けしてようと違法なのよ」
それを咎めるのは副組長の東日万凛。
「力は規律の下に振るわれるべきよ。守れないなら、それは犯罪者」
「かったいな〜。ねいっちはどう思う〜?」
「ふぇ!? え、えっと…………魔都災害による行方不明者が激減したのは、確かですね」
話を振られた大川村寧はあわあはと狼狽しながらも、己の意見を口にする。実は彼女の両親は魔都災害にて行方不明になっている。そんな彼女が行方不明者が減って嬉しそうにしていれば、日万凛も言葉に詰まる。
「だが出会えば捕らえる。それが日本政府、および魔防隊の方針だ」
逃げられてるけどな。
「何より、奴等は信用出来ん………」
そう呟く京香の目に宿る炎は、使命からくる者ではなかった。
7番組寮から南21キロ地点。巨大なクレーターのようなものが出現し、そこに大量の醜鬼が集まっていた。
その地点から出ようともせず、まるで巣のようだと千里眼を持つ寧が報告した。
「こんなところに人間が迷い込んだら………早くやりやりましょう」
「まだ突っ込むなよ。私の合図を待て」
京香の能力で変身した優希は直ぐにでも飛び出そうと準備しているが京香によって止められる。
「7番組の必勝連係で壊滅させる」
まずは朱々が
痛手を負った醜鬼達を日万凛の体を武器に変形させる
醜鬼はたまらず合体し巨大化する。その巨大醜鬼を叩けば一匹一匹潰すより早い。
「醜鬼共は強靭だが戦い方が単調だ。このやり方でいけば私達は負けない」
と、その時だった。素早い何かが巨大醜鬼へ向かい、巨大醜鬼の上半身が弾け飛ぶ。
「いい!?」
圧倒的な力。振るったのは、長い一本角を持つ醜鬼。
「彼奴は!」
「はぁい、パーティーに混ざりにきたわ」
京香が目を見開く中、一本角の背に乗った女が朗らか声で手を振る。顔の上半分を隠す仮面をつけ、口元は笑っている。
「
「え、嘘、本物!?」
朱々も話に聞くだけで姿を見るのは初めてな無許可で魔都に入り醜鬼を狩る無法者。どうするべきか迷う彼女と対照的に、日万凛の動きは迅速。
「動かないで!」
「ん?」
「貴方達には捕縛命令が出ている。大人しく投降するなら痛い目見なくて済むわ」
「………………ん〜。それ、捕まった後痛い思いするから同じじゃないかしら?」
フッと女の姿が消える。次の瞬間、日万凛は地面に叩きつけられた。
「ひまりん!?」
「腕変えてるってことは強化系じゃないんでしょ? 結構強めに叩きつけたから、無理しないほうがいいわよ〜」
瞬間移動? 或いは、高速移動?
どちらにしろ、醜鬼から離れた今なら! と朱々が仮面の女に向かい蹴りを放つ。日万凛を巻き込まないよう僅かに地面から浮かせた蹴り。
「────」
女は片手を突き出し、乗用車のような朱々の足がぶつかり弾かれる。
「んな!?」
弾かれたのは朱々。バランスを崩し大きな音を立てて倒れる。
「言っとくけど私は強いわよ〜? そんな事よりさ………」
「私の弟知らない? 特徴は世界で一番イケメンなんだけど」
と、懐から桃を取り出す女。一人一つが限界のはずの桃をシャクリと喰らう。
「私の弟はねぇ、小さい頃からお姉ちゃんっ子でよく後をついてきたわ。将来は私と結婚するとか昔は毎日言ってたもの。それでも少し大きくなるとやんちゃになってきて……でもそんな弟をビシって叱りつけるのもまた楽しい日々なわけよ」
弟がどうとか一人で楽しそうに騒ぐ仮面の女。
「顔も最高の美男子だけど家事もどんどん上手くなっていってね、飴と鞭で鍛え甲斐があったわ。本当にどこに出しても恥ずかしくない弟な──」
「オオオオオオオオオ!!」
と、女の声が巨大醜鬼の咆哮に掻き消される。仮面の女はギョロリと巨大醜鬼を睨みつけた。
「今、私が………弟について話してるでしょ!」
髪が伸び蠢き巨大醜鬼を包み込み圧殺。数十メートルある巨人の上半身は髪の中でスイカの如きサイズに圧縮される。一本角の醜鬼に食わせた。
「オヤツよ」
仲間じゃないのか? いや、仲間だから食わせて強化した?
「……………5月11日を、知っているか?」
「?」
「貴様の駆る一本角が、私の故郷を滅ぼした日だ!」
「故郷、一本角…………………ああ、彼奴が初めて現世を出た時の話ね! ちょっとだけ聞いたけど、それが……」
ギィンと響く金属音。京香の振るった刀を女が
「っ………! あら………」
切れていた。女は流れた血を舐め取る。
「やるじゃない。羽前京香……隷属した醜鬼に乗ってる際に強化される、なんて情報はなかったけど………素の力? あなた、本当に人間?」
「貴様に言われたくない!」
醜鬼を操る力は別の桃の力を借りてるとしても、髪の操作に体の硬化………桃を更に食うなど大凡人間とは思えない。
「酷いじゃない。けど、口喧嘩なら負けないわよ!」
ガパ、と口を開ける。その口内が輝き、京香は長年の経験から即座に上に飛ぶ。女の口から光線が放たれ優希の背中が触れていないのにチリチリと焼ける。
「っ! ぐ、ああああ!!」
優希は一本角と女に向かい殴り掛かり、一本角も優希へと拳を振るう。
「ぐっ!!」
京香が乗っていないからか何時もより力が出ずに吹き飛ばされる優希。
「醜鬼対決は私の勝ちね。そこそこ強そうだし、オヤツにピッタリ!」
女の髪が伸び優希へと迫り………止まる。
「…………醜鬼じゃない………………え? 優希?」
「……………え?」
何故か固まった女へ京香が刀を振るうも身を捩り回避する。
「…………そんな事が」
バシバシと一本角の背を叩くと一本角はクレーターの上部へと一足で跳ぶ。
「貴様等ぁ! 背を向けるのか!」
京香の叫びに応えず背を向け逃走する一本角と仮面の女。その姿に歯が砕けんばかりに歯軋りする京香。
「いいだろう、逃げる村人を襲った報いだ。同じ目に合わせてやる、優希!!」
背中から斬りかからんと優希を呼ぶ京香。しかし優希が来ない。
「何をしている、優希! 追う──」
振り返り、漸く視界にはいる襲われた組員と彼女達へ襲いかかる醜鬼と戦う優希。
「大丈夫か、朱々ちゃん!」
「う、うん………」
一本角の姿が見えなくなっていく。それを目で追ってしまう自分を殴りつけた京香。
「優希! 朱々と日万凛の安全を確保した後、残った醜鬼を殲滅する!」
「はい!」
その瞳には先程まで宿っていた暗い炎は、もう宿っていなかった。
「で、弟の気配を感じたから魔防隊の前にわざわざ姿現して、交戦したと」
「喧嘩売られたのよ。仕方ないじゃない、弟が魔都災害に巻き込まれたかと思って焦ってたのよ」
逆さ吊りにされた青羽は私悪くないもん、の一点張り。
「まあ、逃走の際の戦闘ぐらいならよくあるがなぁ…………はぁ」
コツコツ積み上げてきた実績も、たった一度の敵対であっさり無になる程度には、自分は怪しい無法集団なのだ。
「……………悪かったわよ」
青羽も素直に反省。
「でも、直接戦って分かったわ。組長恐れるに足らず! やっぱり陰陽寮に………」
「勝つことに意味はねえと言ったぞ。人間に戻れたところで人間の生活に戻して貰えると思うのか?」
「うぐ…………」
国が運営する研究施設の襲撃などという明確な犯罪行為。確かにされるだけの理由があるとも言えるが、国からすれば
「敵対は愚策。むしろ利用価値があると思われる程度が丁度いいんだよ。実際、醜鬼を操れるってのは向こうからしても欲しい力だからなあ………」
ただし絶対軍事利用される。ココの様な幼い少女も含めてそうだろう。何せ醜鬼を従えるには一定以上の強さも必要で、それを持つ者は少ない。
「でもなんであの子醜鬼みたいな姿に………」
「羽前京香の能力だな。奴隷にした生物の力を引き出す。スペックで醜鬼に劣る人間のほうが醜鬼使役するより強いの考えると、醜鬼と能力の相性が悪かったのかお前の弟が特別なのか…」
「ああ、能力ね! 能力!? え、あの子奴隷にされてるの!? あの女!!」
ぶっ殺してやるぅ! と叫ぶ青羽に護はしまった、と己の言動が早まったことを悟った。