転生したら虚だった件(勘違い) 作:奴隷貸出中
鍛える。出くわす。倒して喰う。
力を付ける。次を倒して喰う。力が付く。
見つける。助ける。倒す。喰らう。強くなる。
戦う。倒す。喰う。強くなる。戦う。倒す。喰らう。戦う。倒す。喰らう。助ける。喰らう。強くなる。戦う。倒す。喰らう。
明確な天敵が現れたからか、変化が現れ始める。魔都に弱肉強食の
共食いを行わなかった特殊個体の中に共食いを行い更なる力を付ける個体が増え始めたのだ。
率先して同族を襲う特異個体達。されど人を襲う本能は変わらず、故に彼等を狩る者達を苦戦させながらも数はそこまで増えることは無い。
本能的に人の世を目指すから、隠れ潜み育つ個体が少ないのだ。そして、偶然人に逢うことなく育った個体を率先して狙う存在も居る。
「げふ…………」
4本の腕に、戦利品であろうカマキリの鎌や巨大な角を持つ頭蓋骨等を装備した特異個体との戦闘に勝利しその肉体を食らう。
この数年でその姿は大きく変化した。
角は伸び、ねじ曲がり前に突き出る。皮膚は何時かの一本角のように甲殻を生成することはなくそのものが鎧のような硬さを得る。柔軟性と防御力の秘訣はその身に宿る妖気。
本来構造的に自重を支えられる筈のない大型醜鬼が巨体に見合わぬ速度で走るのと同じ。その身に宿るエネルギーが肉体をより強固にするのだ。
特にその醜鬼は例外的だ。本来なら大型醜鬼となるだけの同胞を喰らいながらも、その身の丈は通常個体より二回りほど大きい程度。内包したエネルギーに対して矮躯な巨体全身を満たす高密度なエネルギーがその身の頑強さの正体。
「ゴオオオオオ!!」
「…………!!」
地面に潜む全ての醜鬼が備えた力で地の中を泳ぎながら現れた巨大なワーム型の醜鬼。共食いの味を覚えた同族の内一体。
その圧倒的な質量差で多くの同胞を叩き潰し食らってきた。今日も苦もなく食らう。そう思っていた………。
「!?」
叩き付けた尾が受け止められた。触れた瞬間理解した、彼我の圧倒的な質量差。自分より小さな姿に擬態した、自分以上の超大型がその力を凝縮している。
逃げようと足掻くが掴まれた尾は動かない。次の瞬間、ワーム型の醜鬼の身体が持ち上がる。
轟音を立て地面に叩きつけられた醜鬼。顔を上げ敵を睨もうとした瞬間、視界の半分が消える。続いて、激痛。
「グアアアアアアアア!?」
「…………ごるる」
グチャガリ、バリボリ。クチャ、ゴクン!
己の一部を食われ恐怖に震えるワーム型。しかし既に相手はこちらを獲物と定めた。身の程知らずにも強者に挑んだ弱者が強者に食われる。今の魔都を支配する弱肉強食の
「「──────!!」」
空間に突如空いた黒い穴。魔都と現世を繋ぐ
「醜鬼だあああ!?」
道路のど真ん中に現れた
「ぐるあああ!!」
二本角の醜鬼が後頭部を掴み叩き潰す。
鬼面の醜鬼。その身に他の特異個体から剥ぎ取った毛皮や甲殻を纏う鬼の武士。
「おおおおお!!」
振るう得物は巨大な樹木のような、それでいて鋼鉄の体を持っていた醜鬼の死骸から削り作られた木刀。人外の膂力で振るわれた一撃が醜鬼の群を引き裂く。
「おおお、おおお!!」
「あああ!!」
「すぅ………ごはあああああ!!」
責め立てるように叫ぶ醜鬼共をただの一喝で黙らせる。醜鬼は自分より強い醜鬼に従うことがあるのだ。無論、人を襲うななんて存在理由を真っ向から否定するような命令を守らせるにはまずは相応に実力差を文字通り叩き込む必要があるが、一次的に動きを止めるには十分で、一瞬もあれば十分。
アスファルトが砕け散る。疾風となり駆け抜ける二本角が走り抜け、醜鬼達が爆散していく。
ズガガガと地面を削りながら急制動。吹き荒れる深緑の血風の中で睨み合う2匹の特異個体の醜鬼。
「グギャアアアア!!」
ワーム型は恐怖からか、或いは怒りか大気を震わす雄叫びを上げ近くにあった車を尾で叩き二本角に向かい飛ばす。
「────!!」
叩き切ろうとした二本角はしかし中に残っている人間に気付き木刀を捨て慌てて受け止める。衝撃を逃がすように関節を曲げ車をそっと降ろすと歪み開かなくなった扉を破壊する。
「ひ、ひぃ! 助け、この子だけは……!」
「がぁ!」
「え?」
「がああ!!」
子供を連れてあっちへいけとでもいうように向こうを指さす二本角。その姿を見つめるワーム型の醜鬼の目が仮面のような眼窩の奥で醜悪に歪む。
「バハァ!」
吐き出される青黒い液体。能力ではなく消費する肉体の機能。素早い相手に意味をなさぬ故に使わなかったワーム型の奥の手。
「!!」
車の中の人間達を護るように覆い被さる二本角。液体に触れた場所がジュオオオと腐臭を放ちながら腐る。
「がああああ!!」
追撃と尾を叩きつけるワーム型。その巨体は本来ならただ叩きつけるだけで強力な武器となるだ。無論ただの一撃であの怪物を倒せるとは思っていない。何度も何度も巨体から繰り出される一撃を叩きつける。
ミサイルを何度も撃ち込むかのような轟音と衝撃。まともに食らえば二本角と言えどただでは済まない。
「あ、あぁ…………なんで…………」
四肢は地面に沈み掛け、それでも決して折れることなく耐えきった二本角と地面の隙間で我が子を抱える父親。
そのまま叩き潰そうとするワーム型だったが、その尾が弾け飛ぶ。
「────!?」
「九番隊現着。未確認の特異個体と…………個体名『鬼面』を確認………」
肉感的な体を持つ女は十文字槍を構える美女。
「………やはり鬼面は共食いよりも人類の保護を優先する個体のようです」
「ガアアアアアアアア!!」
鬼面と呼ばれた醜鬼に庇われている親子を見て報告する女に向かい迫るワーム型。槍が閃く。
一瞬。
刹那。
閃く一撃がワーム型の醜鬼の首を打ち抜いた。
轟音を立て首を失った身体が倒れる。切断面から溢れた消化液が立てる悪臭に顔を歪めながら女は鬼面に近付く。
「…………言葉が通じるかわからないけど、その人達を保護させてくれるかしら」
「……………………」
その言葉に体を横にずらし倒れる鬼面。相当無茶をしていたのか胸が上下するだけで立ち上がらない。
「お、鬼さん…………」
娘を抱える父親が恐る恐る声をかける。その手が持ち上がり女は警戒し槍を構えるが人など殺せそうもない弱々しい腕は父親の肩をそっと叩く。その視線が向くのは抱えられた娘。
「……………あり、ありがとう、ございました」
「……………がぁ」
ドサリとその腕が地面に落ちる。
目を覚ます。しめ縄に腕を釣られ、地面は窪み縁にはよく分からない文字。角に石柱。囲むように伸びるしめ縄。
「…………目が覚めたか」
目の前に立つのは巫女服姿の老婆。
「………………………………まずは感謝を。お前にどのような意図があったにせよ、お前は人を救ってくれた。それには、本当に感謝している」
「…………がぅ」
「………やはり言葉を理解しておるのか」
「が、ぎゃう。ぐがが」
「もしやお前も………いや、桃とは別。その身は確かに醜鬼でしかない」
独人何やらブツブツ呟く老婆。鬼面は何が何だかと首を傾げる。
「文字は書けるか?」
「ごう………」
特異個体第45号。名称鬼面。
形態は異なるが2本の角に同族喰らいと人を護る特徴から
北西にて起きた魔都災害にて再び現世に出現。前回同様人を護る行動を見せ、大型特異個体との戦闘により負傷。
自身の命よりも人類保護を優先する極めて特異な生態を確認。
高い知能を持ち言語を理解、筆談による意思疎通が可能。人型醜鬼の可能性を考慮し検査するが汎ゆる検査を通しても純正の醜鬼。人であった可能性など微塵もない。故にこそ、人を護る習性を解明すれば『醜鬼の運用』をより確実的なものにすると判断。引き続き、鬼面の調査を続ける。
陰陽寮。ここまで言えば、ヒロインは言うまでもないな!