転生したら虚だった件(勘違い) 作:奴隷貸出中
醜鬼は本能のままにココを襲おうとして護に腕を止められる。そのまま反対の腕で殴りつける。
「ブニャ!!」
ドン! と大砲を撃ったような爆音が響き吹き飛ぶ熊型醜鬼。何度か地面をバウンドしながらも爪を立て勢いを殺し、ホニャアアアアア!! と威嚇するように吠える。中々頑丈。少しなめてた。
とはいえ、食料。多少潰れても問題ないのだから壊す気でやればいい。
「ホニャ!!」
一瞬で接近した護に驚きながらも咄嗟に振り上げた腕が掴まれ腹に蹴り。身体が打ち上がるも吹き飛ばされず、続く拳と地面に挟まれ毛が生えた仮面が砕かれ目が飛び出る。そのまま爪を振るい腕を切り裂く。
「ブニャアアアア!!」
「がぁ………」
その状態で爪を振ってくる熊型醜鬼。中々タフだ。
それどころか傷がみるみる癒えていく。
「ホニャン!」
「うれじ、ぞだな……………」
耐久力、回復力。共に並みの特殊醜鬼を遥かに凌駕する。
むん、と言った感じて己の無傷になった体を誇るような動作をする熊型醜鬼。褒めてやろうか。
「なあ、おい…………」
「が?」
「あたしにやらせろ」
と、そんな事を言い出すココ。
「これから先、あたし等はあんなのを相手にしなきゃなんねぇんだろ? 逃げ出そうって言ったのは、あたしと波音なんだ………だから!」
ついてきた者達を守る力があると実感したいのだろう。
「………いっげ、ごい」
「うっし!」
と、背中からココを下ろす。ココはパン、と己の掌に拳を叩きつける。強い同胞に守られていたのに前に出てきたココを不思議そうに見る熊型醜鬼。しかしすぐに獰猛に牙を剥き襲いかかる。顔の表皮は柔らかいようだ。
「ホニャアアアアア!!」
「おらああ!! ココパーンチ!!」
熊の張り手とココの小さな拳がぶつかり、どちらも弾かれる。ココは兎も角熊は弾かれると思っていなかったのか目を見開く。表情があって何よりだ。護の仮面もあんな素材ならもう少し話しやすかったのだろう。
「ココキーック!!」
攻撃を弾かれたことに驚愕し隙だらけの熊型醜鬼の腹に炸裂するココの蹴り。熊型醜鬼の巨体が吹き飛んだ。
「っ! いってぇ!!」
「ホニャアアア!」
が、効いてない。むしろココが足首を痛めた。
桃の能力はまだ出していないが、熊型醜鬼は少なくとも身体強化系や打撃系の能力者なら一方的に蹂躙しうる強さを持っている。
「ニャアアアン!!」
「ぐあ!」
熊型醜鬼の突進。トラックの大型衝突よりも激しい衝撃にココの小さな体が吹き飛ぶ。
熊型醜鬼は巨体に見合わぬ俊敏さで吹っ飛んだココに追い付きその腕を叩き付ける。
「がっ………!」
肺の中の空気を吐き出すココ。ミシミシと体重をかけて押さえつける熊型醜鬼は反対の腕を持ち上げる。ここまでか………と護が介入しようとした瞬間、熊型醜鬼がすっ転ぶ。
「がる………」
見ればココの体を粘液が包んでいた。体液の生成………それがココの能力か。
人間離れした身体能力の半醜鬼化はもはや身体強化系能力の域。それを考えれば実質2つの異能持ち………いや。
「おらぁ!」
「ぶにゃん!」
熊型醜鬼を殴りつけるココの体には地面に叩きつけられた時についてきた傷が消えていた。足ももう平気そうだ。治癒能力も相当上がっているらしい。
「ホニャアアア!!」
「こんにゃろおお!!」
互いに接近し爪と拳が振るわれる。そこまで鋭くない爪はヌルヌルも相まってココに効果は薄い。僅かについた傷を癒しながら拳や蹴りを叩きつける。
「ホニャアァ!」
「だらあ!」
千日手だな。
互いに相手に対して決定打を持たず、多少の傷なら癒える自己再生持ち。
決着は中々つかない。
まあ最終的にはスタミナの差で熊型醜鬼が勝つだろうが。或いは先に精神が折れるか………。
「…………………」
というか、精神強いな彼奴。
自分より巨大で、鋭い牙を持った怪物相手に、痛みを受けてなお挑める。どう考えても普通の精神状態じゃない。訓練受けたようにも見えないし………。
「…………おで、もが」
そう言えば自分も初めて他の醜鬼と戦うとき、痛くて怖くて逃げたかったのに結局戦えた。誰かを護るために勇気がでた、というのはなくもないだろうがそれだけであの一本角に挑めるほど自分が勇敢だと思い上がれないし、それ以前に怪物とはいえ人の形に近い生き物を殺したり食ったり出来た。
素人がいきなり命を奪えて命を賭けれた。自分が生まれながらの戦士だったなんて主人公にしか許されない本質だったよりも、醜鬼の脳が精神にまで影響を及ぼしていると考える方がまだ現実的だろう。
(気を付けたほうがいいな…………)
混ざり物の彼女達と違い、此方は純粋な醜鬼の肉体。何時この精神が肉体に呑まれるのか解ったものではない。
とはいえ、そろそろ頃合いだ。
「ぐう………」
「引っ込んでろ!」
戦いに割り込もうとした瞬間、熊型醜鬼は慌てて飛び退きココが叫ぶ。
護が一歩踏み出しただけで距離を取ったのは、ココと戦いながらもずっと護を警戒していたから。熊型醜鬼にとって脅威は依然、護のみ。
「解ってんだよ。皆で逃げようって言ったくせに、あたしは皆を守れるだけ強くないって………! お前に全部頼んだほうが安全だって!」
確かに熊型醜鬼など護からすればあっという間に倒せる相手だ。最初から護が戦えばココは痛い思いをしなかっただろう。
「でも全部お前に頼って何もしないなんて、無理だ。これはあたしの意地だ!」
「………」
意地。誇り、か。
なら、仕方がないな。
ザリッとその場で腰を下ろす護。熊型醜鬼は困惑する中、ココは熊型醜鬼へ歩いていく。
「ぢがら…………」
「あん?」
「ぢがら、あづめど………」
助言ぐらいはさせてもらう。その結果効果が出るなら、それは本人の資質なのだから。
「力を、集める…………集める」
拳を握るココ。熊型醜鬼はチラチラと見ていた護に視線を向けるのをやめココを睨み唸る。
「ニャアアアアアア!!」
「おおおおおお!!」
突進する熊型醜鬼の額にココの拳がぶち当たる。ビギリと地面が衝撃で罅割れる。だが、それだけ。熊型醜鬼の突進の勢いが完全に止まる。
「ホニャ…………ニャアア!!」
ブンブンと何かを払うように首を振る熊型醜鬼。今のはダメージがあったようだ。だが、一撃では足りない。
「だったら、何度でもぉ!!」
「!!」
殴る。
殴る。
殴りまくる。
ダメージを与えられても足りないというのなら、何度でもダメージを通す。単純明快な解答。なれど効果は絶大。
「ココ乱舞!!」
攻撃が止まらない。素人同然の無駄の多い乱打なれど、的が大きければ当然当たる。
「ブニャアアアア!!」
避けられないし耐えきれないと判断した熊型醜鬼は反撃に出る。
熊の張り手、爪がココを襲いココの拳と蹴りが熊型醜鬼を襲う。
どれだけそうしていたか。
グラリとココの体が傾く。
「!!」
が、倒れない。ギリギリで耐え隙を晒してしまった相手を睨む。熊型醜鬼はその場でずぅんと倒れた。
ココもその場で腰を下ろした。
「ニャ〜」
「……………は、はは。あたしの、勝ちだ! けど、お前も強かったぜ!」
「……………ニャア」
言葉を理解したわけではないのだろう。だが、同族に似た気配のする相手が敵意とは別の感情を向けてきたのだけは解ったようだ。
両者の体力限界まで絞り出す戦い。先に回復したのはココ。その直ぐ後に熊型醜鬼も立ち上がる。
「続きと行くか?」
「ブニャア!」
が、襲いかかってくることはなかった。
ココはどういうことかと護に目を向けてくる。
「…………ごれ、ば。ぐっぶく、じでいる」
「ぐっぶ?」
「ぐっぷ、ぐ………」
「くっぷく………?」
「があ」
「…………そうか。くっぷく………くっぷくね。成る程……………どういう意味だ?」
「………おばえに、じだがう」
「従う?」
「がう」
ココは熊型醜鬼の顔に触れる。熊型醜鬼は大人しく撫でられる。
「よし! 今日からお前はあたしのペット、熊童子だ!」
「ホニャン!」
「な、ゔぁえ………?」
「なんだよ。駄目なのか?」
「…………なばべ、づけるど。だべづらい」
「食べねえよ!?」
「ニャア!?」
此奴何のために醜鬼探して、何のために戦ったか忘れたな。
「…………あ。いや、でもさ。ほら、此奴あたしの言う事聞くし! 他の皆護るように言えば戦力も増えるだろ!?」
「ホニャホニャ!!」
実際、今他の醜鬼化した女達がいる護の巣を護っているのは護が屈服させた醜鬼達だ。
「ちゃんとあたしが面倒みる! 言うことも聞かせるから! なっ!? いいだろ!」
「…………まあ゛、いいが」
「よっしゃー! やったな、熊!」
「ホニャ〜!」
嬉しそうだな。やっぱり女の子だから丸っこい動物が好きなのだろうか?
「じゃあ………ぼがのにぐだにゃ…………」
「他のって?」
「ぶづうの、じゅうぎ………」
感想待ってます