転生したら虚だった件(勘違い) 作:奴隷貸出中
「え、これ…………食べるの?」
護が持ってきた醜鬼の死体を見て恐る恐る尋ねる波音。護が頷くと全員絶望したような表情を浮かべる。
「ぐえ………」
「い、いやでも。醜鬼って…それに生だし」
ちょっと
「やげだ………」
「あ、はい。いや、あの………き、キノコ美味しいですし」
まあ、探せばなんとか集まるだろうが。
「ぐえば、づよぐなる………」
特殊個体の肉を食った通常醜鬼がその特殊個体の特性を宿すことがあるように、醜鬼の血肉は醜鬼を強化する。半醜鬼の彼女達もその理屈は同じ筈だ。
「強くなるって言われても…………」
「…………あたしは食うぞ!」
「ココ?」
「この先ずっと、守られるだけなんてごめんだ。力を付けて、おんみょーりょーの皆を今度こそ安心させて助ける!」
まあ、実験はきつくても保護されているならと残った者達を連れ出すのに力がある、は確かに有効な手だろう。此方には一時的に人間の姿に戻せる能力者もいるわけだし。
「邪魔するまぼーたいもぶっ飛ばす!」
「やべどげ」
「…………なんでだよ」
気合を入れたココはしかし間髪入れずに止める止める護にジトッとした目を向ける。
「がで、だい………」
「勝てない? んなの、やってみなきゃ………」
「わがる…………」
並の隊員相手ならココ達の方が強いだろう。逆に言えば並以上なら相性が良くなければ普通に負けるし、
「ばにびょり、ぞーぐみじょう………」
「ながば、ぜんだいぎげん………ざらす…………」
どちらにしろ、敗北以前に敵対した瞬間、魔防隊と陰陽寮は最低限の保証すらする必要がなくなる。怪物に成り果てたとして、戻す方法よりもならない方法を
まだ治せる、から、もう救えないに切り替えられた彼女達を守るものは何もなくなる。
「どぢらにじろ、ごごもぎげん。おばえら、よばいがら………」
「…………それって、食って強くなれば勝てるかもしれねえのか?」
「がのうぜいはあがる」
勝率が那由多の果てから雲の上程度にはなるんじゃないかな、多分。
「で、でも………醜鬼として強くなったら、人に戻れなくなるかも」
「……………………ゔぁ」
「……………………あ」
その可能性もあるのか。
呪いを解く桃の能力で人の姿に戻れる以上、醜鬼化は呪いと判断されている。醜鬼を取り込み醜鬼としての力がませば、ただでさえ一瞬しか解呪できない醜鬼化が完全に戻れなくなる可能性もある。
「………じゃゔぁ、ゔぃい。おでが、まぼる」
「だから、それじゃあ駄目なんだよ!」
元々逃げる予定だったのはココと波音だけ。波音が護を仲間にし、護が暴れた結果ほかの皆を逃がせた。ココと波音には彼女達を連れ出した責任と、護る義務がある筈だ。
「そうね………なら、私も頂くわ」
「波音? でも…………!」
自分の美しさに自信を持ち、取り戻したいと願う波音が醜鬼の肉を食おうとする事にココが慌てる。
「そもそも、最初に逃げようと言ったのは私。なのに、全部ココや護に、他の皆を護ることすら任せるなんて、美しくないわ」
「…………………」
「あら? どうしたのかしら。私の美しさに見惚れたかしら」
波音を見つめる護に、波音は己の身体を見せつけるように身をくねらせ髪をかき上げる。
「あ、ぁ………おばえは、うづくじいなぁ…………」
姿形よりも、その在り方が。
「うっし! じゃあ、行くぜ!」
ガブリと一口。畜肉ともジビエとも異なる独特の風味。ゴクリと飲み込む。僅かに、本当に僅かに力が上がる。
「………………ん?」
「な、なんだよ…………」
「ぼものぢがら、ぐえだ………」
「…………?」
「…………ぼも……桃の力?」
コクリと頷いてやる。後はぐえだ…………食えた? この状況に合っているようで前後が繋がらない。
「…………食えた?」
一応尋ねるが護は首を横に振る。
桃の力………『う』『え』『あ』………飢えた。縫えた。
「…………………増えた?」
頷いた。当たった。
しかし桃の力が増えたとはいったい? 食ったのは桃ではなく醜鬼の肉なのに。
「………めんえぎ?」
「めん…………なに?」
「免疫、じゃないかしら」
「めんえき! めんえき………ってなんだ?」
「身体が異物に対する抵抗というか…………ええと、バイ菌と戦う身体の力、みたいな?」
体内に存在する桃の力が強まった醜鬼の力に抗うように増えた。まあ、桃を食った後再度食わずに能力を使える以上、桃の力のエネルギー元は食った本人が生み出しているはずなので不思議ではないが…………。
「つまり、醜鬼の力に対抗してるってことか?」
「ぞ、なる………」
なら、問題はないのか?
恋だってあれだけ規格外の力を持っているが人として存在している。桃の力は人を人として維持している。そして、醜鬼の力に対抗する。醜鬼が優勢で姿が変わっている彼女達だが、バランスは肉体自身が保とうとしている。
なら、醜鬼の力を取り込んでも問題はないと見るべきか………。
「ねんのだめ、ふづうのじゅうぎ………ずごじずづ…………」
それで様子を見よう。もちろん護は普通に食うが。
「……………なあ、護」
「がう?」
「アタシに戦い方を教えてくれ」
と、ココは護をまっすぐ見ていう。身体能力だけでそれなりに戦える彼女が力の使い方を覚えれば、その実力は爆発的に伸びるだろう。
「私も、魔都で生きていく以上戦い方を覚えたいわ」
と、波音も手を上げる。
「できれば美しく戦いたいわ」
「…………………」
なら、槍かなあ。
護は自分が知る限り最も美しい戦士を思い出す。
それから半年。
人が増えた。存外、魔都で醜鬼に追い詰められ桃を喰らう女は居るようだ。醜鬼化は稀な現状なれどまず桃の力の暴走があるから見つけやすい。
説得は、陰陽寮に跡が残る傷をつけられた者がその傷を見せることでなんとかうまくいっている。
新しく仲間になった者達の中に糸を作り出す桃の能力と物の形を変える桃の能力がおり、服と武器が用意できるようにやった。
土や岩をちょっとだけ操れる能力者も加わり洞窟も拡張された。された、が…………。
「おおおおおおおお!!」
「がああああああ!!」
融合醜鬼。醜鬼同士が寄り集まり重なり巨大化した姿。
単純な質量の増加に加え数体分のエネルギーを内包するその怪物は、相性のいい能力でもない限り平隊員は数人で挑むべき敵だ。
それが数体。
相手は、ただ一体。
鬼面を思わせる顔の甲殻。その
「
振り下ろされる拳に指を向けた瞬間、赤い光が一瞬ともったかと思うと巨大醜鬼の腕が消し飛んだ。悲鳴を上げる巨大醜鬼に一瞬で接近し首を掴むと力任せに引き千切る。
「ごおおおお!!」
「おおおおおおん!!」
迫る巨大醜鬼。特殊醜鬼の爪に先程一瞬だけ空間を照らした光と同じ、赤い光が灯る。
濃縮されたエネルギーが解放の時を待ちわびるかのように魔都の大気を震わせる。
「月牙天衝!!」
放たれた複数の赤い三日月が巨大醜鬼の群を引き裂いた。
「醜鬼の死体を確認。それと、鬼面………」
「手出しをする必要はないって話だが………」
少しして、巨大醜鬼の死肉を食らう特殊醜鬼を見つめる数人の女達。魔防隊の隊員だ。
「醜鬼である以上、奴はいずれ人に仇をなします! 討伐するべきです!」
「ていったってねえ、倒して得がある相手でもないし………」
銀髪の女の言葉にタバコを吸う黒髪の女は面倒そうにいう。これで賞金がかけられている危険な特殊個体なら彼女も討伐に賛成だったが、醜鬼食いの特殊醜鬼。
反撃以外で人類に敵対行動をとったことのない醜鬼は、九番組組長が現世で捕らえたという醜鬼に似ている。少し小さいから別個体だろうが…………。
「組長!」
「…………どちらにしろ、無理だったみたいだな」
まだ距離があり双眼鏡で漸く姿を視認していた鬼面が振り返る。此方に気付いている、そう思った瞬間には姿が消えた。巨大醜鬼の肉も一部が消えている。
「引っ越すぞ」
「「「引っ越し?」」」
「魔防隊と遭遇する頻度が増えてきた。もともとここらは、俺が集めた現世のものを保存するための拠点だからな………」
必然的にここに迷い込む一般人も多く、故に魔防隊の見回りがこの辺りで行われる。
「もっと人目のない場所を探すぞ………」
ここ半年で仮面を思わせる顔の口の下にもう一つの口を作ることに成功した護は流暢な言葉が喋れるようになっていた。説明もスムーズに進む。
「あとここ最近ここを縄張りにしてる奴が醜鬼狩りに専念するせいで栄養のある醜鬼がこの辺りにいない」
厳密には無限に湧く醜鬼の数はいるのだ。ただし強い特殊個体はあらかた護が食い尽くして、新しく成長するだけの下地を魔防隊が狩ってしまう。
「運べるだけのものだけ運ぶ。他は捨てる。ココ、格闘技指南書は覚えたか?」
「入門編と必修編、基礎編すっとばして中級編の書渡されても覚えれるわけねーだろ」
「それもそうか………一応それも持ってくぞ」
こうして護と女達の旅が始まる。当てのない旅路。果たして、どれだけの日数がかかるのか。
大地を操る力で地下に空間を作りながら簡易拠点を作っては壊すを繰り返し数日。
護とココ、波音は修行を行う。といっても実戦形式、戦っているだけだが。
ココの能力体液を操る『
波音の能力物体透過『
熊童子と、波音が屈服させたアクラという六本腕の醜鬼も含めた実質的な4対1。されど護が圧倒した。
二人は押さえつけられ、決着はついた。と、その時だった………
「手を離しなさいこのクソ醜鬼ぃぃぃぃ!!」
「……………!?」
唐突に現れた女が護を殴りつける。ココ以上の力に、二人をつかみ防御出来なかった護が吹き飛ばされた。
「安心しなさい、もう大丈夫よ!」
そう宣言するのは、半醜鬼化した女。群の誰かではない。
「さあ、覚悟しなさい醜鬼! この和倉青羽が、あんたをぶっ飛ばしてやるんだから!」
武器や服、あの時点じゃ支援者いないしモンハンみたいに醜鬼の素材から作ったとは思えないしたぶんそういう能力を持ってる娘がいたんだろうなぁ