ハサウェイがアムロやシャアに影響される前に機械オタクになった世界線のお話   作:陸奥九十九

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いよいよ最終決戦が始まりました。
思ったよりこの最終決戦、話数がかかりそうだぞ?どういうことだ?

誤字報告ありがとうございます!本当にたくさんの誤字がありました!どういうことやねん!
生暖かい目で見てやってください。

そして感想と高評価もありがとうございます。
感想で気づく「え!?そんな考えもあるのか!」「え!?そんな設定あるの!?」の嵐。
はい、そう言う人が書いている小説です。
やっぱり生暖かい目で見てやってください。


出撃 ジェガン

ラー・カイラムの格納庫は修羅場の様相を呈していた。

 

帰還した破損機をワイヤーで艦に何とか固定し、修理箇所を診断し優先順位をつけて、艦内に入れて最速最短の手順で修理を行い、直ればすぐにパイロットへ渡しテスト、最終チェックをして次の機体へ。これを絶え間なく行う。

しかもアストナージやチェーンといったチーフメカニックが特殊機体であるニューガンダムとリ・ガズィに掛かりきりになのである。しかもニューガンダムは実戦を経ての最終調整の真っただ中、リ・ガズィに関しては大破寸前の中破判定。二人の手はまず空かない。

 

そして、アクシズはすでに地球へと舵を取っている。待っていられるほどの余裕もないのだ。

 

そのためモビルスーツ格納庫での作業は地獄と化していた。

ラー・カイラムのメカマンの誰もがスペシャリストではあるが、時間も無ければ手も足りない。そのため作業を絞り、必死になって効率を上げ、地球滅亡までという納期をデスマーチでクリアしようとしていた。

そして、故障の仕方もみな一様ではない。近接格闘の際の衝撃で破損したのか、銃撃されて破損したのか、ビーム兵装で破損したのか。そしてその被害の深度はどれほどなのか。的確に、一発で診断を出せなければ作戦までに間に合わない。

誰も彼もが必死である。

 

そんな地獄に、ハサウェイはいた。

 

「外装とアクチュエーターの交換だけで問題ないです。基幹部破損無し、終わったらコンピューターのリセッティングで完了です」

「ハサ!次はこっちだ!」

「はい!今行きます!」

 

ハサウェイは飛ぶ。クェスを背中に背負って。破損したモビルスーツからモビルスーツへ。

 

「これを見てやってくれ」

「はい、診断から始めます」

 

そう言ってメカマンは別の作業へと飛んでいき、ハサウェイも作業を始める。

流れるようにコクピットへ座り、手慣れたように軍用機密マシマシのコンピューターをモビルスーツへ接続する。

 

「(メインジェネレーター問題なし。各関節にエラーコード、これは……稼働自体は問題なし、じゃあセンサー異常、追加の検査パッチで確認、うん問題なし。エラーコードの解消。次はバックパックにエラーコード、こっちは、火が入らない?各スラスターの制御モーターは問題なし、じゃあ燃料系で異常だ。経路の確認……ここか。あとは特に問題なし)」

「どうだハサウェイ!」

「スラスターのみ異常です。異常個所は燃料系、A9、C5、F8、S6の4か所。この修復をお願いします。終わったらリセッティングで完了です」

「分かった!次はあっちだ!」

「はい!」

 

さて、こうなった経緯を説明しよう。

 

何故民間人のハサウェイが軍用機の整備をしているのか、であるが、これはハサウェイがアムロとアストナージを通して、ブライトから特別に許可をもらったのである。

ハサウェイがこうした修理の手伝いを申し出たのは、クェスの精神が限界に近かったからだ。

部屋の中で、必死にハサウェイの心を感じながら、外の死人の残留思念を拒絶することに尽力する。これがもう限界だった。

ならば、そんなものを感じさせないほどに他のことにリソースを割かせよう。いや、そうさせないと、恐らくこの戦争が終わる前に、クェスは廃人になる。ハサウェイはそう直感した。

そして、アムロもその直感が間違っているとは思えなかった。ブライトは思い出していた。人の念によって、向こう側へ連れていかれたガンダムのパイロットを。誰よりも才能が有り、誰よりも繊細だった、あの少年を。

 

そこでハサウェイは、クェスに自分の思考を可能な限り拾う様に伝えた。モビルスーツを、最短で最速で直すために必要な知識を、これまでの経験からはじき出し、実践する。

クェスはメカに関して全くの素人である。駆動系も動力系も燃料系も推進系も何も分からない。それらを構成するプログラミングなんてさらに分からない。

それを、ハサウェイの脳内の図書館から必死に勉強させる。勉強させることにリソースを割かせ、それ以外のすべてを無視させる。

 

今クェスはハサウェイの過去の全てを見ながら、ハサウェイが今何を考えているのか、どういう結論を出そうとしているのかを知ろうとしている。ハサウェイの全てを知ろうとしている。

 

そして、ハサウェイのメカマンとしての能力に懐疑的だったアストナージも、軽度損傷のモビルスーツを一台任せてみたところ、すぐにそんな意識は霧散した。

動かすために必要なすべて。ハサウェイは戦闘に耐えうるレベルの整備を、最短最速で完了させ、モビルスーツが搭載する学習コンピューターのデータを解析し、完璧なリセッティングを行ったのである。

 

ハサウェイはコンピューターの天才である。フィンファンネルのセッティングという特殊かつ精密な仕事を完遂した時点で、ある程度のレベルにあるとはアストナージも考えていた。だが、それは違った。ことコンピューターに関して言えば、この能力は自分やアムロをも上回る。アストナージはそう理解した。

 

ハサウェイの仕事は筋道を立てることである。

機体の消耗状況を確認し、修理箇所をピックアップし、コンピューターの異常個所を修正し、修理後にマシンバランスを調整するためにコンピューターのリセッティングを行う。

これがハサウェイの仕事である。

 

そのためハサウェイはモビルスーツ格納庫を縦横無尽に飛び回る。損傷軽微なものは早々に修理を完了し、今やハサウェイが中破以上のモビルスーツのトリアージとトリミングまで指示している。

 

このジェガンを早々に回復させることは無理だ。ならパーツ取りにして向こうのジェガンの換装パーツにしてしまおう。右腕部と右脚部がほぼ完全に無事だ。それにバックパックも使える。コンピューターから指示を出し、パージ。パージ完了。この腕はそのジェガンに。この足はあっちのジェガンに。

そんな指示まで出し始めている。

 

ハサウェイにはセンスがある。そして子供が直したマシンに不安を感じたパイロットも、乗ればすぐに気付く。あれ、俺のジェガンってこんなにスムーズだったっけ?と。

ハサウェイのプログラミングはシンプルだ。シンプルで美しい。これは低予算でのプチモビのOS作成が根底にあるためである。

可能な限り軽い情報量で、無駄なく不足なく、ただし余裕を持たせて。ハサウェイが心掛けていること、信条と言ってもいい。

 

機能は形態に従う。近代デザインの究極を、究極の機能美を、ハサウェイは無意識のうちに実現していたのである。

 

 

仕事に終わりが見えてきた。そう思った。

格納庫から、いつの間にパイロットの姿も消えている。そうか、最後の作戦会議か。

 

「ハサウェイ!それが終わったら切り上げてくれて大丈夫だ!よく手伝ってくれた!」

「はい!」

 

最後のこのジェガンも、もう終わる。

両足を撃ち抜かれて、姿勢制御が上手くいかない中、メインスラスターを酷使したせいでバックパックユニットが爆発しそうになっていた機体だ。ただ、融合炉にダメージは無く、コクピット周りも問題なかった。

だから、足が無事だった機体とニコイチさせてバランスを取り、バックパックユニットは新品でアッセンブリー交換をした。その換装も既に終わっており、いまはバックパックユニットのテストと、パイロットに合わせた調整をしている。

 

この人も上手い人だ。そりゃそうか、ロンド・ベルって凄い部隊だもんね、知らんけど。

 

学習コンピューターは確実にデータを保存し、最適化してくれる。が、時折遊びが少なすぎることがある。

 

トミナガさんが言っていた。あくまで持論に過ぎない、と前置きをした上で「自動車において、人間は10%程度の出力の損失は体感できない」と。

100馬力のコンパクトカーなら10馬力。300馬力のスポーツカーなら30馬力、800馬力のモンスターマシンなら80馬力。確かに、と納得できた。その程度ならわからないかもと。

 

人間は無意識のうちに修正を加えられる。なんとなく修正舵を入れられて、なんとなくアンダーステアをアクセルでコントロールできる。10%程度の出力損失は、その無意識下で調整できてしまう。

 

でも、機械はそうじゃないし、コンピューターは尚更そうじゃない。

コンピューターは、人間のなんとなくもデータで管理する。なんとなくレバーを普段より倒した、なんとなくペダル操作がいつもよりラフだった、なんとなくマニューバをいつもより複雑にした。

そういう感覚も、パイロットの大事な個性としてデータ管理し、最適化の要因に加えてしまう。一つ二つではない、すべてのなんとなくをだ。

 

その中で不要と排除されるものもあれば、必要と判断され制御のベースに加えられる物もある。その結果、最適にフィッティングされたはずなのに、少しくどくて鬱陶しい。でも操作できないわけじゃない、ただちょっと気を遣う。そういう仕様が出来上がる。

でも問題なく操縦できるのだ。なにせ彼ら彼女らは誰もが凄腕のパイロットなのだから。

すると、コンピューターはそれが正しい最適化だったと認識してしまう。

 

それを、人の手でほんの少し修正する。複雑だったプログラムはほんの少し簡略化され、また余地が生まれてくる。そういう余地は、恐怖の修羅場でほんの少しの余裕と、時により勝利をもたらしてくれる。アムロさんがそう教えてくれた。

 

「……うん、これで終わり。アストナージさん!終わりました!」

「よくやってくれた!休憩してくれ!」

「はい!行こうか、クェス」

「うん!」

 

クェスを連れてジェガンから降りる。するとそこにはアムロさんがいた。

 

「お疲れハサウェイ。よく手伝ってくれた。クェスも」

「アムロさんこそお疲れ様です。その、もう出撃ですか?」

「ああ、時間は俺たちに味方してくれない。悲しいことに、増援も期待出来ないようだしな」

「……そう、ですか」

「そう難しい顔をするな。ハサウェイが言ったんだろう?大丈夫だって。だから大丈夫なのさ。心配しなくていい。今ハサウェイがすべきことは、ロンデニオンの美味しいご飯屋さんを見つけることくらいさ」

 

支払いは気にせずいいとこを選べよ、アムロさんがそう言ってウインクする。

 

「……ですね。父さんもアムロさんも食にあんまり興味ないですし、クェスとチェーンさんと一緒に考えてもらいます」

「そうさ、祝勝会だからな、おいしい酒も飲めないと。チェーンに相談するといい」

「はい、クェスは、何が食べたい?」

 

クェスにはまだ不安の色がある。それはそうだろう。どれほど気を紛れさせても感じる、この黒い気配。窓を閉じても、カーテンを閉じても、外の嵐が分かるような、どうしようもない気配が。

それでもクェスは、何とか笑ってくれる。それが、少し嬉しくて、少し痛ましかった。

 

「あたし、おいしいケーキが食べたい!クリームがたっぷり乗ったやつ」

「いいね、デザートだ。アムロさん甘いものは?」

「好きだよ。スイーツも美味しいレストランにする必要があるな、ハサウェイ」

「ですね」

 

アムロさんが笑う、僕も返すように笑う。そして、一瞬静かになる。

 

「じゃあ、俺は行く。ハサウェイ、戦闘に入る前にブリッジへ。ブライトに顔を見せてやってくれ」

「はい……。あのっ……その」

「いいよ。大丈夫だ。」

 

全部伝わってるから。アムロさんはそう言って僕の肩を叩き、ガンダムへと飛んでいった。キザっぽくハンドサインまでしてくれて。

 

ああ、始まるんだ。そう思った。

 

 

 

クェスの手を引いてブリッジへ向かうと、そこは格納庫とは違い、思った以上に静かだった。いくつものモニターに作戦状況などが示されているようで、管制官の人がモビルスーツの戦闘状況を管理していて、賑やかなオフィスのようだと一瞬思った。

でも、そうじゃない。ここも戦場なんだ。張りつめた空気が、肌を刺すようにピリピリする。

 

「ハサウェイ、モビルスーツの整備、よく手伝ってくれた。ありがとう」

「ううん、僕が望んだことだから」

「それでもさ。本当によくやってくれた。艦長が驚いていたよ、うちの子はこんなことができるのかって」

「メラン!余計なことを言うな」

 

父さんとメランさんがそう迎えてくれた。

 

「本当に助かってるよ。ありがとうハサウェイ君。そして、これを書いてくれ」

 

メランから渡されたものは、遺言状だった。

 

「っ!」

 

僕はそれに酷く驚いて、混乱して、そう混乱している自分にも混乱していた。分かっていたことだろ?戦場に出るんだ。死ぬことだってあるさ。分かっていたことなのに、その死への準備用紙を見て、ただの安っぽい物理書類が、とても恐ろしいものに感じてしまった。

 

落ち着け、呼吸を整えろ。スゥーー、ハァーー。一呼吸、それだけで心は落ち着いてくれる。そうなるように稽古している。

 

「……はい」

「……怖いよな、でも、必要なことなんだ。お嬢さんも書くんだよ?そして髪の毛も挟んで。戦闘に巻き込まれないよう、カプセルで放出するから」

 

その酷く重い紙を渡されて、クェスと二人、ブリッジの片隅で書く。

もしもの時は、僕の持ち物は全て家族で分けてください。車やバイクは、祖父ちゃんにお願いしてください。その程度のものだ。

ペンは軽いのに、書く内容も大したことないのに、筆は進まない。心が書くことを拒んでいるように。

やっとのことで遺書を書ききって、髪をはさみで切ろうとしたところで、クェスに止められた。

 

「ねえ、ハサウェイの髪、あたしが切ってもいい?」

「え?いいけど……」

「そんで、あたしの髪はハサウェイが切って」

 

上手に切ってね。そう言って、クェスとお互いの髪を切りあった。髪の毛は思った以上に切りづらくて、切るのに力が必要だった。クェスの髪が、はらりと切れる。花のような香りがした。

 

遺言状と髪を、メランさんに渡す。

 

「……よし、書けているな」

 

手慣れた様子でそれらをカプセルへしまい、別のクルーへ渡す。それでおしまいだ。

 

「艦長の許可が出たんだ。戦闘ブリッジには入れられんがここに座っていられる自信があるなら、観戦していい」

「あの、邪魔にならないようにするので、格納庫へ行っても良いですか?」

「格納庫へ?」

「はい、戦闘で被弾したモビルスーツの整備で、お手伝いできることもあると思います」

「ふむ、艦長!如何しますか?」

 

メランさんが父さんへ呼びかける。

 

「ハサウェイ、格納庫は宇宙にほど近い。それだけ危険度は増す。わかっているな?」

「うん」

「それでもか?」

「……うん」

「……わかった。アストナージの指示に、よく従うんだぞ」

 

父さんは神妙にそう言った後、酷く優しい目をして、僕に言った。

 

「無理をするなよ。怖くなったら、ブリッジへ逃げてきなさい」

「はい……ありがとう、父さん」

 

 

戦闘が始まった。遠くでいくつもの光が見える。その光の分だけ、命を感じる。

 

戦闘が始まってすぐ、何機かのモビルスーツが戻ってきた。手や足を破損し、溶けた装甲は未だ赤熱している。恐怖の鉄火場がやってきたのだ。

 

それらの状況をすぐに精査し、予備パーツをプチモビで引っ張り出し、時にはそのモビルスーツで直接持ってこさせ、すぐに動かせるように整備する。

 

究極のスクラップ&ビルド。壊れては直し、直した先から壊れ、戻ってくる。またそれを直し出撃させる。

 

戦争ってやつは、本当に無益だな。

 

レースのような、壊れることさえも検証実験として有益に働いてくれる、未来へつながる有用な破壊、破損ではない。

ただ壊す、壊れたものを直す。それだけだ。いや、帰ってきて直せるということは、それだけまだマシなのかもしれない。だって死んではいないのだから。

でも、生きて戻ってきてくれたパイロットを、また死地へ追いやる。

 

ああ、心が消耗してるな。そう感じた。

 

 

 

そして直後、その圧倒的な死を直感した。

 

「ぐあぁっ!!」

「いやあぁっ!!」

 

僕と同時にクェスもうめく。死のイメージが、脳に直接入ってくる!

 

大きなマシーンが、死を放ちながら迫ってくる!

 

大きな憎しみを放ちながら、苦痛と恐怖を感じながら、彼が来る!

 

「……彼?だ、れだ、きみは……!」

「ハサウェイ、来るよ……怖いのが来るよ!!」

 

僕はクェスを抱きしめる。大丈夫だ、大丈夫だよ。呼吸をするんだ、ゆっくり吸って、ゆっくり吐いて。イメージを必死で伝える。言葉に出せるほどの余裕さえない。僕もクェスもちょっとした恐慌状態になろうとしている。

 

来る、絶望に染まった力が。すべてを焼き払う黒い炎が。そして、それを止められる人がいない。

 

どうする?パイロットは全て出払っている。モビルスーツがあっても意味が無い。

どうする?あの死のイメージ。凄まじい強さの敵が来る。

どうする?アムロさんはいない、ケーラさんだっていない。

 

助けてくれる誰かは、いない。ここが、運命の分かれ道か。そう直感した。

 

ふと、視界の端にチェーンさんを捉えた。僕が直したジェガンへ乗り込もうとしている。それを、アストナージさんが止めている。

 

「なにやってんの!?」

「これは出られるんでしょう!?」

「駄目だよ!」

 

出撃しようとしているのか?チェーンさんが?

 

「モビルスーツが足りないって、それに、サイコフレームが多い方がアムロに有利なんです!」

「そういうことじゃないよ!」

 

 

「じゃあ僕が出ます」

 

 

僕は二人にそう言っていた。二人が驚いていた。僕も驚いていた。何を言っているんだ僕は?

 

「お前もなにを言ってるんだ!?」

 

アストナージさんがパニックになったように言う。本当ですね、何を言ってるんだ僕は。

でも、そうしないとみんな死ぬ。それだけは分かった。

 

「チェーンさん降りて。サイコフレームは僕が持ちます」

「何を!」

「チェーンさんのシミュレーターのスコア知ってます。僕の方が操縦上手いですよ」

 

チェーンさんをジェガンのコクピットから引きずり出し、サイコフレームも腰から外す。そして入れ替わるようにコクピットへ座った。

 

「お前なにやってんの!?」

「すみません、でも、時間が無いんです。すぐに彼が来ます」

「彼!?」

 

呼吸を感じる。彼の呼吸を。僕の感応力の話じゃない、彼の垂れ流す死のイメージが酷く重く恐ろしいのだ。だからここまで感じられる。

 

「父さん聞こえる?ハサウェイです」

『ハサウェイ!?何をしているんだ!?』

 

ジェガンからブリッジへ呼びかける。

 

「手短に。大きな敵が来ます。大きなモビルスーツです。多分、このままだと殺されます」

『っ!それは、ニュータイプとしての直感なのか?』

「分かりません、でも感じるんです」

『待て!アムロを呼び戻す!』

「無理です。間に合いません。あと……1分足らずで来ます。」

『だがっ、お前が出る必要はないだろう!?』

「僕以外で、彼と戦える人は、残念ですけど近くにいません」

 

腕利きのパイロットはアクシズへ、敵の艦隊への攻撃とアクシズの破壊のために出払っている。メカニックでパイロット訓練を受けているものはいない。そして僕のシミュレーターのスコアを父さんは知っている。アムロさんを通して聞いている。

 

父さんの苦悶を感じる。ああ、分かっているんだ。分かってくれているんだ。僕が言っていることを。そして直感している、それが正しいことも。

 

『必ず!必ず生きて戻ってこい!お父さん凄く怒ってるからな!!』

「はい、行ってきます」

 

父さんは、本当にカッコいい。

 

「そう言うことです。出ます」

「お前っ、あーーもう!生きて帰って来いよ!」

「はい。チェーンさん、ファンネルの予備全部貰っていきます」

「貰っていくって、ジェガンに着けることは……」

「大丈夫です、持っていけるので」

 

ファンネルの勝手は恐らく誰よりも分かってる。戦闘においては足元にも及ばないけれど、ファンネルの操作ならアムロさんと競争くらいできる程度に。

 

「おいで」

 

そう言うと格納庫の奥にあったファンネルが飛んでくる。全部でたった12枚、ギリギリかな?

 

「離れてください。出ます」

「まって!ハサウェイ!」

「クェス」

 

コクピットへ飛んでくるクェスを受け止める。来ちゃったか、いや、そりゃ来るよな。

 

「クェス、君はここで待ってて」

「ダメ!あたしも行く!それにハサウェイも分かってるんでしょう?一人じゃあいつに勝てないって!」

「……でも」

「死にに行くんじゃないんでしょ?だったらあたしも守って見せて!その代わり、あたしもハサウェイの助けになる!」

 

クェスが、覚悟の念を放っている。

 

ああ、クェスはこんな目をするんだ。できるんだ。強い瞳、覚悟の瞳。知らなかった、クェスがこんなに強い意志を持てる子なんだって。

 

彼は強い。彼は恐ろしい。そう仕立てられてしまった、そう調整されてしまった、憐れで悲しい人。

 

彼を殺すなら、僕だけでも出来るかもしれない。でも、僕は彼を、殺したくないと思っている。

 

そのためには、僕だけじゃ足りない。

 

「……クェス」

「なに?」

「……生きて帰ろうね」

「勿論!」

 

出ます。そう言ってライフルとシールドを装備する。

 

「アストナージさん!すぐに敵の攻撃が激しくなります。艦の外の人たちを中に避難させてください!」

 

わかった!そう遠くから聞こえた。

 

クェスをサブシートに座らせて、僕は戦場へ飛ぶ。

 

「ハサウェイ・ノア、出ます!」

 

地獄の門に、僕は飛び込んだ。

 

 




読了ありがとうございます。

やはりハサウェイは戦場に出ることになりました。それもクェスを伴って。
おおよその流れは考えたのですが、書くたびにそれがぶれるぶれる。なので結末がどうなるか、私も知りません!
明日の私、頼んだぜ。

たくさんの感想、高評価ありがとうございます!とても嬉しくて何度も読み返してます!

引き続き感想、高評価など頂けると嬉しいです!
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