ハサウェイがアムロやシャアに影響される前に機械オタクになった世界線のお話   作:陸奥九十九

16 / 43
これにて逆シャア編おしまいでございます!
ヤッター駆け抜けたー!さあどうしよう!!ここからの展開は何一つ考えてません!

あと前回の重めのストーリーですが、受け入れられたようで結構ほっとしてます。良かったー!こんなの望んでねえ!って言われたらどうしようかと思ってたので。

今回のお話も、賛否ある気はするのですが、楽しんでいただけたら幸いです。


宇宙と地球 サイコフレーム

誰もが戦場を駆ける。時が駆け抜け、閃光が駆け抜け、そして命が駆け抜ける。

剣林弾雨の地獄の戦場を、その白い装甲を汚し、焦がしながら、ラー・カイラムが突き進んでいた。アクシズの陰からギラ・ドーガが、敵モビルスーツ部隊が迫る、それこそが敵艦隊の首元まで接敵できたという確信をブライトに持たせた。

 

「総員、乗り込み準備!」

 

ブライトの掛け声に、ブリッジのクルーさえもハッチへ急ぐ。アクシズへ直接乗り込み、アクシズ内の資源採集の坑道を頼りに、アクシズを内部から爆破、粉砕するためだ。

アクシズは巨大だ。それに相応しい質量を持っており、それがシャアの隕石墜としに利用されることとなったが、それはつまり、その大きさ故に死角も多いということだ。

 

モビルスーツ隊が先行し敵機の排除を完了。既にブリッジには、メランをはじめとした最低限の人数しか残っていない。この作戦の重要度もうかがい知れる。

 

ラー・カイラム、アクシズへの上陸完了。

 

「艦長!艦の固定完了しました!」

『よし!総員乗り込み開始!』

 

アクシズが地球の重力圏内に入るまで、あと30分。運命がすぐそこまで迫っていた。

 

 

アムロはラー・カイラムの進路を切り拓き、今はアクシズに取り付く敵モビルスーツと敵艦隊を掃討していた。

 

ニューガンダムが飛ぶ。空を自由に飛ぶ鳥のように、海を自由に泳ぐ魚のように。そして、視界に敵を捉えた瞬間に、ファンネルが駆け、ビームが舞う。

 

「(軽い、そしてどんどん動きが良くなっていく)」

 

5秒。敵を捕捉してから撃墜するまでの、アムロの平均戦闘時間である。

14機。アムロがこの戦闘を開始してから撃墜したモビルスーツの数である。

 

サーチ&デストロイ。見える範囲の全て、感じる世界の全てが、アムロにとってのキリングフィールドと化していた。

 

ニューガンダムが呼応する。マシンが思い通りに動くだけじゃない。それ以上を見せてくれる。まるで、ほんの少しの先の未来を見通すかのような。

 

「(ハサウェイは、どんな魔法をかけたんだ?)」

 

アムロにとってモビルスーツの整備なんてものは日常で、モビルスーツの操縦さえも呼吸と変わらない。最新鋭機も量産機も、酸いも甘いも知り尽くしている。そう思っていた。

 

動きが軽い。ラグが無いのだ。動こうと操作をしてから、実際にモビルスーツが動くまでのラグ。人体が知覚から動作まで、どんなに速くても0.1秒かかるように、モビルスーツの操縦にもラグは必ずある。

 

ハサウェイは言っていた。ほんの少しだけOSの方向性を修正したと。動作がほんの少しだけ軽くなるかもしれないが、多分誤差レベルなので感知はできないと。だから気にしなくてもいいと。アストナージもそれに同意していた。

 

サイコフレームをフレームに使用したコクピット周りにしても、ハサウェイはチェーンと相談していた。ファンネルのセッティングで気づいたことがある。サイコミュの方向をガンダムのOS側からも調整しておきたいと。

 

ほんの少しなのかもしれない。例えば1%だけ性能が向上した、それをパーツ単体で体感することは難しいかもしれない。だが、すべてのパーツを、モビルスーツのOSを構成するすべてのパーツ性能を1%向上させたとき、それは結果として大きく現れるかもしれない。

 

 

 

アムロが視界にギラ・ドーガを捉える。

一気に加速。円を描くように敵機との距離を詰め始め、敵の行く先にビームを置く。

敵機がそれを回避するため速度の乗った円軌道を崩し、体勢が崩れる。その瞬間にファンネルが敵機を打ち抜く。ギラ・ドーガが爆発四散する。

ここまでで約3秒。戦闘が終わる。

 

「(次)」

 

ミノフスキー粒子散布下において、アムロには明確なアドバンテージがある。

レーダーが全く機能しない有視界戦闘を誰もが強いられる中、アムロはそのニュータイプ能力によって、たとえ見えずとも敵機を捕捉することができる。

無論広域レーダーのような精度のものでは無い。視認できるその範囲が、ほんの少し伸びて、その位置をそれなりの精度で認識できる、という程度のものだ。

そう言う意味で、アムロは誰よりも射程の長い武器での戦闘が可能であった。

 

だからこそ、その一射をよけられた瞬間に、相手が誰なのかも判別できた。

 

「避けた?シャアか!」

 

戦闘機動に入る。動いたその瞬間に、さっきまで機体があった場所をビームライフルが打ち抜いていく。アムロはアクシズを壁に回避機動へ移行する。

 

「来たか、アムロ!アクシズのノズルには接近させん!」

 

シャアが腹部メガ粒子砲を撃つ、が、避けられ、アクシズ外壁をえぐる。砕けたアクシズの破片が散らばり視界を妨げる。

アムロはアクシズを盾に視界から消える。

 

シャアはアムロを追う。ガンダムは見えない、が無意識に盾を構えた。

 

ドガアァァーーン!

 

盾が爆発四散する。それがアムロの置き弾だと、攻撃を受けてからシャアも理解した。

 

「アムロ、やる!」

 

「避けた!?」

 

確実に殺れるタイミングだった。そう思っていたがゆえにアムロにも動揺が走る。が、動揺を即座に鎮め、すぐにその場を離れる。

 

「それでこそ私のライバルだ!」

 

シャアがアムロを追う。

 

 

 

「何だ?艦がある」

 

アクシズはかつてのネオジオンが要塞としていた小惑星である。その性質上、アクシズ内部へと繋がる港は整備されており、その状況はコロニーと遜色ない。

 

だからこそ、そんな港に、無造作に置かれているかのようなネオジオンの艦に対して、アムロは違和感を覚えた。

 

「何だこれは?……!っそうか、シャアめ!!」

 

その理由に気づくと同時に艦へ攻撃を叩き込む。

 

「気づいたか!だがアムロ、まだ早いっ、ファンネル!!」

 

シャアがファンネルを射出し、アムロを妨害するため攻撃する。

 

「シャア!」

 

アムロも即座に回避行動へ移り、応戦のためにファンネルを射出する。

 

そして、アムロが攻撃した艦が、誘爆では起きえないほどの規模の核爆発を引き起こす。

 

轟音。

 

そしてアクシズ全体を震わすほどの大爆発が、その衝撃が、アクシズに居合わせたすべての存在へ降りかかる。

 

「ここで爆発させたら、地球は汚染させられん!」

 

核爆発のエネルギーは、核の炎は、港を焼き切り、アクシズの表面を焼き、その爆発範囲内の全ての存在を蒸発させた。

 

全てを飲み込む死の炎を、絶望の力を、シャアは地球へ放とうと準備していたのだ。

 

「アムロ、地球上に残った人類などは、地上の蚤だという事がなぜわからんのだ!」

 

 

 

アムロがシャアの視界から姿を消す。そう、アムロの目的はシャアの撃墜ではない。アクシズの落下阻止なのだ。今にアクシズにダメージを与えるために行動する。

 

「ガンダムは何処だ?……ラー・カイラムに上陸されたっ?」

 

シャアにもそれが分かっていた。だからこそアムロを早々に見つける必要がある。そして、発見したラー・カイラムがアクシズで行動しているということは、その作戦が着々と進行していることの証明でもあった。

 

そして、その結果がすぐ見える形でも確認できた。

 

「ノズルを止めた?アムロ、これ以上はやらせん!」

 

連邦のモビルスーツ部隊がジオンのモビルスーツを、シャアを墜とそうと襲来する。だが、そんなものは敵にもならないとシャアが即座に応戦し、撃墜する。

 

ビームライフルで撃ち墜とし、すれ違いざまにサーベルで胴を切り離し、編隊を組む小隊を拡散メガ粒子砲で排除する。

 

シャアもまた怪物。それらを蹴散らし、アムロを探すために飛ぶ。

 

 

 

同時に、アムロはアクシズの破壊活動を進めていた。アクシズの核ノズルにビームサーベルで、ビームライフルで、確実にダメージを与える。

 

「っ!もう来たのか!」

 

だが、それを許し続けるシャアではない。この濃度のミノフスキー粒子散布下で、シャアは確実にアムロの居場所を見抜いていた。

 

アムロはすぐにその場を離れる。直後メガ粒子砲がその場を焼く。

 

迫りくるビームをランダム機動でアムロは回避する、そして射撃に移ろうとビームライフルを構えた瞬間、そこにビームトマホークが突き刺さる。

 

「なに!?」

 

シャアの置き弾。アムロは誘爆前にビームライフルを投げ捨て、サーベルを構える。

 

「ララァが死んだ時のあの苦しみ、存分に思い出せ!」

 

シャアが叫ぶ。

 

近接格闘の間合いに入った瞬間に、アムロはダミーバルーンを射出、一瞬で膨らみ、シャアの視界を妨げる。アムロは同時に接敵し、シャアのライフルをサーベルで破壊する。

 

シャアも迷うことなくライフルを捨て、両手にサーベルを構えアムロへ斬りかかる。

 

「情けない奴!」

「何が!」

 

アムロの吐き捨てる言葉に、シャアが食い掛る。

 

「貴様こそ、その力を無駄に消耗していると何故気付かん!」

「貴様こそ!」

 

一瞬で間を開け、アムロが牽制にバルカンを放ち、それらをいなすためにシャアがメガ粒子砲を放とうとしたが、その出力は本来のものでは無かった。

 

「パワーダウンだと!?」

 

その瞬間をアムロは見逃さなかった、即座に転進、シャアから距離を取り、その視界から消える。

 

 

 

シャアはアムロを追い、アクシズの地表へ出てきたところで、それに気付いた。

 

ラー・カイラムがアクシズから離陸しようとしていると。

そして、コクピットを開けたガンダムから、アクシズの崩れた港の中へ侵入していくアムロに。

 

「ガンダムを捨ててでもアクシズを内部から爆破しようっていうのか!」

 

その後を追おうとした瞬間、シャアはその場から回避した。

 

「何だ!」

 

モビルスーツの姿が見えない、が……

 

「攻撃されている?まさか、ファンネルか!」

 

アクシズの陰からそのジェガンが飛び出し、ビームサーベルを叩きつける。シャアはそれを何とかサーベルで受け止める。

 

「君は!」

「お前があぁ!!」

 

「ここで来るのか、ハサウェイ!!」

 

 

「ハサウェイ、前のめり過ぎるよ!」

「分かってる、でも、許せないんだ。こいつが!」

 

怒りに呑まれている。自分でもそう思う。遅滞戦闘ならやり方はいくらでもある。ファンネルだって8機も残っているのだから。

 

でも、この激情を、粛々と受け止められるほど、僕の心は冷たくなかった。

 

「お前だ、いつも脇から見ているだけで、人の命を弄んで!!」

「やはりギュネイでは無理だったか!せっかくのアルパも、奴では使いこなせないとは思っていたよ。そのための強化措置だったのだがな!」

「お前、人が死んだんだぞ、たくさん人が死んでいるんだぞ!!」

「ハサウェイ!落ち着いて!!」

 

腹を足蹴にされ、その瞬間奴がサーベルを振り下ろす。やられる!

 

ビュゥゥーーーーン!

 

ファンネルが奴を攻撃し、その回避のために引いた。引いてくれた。

 

「ハサウェイ、落ち着いて。相手はアムロくらい強いんだよ!?」

「……うん」

 

呼吸をしろ、乱れた呼吸を整えろ。そうだ、安い相手じゃない。怒りに身を任せるな。怒ってもいい、でも、鉄の心を忘れるな。

 

「君もアムロも、何故理解できない。その才能が消費されている現実を!」

 

大仰に、奴はそう言う。

 

「私が、このシャア・アズナブルがそのすべてを粛清するのだ。地球連邦を打倒し、新たなる世界秩序を作る。父の意思を、ジオン・ダイクンの意思を継ぐのだ。そのためには、君のような、君たちのようなニュータイプが必要なのだ!」

 

奴の叫びは、何一つとして納得できなかった。理解はできる、その方法も。だが、受け入れることはできないし、何より、奴の心はそう叫んでいなかった。

 

「……ニュータイプですって?」

「そうだ!君や私のような人間が、新たな時代を作らねばならない!地球が持たん時が来ているのだ!」

「ニュータイプだったら、全部うまくいくんですか?」

「そうだ!全人類がニュータイプになれば、誤解なく人類は分かりあうことができる。戦争という連鎖を、悲しみの連鎖を断ち切ることができる!だからこそ!」

「……なら、なんで強化人間なんか作ったんです?なんで、あの人の命をすりつぶしたんです!?」

「この作戦には大義が掛かっている。そして彼はネオジオンの軍人だ。その命を懸ける覚悟は、とうにできていただろう。それが戦争というものだ」

「……あの人も、それを受け入れていたと?」

「受け入れるか否かではない。その立場にあったということだ。そしてこの私も、この作戦が成功した暁には、この命を捧げることも厭わない。それが未来に続くのならばな」

 

ああ、やはり違う。ニュータイプだから分かり合えるだなんて、そんな都合のいい話はない。そんなことが、この人は理解できないんだ。

そして、人の命を、大義とか使命だとかのために、簡単に焚べてしまえるんだ。

 

そして、この人は大義に燃えてなど、いない。ああ、こういうところはニュータイプなのかもな。

 

「違う、そうじゃない。あなたは怖くなったんだ」

「……なに?」

「何者にも成れない自分に怖くなった。持っている才能を生かせないことに怖くなった。自分たちの才能が、埋もれていくことが怖くなったんだ」

「……なにを?」

「ニュータイプにこだわるのは、本当にジオン・ダイクンの為ですか?違うでしょ?自分がニュータイプだから、それを特別だと証明するための手段にしただけだ」

「……黙れ」

「あなたはただの子供だ。ひとりぼっちが寂しくて、誰かに認めて欲しいだけのただの子供だ!」

「黙れ!!」

 

回避行動!

 

「クェス、牽制で良い、ファンネルをお願い!」

「分かった!」

 

引き撃ちで距離を取って、相手に消耗を誘え。武装はこっちの方が充実しているんだから!

 

「私はジオンのため、スペースノイドのためにこの身をささげたのだ!」

「なら何でスペースノイドの命を大事にしない!なんで苦しんでいる人に寄り添わないんですか!」

 

倒そうなんて考えるな!ワンミスで死ぬ。動きを見ろ!

 

「犠牲なき革命など、どこにもありはしないからだ!」

「その犠牲を生み出した人間が、最初の引き金を引かせた人間が、言っていいことですか!」

 

ランダム回避に乱数を加えろ!避けた先に攻撃が置かれるぞ!

 

「全人類の未来のためだ!勝利の暁に、犠牲となった者たちの魂は救われる!」

「その勝利は誰のためのものです!地球に住めなくなった人が、今度は新しい犠牲者になるだけでしょう!?」

「地球に住む者など、今や世を虐げるノミに過ぎん!」

「なら僕だってそのノミだ!僕は地球で生まれて、地球で育った!そんな僕が、何故ニュータイプになれたんです!?」

 

引け引け引け!マシンの性能が違い過ぎる!

 

「その子供の純真さゆえだ!だが連邦で利権をむさぼる愚民どもは違う!」

「そうやって例外を作り続けて、失敗の言い訳作りにしか聞こえませんよ!」

 

危ない!クェスの牽制が無ければ墜とされてる!

 

「宇宙移民の!その原点へ立ち返るのだ!でなければ、これまでの犠牲者が、スペースノイドが報われん!」

「なら!なんでこんなにも性急に事を運ぶんです!あなたなら、あなたの血と立場なら、100年の時を掛けて平和を勝ち取ることもできたのに!」

「そんな猶予は無いのだよ!」

「その猶予は誰のものですか!」

 

推進剤が半分を切った!まだか!?

 

「君のような子供に何が分かる!」

「分かりませんよ?言ってくれなきゃ!」

 

強い!速い!でも、アムロさんほどじゃあない!

 

「私はスペースノイドのためにすべてを捨てたのだ!自分を捨て、父ジオン・ダイクンの遺志を継ぐために!」

「捨てた?逃げたようにしか見えません!」

「黙れぇ!!」

 

掛かるな、クェスが牽制で距離を作ってくれる。回避のための間を作り続けろ。

 

「貴様に何が分かる!父に恵まれ、母に恵まれ、幸福を享受できた貴様に!」

「分かりませんよ僕には!言ってくれなきゃ、伝えてくれなきゃ何も分からない!」

「失ったこともない貴様が!」

「……失ったら奪っていいとでも?傷ついたら、傷つけていいとでも!?」

 

出力で負けてるんだ、前のめりになるな。

 

「そのような力を持っていながら、何故理解できない!何故分かろうとしない!」

「なぜわからせようと努力しないんです!なぜ他の考えを理解しようとしないんです!」

 

来た!ここ!

 

「クェス、ファンネルを手放して!」

 

アムロさんが来た!

 

ファンネルが見たことないような動きをして、シャアの機体を攻撃する。

 

「アムロさん!」

「ハサウェイ!?何故ここに?」

「サイコフレームとファンネルを届けに!僕はラー・カイラムに戻ります!」

「ああ、行ってくれ!」

 

これだけ近くにいればサイコフレームは感応してくれる、これで僕の仕事も終りだ。早くここから離脱しろ、このままじゃあアムロさんの足手まといになる。

推進剤がもう残り少ない、というかマシンに負担がかかり過ぎている。早く帰るんだ。

爆破が完了すれば、作戦も終わる。

 

 

 

ラー・カイラムに帰還すると、アストナージさんとチェーンがすぐに迎えてくれた。

 

「状況は!?」

「爆破部隊が戻ってきた!作戦は成功だ!」

 

にわかにそう湧いていたが、嫌な予感が続いていた。何か大きな見落としがある気がする。そんな気配。

 

 

 

その時、脳に光が走った。

 

 

 

見えたのは、多分ほんの少し未来の景色。アクシズの破片が、地球の重力に引かれていく景色。

 

「アストナージさん、ミサイルとバズーカ貰っていきます!」

「は!?何言ってんだハサウェイ!」

「まだ終わってないんです!」

 

「ハサウェイ!聞こえた、アクシズのどこを割ればいいかって!」

「聞こえた?なにが!?」

「あの人が教えてくれたよ、アクシズのことを!」

 

クェスがそう言うと、すぐに僕もそのことが分かった。アクシズの坑道、それに材質も。教えてくれた、花の香りのするあの人が。

 

「本当だ、これならいける!」

「内部から爆破して、亀裂を入れて、それをさらに砕くんだよね?」

「そう!後は外から攻撃して、両側から壊していく!」

 

足と腰にミサイルポッドを取り付けて、バズーカを両手に、腰に予備弾倉を装着して、すぐに発進した。

 

アクシズの破片は爆破の衝撃で加速し、かつての半分程度の質量を保持して、地球へ落下しようとしていた。

 

急げ、時間はそんなに残されていない!

 

「アムロさん、聞こえますか!」

「ハサウェイ!?」

「今から僕たちでアクシズを内部から割ります。アムロさんは外からお願いします!」

「何を、っ!」

 

その瞬間、アムロさんと思考が繋がった気がした。

 

「……分かった、ファンネルを半分持っていけ!助けになる!」

「ありがとうございます!行こう、クェス!」

「うん!」

 

 

 

声が聞こえていた。それが誰なのかは分からないけど、僕とクェスに寄り添ってくれる声だった。

 

『ほらそこだ、そこを抜けると次の道へつながる』

 

その声に従って、僕とクェスは声もなくひたすらに破壊作業を進める。何も言わないのに、全部わかっていて、そんな不思議な状況を、戸惑うことなく受け入れていた。

 

僕がミサイルとバズーカで、衝撃ですぐに崩れるもろい部分を砕き、クェスはファンネルでモビルスーツが入り込めない、しかし精密にダメージを加える必要がある箇所を攻撃していく。

 

『この先は行き止まりだ。正面にミサイルを叩き込め』

 

残された時間はそう長くない。時間がかかり過ぎれば、たとえアクシズを小さく割れても、重力に引きずり込まれて地球に隕石が降り注ぐだけだ。

 

『この坑道は広いが酷くもろい。見える柱を撃ち抜けば一気に天井が落ちる』

 

クェスが柱をファンネルで打ち抜き、僕が壁をバズーカで破壊していく。

 

『次はあちらだ。ここは地盤がひどく固い。開発の時に苦労したよ。ここを起点に周囲を割れ』

 

時間が迫る。クェスの息遣いが耳元で聴こえる。急げ、急げ。

 

『ここを破壊すれば、この半身になったアクシズは内部から一気に崩れる。それに、外からも迫っているぞ』

 

外から気配を感じる。そして、アムロさんの呼吸も。僕はバズーカとミサイルを一気に叩き込む。

 

『さあ外へ逃げろ。その道すがら、最後の仕事だ』

 

縦横無尽に張り巡らされた坑道を、迷いなく進む。ミサイルは打ち尽くして、バズーカも予備弾倉を残すばかりだ。ファンネルも出力が落ち始めている。

 

これは、間に合わないか……?

 

『ほらそこだ、分かるだろう?拾っていけ』

 

そこへ、思念が飛んだ。

 

ファンネルが飛んでくる。でもニューガンダムのものでも、アルパのものでも、シャアのものでもない。円錐型をした、見たことのない形状のファンネル。

 

『古ぼけてエネルギーも少ない。ここで使い捨てていけ』

 

撃つべき場所は、そこ!発射と同時に、そのファンネルたちは力を失い壊れ、爆発していった。

 

『さあ時間がない。早く行け』

 

ありがとう。そう伝えようと思った時、その人の気配は消えていた。

 

 

 

アクシズの坑道から出た瞬間、凄まじい重力を感じた。地球へ引っ張られる。だが、そのエネルギーを、アクシズもまた受けていた。小さく割れていくアクシズが、その質量差によって徐々にバラバラになって行く。そしてその速度差によって生まれた破片と破片の隙間から、炎が燃え出ていた。

 

「ハサウェイ!聞こえているかハサウェイ!」

「アムロさん!」

「まだアクシズにいるなら離れろ!重力に引きずり込まれるぞ!」

 

急いで離脱を!そう考え飛ぼうとするが、マシンが空へ飛ぼうとしない。

 

「……推進剤が」

 

完全に意識から外れていた。そうだ、最初の出撃から推進剤を補充していない。さっきの帰艦の時も、アクシズ破壊のための弾薬は補充したが、推進剤は補給していない。

 

やばい。帰れなくなる。

 

「ハサウェイ……」

 

クェスが不安そうな声で言う。

 

「大丈夫。何とかする」

 

アクシズの破片が質量差によって落下速度に差が生じている。その破片が、階段のように空へと伸びている。

 

「アムロさん!推進剤が無くて飛んで帰れません!」

「何だと!?」

「アクシズの破片を踏んで上に登ります。ラー・カイラムからアンカーを出して引き上げてください!」

「分かった!急げよ!時間がない!」

 

残った推進剤を少しずつ吹かしながら、迅速にアクシズの残骸を登っていく。

 

ギリギリ、ギリギリだ……

 

登る速度の方が、重力の落下よりまだ早い。登れてはいる、だが、間に合うかどうかが分からない。

 

間に合うのか?いや、考えるな、登れ。

 

「ハサウェイ!聞こえるか?アンカーを射出する!救難信号を出せ!」

「はい!」

 

救難信号を出し、なおも登る。視界が開けてくる。それは、登れる残骸がもう少ないということでもある。

 

アンカーが来た!

 

残った推進剤を吹かし、アンカーを掴もうと手を伸ばす!

 

そこにアンカーが来ている、来ているんだ。

 

なのに!

 

あと5メートル、あと3メートル、もう手が届くのに!

 

 

 

推進剤が、もうない。あとほんの少し、あとほんの少しが、届かない!

 

 

 

届いてくれよ、僕一人じゃないんだ。クェスがいるんだ。

 

僕一人だったら諦めもつくさ、でもクェスは違う!頼むよ、僕の命なんてどうなってもいい、だからクェスは!

 

クェスが、僕の肩に手を置く。

 

「違うよハサウェイ、ハサウェイの命がどうでもいいなんて、そうじゃないよ」

 

何か、光を感じる。

 

『そうだよ、香港のあの時も、この前の時も、そんな風に粗末にできる命を、僕は助けたつもりはない』

 

声が聞こえる。僕でも、クェスでもない、柔らかな声が。

 

『言っただろ?長生きしろって。こんなに早く来ようとするんじゃねーよ』

 

その声は、とても優しくて、温かくて、

 

『あの子に似た優しい心、そんなお前を、アクシズで死なすのは寝ざめが悪い』

 

涙が出るほど温かいその声は、光になって僕とクェスを包んでくれた。

 

光がマシンへ伝播して、手の伸ばした先から、また光が伸びる。

 

「ハサウェイ!聞こえているか!いったい何が起こっている!?」

 

光がアンカーへと伸びて、繋がる。

 

「大丈夫だよハサウェイ、ほら、飛ぼう?」

 

クェスが僕にそう微笑んでくれた。

 

マシンが飛ぶ、空を自由に舞う鳥のように。

 

その暖かな光が、僕たちの背中を押して、手の伸ばした先へ押し上げてくれた。

 

マシンの手が、アンカーを掴む。

 

「ジェガンとのコネクト完了!聞こえるかハサウェイ!今から引き上げるぞ!」

 

アストナージさんの声が聞こえる。

 

マシンが。アンカーによって宇宙へと引き上げられていく。

 

ふと、後ろを見下ろした。

 

アクシズはもうバラバラの石ころになって、地球の外へと飛んでいくものや、重力に引かれ落ちていくもの、大気圏で眩しい光を放ちながら焼き切れて行くもの、色んな所へ飛んでいった。

 

「ハサウェイ、聞こえるか!聞こえているか!?」

 

父さんの声が聞こえる。

 

「とう、さん……」

「ハサウェイ!無事なんだな!良かった、良かった……!」

 

言葉が出てこない。みんなに助けられた、みんなに背中を押してもらった。

 

「ハサウェイ……」

 

クェスが僕の手を掴む。笑ってくれている。

 

振り返ると、眼下には地球が目いっぱいに広がっていた。雲一つない、美しい青さで、地球がそこに広がっていた。

 

 




読了ありがとうございました!

アクシズショック起きず!そしてアムロも、多分シャアも生き残っているはずです。

次回どうなるのか、戦後処理パートなのか、ロンデニオンで祝勝会なのか、一気に時間が飛ぶのか、明日の私、よく考えとけよ!

誤字報告、感想、高評価、いつもありがとうございます!もうね、誤字に関しては気にしないことにします。ずっとなんかしらミスってるので。

前回の感想が大変あたたかくて心からほっとしてます。ああ良かった。みんな優しくてうれしい。

引き続き感想、高評価頂けると嬉しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。