ハサウェイがアムロやシャアに影響される前に機械オタクになった世界線のお話 作:陸奥九十九
アクシズショックも起きないし、アムロもシャアも無事だし、原作と違うけど大丈夫か!?と戦々恐々していたんですが、温かく受け入れてもらえて本当に嬉しかったです。
今回と次回で逆シャアの時間軸でのお話がほぼ全部終わるので、そしたらバイクのお話が書けるぞぉーー!
あと誤字報告本当にありがとうございます!多分今回もある気がしますが、温かい目で見てやってください!
その後のことは、よく覚えていない。
ラー・カイラムに戻って、そこで父さんとアムロさんと、他の皆が僕たちを迎えてくれて、ジェガンから降りて、みんなにもみくちゃにされて。
父さんが泣きながら僕とクェスを抱きしめてくれて、それにつられて僕も泣けてきて、そんな僕を見てクェスも泣いて。
そして、ぷつんと意識が途切れた。
目が覚めると、クェスの顔が目の前にあった。
「んん……」
クェスはまだ眠っていて、寝言なのか何かうなってる。というか何で同じベッドで寝てるんだ?
起こさないように静かにベッドを出ると、艦内はまだ慌ただしそうに誰もが小走りに作業していた。でも、そこに少し前までのピリピリとした緊迫感は感じられない。
そうだ、戦争が終わったんだ。なんとなくそう思えた。
ブリッジへ向かうと、やはりブリッジも忙しそうだけれど、みんなどこか笑顔を浮かべていた。アムロさんがすぐに僕に気づいて、こちらに駆け寄る。
「ハサウェイ!目が覚めたのか」
「ハサウェイ!?本当だ、大丈夫か?どこか変なところは無いか?」
アムロさんの声に気づいて、父さんが慌てて僕の下へ来る。
「大丈夫。変なところは……今のところ無さそう」
「クェスはどうした?一緒にいただろ?」
「寝てたので、そのままにしておきました。大分疲れてると思うので」
そうだ、思い返しても大分無茶をさせた。戦場へ出て、無茶な機動で振り回して、しかも最後の方はずっとファンネルを制御してもらったのだ。
あのシャアとの戦闘の時なんて、8機のファンネルを数分間フル稼働してくれたわけだし。……いや凄いなクェス。よくそんなことができたな。
「それはハサウェイもだろう?ジェガンで戻ってきたらすぐに倒れたんだ。覚えているか?」
「ええっと、おぼろげに」
「あの後大変だったんだ。パニックになったブライトがお前とクェスを抱えて半狂乱に……」
「おい!変なことを言うな!」
アムロさんと父さんがそう言って小突き合ってる。そっか……
「戦争、終わったんですね……」
思わずそう口に出ていた。二人はきょとんとした顔を一瞬浮かべて、その後にすごく優しい笑顔を浮かべた。
「そうだ戦争は終わった。先ほど地球からのレーザー通信も来たが、落下したアクシズの破片による被害はほぼ無いそうだ。ハサウェイ、君とクェスのおかげだ」
「そうだハサウェイ、よくやってくれた。よく地球を……母さんやチェーミンを守ってくれた」
そう言われて、その言葉がやけに体に沁みた。
「そっ、か。終わったんだ……」
何処か脱力した僕を、父さんが抱きしめていた。
「そうだ、終わったんだ。……ありがとう、ハサウェイ」
父さんの力は強くて、潰されそうに抱きしめられて、少し苦しくて、でもそれが、とても暖かくて嬉しかった。
※
まもなくしてクェスも目が覚めたようで、慌てた様子でブリッジへ駆け込んできた。そして僕を見つけると、「なんで一人で行っちゃうの!」と起こさなかったことにいたく憤慨していた。
その後クェスと一緒に医務室へ向かい、簡易的な検査を受けて、お互い何処も異常なしと判断された。
クェスはまだ疲労が抜けないのか、そのまま医務室でお昼寝タイムに入っていった。
格納庫へ向かうと、そこは惨憺たる状況だった。
かつてモビルスーツや装備で埋め尽くされていた格納庫は、半分以上が場所を空けて、また帰ってきたモビルスーツも無事な機体など殆ど無く、ボロボロのマシンたちが崩れ落ちたかのように並んでいた。
モビルスーツの数が少ない。つまり、それだけ帰ってこなかったということなのだろう。分かっていたつもりだった、戦争の悲惨さという奴は。でも、終わった後に振り返ると、その陰鬱さがよりわかる。
色んな人がいた。親切な人も、神経質な人も、ちょっとガサツな人も。僕の整備に「大丈夫か?」と声をかけてくれたり、飯食えよとお菓子をくれたり、何もしゃべらずに頭をもみくちゃにしていったり。
帰って来れた人もいる。帰って来れなかった人もたくさんいる。そして、帰って来れなかった人には、もう二度と会えないんだ。
お別れの言葉なんて言ってない。みんな行ってくると、留守番よろしくなと、そんなことしか言っていないのだ。だって、みんな帰ってくると信じて戦場へ出たのだから。
戦争に出て、必死に戦って、戦死した。
よくあることなのだろう。だって彼も行ってしまったんだから。僕を見送って、僕を助けてくれた彼も。
でも、そんな簡単に割り切れるものでは決してなかった。
僕とクェスが乗ったジェガンは、中々凄いことになっていた。
機体のどこも欠損はしていない。確かに戦闘の跡で見た目はボロになっているが、他の機体と比べればマシなレベルだ。
多分この格納庫の中で、奇麗さを競えば結構な上位に入ると思う。
ちなみに1位はアムロさんのニューガンダムである。ぶっちぎりの1位である。武装はほぼすべて使い切ったが、外装へのダメージ無し、欠損箇所無し。関節やらジェネレーターやら推進系など、内部パーツもほぼ問題なし。
このまま次の戦闘に出られるレベルだし、もし僕が前情報を全く知らずこのマシンを整備することになったら、恐らく短時間の偵察任務帰りだと推測すると思う。そういうレベルである。
あの人やっぱ頭おかしいんじゃないだろうか?本当に人間か?
僕たちの乗ったジェガンも、見た目だけで言えばそう壊れているようには見えない。確かに所々溶けているし焦げているし、ボロボロと言えばボロボロだが、問題は中身だった。
ジェネレーターこそ無事だが、それ以外はほぼ死んでいた。関節は疲労限界でモーターが壊れ、伝達系も負荷がかかり過ぎたのか所々異常を出していた。
さらにコンピューターに異常な負荷がかかっていたのか、システム起動さえできない状態だった。
診断機を当ててコンピューターをチェックすると、機体制御用のユニットがオーバーロードしており、完全に故障していた。
原因は許容限界を超えたためだった。どうにもシャアとの戦闘で、ジェガンに設定されていた稼働限界を超えていたらしい。学習コンピューターに残っていた戦闘記録を見返すと、まあまあありえない数値を叩き出していた。
アムロさん換算で、約0.85アムロさん。あの時僕とクェスは、全モビルスーツパイロットの上澄みの上澄みレベルの戦闘が出来ていたらしい。
ちなみに普段のシミュレーターで出ていた数値は、僕が約0.55アムロさん、クェスが約0.52アムロさんだったので、本当の意味でありえない領域へ至っていたのだろう。ちなみに本気のアムロさんと戦うと約10秒で墜とされる。倒したことなど一度もないし、多分今後も倒せないと思う。
そんなジェガンに関しては、アストナージさんやチェーンさんと相談したところ、良いデータが取れそうだから放っておいていいと言われた。後回しである。
ありがとうジェガン。最後まで頑張ってくれて。
ボロボロになったマシンに手を触れて、少し泣きそうになりながらそう感謝した。
戦争は終わったが、作業はたくさんある。そして人手もそんなに充実しているわけじゃない。そんなわけで、僕はボロボロになったマシンたちの修理をしていた。
というのも、ここから敵の襲撃が来る可能性があるからでもある。
ラー・カイラムには、シャア・アズナブルが乗っている。アムロさんが捕らえ、捕虜として軟禁しているらしい。
そのシャアを奪還せんとネオジオンが襲撃してくるかもしれないということだ。そう言った事態に備えるためにも、動かせるモビルスーツは多い方が良いと突貫作業での整備が続いている。
そんなラー・カイラムは、サイド1、ロンデニオンへ再び進路を取っていた。
連邦の軍事拠点であるルナ2ではなく、わざわざロンデニオンへである。話としては、ルナ2は連邦軍の拠点ではあるが、そこでは反ネオジオンの色が強すぎて、交渉に支障をきたす可能性がある。そのため地球からもルナ2からもほど近い、中立コロニーであるロンデニオンで、改めて終戦等の対応をする、とのことだ。
戦闘が終わり、レーザー通信が使用可能になったタイミングで、アデナウアーさんからそのような通信が来たらしい。結構な失態をやらかしたアデナウアーさんではあるが、状況が状況のためすぐに後任が見つからず、シャアの引き渡しまでは彼が窓口となるらしい。
そしてその失態を丸っと尻拭いした、父さんを始めとしたロンドベルの面々が、特使的なポジションで対応するとも。
連邦ってでっかい組織なのに人がいないんか?どうかしてるんじゃないのか?
ロンデニオンまで約2日。またロンデニオンに到着してからも襲撃に備える必要はある。格納庫は騒がしく仕事に追われていた。
翌日、アムロさんに呼ばれた。
何事だろう?と思ったが、その内容は意外なものだった。
シャアが、僕との面談を希望している。アムロさんは僕にそう伝えた。
シャアが僕に何を言いたいのか分からないし、僕を不快にさせるかもしれない。勿論会わなくてもいい。アムロさんはそう言っていたけれど、どこか会って欲しいような、でもそうじゃないような、絶妙な気配を漂わせていた。
「シャアって、この後どうなるんですかね?」
「……殺されはしないと思う。おそらく連邦がスペースノイドという大きな枠組みへの交渉材料にするはずだ」
「これだけの戦争を引き起こして、ですか?」
「連邦は、正直今回の戦争も重大に捉えていない。でなければ、アデナウアーをそのまま交渉の窓口にしたりしないだろう」
「地球が、滅びかけたのに、ですか?」
「滅びかけたとさえ認識していないかもしれない。それほど今の連邦は愚鈍になった。」
一年戦争の時は、もう少しまともだったのだが。アムロさんがそう悲しそうに言う。
確かに、今回の戦争もほとんどロンドベルのみで解決している。連邦がほかの部隊をアクシズへ寄こしたり、ましてや連邦がルナ2の全部隊をアクシズへ派遣した、なんて状況は起こらなかった。
連邦はまだ、シャアという存在を、便利に使える駒として認識している。
思わずため息を吐く。何だろう?必死に解決した状況を、鼻で笑われたような、見くびられたかのような不快感がある。
「シャアは、飼い殺しにされる?」
「恐らくな。あとは体のいい人質だろう。スペースノイドにはシャアの血を信奉するものも多い。実際、今回の戦争を起こしたのはそういう連中だ。そう言った連中への交渉材料として、恐らくシャアは使われる」
「……緊張感、無いですね」
「本当にな」
アムロさんが吐き捨てるように、苦々しくそう言った。僕も同じ気分だった。
「分かりました。シャアに会います」
「……良いのか?」
「何を僕に期待しているのかは知りませんけど、まあ話すだけなら」
「分かった。ブライトを呼んでくる。少し待っていてくれ」
アムロさんが不安そうにしている父さんを連れて来る。シャアは捕虜を収容する専用の部屋で隔離されているらしく、そこは刑務所での面会のように会話できる構造になっているらしい。
父さんが不安そうに、本当に会うのか?別に会う必要もないんだぞ?と念入りに確認していた。その不安も理解できる。あの人にはそういう魔力がある。
会った人や会話した人に対して、無意識に自分への好意を持たせる魔力。カリスマと言うべき力を。クェスはそれに苦しんで、僕はそれに苛立った。
何かあればすぐに面会は中止させる。その条件で父さんに了承してもらった。
シャアは、鷹揚とした様子でその部屋にいた。
「やあ、会いたかったよ。ハサウェイ・ノア」
鬱陶しいほどに自信たっぷりに、そう言った。
「……どうも」
「アムロとブライトも一緒か。随分と慎重だな、いや、過保護なのかな?」
「余計な口を叩くなシャア。これはハサウェイの好意で成立した面談だ。今すぐに切り上げてもいいものだ。言葉を選んで発言しろ」
アムロさんがにべもなく切り捨てる。シャアはそれをやれやれといった様子で受け止める。
何だ?この余裕感。鬱陶しいし腹立つな。
「君にはしてやられたよ。アムロがアクシズを割るまでの時間稼ぎにしろ、その後のアクシズの処理にしても」
「……そうですか」
「君のような子供にまんまと嵌められるとはね。私もまだまだ青いということだ」
「……そんなことを、僕に言いたかったんですか?」
「まさか。あの時私は、間違いなく君を墜としにかかった。アムロならまだしも、君ごときに対応できる状況ではないと踏んだ。何故、君はあそこまで戦えた?」
この人が何を聞きたいのかまるで分らない。お茶飲んでお喋りしに来たわけじゃねーぞ?
「……あの時は、僕を助けてくれる子がいました。あの子がファンネルを操縦し、僕は回避と遅滞戦闘に専念できた。だからああいう戦闘が出来た。それだけだと思います」
「あの子?……そうか、あの時の少女か」
あの時一瞬だけ見たクェスを覚えていたのか?ちゃんと覚えてるのも気持ち悪いな。記憶力のび太君であれよ。
「そうか、あの少女と共に戦ったからこそ、あれほどの能力を引き出すことができたわけだ」
「一馬力より二馬力という意味で言えば、そうじゃないですか?」
「違うな、あの少女だからこそさ」
シャアは意味ありげにそう嘯き、僕を見る。
「やはりニュータイプという奴は難しいものだ。ここぞという場面で私の邪魔をする」
「アムロさんに言うべき言葉だと思いますけど」
「いいや、君のような幼く、未来をうまく感じ取れない子供にこそだ」
「……僕を馬鹿にするために、わざわざ呼んだんですか?」
「君は理解すべきなのだよ、連邦政府の腐敗と、その連鎖を断ち切るための粛清を」
「シャア、言葉を選べと言ったぞ」
奴の演説のような説教を、アムロさんがそう切り捨ててくれた。だが、そのアムロさんにも、シャアは食って掛かる。
「アムロ、貴様も理解しているはずだ、連邦の腐敗を。私がこうしてのうのうと輸送されていることこそ、その証左だろう」
「活動家のような政治論を語りたいのなら、この場である必要はないな?」
父さんもその説教を切り捨てる。その苛立ったように、シャアは論を変える。
「……君は言った。私の在り様は子供のようだと。そのやり方は間違っていると」
「……はい、そう思います」
「君は地球で生まれ、地球で育ち、にもかかわらず君はニュータイプになった。それが理由だと」
「少なくとも、地球を滅亡させれば全部うまくいくだなんて、僕は思いません」
「ならば、今の連邦政府の腐敗をどうするというのだ。地球の環境のため宇宙へ捨てられたスペースノイドの無念は。今まさに連邦政府の利権をむさぼる連中は、自分たちに都合のいいように、再び地球を汚染しようとしている!」
その言葉は、悲しさもあるけれど、やはりどこか空虚だった。地球の未来と、そのために犠牲になったスペースノイドのための熱ではなく、何かを為さねばならないという個人の熱を、僕は感じてしまった。
「……地球の未来のために、犠牲になったスペースノイドのために、今地球に住んでいる人は犠牲になっても良いと?僕の家族は、いや僕も含めて、地球に住んでいることはそれだけで悪だと?」
「ならば宇宙に捨てられた民はどうなる?貧困を理由に宇宙へ捨てられ、粗末な箱だけを渡されて、それでも未来のためにと命をささげたスペースノイドたちの無念は!」
「僕は地球に家族がいる。あなたが宇宙に仲間を持つのと同じように。だから、僕はあなたの望む答えを出せませんし、そもそも命の価値の軽重を、論じたくなどない」
「君にわかるか?地球連邦によって居場所を追われ、宇宙でもその存在を軽んじられ、仲間と思っていたスペースノイドからも弓引かれ、家族を奪われ、復讐に生きるほかなかった苦しみが!やっと得た幸福さえも、居場所さえも、戦争で奪われた痛みが!君のように家族に恵まれ、幸福に暮らしてきた男に!」
ああ、これか。この人が心の底から感じていた痛みは。
失い過ぎて、取り戻そうと必死に手を伸ばしても、それで勝ち取ったものでも、価値を見出せなかった。価値のあるものは全て零れ落ちた。だから、苦しいんだ。だから戦おうと、この人は決めたんだ。
母さんが言っていた。シャアは子供のように純粋な人だと。その意味が、改めて分かった。
でも……
「……小さい時、もっとずっと幼かった時、父さんがちょっと嫌いでした」
父さんがぎょっとした顔でこちらを向く。
「父さんはめったに家に帰ってこなくて、帰って来れなくて、半年に一回とか、もっと長い時は一年丸っと帰ってこない時もありました。だから父さんが帰ってくるってわかると、母さんが嬉しそうなんです。何を言わずともそれが伝わって、『ああ、父さんがもうすぐ帰ってくるんだなあ』って」
懐かしい記憶。多分、9年とか10年とか、その位昔からの記憶。
「でも、任務とか事件とかで、父さんが帰って来れなくなって。そうすると、その連絡を受けた日は、母さんがどこか寂しそうなんです。無理に明るく振舞おうとしてるのが分かって。それがとても嫌だった」
そうだ、テンションは高いのに、やけに悲しそうだった。
「その日からご飯が豪華になるんです。でっかい海老フライとか、ハンバーグとか。その日のために準備してた食材とかを、少しずつ使っていくんですよ。だから、なんでもない日なのに、夕食が特別豪華になる。僕も妹もそれに喜んで、母さんも美味しいねって、でも、どこか寂しそうで」
好きなのに嫌いだった。美味しいご飯と悲しそうな母さん。どうして?と。
「その時こう思ったんです。どうして父さんは母さんを悲しませるんだろう。ちゃんと父さんが帰ってくれば母さんは悲しまないのにって。」
その母さんの悲しみを癒せない、自分も嫌いだった。
「大きくなるにつれて、父さんの仕事が、軍人さんっていう仕事が分かって、母さんもそれを分かっていると分かって、そう言うものなんだと、知ることはできました」
今回の戦争で、その大変さも、恐ろしさも、よく分かった。
「でも納得はできませんでした。知って、分かって、理解して、でも感情はそれだけじゃ収まりが付かない。理解と納得は、全く別なものですから」
「……それが何だというのかね?」
「あなたの悲しみを、苦しみを、痛みを、そのすべてを僕は理解できないと思います。ニュータイプだから全部わかるだなんて、そんな都合のいいことはありません。しっかり話し合って、自分がどう感じてるかも伝えて、相手がどう思ってるかもよく理解して、そこからどうすべきかの折り合いをつけるんです」
アムロさんが柔らかく笑う。
「僕とあなたはニュータイプかもしれない。でも、あなたの怒りを、こうして話すまで僕は理解できなかった。きっと今も、全部を理解できているわけじゃないと思います。だから話し合うべきです。ジオンをどうしたいのか、スペースノイドをどうしたいのか、地球連邦をどうしたいのか、地球をどうしたいのか」
ニュータイプが何なのか、僕はよく分からない。自分が特別だとも思わない。
「あなたの言うことの全てが間違ってるとは思いません。地球連邦の在り方にも思うところもあります。でも間違ってると思う人を全部殺しても、世界は良くなったりしません。その先にあるのは恐怖で縛られる冷たい世界です。それだけは間違ってると言えます」
革命だとか粛清だとか、そう言うのが正しいとは思えない。
「あなたには力があります。こんな大きな戦争を起こせる力、地球さえも滅ぼせるほどの力。その力を、すべての人類のために使ってください」
「すべての、人類……?」
シャアが僕を見つめる。
「スペースノイドだけじゃない。アースノイドだけじゃない。地球と宇宙、すべての人類です」
その目を、僕も見つめ返した
「コロニーを見て思いました。凄い場所だと、凄い技術だと。地球にはない素晴らしい場所です。だから、捨てられたんじゃない、切り拓いたんだと思いました」
そうだ、僕はコロニーを見て、コロニーそのものに感動した。その凄まじいシステムに。
「地球連邦のダメなところもたくさんあると思います。そもそも今回の戦争が起きた原因だって、連邦がアクシズをジオンに渡したからです。正直どうかしてると思います」
そうだ、アデナウアーさんはちゃんと反省して欲しい。反省で済むレベルでは到底ないけど、ちゃんと反省して欲しい。すべきだ。しろ。
「でも、連邦にまつわる全ての人が悪いわけじゃないです。父さんもアムロさんも連邦軍人だし、僕だって連邦政府の管理下にある市民です。連邦という傘は、広くて大きい。その傘の下にいる人すべてを殺そうとするのなら、それはただの虐殺です」
必死に懸命に生きる人も大勢いる。地球に住む人全員が悪人じゃない。
「ちゃんと正すんです。面倒くさくても時間がかかっても、責任をもって。あなたにはそれができる力があると思います」
「……私に政治家にでもなれと?」
「政治家じゃなくても別にいいです。でも暴力で何でも片付けようとするのは間違ってると思います」
「……青いな。世の穢れを知らぬ」
「13歳ですから。これから知っていくんじゃないんですか?」
シャアが俯き、沈黙する。
「……ブライト」
「なんだ」
「……良い子供に育てたな」
「ああ、自慢の息子だ」
そう言って父さんが僕の頭を撫でる。これで終わりだと父さんが場を切り、僕たちは椅子を立った。
「……ハサウェイ、君に30年前に会いたかったよ」
シャアがそう呟いた。
「……じゃあ、これから30年付き合っていけるように、頑張ってください」
期待してます。そう言って、僕たちは部屋を出た。
読了ありがとうございました!
シャアの、シャアのキャラが多分絶妙に掴み切れていないかもしれない……でもあいつよく分かんねえんだもん……
たくさんの感想、高評価、本当にありがとうございます!嬉しくて何度も感想を読み返してます!
引き続き感想、高評価頂けると嬉しいです。