ハサウェイがアムロやシャアに影響される前に機械オタクになった世界線のお話 作:陸奥九十九
なにせ本筋にまったく関係ないハサウェイを絡めるとおかしなことになるし、じゃあ完全にバナージと別行動させると整合性合わせながらの裏ストーリーだしで。
頑張って書きますが、温かく見守っていただければと思います。
お楽しみいただければ幸いです。
カーディアス・ビストにとって、アクシズ事件は正と負、両方の結果をもたらした。
アクシズを地球に墜とさんとしたジオンは、最終的にその目論見を潰され、しかし総帥たるシャア・アズナブルは生存し、アクシズや戦争準備に巨額の資金を投じたため、その分の跳ね返りを被りはしたものの、大きな損害なく状況を終えた。
対して連邦は、シャアの暗躍を感知できず、それまでの軍縮が確実な裏目に出て、何とかロンドベルの活躍で地球の滅亡という危機からは脱出したものの、その存在性を大きく問われる結果となった。その多くを報道統制によって世に出させることは防いだものの、分かるものは分かっているし、一部にとってはもはや暗黙の了解であった。
連邦という一党独裁、その傲慢な強権に一撃を与えた、その点に関してカーディアスはアクシズ事件には正の側面があったと感じた。
しかし、連邦がその存在性を問われたことによって、正当性を証明するかのように、さらに強権を振るう結果を導いたのも、また事実であった。
連邦はアクシズ事件を経て、さらに組織が硬直化した。
地球を自分たちの箱庭と化し、その安寧を守るために反連邦運動に対し過激な統制を行い、そしてジオンに対してもさらに強硬な姿勢を見せるようになった。
そして、アナハイム、ヤシマ、ブッホが協力し市場を築いたプチモビ市場により、宇宙移民は加速し、これに対し連邦は酷く好意を表した。
地球とは選民のみが居住を許された特別な土地であり、そしてそこに住む自分たちこそが特別である、そんな歪んだ優性思想を連邦は強めていった。
宇宙移民を加速させ、宇宙での居住者が増え、労働者が増えれば、さらに連邦は巨大化し自分たちの存在は優位になる。
そんなおままごとのような倍々ゲームを、今の連邦、いや連邦政府の首脳陣は、本気で考えているかのような愚かさがあった。
そしてその状況を歓迎しているのは、他ならぬジオン共和国であった。
ネオジオン総帥であるシャアが移民の受け入れと、地球と宇宙の区別なき共存を掲げる一方で、ジオン共和国首相のモナハン・バハロは、独自の経済圏の確立と、その首魁をジオンとした、経済基盤からなる新ジオニズムを提唱し、スペースノイドの優位性、延いてはジオンの正当性、そしてアースノイドの排除を標榜し政治的拡大を図ろうとしていた。
それに気付かぬシャアではなかったが、それを完全に止めるには宇宙はあまりにも広大で、そしてアクシズ事件でのシャアの行動があまりにもセンセーショナルであり、現在の融和主義的主張との齟齬が酷く、上意下達のように即時浸透させることは不可能であった。
シャアほどのカリスマがあれば、対面し10分も会話をすれば相手の心の内側に入り込めるであろうが、かつて地球滅亡さえ掲げた生粋の排外主義者と信じられたシャアに対し、そもそも対立していたものは会おうともしない。
その結果ジオンは、シャアを支持する者、シャアに反対する者、これまでのジオン共和国の方針を支持する者、そしてモナハンの口車に乗せられる者など、これまで以上に内部分裂を進めることとなった。
サイアム・ビストの寿命が迫ったのは、まさにそんな時であった。
サイアムは望んだ。箱の解放を。もはやこの世界が進めば、残るのは地球と宇宙の対立のみであり、そこに希望などない。更なる戦乱が次に起こった際、それは全人類への決定打となり、終わりなき戦禍に誰もが巻き込まれることになる。
そうなる前に、人間の可能性を信じ、箱の解放によって世界に希望をもたらす一撃を与えたいと。
その望みに、カーディアスは迷っていた。確かに連邦の腐敗はさらに加速し、ジオンの分裂も始まり、宇宙世紀0100のジオンの自治権返還により、世界は閉塞するかもしれない。サイアムの考えが間違っているわけでは無い。
だが、アナハイムをはじめとした大企業が国家レベルの力を持ち、連邦の存在に歯止めをかけていることも、また確かではある。
プチモビの普及に際し、アクシズ事件によって停滞した、いやネオ・ジオン戦争から停滞した経済が動き始め、その恩恵が連邦や大企業だけでなく、一般の民衆にまで波及するようになった。そしてそれは、地球やコロニーを超え、開発惑星にまで及ぼうとしている。
箱の解放は、それら経済の流れに停滞を及ぼすものでは無いのか?それとも、更なる加速と発展をもたらすことが出来るものなのか?
カーディアスはそう迷っていた。だが、最後は祖父の言葉に殉じた。
人の可能性。その言葉を信じて。自らはそのために多くを捨てたくせに。カーディアスはそう自分を嘲笑した。
信じる。そう心に誓ってからほどなくして、かけがえの無い存在が、大いなる意思と共に自分の元へやってきたと、カーディアスは知った。
※
タクヤ・イレイにとって、ハサウェイ・ノアという存在は酷く近寄りがたいものだった。
アナハイム工専への進学はかねてより考えていたもので、趣味と実益を両立し、なおかつモビルスーツに触ることもできると、タクヤにとっては願ってもない選択肢であった。
そして、工専に進学した。周りは自分と同じような機械いじりが好きな男か、もしくはくいっぱぐれが無いようにアナハイムに就職すると決めたやつらだった。そんな奴らばかりだし、それがおかしいとも思わなかった。
だからこそ、ハサウェイの存在は酷く浮いていたように思った。
ハサウェイはとにかく目を引く存在だった。特段美男なわけでも、背が高いわけでも、恐ろしい相貌をしているわけでは無い。なのに目を引くのだ。男女関係なくハサウェイは多くの人の目を引き、そして誰も近寄ろうとしなかった。
いや当初はいたのだ。悪ガキぶったやつが、ハサウェイが地球出身だと、お坊ちゃんだと揶揄う様に絡んでいき、バカにしようとして、出来なかった。
その目に見つめられると、何となく恐縮し、何となく悪ぶることもできず、しどろもどろになりながらヨロシクなんて口早に話して、そいつは去っていった。
それからはよりハサウェイは孤立した。いや、孤高だったのかもしれない。
ハサウェイ自身もそのことに気を留めず、アルバイトがあるとかで授業が終わるとすぐに学校を出ていく。強がりの意味を全く含まず、ハサウェイは孤高の存在だと思った。
授業はどれもほぼ満点で、座学も優秀で、実技はさらに優秀。コンピューター関係に関しては先生よりも優れるところがあり、テストや課題のミスを何度か指摘さえしていた。そしてそれがまたさり気ないのだ。「こういうのも考えたんですけど、どうでしょう?」なんて涼しく言って、ハサウェイはさらに評価を伸ばしていった。
別にハサウェイが気取っているわけでは無い。話し掛ければ気さくに返してくれるし、授業で分からない部分なんて聞いても親切に教えてくれる。よく笑うし、本当に良い奴なのだ。
ただ、どこか感じる。高嶺の花で、自分たちとは違う存在だと。椅子に座っているだけでも、移動しているときでも、作業しているときでも、ハサウェイには気品があった。
優秀で、品があって、けれど気さくで、柔らかい雰囲気があって。そう、オーラがあるのだ。そのオーラが、何となく自分たちとハサウェイに壁を作っていた気がする。
そんな時だった。ハサウェイがバナージ・リンクスとよく話すようになったのは。
授業中以外はPCと向き合って何らかの作業をしていたハサウェイが、バナージとなんてことない話を教室でするようになっていた。
バナージもまた雰囲気のあるやつだった。どこか浮世離れしていて、意外にハンサムで。でもハサウェイほどのとっつきづらくなく、何かハサウェイと話すときは、バナージを通して話すようになっていた。
そしていつの間にか、ハサウェイとバナージは二人でアナハイムからの特殊な仕事を請け負う様になり、時折授業に遅れたり、授業中に呼び出されるようなことも増えていった。
一度先生に話を聞いてみれば、「モビルスーツのセットアップや、OSのチューニングに関する特殊依頼」を二人は熟しているという。それを聞いて、タクヤは自分も!と立候補をしてみたが、お前の技術レベルだと工専を通しての紹介はできない、とあっさり断られた。
だからあの二人は工専でも特殊な二人になっていた。
そしてコロニービルダーの見学の日も、あの二人がいなかったことを誰も疑問に思わなかったのはそう言った理由もあった。そして、そんな日常がすぐに壊れるだなんて、思いもしなかった。
※
何かおかしな気配がする。そう感じた。
マリーダさんと別れ、僕は一人アルバイト先へ戻っていた。その後バナージは帰ってこなかったし、一人で作業を進めていたが、違和感を感じた。
思わず最終チェック前のジェガンに乗り込み、システムを起動させるが、通信系が一切仕事をしなくなっていた。
「これって、ミノフスキー粒子散布下?」
戦闘状況に巻き込まれている、即座にそう感じた。
ジェガンから降りて、すぐにアナハイムへの直通回線を開く。しかし繋がらない。
「回線自体が切られてる?いや、今はどうでも良いか」
再びジェガンに乗り、すべての武装を解除し、両腕にシールドのみを装備して、国際救難信号を出す。元々機体に備わっていた識別信号を消去し、アナハイム所属機の信号を新たに上書きし、非戦闘機であると理解できるよう状況へ書き加えた。
「伝わるよな?伝わってくれ?」
ジェガンで外に出ると、そこはすでに戦場になっていた。冷たい感覚が脳に流れ込んでくる。
「ぐっ……!」
脳の中に不快感が動く。死の匂い、暗い闇の匂い。3年前に嫌と言うほど感じたものたち。落ち着け、心を閉じろ。脳の中の瞳を閉じるんだ。そう思い込むと、鈍痛は若干やわらぎ始める。神経をとがらせ、再び周囲を警戒する。
戦闘は起きている。そう思っていた。いやほとんど確信があった。ただ、その状況を目にすると、心に来るものがある。
「……コロニーが燃えてる」
中で戦闘が起こったのだろうと即座に理解できた。そしてその戦闘に、インダストリアル7は巻き込まれた。
コロニーの外からも十分に確認できた。時刻は夜に突入する時間なのに、何もかもが燃えて真っ赤に明るく、そして今でも中で閃光が見える。ビーム兵器の光、戦闘の光。
「くそっ!」
言ってもどうにもならないとは分かってる。でも言わずにはいられなかった。
平和だと思った3年間が、遠い昔のようにさえ感じられる。
バナージは無事か?工専の皆は?今日は確かコロニービルダーの見学の日だった、だったら、避難場所も近いはずだろ?
無事なはずだ。大丈夫なはずだ。そう信じることしかできなかった。
そして、その攻撃はすぐに来た。
「はあっ!?」
ビームを撃たれた。攻撃を受けた。ロックオンの警告音とほぼ同時に。
「救難信号を発してるんだぞ!?なんで連邦軍が撃ってくる!!」
その連邦機、ジェガンは一切の躊躇なく攻撃を仕掛けてきた。識別信号はアナハイムで、しかも武装解除して救難信号を出している僕を。
「聞こえていますか!こちらはアナハイム所属機です!戦闘の意思はありません!武装も解除しています!」
呼びかけ虚しく向こうは攻撃をやめない。撃たれるビームを何とか避けるが、このままではじり貧になり墜とされかねない。シールドを構えて一気に距離を詰める。
連邦機は迎え撃つようにサーベルを構え、斬りかかってくる。それをシールドで鍔迫り合いへ持ち込む。
「こちらはアナハイム所属機です!聞こえていますか!戦闘の意思はありません!聞こえますか!!」
接触回線で再度呼びかける。この距離で通信ができないことはあり得ない。というか国際救難信号を出しているのだ。識別できないわけがないのだ。
にもかかわらず、連邦機は頭部バルカンでこちらを仕留めに掛かる。
「お前っ!!」
即座に距離を取るが、それに合わせて連邦機は躊躇なくビームを撃ってくる。
「何がしたいんだよ!お前は!!」
対話は不可能だ。戦闘不能にしてパイロットを引きずり出す。あとのことはそれから考える。
ペダルを底まで踏んで一気に距離を詰める。相手はそれに対応するようにサーベルを構えるが、そこへシールドを投擲する。
相手の下側へ方向転換、相手は投げたシールドにかかずらってる。下から背面を回り込み、シールドでスラスターを攻撃。相手のメインスラスターを破壊、これで姿勢制御以外ほぼ出来なくなった。
脚部スラスターでぐるぐる周囲を警戒してビームで牽制するが、もうやる気が無くなってる。相手は恐怖している。
背面を取って一気に距離を詰める。
相手も予想していたのか合わせて方向転換してくるが、その方向転換に合わせて今度は上へ方向転換。
通り過ぎると同時にメインカメラを蹴り飛ばす。
これで視界も潰した。
そのままシールドで相手のビームライフルを殴り飛ばして、コクピットへ膝蹴りを入れる。
一発、二発。ジェガンはコクピット周辺のショックアブソーバーがかなりしっかりしているから、念のため三発目も叩きこんでおく。
相手のジェガンが完全に沈黙する。
「はあ……」
一息つく。それと同時に残ったビームサーベールも解除させ、アンカーで動かないように相手機体を僕のジェガンで曳航できるよう固定する。
「マジで何だったんだ、こいつ……」
僕は周囲にいるであろう連邦の艦を探し始めた。
「いた……」
目視で確認した。白く大きな、おそらく連邦の戦艦。いや、連邦軍のマークが見える。確定。
「こちらはアナハイム所属機、連邦の戦艦へ、聞こえていますか。インダストリアル7で戦闘に巻き込まれ、整備中のモビルスーツでコロニーより脱出しました。保護を願います」
ちゃんと通じてくれよ。そう願うと、祈りが通じたのか、今度はまともな返答が帰ってきた。
『こちら連邦宇宙軍所属、ロンドベル、ネェル・アーガマ。国際救難信号も確認いたしました。あなたを本艦にて保護いたします』
思わず息を吐く。良かった。今度はまともな人だった。
「保護に感謝いたします。そちらへ向かいます。もう一つ、こちらが国際救難信号を発し、かつ武装解除をした状況で、こちらを攻撃してきた連邦機を撃退し、曳航しております。こちらの回収もお願いしたい」
『はっ!?あ、いえ、確認いたします。少々お待ちください』
「先に回収いただきたいのですが、そちらへ向かっても問題ございませんか?」
『あ、いえ、その……』
向こうが少しごたついたように、何か遠くで声が聞こえるが、すぐに返答が帰ってきた。
『こちらネェル・アーガマ艦長のオットー・ミタスである。確認したいのだが、そのジェガンは君が撃退したのかね?随分若く見えるが……』
「16歳です。普段はアナハイム工専で学生をしていますが、アナハイムのアルバイトでモビルスーツに乗れる状況が多くあり、操縦は問題なくできます。僕が撃退したこのパイロットは未熟だったのだと思います。武装解除した僕でも行動不能に追い込める程度でしたから。だからこそ、この機体のパイロットが何者なのかもそちらでご確認いただければと考えます」
『……うむ分かった。君を本艦にて保護する。ハッチを開放しろ!ああそうだ、すまないが、君の名前は?』
「ハサウェイ・ノアです。保護に感謝します」
そう伝えて、通信を切り、ネェル・アーガマへ向かう。
そうだ、自分で言ってて気が付いた。僕ごときが本職の軍人と戦えるわけがないじゃん。どれほどシミュレーターをやりこんだとは言え、本職のモビルスーツのパイロットに僕なんかが勝てるはずないんだから。それはアムロさんで痛いほどわかったはずだろ。
となれば、このジェガンは盗難機か、はたまた強奪された機体か。そして奪ったのはきっと何とも言えぬ卑劣漢で、国際救難信号さえ識別できなかった奴だと言える。
そうだ、それならば色んなことに整合性が付く。
思わず安堵の息を吐き、僕はネェル・アーガマへ回収された。
ネェル・アーガマの格納庫へ入り、曳航していたジェガンも中へ入れる。
「この引っ張ってきたジェガンどうすればいいですか?」
『そのまま捕まえておいてくれ!暴れないように両手足をパージさせる!』
「分かりました!」
何人かのメカニックがそのジェガンへ近づき、コクピット近くの制御パネルから、コードを入力し、両手足をパージさせる。
『よぉーし、大丈夫だ!アンカーケーブルを外してくれ!』
「はーい!」
ケーブルを開放し、回収する。
「僕のマシンは何処へ持っていけばいいですか?」
『そこのスペース開いてるだろ?そこ使ってくれ!』
「分かりました!」
隅っこの空いたスペースにジェガンを立たせる。
そう言えばラー・カイラムもモビルスーツは立たせて整備してたな。コロニーとか重力がある場所に入った時に、自立出来ようにするためなのかな?
コックピットハッチを開けて、ジェガンから降りる。するとそこには、先ほどやり取りをしていたメカニックと思わしき人と、戦闘職のような大柄な人がノーマルスーツを着て待ち構えていた。
「どうも、保護に感謝します」
「こちらこそ、協力に感謝する。ダグザ・マックール中佐だ。いくつか話を伺いたいのだが、構わないか?」
「ええ、勿論」
「ありがとう、こちらへ」
ダグザ中佐に連れられ、ネェル・アーガマの一室へ入ると、そこにはもう一人の男性が待っていた。
「こちらはコンロイ・ハーゲンセン少佐だ。早速ですまないが、話を聞きたい。まずは君がモビルスーツに乗った状況から」
佐官が二人も?それほどの大事なのか?と疑問に持ちつつ、質問に答える。
「はい、あのモビルスーツはアナハイムで整備を進めていた機体で、僕と、もう一人の工専生で整備をしていました」
「工専生二人で、軍用モビルスーツの整備を?」
「はい、僕の知り合いにアナハイムと関係のある人がいまして、その人の紹介で。もう一人の学生は僕が推薦して、アナハイムの人も認めてくれたので、結果二人で普段は作業しています」
「なぜモビルスーツに乗って宇宙へ?」
「最初は違和感でした。その後通信が使えなくなっていることを確認し、モビルスーツの無線も封鎖されていたので、ミノフスキー粒子散布下にあると考えました。戦闘状況が起こっていると。アナハイムへの直通回線もあったのですが、そちらも繋がらず。いつ何が起こるか分からなかったので、最も安全なモビルスーツに乗って避難を考えました。勿論その際に、全武装を解除して、国際救難信号も出してです」
「では、あのモビルスーツとの戦闘は?」
「戦闘と言えるほどのものじゃないと思います。詳細はジェガンのログを見て頂ければとも思うのですが、相手が急に撃ってきて、何度か戦闘の意思はないと伝えたのですが、それでも構わずな感じで。何とか相手を無力化して、そのまま引っ張ってきた感じです」
「ふむ、戦闘と言えるほどではない、と君は言ったが、それはどういう意味だろう?」
「そのままの意味なんですが、僕はモビルスーツの整備に際して、テスト飛行や実機テストもしています。そのためのシミュレーター訓練なども。ただ、本職の軍人さんに敵うとは思えません。以前モビルスーツのパイロットの方にも僕の技量を見てもらいましたが、全然だと言われましたし。おそらくあのジェガンのパイロットは、僕と同じような素人が乗っていたんじゃないでしょうか?」
一瞬ダグザ中佐の動きが止まり、その後何事もなかったかのようにメモを取る。
「ふむ、相手もパイロットに関しては、こちらで詳しく調査をしよう。一応確認なのだが、非常時にモビルスーツに乗っての避難は、アナハイムの方で許可されているのか?」
「はい、武装解除して国際救難信号を出せば誰かしらに拾ってもらえると。だからこそ驚きました。そんな状況で攻撃してくる破廉恥漢がいることに。まあ、何事も無くて良かったですけど」
「なるほど、状況は確認できた。ご協力に感謝しよう。休憩できるスペースへ案内しよう。こちらへ」
そうダグザ中佐へ連れられ、僕は部屋を後にした。
休憩スペースには、3人の先客がいた。同じアナハイム工専のタクヤ・イレイ、バナージやタクヤと一緒にいたミコットさん(フルネームは知らない)と、バナージと一緒にいたはずのオードリー・バーンさん。この時点で、何か嫌な予感がした。
僕は思わずバーンさんに声をかけた。
「バーンさん、バナージは?一緒じゃないの?」
僕のその言葉に、彼女は伏し目がちに応えた。
「メガラニカまでは一緒にいたのだけれど、そこで別れて。その後は、分からない……」
「分からない……」
何処か力が抜けていくようだった。
「ハサウェイ!バナージは途中まで一緒だったんだ!でも、途中でどこかに行っちゃって、その後は、その、分かんないけど……大丈夫だよきっと!バナージのことだからさ、きっとどこかで無事に避難してるよ!」
そう声を掛けられて、何とか心を持ち直そうとする。
「そう、だね。そうだ、きっと無事だよ。そうに決まってる……」
返す言葉に力が入らない。
あそこまで大規模な戦闘が行われたコロニーでは、シェルター内でもちゃんと生存できるかは分からない。シェルターは被爆や衝撃には強くとも、ビームの直撃を受ければ蒸発してしまうのだから。
もし避難さえ出来ていないのならば、今頃生身でどこかを宇宙遊泳しているかもしれない。避難途中でどこかへ行こうとしたんだ、むしろその可能性の方が高い。
「……マジかぁ……」
呟いた言葉は、驚くほど小さかった。
生きているかもしれない。その可能性が限りなく低いことを、僕は誰よりも理解してしまった。
アムロさんが言っていたじゃないか。身構えているときには、死神は来ないものだと。
ただそれが自分以外にもそうなのだと、僕はきちんと理解できていなかった。
読了ありがとうございました。
さて、次回で多分フル・フロンタルが出てくると思うのですが、彼がどういった理念と思想でラプラスの箱を求めるのかとか何も考えてません。どうしてくれよう。
明日の私にパスします。頑張れよ!
いつも誤字報告ありがとうございます。普通に誤字してるのもあるんですが「え!これ正しくないの!?」な誤字もあるので、私の脳みそは多分啓蒙が足りてない。
そしてたくさんの感想と高評価ありがとうございます。とても励みになります。
引き続き感想、高評価いただけると嬉しいです!