ハサウェイがアムロやシャアに影響される前に機械オタクになった世界線のお話   作:陸奥九十九

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サブタイが、適当なサブタイが思い浮かばないんだ。
それっぽい名前を付けてるけど、これ振り返った時なんの話か分かり辛そうだなと思いながらサブタイ付けてます。

さあ、今回も話を作るのに結構苦労しました。多分次回はもっと苦労する気がします。
設定説明が異様に多い。僕は脳死でメカの話がしたいのに、なんでこんなことになってるんだ?

そんな中でも頑張って書いたので、お楽しみいただければと思います。


不穏な気配と悲しき世界

オットー・ミタスにとって、この任務は初めから気に入らないものだった。

 

独自行動を許されたロンドベルに対し、エコーズが連邦上層部からの指示という印籠を取り出して、かつそこにアナハイムの重役までもが乗り込み融通を利かせろという。ロンドベルはタクシーではないし、連邦政府御用達の宇宙の便利屋でもない。

そして極めつけは「インダストリアル7にて反連邦の運動あり、さらにジオンが潜伏していると、とある筋からの情報を入手した。襲撃し鎮圧されたし」と来たものだ。

 

その可能性があるなら、隠密行動でその場を抑え、コロニーに被害を出さぬように対応するのが特殊部隊の務めでは無いのか。オットーはそのようにエコーズ隊長ダグザ・マックール中佐へ進言したが、「時は一刻を争う。一気呵成に攻め立てて電撃戦にて場を収める」の一点張りだった。

そして回収すべきものがあり、正体は分からぬがどんな犠牲を払おうともその何かしらを回収する、その何かしらを確認するためにアナハイムの重役たるアルベルト・ビストとアナハイムの技術者が同乗する、なんて言う。

 

そして、インダストリアル7は火の海となった。

 

実際にジオンは潜伏しており、戦端は向こうが開いた。そしてサイコミュ兵器を搭載した大型モビルスーツまでもが戦闘に参加し、コロニーには穴が開き、恐らく数万からなる尊き人命が失われ、また連邦も損害を被った。

 

この犠牲は何なのだ?

我々は軍人だ。命令があれば従い、無理難題にも全力で取り組み、場合によっては死を前提に作戦に従事することだってある。

だが、この作戦は何を意味するものだったのだ?一切が不明なまま戦闘が始まり、何もかもわからぬまま人が死んだ。

 

それがオットーには納得できなかった。

 

 

 

ネェル・アーガマは新兵で構成された、言うなれば研修艦のような側面を今は持っていた。

艦長、副長、をはじめ、責任者のみはそれなりのベテランを用意したが、それ以外はほぼひよっこ。新兵や新任少尉で構成されていた。

ネェル・アーガマで経験を積み、能力を伸ばし、その後別の艦隊へ、もしくはネェル・アーガマでスペシャリストへ。ブライト司令はそのように今後の人材育成を考えていたようだった。

 

その理由は、アクシズ事件で少なくない損害をロンドベルが被ったためだった。

シャアの蛮行に対し、連邦政府の対応が遅れ、コロニーはシャアの行動に対し何も行動しないという回答を示し、結果動けたのは独自行動権を持つロンドベルのみで、政府の失態の全てをロンドベルがぬぐい切ることになった。

しかし、その代償はあまりにも大きかった。

多くの艦は沈み、エース級のパイロットも戦死し、中堅以上の層はごっそりと減ってしまった。

 

だからこそ、オットーは自分に課せられた課題の重みを感じていたし、そんな未熟な艦に対して、単艦での極秘任務など、そもそも道理が合わない。そう考えていた。

 

 

 

この任務をこなすのであれば、ネェル・アーガマではなくラー・カイラムの方が適当である。あちらは全てがスペシャルでプロフェッショナルだ。英雄ブライト・ノアに、エースオブエースのアムロ・レイ。その他のメンバーも他の艦であればエースや責任者となれるものしかいない。不慮の事態など起こらないし、たとえ起こったとしても万事対応が可能である。

 

その進言はあえなく却下された。迅速に対応するため応援を待つ余裕はないと。

もはや隠すつもりも無いのだろうが、ニュアンスとしてはこうだ。

「お前たちである必然性はないが、ブライト・ノアやアムロ・レイが絡むと大事になって面倒だ。お前たち相手ならもみ消せる。後ろ暗い極秘ミッションをする。黙ってタクシー代わりをしろ」だ。

 

ふざけるな、そんなものを手伝うつもりはない。そう断るべきだった。しかしできなかった。政府のご印籠があるからだ。断れば反連邦運動に加担したとして、現場判断での射殺さえも考えられる。

自分一人ならまだいいが、この艦はこれからの未来を背負う新人ばかりなのだ。

出来ることは、怒りを飲み込んで粛々と任務をこなすことだけだった。

 

そして現在へと至り、2つの事件が起こった。

 

 

 

ひとつはガンダムタイプのモビルスーツの出現。

アナハイムがユニコーンガンダムと呼称した機体。その回収をしたが、コクピットが開かず悪戦苦闘していること。

そして、恐らくジオンはこのモビルスーツを狙って今回の事件を起こしたということ。

 

そしてもう一つ。こちらの方がオットーにとっては遥かに重大だった。重大な事件だった。

 

「で、どう説明くださるのかな?ダグザ中佐?」

 

柔らかさなど微塵もなく、オットーはダグザをにらみつけていた。

 

「国際救難信号を出した民間機を、警告なしに発砲し戦闘状況へ移行。それをやったのが、精鋭のみが集められた特殊部隊のエコーズだなどと、私は信じたくはないのだが、ねえ?」

「……これは極秘任務に関わることです。説明できない事象もあります」

「完全武装解除し、アナハイムの識別信号を出し、国際救難信号さえ出した機体を、無条件で撃ち殺すのがエコーズの極秘任務、だと聞こえるが?」

「不幸な事故があり行き違いがあった。すべては任務終了後に……」

「彼でなければ死んでいたんだぞ!お前たちは何をするつもりだったんだ!!」

 

ダグザの言葉を遮りオットーは叫んでいた。

 

「たまたま彼が対応できた!たまたま彼は大丈夫だった!逃げだしてくるアナハイムの機体を撃ち殺すのがお前たちエコーズが今回したかったことか!ああ!?」

 

怒りがこみ上げていた。

ログを見た。彼の、ハサウェイの戦闘ログを。インダストリアル7から脱出した瞬間から捕捉が完了しており、動きが止まった瞬間に狙撃を開始。ご丁寧にロックオン直後に撃っていた。さながら警戒を怠ったバカな敵機を、確実に墜とすための攻撃。

 

そんな攻撃を、特殊部隊エコーズのメンバーが民間人に向け行った。

 

「私は軍人だ、命令があればどんな仕事だってしよう。それがどんなに気に入らないものであっても。だが、意味もなく民間人を殺すことは任務でも何でもない!ただの殺人だ!テロリストと何も変わらない!」

 

その言葉に、鉄面皮を決め込んでいたダグザの眉がピクリと動いた。

 

「人狩り部隊の厳しさも考えよう、その任務の特殊性も。だが説明できるのか、命からがら逃げだした民間人を殺す理由を、ハサウェイ・ノアを殺す理由を!!」

 

オットーの呼吸は酷く乱れていた。だが気にすることもなくダグザをオットーは睨みつけた。

ロンドベルならば誰もが知っている。

アクシズ事件を解決した、地球の滅亡を防いだ本当の英雄を。民間人でありながら、たった13歳の子供でありながら、そのニュータイプ能力から艦の轟沈を予見し、もう一人の民間人の少女、クェス・パラヤと共にモビルアーマーを相手し、シャアと一対一の戦闘でアクシズ爆破のための時間を稼ぎ、そして地球へ落下するアクシズの中へたった一機で潜り込み、見事にアクシズを砕いて地球の滅亡を防いだ。

 

紛れもない英雄である。そして歴史に名を残すことが許されなかった英雄でもある。

軍規で見ても、世間的に見ても、多くの事情から彼と彼女は最初から戦争に参加していなかったことにされた。だが知っている。その名を残すことすら許されぬ見事なる挺身を。

 

だからこそ、オットーは怒っていたのだ。

 

 

 

そのオットーの怒りを感じ取ってか、ダグザは息を吐いた。

 

「引き返すことはできませんので、他言無用にて願います」

「当然だ」

「……今回、我々エコーズに課せられた任務は、『ラプラスの箱』なるものの回収です」

「ラプラスの箱?」

「それが何なのか、我々エコーズにも知らされておりません。そのための、あの男です」

「……アルベルトとか言う、アナハイムの」

「はい。その箱は、連邦からの助力を引き出し、ビスト財団を繁栄させた代物で、そして万が一ジオンの手に渡れば、連邦の体制を揺るがす可能性すらある代物だと」

「……そんなものが?」

「はい。そしてビスト財団は、その箱をジオンへ渡す腹積もりがあったと」

「なんだと?」

「その阻止のため、もしくは箱そのものの存在を抹消するため、我々エコーズが派遣されたのです」

「それは理解した。では、民間機への狙撃はどう説明する?」

「この件にはアナハイムも関わっています。ビスト家はアナハイムの役員席を受け継いでおりますから。そして、アナハイムの機体が箱を持ち去る可能性もあると」

「……それは理解した。だが何故殺そうとした?国際救難信号を出していたのだ、鹵獲も容易いだろう」

「お恥ずかしい話ですが、完全なヒューマンエラーなのです。鹵獲すれば問題ないにもかかわらず、隊員が戦場の空気に呑まれたのか、あのような行動を」

「……精鋭中の精鋭たる特殊部隊の、エコーズの正規隊員がかね?」

 

オットーがイラついたように眉を歪ませる。

 

「本当に申し訳ないのですが、真実です。他の隊員へ事情聴取頂いても構いません。それ以上に、現状我々に説明できることが無い」

 

ダグザが頭を下げ、それにオットーは仕方がないといった様子で頷く。

 

「分かった。些か以上に信じがたいが、そうだということにしよう。だが、あの隊員を野放しにはできん。軍規違反として隔離させてもらう」

「当然の判断かと考えます。こちらとしても状況把握のために事情聴取など必要がありますので、接触はさせていただきます」

「部屋から出さないなら許可する。そして、この一件は正式に上へ報告する」

「勿論です。こちらも報告を上げます」

「なら、この一件はここまでだ。だが、くれぐれも気を付けてくれ。私はエコーズに不信感がある」

「その不信感を払拭できるよう、尽力します」

 

それでは、そう言ってダグザは艦長室を後にした。

 

 

 

「隊長、如何でしたか?」

「艦長殿にはご納得いただけた。で、状況は」

 

艦長室の前で待機していたコンロイに、ダグザは問いかける。

 

「隊長の想像通りでした」

「……そうか。ふざけた話だな」

 

ダグザがオットーに話した内容に、概ね嘘はない。確信が取れたのが今この瞬間で、オットーと話していた時には推測でしかなかったからだ。

 

 

 

上層部は以前、ロンドベルの失点を演出するためにハサウェイ・ノアへ極刑を求刑しようとした。地球の危機を救った、これ以上ない功労者に対してである。

だがそれは撤回された。ハサウェイ・ノアがいつの間にやら関係を持っていた凄まじく太いパイプによって。ヤシマ、アナハイム、ブッホ、この3企業の掣肘によって、ハサウェイ・ノアは極刑を免れ、ブライト・ノアをはじめロンドベルへの懲戒は無くなった。

 

だが、それに納得できないものもいた。それは連邦上層部もそうだが、そのシンパや部下たちであった。

 

地球連邦とは絶対の存在であり、絶対であるから地球連邦なのだ。

 

そんなことを口走る連中が、連邦上層部の周囲に存在している。もはやそれは宗教だった。

宇宙へと広がった人類の、その意思決定には強さが必要である。たとえそれが黒であっても、連邦が白といえば白となるし、黒と言えば黒となる。地球と宇宙を統べる存在には、そんな強さも必要なのだと。

 

 

 

それが決して間違わぬ神のような者たちならば良かったのかもしれない。

たとえその時は間違ったように見えても、後から見返せば何もかも正解だったと言えるような正しさがあれば。

 

だが今の連邦にそんなものがあるかと言えば、まあ無いだろう。少なくともダグザはそう考えていた。

今連邦がしていることは、何か起こってからの対処と、自分たちが富むための準備だけだ。軍人たる自分が何もかもの大局を理解している、などとは口が裂けても言えないが、それでもそう感じてしまっている。

 

失敗の言い訳作りに必死になって、嘘を重ねて、その嘘によって首が締まっていく。

アクシズ事件のハサウェイ・ノアへの極刑などその最たる例だろう。

 

それでもまだ何とかバランスはとれている。今の上層部は、まだそう言うバランス感覚を持っている。

だが、次のその席に座る連中がこの様では、連邦もそう長くないのかもしれない。そんな悲哀をダグザは感じてしまった。

 

 

 

そしてそんな連中が、エコーズに隊員を潜り込ませ、中断されたハサウェイ・ノアの極刑を秘密裏に実行しようとした。

その隊員におかしな点など何一つなかった。経歴も実力も、そしてこれまでの任務においても確実に任務を遂行していた。

だがそれは、エコーズ以外にも命令系統を持つ連邦上層部の私兵でもあった。

 

連中は待ち構えていたのだ、その時が来るのを。そしてタイミングよく、ハサウェイ・ノアが住むインダストリアル7で事件が起きると知らされ、これ幸いにとハサウェイ・ノアの暗殺計画が持ち上がった。

ハサウェイ・ノアの位置情報を把握し、脱出経路も確認し、任務のさなかの暗殺を企てた。

 

そしてそれは実行され、一切の証拠を残さぬために、エコーズ隊長の自分にさえ知らされることが無かった。

 

まるでヤクザじゃないか。侮辱されたと感じたから殺す。大義なく殺す。侮られることだけは許せない。それがジオンへ向くのならまだよかった。何がどうして民間人の、それも子供へ矛先が向かう。

 

殺して、殺して、殺した先に、あると思っていた平和がこれか?

 

 

 

「ふざけた話だ」

 

ダグザは唇をかみしめていた。

 

 

 

 

 

 

バナージ・リンクスは、ある時まで生きるという意味がよく理解できていなかった。

母との暮らしは楽しいものだったが、既に朧げな記憶となっており、それより前など遠い昔だった。

顔も知らぬ父の勧めで学校へ通い、きっと整備士にでもなるのだろうなんてぼんやりと考えながら生きていた。それが良いことなのか悪いことなのか、それさえも分からなかった。

 

けれど、工専に入ってすべてが変わった。

 

 

 

ハサウェイ・ノアとの出会いは、きっとこれ以上なく良い巡り合わせだったんだろうと、バナージはそう思った。

何処か色あせピントの合わなかった世界で、彼だけは輝いていた。彼だけが色づいていた。

 

誰も話しかけない彼に、焦ったように声をかけていた。

そうしたらハサウェイも笑って話してくれて、それが、バナージにとっての人生の一つのターニングポイントになった。

 

それまでの人との出会いが、どうでもいいものなどではもちろんなかった。学校の友人も、先生も、先輩も後輩も、多くの出会いがあった。それらはちゃんと自分を成長させてくれていた。それは理解している。

 

ただ、友人どまりだったのだ。どこまで行っても。家族さえもいないも同然な自分の内側に、好んで入って行こうとする人はいなかったし、たぶん自分自身それを望んでいなかった。

 

何故ハサウェイだったのか、それは自分でも分からない。

ただ漠然と感じたのだ、自分と同じだと。何が同じなのかは分からないし、何故そう感じたのかも説明はできない。だから直感なのだろう、そう思った。

 

自分ととても近い場所にいて、そして共感していた。話すより以前から、会った瞬間から、名前も知らないハサウェイに共感し、どこか分かり合っていたような感覚。

 

嬉しいと思った。頼れる人がいない自分にとって、ただただ嬉しく感じた。

 

 

 

ハサウェイは話せば話すほど自分とは出自からして違ったが、話せば話すほど同じだとも感じた。

 

そして違う部分も徐々に分かっていった。特に授業で課題をこなしていくうちにそれは顕著になっていった。

ハサウェイは無駄を嫌うのだ。より正確に言えば、必要でないものは可能な限りすっきりさせたい。必要十分と必要最低限の間を上手く突いていく、ハサウェイは機械をそんな風に取り扱っていた。

 

対してバナージは可能な限り充実させたい、枝葉を伸ばす余地を与えたい。だから詰めすぎないし、余白があればさらに詰め込んでいく。そんな方向で機械を扱っていた。

 

その方向性の違いが上手く嚙み合ったのだろう。ハサウェイはバナージの能力から発想を得て、またバナージもハサウェイの能力を参考にした。

 

工専の課題も二人でこなしていったし、ハサウェイに誘われたアルバイトも上手くこなせていた。それが廻り巡って工専の評価にもつながり、バナージはこれ以上ない充実感を感じていた。

 

気付けばぼうっとしている時間は少なくなっていた。極たまに気分が高ぶって眠れない夜などあったが、以前のような空虚感は無くなっていた。

 

 

 

そして今日、オードリー・バーンと出会った。

 

なぜ彼女の存在を感じられたのかは分からない。そしてなぜ彼女に付いていこうとしたのかもわからない。ただ思ったのだ、そうすべきだと。

 

彼女と話した時間は1時間にも満たない。けれどその時間はとても大切な時間だと思った。そう感じられた。突き放されたことにショックはあったけれど、それでもと思ったのだ。

 

 

 

そして彼女を追って、ユニコーンに出会い、父さんに託された。

 

自分でも何が起こったのかは分かっていない。でも、願って、託されたのだ。バナージはそう思った。

 

ただ、飛び出した戦場の冷たさと心細さが、何とも言えず恐ろしかった。そして、ユニコーンが……

 

 

 

 

 

 

「……あぁ……」

 

眠っていたと気付いたのは起きたその時だった。何か声が聞こえる。ぼやける視界が徐々にピントを合わせ、そして耳が音を拾い始めた。

 

「バナージ、聞こえる?大丈夫?」

「先生!バナージが!」

 

誰かがそばにいる、その気配を感じ、視界はピントを合わせた。

 

「……オー、ドリー」

 

ハサウェイの呼びかけも、ミコットの声に反応するでもなく、バナージの真っ先に視界に映ったのは、守ろうとしたその少女。思わず名を呟いていた。そしてネェル・アーガマの軍医、ハサンがバナージを診る。

 

「バナージくん、聞こえるか。聞こえていたら、手を握ってくれ」

「ブリッジ、ミヒロです。少年の意識が戻りました」

 

医務室が慌ただしくなり始めたところで、待っていたかのように医務室のドアが開いた。

 

「ダグザ中佐!?」

「……ダグザ中佐?」

 

付き添っていたブリッジ要員のミヒロ少尉と、そしてハサウェイもダグザが来たことに驚いていた。しかしダグザは気にすることもなく、吐き捨てるように冷たく言う。

 

「事情を聞きたい。君たちは外してくれ」

「最低限の治療はさせてくれ。彼はまだ、ここがどこなのかもわかっていない」

 

ハサンがその言葉に食って掛かる。そしてミコットも続く。

 

「怪我だってしているんですよ!」

「この少年は、民間人の立場で軍用モビルスーツを使い、戦闘状況にも介入した。極刑も適応されうる、重大な違法行為だ」

 

しかしダグザは冷たく切り捨てる。悪いのはそっちだと、厳しい視線で突き付ける。

 

「あれは連邦の所有物なんですか?」

 

その雰囲気に似合わぬ、酷く軽い言葉だった。ハサウェイの言葉は軽さを持っていて、その重苦しい雰囲気をかき消していた。

 

「……君は」

「あれはアナハイムとビスト家の持ち物なんじゃないでしょうか?もし連邦の軍事機密であれば、少なくともメガラニカではなくルナ2で保管されると思うのですが、どうなんでしょう?」

「我々は軍用モビルスーツでもって戦闘状況に介入したことに言及している」

「戦闘状況を、工業コロニーで作り出しておいて、ですか?」

 

厳しい言葉で返すダグザに対し、ハサウェイは柔らかな雰囲気を持ったままだった。

 

「中佐、僕たちは普通に暮らしていました。今日工専はコロニービルダーの見学をしていて、僕はアルバイトをしていました。それが、この様です。住んでいたコロニーは燃えて穴が開いて、僕はモビルスーツで戦闘をすることになって、バナージもそうなった」

 

ベッドに横たわるバナージの頬を手の甲で軽く撫で、再びダグザと視線を交わす。

 

「状況を早く確認したい中佐の気持ちも分かります。ですが些か以上に乱暴です。ジオンがインダストリアル7にいて、何か事を起こそうとして、それを防ぐために仕方なく戦闘を始めたのかもしれない。でも丸くは収まらなかった。きっとたくさん犠牲者が出た。コロニーの外からインダストリアル7を見て、僕たちの日常が壊れたのを知って、それで、あなた方はそんな対応をするんですか?」

 

言葉を荒げているわけでは無い。ただ、誰も口をはさめずにいた。ハサウェイはそれほどの雰囲気を発していた。どこか悲しそうな、そんな雰囲気を。

 

「僕たちは、心が疲弊しています。たくさんのものを失って疲れているんです。バナージがモビルスーツに乗ったのも、僕と同じようにどうしようもない状況だったのかもしれません。ちゃんと労わってあげてください。そして話を聞いてあげてください。さっきの雰囲気じゃ、話すのだって怖くなってしまいますよ」

 

医務室は静まり返っていた。ダグザとて言葉を発していなかった。

 

「じゃあ、席を外します。ハサン先生、バナージのことお願いします」

「あ、ああ……もちろんだ……」

 

ほら、みんな出よう。そうハサウェイが声をかけると、皆おずおずと医務室を出ていった。

 

「じゃあねバナージまた後で」

「あ、うん、ハサウェイ。また……」

「……無事でよかったよ」

 

そう言い残して、ハサウェイも医務室から出ていった。

 

ハサンがバナージにいくつか質問を投げかける中、バナージはダグザが大きく息を吐いたことが、何とも言えず目に入った。

 

 




読了ありがとうございました。

ユニコーンに出てくる大人って、なんか皆カッコいいですよね。ユーモアをきかせたいけどうまくいかないオットー艦長とか、冷徹に徹しきれないダグザさんとか。

そんな二人をうまく表現できてれば嬉しいんですが、なかなか難しい。

次回こそフル・フロンタルが出てくるはず!頑張れ明日の私!

いつも誤字報告ありがとうございます!本当に助かります。
そして感想、高評価ありがとうございます。嬉しいし参考にもなるし気づきもあるしで何度も読み返してます。

引き続き感想、高評価など頂けると嬉しいです。
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