ハサウェイがアムロやシャアに影響される前に機械オタクになった世界線のお話 作:陸奥九十九
よく分からないぜ!僕は雰囲気とその場のノリでこの作品を書いている。
お楽しみいただければ幸いです!
その日の宇宙は酷く物静かだった。
ユニコーンが首相官邸ラプラスの付近へ近づいても、周囲から何の反応もなく、また何の存在も感じられなかった。
デブリが動いたり、星が煌めいたり、視界に多くの情報は入ってきても、レーダーは既にその機能を失しており、この近辺の戦闘の痕跡からなのか、はたまた多くのデブリが発するノイズからなのか、通り過ぎたフレアからくるプラズマなのか、とにかく役に立たなかったのである。
自分の吐く息の音が聞こえる。この静寂に、僕は何処か恐怖していた。
静かすぎる。
まるで敵はこちらの動きを全く察知していないような、こちらだけが優位に動いているような、そんな気分と、
敵はこちらの動きをすべて察知していて、こちらの隙を今も窺っているかのような、今まさに自分が俎上の鯉になっていくような、そんな気分。
まずい気がする。これは良くない状況な気がする。静かすぎるその宇宙が、警戒しろと語りかけてくるようだった。
発艦してからは一切の通信を遮断している。僕は一人周囲とユニコーンを警戒し、コンロイさんはラプラスプログラムのモニタリング。バナージとダグザさんは、ユニコーンの挙動のチェック。
通信が傍受される可能性も考慮し、途中での状況把握は一切しない作戦だ。
時の流れが遅く感じる。明らかに今、僕は緊張している。ただその緊張が、作戦を遂行する新兵の緊張なのか、この作戦に危険を感じる自分の直感なのか、その判断が出来なかった。
百戦錬磨のオットー艦長と、特殊部隊の隊長、副隊長のダグザさんとコンロイさんが問題なく任務を遂行している。何かあればオープン回線でアナウンスするとは言っていたが、それも現状ない。
であれば、大丈夫なはず、だろう?
そう自分に言い聞かせた。
ユニコーンが首相官邸に到着して暫くし、そしてその音声は流れ始めた。
『地球と宇宙に住むすべての皆さん、こんにちは。この記念すべき瞬間に、地球連邦初代首相としてみなさんに語りかけることができる……』
「なんだ?この音声は……」
作戦に関しての通信ではなく、もっと別な何かだと思った。いや、これは……
「宇宙世紀が始まった時の、演説?」
小学校の授業で映像を何度か見た覚えがある。首相官邸で演説をして、その後テロに巻き込まれてしまった映像。宇宙世紀の始まりと、その道程の厳しさのようなものを先生は説いていた。
「じゃあこれが、ラプラスプログラムの何かなのか……?」
それを感じられたのは、多分ただの運だったと思う。
恐怖でも殺気でも、そんな気配は一切なく、ただ体が動いていた。その場から逃げろと。
脳が何かを感じる前に反射した。ジェガンは一瞬でその場を離れ、
その場所に三方向からビームが撃たれた。
「敵襲!」
動いた後で脳が理解し、声に出していた。だが危機感は留まることなく警鐘を鳴らす。
ペダルを底まで踏み込んで離脱を図る。通り過ぎていくその場所に拡散メガ粒子砲が降り注いでいく。
避けろ!
Gの拡散も考えず思い切りマシンを振り回していた。プロペラントタンクで増加した出力が内臓や骨を圧迫し、得も言えぬ苦痛と不快感を感じさせる。
視界の端に、それを捉えた。
「……マジかよ」
捉えたものは赤と緑のモビルスーツ。シナンジュと、4枚羽。
「そう来るか……!」
濃厚な死が、目の前に迫っていた。
作戦をみんなで考えた時、敵に察知された際どのように対応するかなど、勿論考えたのだ。
敵はユニコーンを狙ってくる。ジェガンはユニコーンを援護する形になるだろうと。
その際最も有力な戦術予想はこうだった。シナンジュがユニコーンを抑え、4枚羽がファンネルを用いて周囲を圧倒。残った敵機は狙撃と遊撃でユニコーンを狙う。
対策として、ユニコーンは火力でもって敵を圧倒し、高機動化したジェガンが遊撃、隙を作って戦術的に後退しつつ、ネェル・アーガマの火器管制でもって敵モビルスーツ部隊を撃退する。
ただ、あまりその点に関して多く議論をしなかった。
何故ならこれは、そもそもが戦闘を前提とした任務では無かったからだ。
ユニコーンをポイントへ、ラプラスプログラムの確認し、即時撤退。それ以上は多くを考えなかった。
というより考えられなかったのだ。先の戦闘でモビルスーツ部隊は半壊、戦闘行動を論じられるだけの戦力がそもそもなかったから。
だからこそ破れかぶれともとれるこんな作戦を選んだ。二の矢三の矢は、そもそも準備できなかったから。
そして今、そのツケを払うかのように、絶体絶命の状況に陥った。
ユニコーンではなく、こちらをエース機2機がかりで仕留めて、後顧の憂いを断ってユニコーンを奪取する。敵はそう作戦を立てたのだ。
止まるな、止まったら死ぬぞ!
ファンネルがこちらの後ろを完全にとっている。それを速度で振り切ろうと必死に逃げるが、シナンジュがこちらの頭を押さえ、そして逃げる先には拡散メガ粒子砲が降り注いでくる。
今避けられているのは、危機感と恐怖で脳がどうにかなっているからかもしれない。
視界が酷くスローモーションに見える、敵の攻撃が、次に来る攻撃が読める。
タキサイキア現象だ。武道の稽古ではよく起こっていた現象だ。相手の動きがスローモーションに見える現象、カノウ先生に稽古をつけてもらうと、一瞬だけだが時々起こっていた。
それが今は途切れなくずっと発生している。
脳が熱い。Gでシェイクされるのとはまた違った不快感が脳をめぐっている。ただ、そのおかげで僕はまだ生きている。
だが、これはまずい。
こんな状態、そう長くは続かない。3分か、それとも5分か。タイムリミットは必ずある。そして、そのタイムリミットが僕の終焉になる。
攻撃できる暇がない、必死に避けて、敵を見て、それだけで精一杯になってる。
後付けのプロペラントタンクでも、まだ推力はあちらの方が上回ってる。
ファンネルを振り切れない。ファンネルを墜とす暇がなく、シナンジュがこちらのヘイトコントロールをほぼ完璧にこなしている。
そしてシナンジュが全然こちらに掛かってこない。常に引き気味、危険を冒さない。冒してくれない。
ならばとシナンジュへ距離を詰めて近接戦を仕掛けようとすると、すぐに4枚羽がスイッチしてくる。
体当たりで距離を潰し、もしくは拡散メガ粒子砲を放ちながらタックルしてくる。それを必死に避けると、ファンネルで仕留める足止めと言わんばかりにシナンジュが頭を押さえて来る。
逃げ場も無ければ攻め場も無い。この2機は確実に僕を沈めに来ている。その場判断の柔軟な連携などではなく、がちがちのルールを決めて連携してくる。
僕が距離を詰めたら4枚羽がインターセプト、シナンジュが頭を押さえて、ファンネルでとどめ。多分そんな打ち合わせがあったんだろう。そう思わせるほど迷いがない。
だったら、それを突いてやる。
再度距離を離そうと一気に加速する。逃がさないとばかりにシナンジュがこちらに掛かる。
そこだろ。
ただの勘と言えば勘だったが、回避行動と共に肩部のキャノンを放つ。
閃光、そしてファンネルが爆散する。やっぱりいた、そうだ、僕ならそこにファンネルを置く。
ビームキャノンの反動でジェガンの姿勢が崩れる。やばいな、思った以上に反動が酷い。高速機動下で撃つものじゃないなこれ。
隙を逃さないと、シナンジュがシールドのビームブレードで斬りかかる。受けちゃだめだ、止まった瞬間ファンネルにハチの巣にされる。
「ぐうっ」
再度フル加速。体がきしむ。距離を取れ。そして距離を取ろうとすれば、来るはずだろ。
進行方向へ、照準も無しにビームキャノンを放ち、逆方向へビームライフルを放つ。
ほらいた。
こちらの機動を阻もうと4枚羽がインターセプトしに来た。来てくれた。4枚羽はその羽とIフィールドでビームキャノンを吸収しようとしたが、吸収しきれずに羽に穴をあけていた。
止まるな。
4枚羽の横を抜けてさらに距離を取る。後ろへ放ったビームにはファンネルが当たっていた。やはり4枚羽は理詰めでファンネルを使っている。アムロさんのような異常な直感でも、クェスのようなユニークさも無い。
僕と同じだ。距離を殺すため、攻撃を置くため、動きを封じるため。そのすべてがほぼ理詰めだ。だから動きが読める。置いた攻撃に当たってくれる。
何とかなるか?一瞬そう考えた。
センサーが、遠くで戦闘しているユニコーンを捉えるまでは。
そこには、ユニコーンが3機がかりで翻弄されている状況が見えた。
「マジかよ」
この戦況の打破のためにも、こちらにユニコーンが乱入するのを期待していた。ユニコーンがこちらに来てくれれば、短時間でも1対1の状況を作り出せるし、乱戦を演出できれば勝機もあると思ったからだ。
ただ、現状でそれは不可能だと断じた。
そしてネェル・アーガマからの応援も支援も無い。となれば、向こうも向こうで戦闘が始まっているか、ミノフスキー粒子で通信さえ死んでいるか。
いや、考えても仕方がない。どうにかするんだ。
ほんの一瞬呼吸を整える。気を切り、脱力し、無防備を晒す。そして、芯が通る。
短期決戦でこの2機を撃退する。というよりそれ以外に道はない。
後ろから飛んでくる攻撃を躱し、シナンジュが先行してくる。そうだ、全速力で逃げても推進力の差で必ず追いつかれるんだ。
追ってこい。引きつけろ、まだ引きつけろ、まだ……
ここ!
スラスターを一瞬全閉し、脚部スラスターで180度後方へ機体を転換させ、サーベルを抜く。
ほら、敵が一足一刀に来てくれた。
交錯。しかし相手もまた傑物。この一瞬でシールドを構えてせり合いに持ち込まれた。
でも、そこまでは読んでたよ。
片手に持っていたライフルでシナンジュの右足を撃ち抜き、コクピットを踏み台に後方へ宙返りする。
その最中に、回転しながらビームを放つ。
そうだ、僕ならここにファンネルを置く。流れるビームが2基のファンネルを撃ち抜き、体を起こすと正面にシナンジュと、速度を落とさずタックルを仕掛けてくる4枚羽。
前へ!
逃げるのではなく迎え撃つ。ただ正面からの押し合いじゃあパワー負けする。横へ抜けろ。そこへサーベルを置いて、切り裂け。
4枚羽の正面の羽をサーベルが切り裂く。これで奴が前に構えられる羽は無くなった。
まだ前へ!
正面に構える片足を失ったシナンジュへビームキャノンを放つ。当然避けられるが、これで正面に障害物が無くなった。
そして、ファンネルは全方位から、このタイミングに狙い撃ちたい、そう思うだろ?
ほら、僕の腹を狙ってる。
きりもみの様に回転しながらも、展開途中のファンネルが良く見える。あとはそこにビームを置け。ビームライフルは足の長い水鉄砲だ。ぐるりと回って、ほら掛けろ。
距離を取り、振り返る。シナンジュも4枚羽も、先ほどのように掛かってこない。
そうだ、分かるだろ?さっきのままじゃやられるって。そう思い込んでくれるだろ?
さっきの無茶な機動で、ジェガンの関節に警告が出始めている。プロペラントタンクも吹かし過ぎたのか、推進剤が心もとない。
そして僕自身、かなり無茶をした。脳がいたい。腹の底が気持ち悪い。あんな機動を何度も続ければ、マシンより先に僕に限界が来そうだ。
でも、この戦闘に援軍はない。むしろ早々にこの戦闘を切り抜けてユニコーンの応援へ行かなくちゃならない状況だ。
「さあ、もうちょっと頑張ろうかな?」
次の接触で2機を行動不能にし、ファンネルを叩き落とす。出来なければ、僕は墜とされる。
正念場だ、覚悟を決めろ。
僕も敵も同時に動いた。
ファンネルが展開される。正面にシナンジュ、後方に4枚羽。
速い!
機動力で一気に距離を殺してくる。反射で防ごうとなんてするな、パワーで押し切られる。マシンを全力で振り回せ。
右へクイック、左へクイック、かかった、置き去りにして下へ!
読まれていた!
避けた下方へ4枚羽がすでに来ている。そしてシナンジュも回頭し狙撃してきている。
その狙撃をよけるように、相対する4枚羽の背中を取るようにぐるりと回る。無茶な機動だ、マシンがきしむ。だが、背中はとれた。背中から、両足めがけてキャノンを放ち、残った羽にサーベルを突き刺す。
背中を蹴り飛ばしてシナンジュからの狙撃を避け、取り囲みに来るファンネルを回転しながら迎撃する。これで表に出てるファンネルは全部だろ。
これで1対1だ。
近接が無くなったこちらの事情を分かってか、シールドブレードで斬りかかってくる。
引いてビームライフルで牽制しようとしたところで、
構えたビームライフルが狙撃され、爆散した。
「は?」
思わずビームが来た方に視線をやった。
「リゼル?」
正面からはシナンジュが迫ってきており、迎撃できないタイミングだった。
衝撃。
僕は意識を失った。
※
目が覚めると、僕は知らない部屋にいた。
「生き、てる……」
頭が痛い、そして気分が悪い。真っ先に感じたのはそんな不快感だった。そして、自分が横たわるベッドに、声をかけるその人に気づいた。
「目が覚めたか」
「……あな、たは……」
「また会ったな、ハサウェイ・ノア。こんなところで、会いたくはなかったが」
マリーダ、クルスさん。なぜ彼女が……いや、バーンさんがジオンの人で、クルスさんはバーンさんの仲間で、なら、クルスさんもジオンの人で……、いや、今はそれよりも……
「ユニコーンは、バナージは……」
そう聞くと、彼女は少し微笑んで言った。
「ユニコーンのパイロットも生きている。こちらで保護している」
「そう、ですか。良かった……」
不快感を我慢して体を起こす。
見渡すほどの広さも無い狭い部屋だった。ベッドと、トイレと、今クルスさんが座ってる小さな椅子だけ。おそらく牢屋なのだろう。
「ここは、ジオンの艦ですか?」
「そうだ、あの戦闘の後、お前たちは機体と共に回収された」
あの戦闘、そうだ、シナンジュと4枚羽と戦って、最後は……リゼルに撃たれた。あれは、見間違えか?いや……
そして隣に座るクルスさんの気配に、覚えがあった。
「ああ、クルスさんが4枚羽の……」
「4枚羽?……ああ、クシャトリヤのことか。そうか、お前ならば気づくものか……」
「その、気配が同じだと思って。あの、怪我とかはないですか?」
「敵の心配をするのか?お前は」
「いや、その、……すみません。でも、クルスさんのこと、憎くて戦ってたわけじゃないですし……」
僕がそう言うと、クルスさんは呆れたような、面白いものを見たような、そんな笑みを浮かべていた。
「まあ、怪我はない。クシャトリヤは頑丈に作られているし、私は強化人間だ。お前よりもタフだよ。もっとも、クシャトリヤの修復には随分時間がかかるがな」
「ああ、それは、……すみません」
「まったくだ、ファンネルもほとんど墜とされた。当分使い物にならないな」
揶揄う様にクルスさんが僕を笑う。何とも申し訳ない気もして、何と言わず僕は頭を下げていた。
「まあ、お前も私も生き残った。それだけ幸運だったということにしよう」
「あの、一つ聞いても良いですか?」
「なんだ?言ってみろ」
「最後、あの時僕を撃ったのは、その、連邦のモビルスーツだったと思うんですが……」
「そうだ、連邦が君を撃ったことは間違いではない」
聞き覚えのある、声が聞こえた。
響くような低い声、赤い軍服と、金髪、そしてマスクをした男。
……誰?
シャアっぽい声、ただ、何だあの仮面?あと赤い軍服って何?ナポレオンなの?え?
「大佐」
クルスさんが即座に立ち敬礼する。
「君にはしてやられたよ、ハサウェイ・ノア君。まさか中尉と私で抑えきれないとはな。さすがアクシズ事件の英雄、いや、アムロ・レイの後継者といったところか」
「えっと、え?」
「私はフル・フロンタル大佐だ。シナンジュのパイロット、と言った方が分かりやすいだろうか?」
「あ、その、どうも。あ、お怪我はありませんか?」
クルスさんにしたように思わずそう聞いてしまうと、フロンタルさんも喉を鳴らすように笑った。
「ああ、問題ない。君は些か怪我をしたとは思うが、無事なようだな」
「あ、はい。痛いですけど、何とか」
痛くないところなどないが、それよりも脳の処理が追いつかない。
え?仮面?仮面なんで?
クルスさんも普通にしてるけど、ジオンだと仮面って普通なの?怪我隠すマスクとかならわかるけど、あれ仮面だよね?なんで?もしかしてジオン的オシャレアイテムなのか?あれ。
「では、先の戦闘について調書を取りたい。こちらへ着いて来てくれるかな?」
「あ、はい。わかりました」
クルスさんに手を取られ、手錠をかけられる。
わ、初めての体験。したくなかったタイプの経験だわ。まあ、戦闘に参加してるもんな。しかも敵対して、殺されてないだけマシ、なのか?
駄目だ、よく分からん。
「その気などないだろうが、逃げようなどとは考えるな。その瞬間こちらも相応の対応をすることになる」
「あ、はい。逃げません」
そう返す僕に、どこかクルスさんは呆れたような視線を向けて、フロンタルさんの後へ続く。
事情聴取は割とすんなりと終わった。
名前は、年齢は、所属は、戦闘に参加した理由は、どういった作戦を取ったのか、そんなものだった。
それらは全て、作戦へ出る前にバナージと一緒に、ダグザさんに言われたことでもあった。
万が一戦闘になり、ジオンに捕まった際、知ってることはおとなしく全部話せ。
インダストリアル7のことは相手も知っているし、先の戦闘も知っている。
だから洗いざらい話して、戦闘に巻き込まれ連邦の艦に避難したが、連邦の指示で戦闘に参加することになった。そう話せばいい。
僕たちのような見るからに民間人であれば、相手も大人しくしていれば強硬な態度はとらないと。
その通りだったようで、調書はすんなりと終わって、内容をまとめ終えたのか、調書をまとめていた人は、それでは、と退室していった。
そして、その席に代わるようにしてフロンタルさんが座った。
「いくつか私からも聞きたいことがある。構わないかな」
「えっと、はい。勿論です」
「先の戦闘、それにその前に関しても、凄まじい戦闘だった。君のジェガンを調べさせてもらったが、特殊な機構は一切ない、極めて標準的なジェガンだった。よくあれで、あれほどの戦闘をこなしたものだ」
「えっと、どうも」
「その戦闘技術は、一体どこで手に入れたのかな?」
「その、3年前のアクシズ事件から、シミュレーターにさわる機会は結構あって、宇宙に上がってからは、アルバイトでほぼ毎日やってたので、そう言ったところじゃないかとは思います」
「ふむ、それだけであれほどの戦闘を……信じられんな。だが、それが真実なのだろう。君は、一部の軍関係者の間では有名なのだよ」
「え?僕が、ですか?」
「ああ、アクシズ事件で急遽モビルスーツに乗り、戦闘に出て、あのシャア・アズナブルとさえ渡り合った少年。正真正銘のニュータイプ、アムロ・レイの再来だと」
フロンタルさんは手を組み僕を見つめる。
「そして、連邦はそんな君を疎んでいる節さえある」
「……え?」
「……なるほど、聞いてはいないわけだ。あのダグザ・マックール中佐から。連邦がインダストリアル7に特殊部隊を送ったのは、確かにラプラスの箱の奪取もあっただろうが、それと同時に、君の暗殺計画が上がっていたことを」
暗殺計画?え、僕の?なんで?
「その、冗談、とかでは、ないんですよね?」
「そのようなつまらない冗談は言わんよ。ただ、君として信じがたくあることは理解できる」
「その、なんで僕を?というか、なんでそんなことを……」
「君に話すのか、かな?それとも何故私が知っているか、かな?」
フロンタルさんは鷹揚に話す。
「理由は数多くあるだろう。だが、ひとえに君は目立ち過ぎた。アムロ・レイが一年戦争の後、連邦に軟禁されていたことは知っているかな?」
「え、そうなんですか?」
「ああ、その理由は、やはりアムロ・レイが目立ち過ぎたせいだった。連邦は軍に象徴を求めない。圧倒的すぎる個の存在など、連邦は欲してはいないのだ。アムロ・レイはそのため軟禁され、しばらくの間存在を秘匿された。そしてハサウェイ・ノア、君は殺されかけた。先の戦闘で、連邦機に撃たれたのを、君は覚えているだろう」
ああ、あのリゼル。そうか、やっぱりあれはリゼルだったのか。いや、待て……
「その、なんでそんなことまで知っているんですか?推測ですけど、ネェル・アーガマの人たちは、そんなこと多分知らないと……」
「いや、恐らく知っていただろう。艦内で情報統制は無かったかな?それが特殊部隊からのものでも、アナハイムからのものでも」
……あった。というかこの作戦自体に、情報統制はされていた。
「……ありました」
「ならばまず間違いないだろう。誰がどこまで知っていたのか、そこまでは分かりかねるが、少なくともダグザ中佐は知っていたはずだ。君の暗殺計画を。だが知らせなかった。それが優しさからくるものか、はたまた非情ゆえか。それは分からないが」
ええーー……マジで?でも、ダグザさんそんなに器用な人かなあ?結構実直で真っ直ぐな感じもするけど、どうなんだろ?
「その、じゃあ今回のリゼルの狙撃は、もしかしてフロンタルさんは知っていたんですか?」
思わずそう聞くと、フロンタルさんはニヤリと笑った。
「そうだ。我々は連邦から聞いていたのだ。君の暗殺計画を、そして、それに協力して欲しいと」
「……確認なんですけど、フロンタルさんって、ジオン共和国の軍人さんなんですか?」
「いや、我々は公式に軍と認められてはいない、いわばテロリストだ」
「……最新鋭のモビルスーツを所有して、スーパーエース級のパイロットを抱えているのに、ですか?」
「そうだ。故に我々は、秘匿された存在ともいえる」
「そんな存在に……いや、そう言った立場だからこそ、連邦は声をかけた……?」
そう疑問交じりに声をかけると、フロンタルさんは笑った。
思わず息を吐く。
なんのこっちゃとも思うが、思い返せば今回は2回目だ。インダストリアル7から脱出したときにも、そういえば襲撃されてた。
で、仕損じたから、今回は戦闘のごたごたで撃ってきた?
……いや待てよ?もしそうであるなら……
「あの、なんで僕まだ生きてるんですか?」
思わずそう聞いていた。
「連邦と取引して、僕を殺すことで協力することにしたんですよね?なら……」
「君は撃たれ、テロリストに拉致され行方不明になった。いや、もしかしたらインダストリアル7を出た時点で行方不明になっているかもしれん。」
ええーー……、マジで?え、どうしよう。いや、これからどうすんの?僕。
「連邦は君を切り捨てた。そこはまず間違いない」
「……ですかね」
「ネェル・アーガマは、近くこちらを襲撃しに来るだろう。ユニコーンはこちらが抑えた。奪還せんと、今度は戦力を整えてくるはずだ。もしかしたらラー・カイラムが来るかもしれん」
そうだ、確かにその可能性はある。先の作戦は大失敗になったんだ。次は確実な戦力を準備するだろう。
「その時までに考えておくといい。君を助けに来たのか、殺しに来たのか分からない連邦へ着いていくのか。それとも、我々とともにいるのかを」
「……はい?」
予期せぬ言葉に、思わず変な声が出た。
読了ありがとうございました!
やっと可愛いヒロインが書けました!マリーダさん可愛い、カッコイイ!
そしてフロンタルも書けました。ただ彼の詳細は何一つ詰めてません。明日以降の私のテンションで彼の存在が決まるのでしょう。
頑張れよ!明日の私!
いつも誤字報告ありがとうございます!結構変な間違いしてて、何やっとんねんと自分に突っ込む日々でございます。
そして感想と高評価もありがとうございます!私ガンダムは絶妙ににわかでして、感想でたくさんの意見をいただけて本当に嬉しく楽しく読ませてもらってます。
引き続き感想、高評価、頂けると嬉しいです!