ハサウェイがアムロやシャアに影響される前に機械オタクになった世界線のお話   作:陸奥九十九

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やった書けたーー!難産でした!

おかしいな、個人的にはメカメカしく楽しい会話でキャラの深堀が出来ればと思ってたのに、なんか雰囲気がおかしいぞ?

お楽しみいただければ幸いです。

追記:
感想にてフェネクスはビスト家じゃなくて連邦主導の開発と教えて頂きました!
内容もそのように修正しました。にわかで本当に申し訳ない。
そしてご指摘ありがとうございます!


戦準備

さて僕の立ち位置であるが、公式にはまだ行方不明扱いで、ロンドベルでも全体共有しないとのことだ。

リディ少尉がどういった状況で僕を撃ったのかもわからないし、また何処に連邦上層部の息が掛かっているかもわからない状況だからである。

そのため僕は引き続きフロンタルさんの部隊でメカニックとして潜伏し、僕が知らぬ間に担っていた囮役を、バナージとバーンさんが引き継ぐ状況になるそうだ。

 

正直オットー艦長とダグザさんには、僕の無事を父さんから伝えて欲しいと思ったが、ネェル・アーガマのクルーは、その多くが新兵であるがゆえに、接触も洗脳も容易と判断され、僕の生存は、ことが全て終わってからでないと伝えられないとのことだった。

 

「ちなみになんですけど、いつからフロンタルさんの部隊ってロンドベルとつながりが出来たんですか?」

「繋がりが出来たのは、あの会合からだろう。それまで我々はあくまでジオン系テロリストが表向きの看板だ。何なら、お前があのジェガンに乗っていたことや、バナージ・リンクスがユニコーンに乗っていたことも、お前たちを拿捕した後に気づいたほどだよ」

「……よく僕って殺されませんでしたね」

「まったくだ。まあ、大佐とマリーダ中尉の二人掛かりだったからこそ、拿捕して交渉材料にしようという案が出たわけだ。大佐と私でお前を相手する状況であれば、容赦なく墜としていたよ」

「紙一重すぎません?」

「お前を艦へ連れ帰った後で、アデナウアー・パラヤからネェル・アーガマにお前とバナージ・リンクスが乗っている旨を聞かされた。文句なら奴に言え」

「おおう……ええー……」

「あの会合で何やら雰囲気よく話していたが、奴は間違いなく無能者だ。間違っても頼ろうなどとは考えるな」

「えっと、なのにゴップさんの部下なんですか?」

「だからこそかもな。奴はどこまで行っても優秀な官僚どまりだ。大局を見るだとか状況を先読みするだとか、そう言った能力は欠片もない。だから奴がゴップの直属などとは誰も想像しない。あんな風に自由に動けるのも、誰も奴を警戒しないからだろう」

「うーん、あちらを立てればって感じですかね?」

「いや、警戒されても自由に動ける優秀な人間がいればそれで問題ない。私も大佐も奴の能力にはそれなりに苛立ちがある」

「……まあ、難しいですよね。……よし、これで如何でしょう?」

「ふむ……まだ反応が鈍いな。もっと鋭敏で良い」

「了解です」

 

ケーブルで繋がれ宙に浮遊したクローアームを、アンジェロさんが操作し、それをさらに調整する。

 

 

 

有線サイコミュ、というものがある。

 

インコムと呼ぶそうで、これは意外にも画期的で、ファンネルより汎用性が高いのである。有線で直接操作できるというのが最大のメリットにしてデメリットでもあるが、中近距離に限れば誰でもオールレンジ攻撃が可能になるし、何よりも使える人が多い。

アンジェロさんはファンネルは動かせないらしいのだが、こちらの有線式なら問題なく動かすことができる。

しかもファンネルの様に限定した特定の機能しか使用できないというわけでもなく、あくまで腕の延長であるから多目的に使用できる。

 

ローゼンズールは、そう言った意味でも面白いマシンだった。

 

ジオン系のメカは本当に多種多様だと思う。

シナンジュは高機動・高性能で、腕のいいパイロットが乗れば真価を発揮する、超王道のスペシャル機で、クシャトリヤはサイコミュ適性のあるものであれば、その能力を存分に生かし戦場で無双できる小型モビルアーマー。

そしてこのローゼンズールは、シナンジュとクシャトリヤの中間的存在で、ベース機はギラ・ズールであるが、さらに高出力に高機動にチューンされ、両腕をインコム式のクローアームに換装、さらにアーム内にメガ粒子砲とIフィールドを装備することで、一騎当千の性能を持つようになった。

 

そして現在は、そのインコムの調整とマシンセッティングをしているところだった。

 

ガバナンさんに教えてもらったのだが、どうやらサイコミュ関係の技術については、アナハイムでも割と持て余している技術らしい。というのも扱える人間が大変少ないからだ。

連邦系技術ではファンネルはほぼワンオフになりつつあり、現在ではこのインコムが主流になりつつあるらしいのだが、それでもやはり扱える人はそれほど多くなく、スペシャル機での採用はいったん考えるが、量産機での使用はまず考えないとのことだった。

ジオン系においてファンネルはまだ使用されてはいるが、それでも高性能機でしか採用は考えず、グリプス戦役やネオジオン抗争の時の様に、ファンネル装備の量産機などはもはや現実的ではないと考えられているとのことだった。

 

だからこそセッティングはそれなり程度までしか出せず、また感覚による操作の為いちいちパイロットごとにセッティングを出す必要があり、しかしそのセッティングを出す技術者自身はファンネルもインコムも使えない、なんてこともままあるらしい。

 

そう言った理由もあって、メカがさわれて、モビルスーツもそれなりに操縦出来て、かつファンネルも使える僕がローゼンズールのセッティングを出すことになった。

場合によってはそれが今後のインコムセッティングの叩き台になるかも、なんて言われたが、まあアムロさんがいるしあくまで冗談交じりの会話だろう。

 

 

 

「そうだ、バーンさん、じゃなくて、ミネバ殿下は、このことを知らないんですよね?」

「無論だ。ガランシェール、普段姫様の護衛をするあの部隊も詳細は知らない。まかり間違ってもゴップのことなど漏らすなよ。すべてはこのバカな宝探しが終わってから大佐が伝える」

「了解です。黙ってます」

「まあ、漏れたところでどうともならんと思うがな」

「え、ミネバ殿下って、ザビ家の唯一の生き残りなんでしょう?それなら……」

「姫様はザビ家唯一の遺児だが、ドズル閣下のご息女だ。ドズル派はザビ家を信奉する者たちの中では小派閥だよ。それに他と違って温和かつ常識的だ。実際、姫様自身、世が荒れるくらいならジオンなどいらないと考える方だ。知ったとて何か行動を起こすとも思えん」

「へえ、そう言うものなんですね?」

「そう言うものさ。もっとも、総帥閣下が死んだらまた情勢も変わるがな。我らジオンの未来のためにも、総帥閣下には馬車馬のごとく働いて貰わねば」

 

そもそもあの方がことを起こしたのが大部分の原因だしな。アンジェロさんはそう言ってクローアームを操作する。

 

「今更ですけど、アンジェロさん含めてフロンタルさんの部隊って、割とシャアには批判的だったりします?」

「別にそう言うわけでは無い。ただ、総帥閣下の参謀気取りの女狐が、何となく気に入らないと思ったりもするわけだ。そもそもアクシズ事件を起こして連邦に強硬な姿勢を取らせたのは総帥閣下自身だ。その後改心したおかげでゴップが接触したことも理解しているが、まあ何もかもを手放しに称賛できる方じゃない」

 

お前もそうだろ?アンジェロさんがニヤリと僕に顔を向ける。うん、とりあえず笑っとこう。

 

「あれ?じゃあ、フロンタルさんの部隊が出来たのは3年前なんですか?」

「いや、それ以前から部隊自体はあったよ。そもそも親衛隊は、大佐が手ずから集めたメンバーだ。我々はジオンの一部隊という意識より、大佐の部下という意識の方が強い」

「じゃあ、そのころはモナハン首相の私兵的な役割を?」

「どちらかと言えば利害関係の傭兵団だな。モナハン・バハロは影の黒幕を気取っているが、それほどの能力を奴は持っていない。それに、どこまで行っても奴は小物の2世議員だ。信頼などできんよ。だからこそアクシズ事件後に今の立場を得たわけだしな」

「おお、流石フロンタルさんですね」

「まったくだ。大佐はどこまでも未来を見通していらっしゃる」

 

アンジェロさんが誇らしげにそう言う。そこには屈託のない優し気な笑みが浮かんでいた。

 

「……よし、こんなもんで如何でしょう?」

「ふむ……いいな、問題ない。これならばインコムも自在に使えよう」

 

良かった。気に入ってもらえたようだ。

 

「じゃあ、後は機体そのもののセッティングとかですかね?このマシン、だいぶバランス悪いですし」

「まあ、急遽準備したマシンだ。そこらへんは仕方がない。だが、これでもしもの時に備えられよう」

「ですね」

 

そうだ、最悪の事態に備えようと考えれば、ローゼンズールは、そしてサイコジャマーは必須の装備だった。

 

 

 

なにせ、あのユニコーンがあと2機もあるというのだ。通常装備ではいくらなんでも心もとなすぎる。

 

 

 

あの会議自体は早々にお開きになったが、その際にいくつもの物理資料が渡され、その内容をフロンタルさんから教えてもらった。

 

嘘のように思うかもしれないが、ユニコーンは全部で3機も製作されているという。

あのバカみたいなマシンを、それも3機も。

ガバナンさん、失礼なことを思って本当にごめんなさい。

でもやっぱりアナハイムってバカじゃないのか?あとビスト家も大分バカだろ。

 

今更言うべきことでもないが、ユニコーンは怪物だ。

あれほど小型なくせして、クシャトリヤを優にしのぐ推力、そしてビームマグナムの様なバカ火力の兵器を撃っても問題ないパワーと耐久力、そしてNT-Dによる超反応とそれに追従するマシン。

 

僕はクシャトリヤを傑作の小型モビルアーマーと称したが、ユニコーンもそれに近しい存在であると思う。

しかも、ユニコーンは1号機でデータ取り、2号機と3号機はがっつり特性を特化させて専用装備などゴリゴリに開発されているという。

 

もしも2号機と3号機が戦場に出てきて、しかも専属の凄腕パイロットが乗るようになれば、それは脅威以外の何物でもない。

フロンタルさんとアンジェロさんで1機抑えたとしても、まだもう1機いるのだ。そして、フロンタルさんほどのスーパーエースであったとしても、1対1でユニコーンに対応するのは流石に危険すぎる。

 

父さんが宇宙に上がればアムロさんやケーラさんが戦線に出られるが、タイミングによっては、ラー・カイラムは地上に掛かりきりになるかもしれない。

アルベルトさんやマーサ・ビスト・カーバインが地上に降りたとの情報があったためだ。もしかしたら、そこで政治的対応があるかもしれない。その場合、それに対応できるのは、ロンドベルの中でも司令の立場にある父さんだけとのことだった。

ならば来る前提で戦略を組み立てるべきではない、フロンタルさんはそう判断した。

 

 

 

現状ユニコーンと正面切って戦えるマシンはシナンジュとクシャトリヤだけだ。ただ、その2機にしたってスペックはユニコーンに劣る。しかも、そのうちクシャトリヤは僕が半壊させたので戦場には出られない。

 

そこで1機をフロンタルさん、もう1機をアンジェロさんが抑える必要性が出てきた。ただ、ギラ・ズールでユニコーンを抑えるのはかなり難しい。

アンジェロさん曰く、先の戦闘で3対1で引き気味に戦ってもかなりつらい戦いだった。もう数分フロンタルさんとマリーダさんの応援が遅れていたら、誰かが墜とされていたかもしれない。それほどユニコーンの性能は特筆している。

 

だからこそ、ユニコーンを封殺できるメタ機が必要だったのだ。

それこそがローゼンズールであり、ローゼンズールに搭載されるサイコジャマーである。

これで最も厄介なNT-Dをシステムごと封じ込むことができる。

 

理想としてはユニコーンを乱戦に持ち込ませ、シナンジュが囮兼遊撃をしつつ、ローゼンズールがサイコジャマーでNT-Dを封殺。それと同時に無力化。こんな展開である。

 

ちなみにこの前段階として、ゼネラルレビルというドゴスギア級というバカでっかい戦艦のやっべー部隊が攻めて来るかも、それにどう対応しよう、という話もあったのだが、フロンタルさんもアンジェロさんも「雑魚は物の数に入らない」とほぼ無視で考えていた。

うん、やっぱやべーわフロンタルさんの部隊。よくこんな人たちと戦ったな。

 

「マシンテストはいつからにしましょう?僕はいつでも大丈夫ですけど……」

「いや、あとのセッティングはこちらでやる。お前はお前の仕事に戻っていい。途中インコムに不具合があれば呼ぶかもしれんがな」

「え、そう、なんです?」

「ああ、戦場復帰は無理だと思うが、お前はクシャトリヤの方に戻れ。それと、もしもの時に備えて、あのマシンもな」

「……来ますかね?そんな時」

「さあな。だが、戦場では思いもよらぬことが起きるものだ。例えば、民間人が仕方なく戦場に出て敵の総大将の足止めをしたり、とかな」

「……ですね、動かせるようにしておきます」

「ああ、励めよ」

 

そう言ってアンジェロさんは格納庫からブリッジの方へ飛んでいった。

 

「さて、どっから手を付けるかな?」

 

僕は半壊状態のクシャトリヤと、そこに並ぶもう1機のマシンへ振り返った。

 

 

 

 

 

 

ヒーローになれると思っていた。

 

自分には才能があり、夢をかなえ、自分の力だけで飛んでいけるのだと。

 

議員一家に生まれた自分が軍へ行くことに、父は最後まで反対していたが、そんなものは自分には関係無かった。

 

本当は飛行機乗りになりたいと思っていたが、もはや戦闘機のパイロットは軍の主流になく、妥協としてモビルスーツ乗りへの道を目指した。

 

パイロットへの道は険しく厳しいものだったが、問題なく士官学校には入れ、そしてそれなり以上の成績を残すことができた。

 

そして腕利きしか所属できないロンドベルに入隊し、最新鋭の可変機を受領し、パイロットとして快調な走りだしをしたと思った。

 

がさつだが腕は確かな隊長、気安い態度の同僚、宇宙に上がれば家のことなど関係ない、自分の腕ひとつで戦っていける、自分だけの価値を認めてもらえる。

 

今は経験も浅く隊長の足元にも及ばないが、必死に訓練し、戦場を生き抜き、パイロットとして立身出世を果たしていける。もしかしたら、あのアムロ・レイの部隊に所属されたり、撃墜王として名を残すことだってあるかもしれない。

 

そんな妄想を、同じく新任の同僚と共に馬鹿話として盛り上がった。

 

でも、全部が全部嘘とも思わなかった。だってそうだろう?ノーム隊長は確かに凄腕だったが、全く追いつけない存在だとは思わなかったのだ。

未熟な部分を一つずつ克服していけば、必ず追い越せる背中だと、そんな風にさえ思えた。

 

 

 

初めての戦場に身を投じるまでは。

 

 

 

緊張感は無論あった。しかもこの任務は、ロンドベルだけでなく特殊部隊エコーズとの合同任務になった。

工業コロニーに潜伏する反連邦組織の殲滅、任務の内容としてはそんなものだったが、それだけではないことは誰の目にも明らかだった。

 

反連邦組織とは何か、それはネオジオンなのか、それとも全く異なる組織なのか。戦力だけならばロンドベルだけで十分なはずなのに、エコーズが派遣された理由は何か、それは連邦上層部が関係することなのか。

モビルスーツ隊の中でも様々な意見が飛び交った。

 

ただ、そんな混迷する状況を、嬉しがる自分もいた。

それほど重大な任務を任されるような立場になれたのだと、ロンドベルが持つ独自性と、それと連邦上層部が相反するためエコーズが送り込まれた。

自分たちは連邦上層部とさえ渡り合えるような強さがあるのだと。そんな優越感があった。

 

そして、工業コロニーに戦艦の主砲を撃ち込み、戦闘は始まって、敵もまた現れた。

 

サイコミュ兵装を装備する、特殊なモビルスーツ。

 

戦慄した。

敵は尋常ならざる相手だと。噂に聞くサイコミュ兵装をこんなにも早く目にするとは思わなかった。ロンドベルにおいては、あのアムロ・レイしか使わない兵装。操作難易度が高すぎて、エース以上でなければ使用できない兵装。そんな兵器を使用する敵。

 

そして、そんな相手を追い払った、正体不明のガンダム。

 

 

 

そのガンダムはサイコミュ攻撃をやすやすと凌ぎ、大型ともいえる敵モビルスーツを単独で撃退させた。その力は圧倒的だったと言える。

状況が終わった後も沈黙するガンダムをネェル・アーガマにて回収すると、すぐさまエコーズと、同乗していたアナハイムの連中がガンダムを隔離した。

 

勿論同じ艦の格納庫だ。完全に目隠しされたわけでは無いが、ネェル・アーガマのクルーでさえも機密を建前に近づけなくされた。

 

これだ。これこそがエコーズが乗り込んできた理由なんだ。そう思った。

 

 

 

自分は戦闘に直接参加することは無く、民間人の保護で状況が終わっていたが、そんな民間人を乗せた状態で、作戦行動を続けると決まった。

 

工専の学生で、うち一人はアナハイムでのアルバイト中にモビルスーツに乗って逃げてきたほどだ。どれほどすさまじい状況だったのかは想像に難くない。

 

近くのコロニーに寄ることもなく、また行先も定まらず、隠密作戦の様に身をひそめながら、ネェル・アーガマは宇宙をさまよっていたようだった。

 

 

 

そして、ガンダムからその少年が現れた。

 

その少年もまた工専の学生だった。自分よりもずっと年下の学生で、その少年がガンダムに乗り、敵を退けたのだと。

 

なんだそれは。まるで彼が主人公の様じゃないか。

 

自分が必死に民間人を救出するその横で、その少年はガンダムに乗り敵を退けた。

 

それが、何とも言えずに腑に落ちなかった。

 

だから再び敵が来たときに思ったのだ。彼の手は借りない。自分たちの艦は自分たちで守ると。何となくそう意気込み、戦場になれず震える体を押さえて、戦いに出た。

 

 

 

そして敵に蹂躙された。

 

ネェル・アーガマは狙撃され、甚大な被害を被った。出撃する最中に僚機は墜とされ、これまでにない修羅場であることを悟った。

 

相手はたった1機のモビルスーツだった。確かに高性能なのだろう。ブリッジからアナハイムが渡した情報が共有され、それがリゼルをはるかに超えるものだと知った。

 

それでも多勢に無勢だ。

 

戦争は数がものを言う。いくら高性能なモビルスーツがいようとも、囲んでたたけば必ず倒せるのだ。墜とされた仲間の無念を胸に、必死に敵と戦った。

 

 

 

だが一発として攻撃は当たらなかった。

 

一方的に殴られているかのような状況だった。敵を捕捉できず、視界にとらえてもいつの間にか消えて、そして味方が墜とされ、艦も攻撃され。

 

恐怖した。その時初めて死を直感した。恐怖と怒りと、強い感情がないまぜになって、地獄と化した戦場を必死に飛んだ。

 

 

 

その声は、唐突に響いたのだ。

 

ネェル・アーガマからのオープン回線だった。

 

我々には人質がいる。人質の命が惜しければ見逃せ。そんな内容だった。

 

特殊部隊のエコーズが、民間人と思って保護した少女に銃を突き付けて、高圧的に命乞いをしているかのような状況だった。

 

一瞬理解が出来ず固まって、そして状況をやっと呑み込んだ。

 

恥ずかしかった。そんな状況を演じたエコーズが、そんな状況に追い込んでしまった自分たちが。

 

そしてその人質交渉は破綻した。人質が本物かどうかも分からないし、ガンダムを寄こさないのなら死ねと。

 

こんな情けない真似までして、結局は何も変わらなかった。

 

その行動の汚さと無力感に嫌悪さえした。怒りがわき上がってくるようで、その怒りを相手にたたきつけるように戦った。

 

テロリスト相手に人質なんて取ってさ!

 

怒りに身を任せ、そして窮地に陥った。敵の行動も見えず、隙を突かれ。

 

死ぬ。そう思った。

 

だが死ななかった。それは自らの力量によるものじゃない。隊長の助けによるものだった。

 

隊長が助けに入り、状況を立て直せる、そう思って。

 

思った時には、隊長は敵に墜とされていた。

 

 

 

ここで死ぬのか。素直にそう思えた。

 

でも死ななかった。

 

 

 

彼らが、助けてくれたから。

 

ガンダムとジェガンが発艦するのが見えた。ガンダムはその速力で攻撃を振り切り、ジェガンは発艦中の攻撃をいとも容易く避けていた。

 

そしてその2機は、これまで自分たちが手も足も出なかった相手を手玉に取り、攻撃を当然のように当てていた。

 

その状況に焦ったように敵の応援が来ていたが、それもジェガンが当然のように蹴散らしていた。

 

『ネェル・アーガマのモビルスーツ部隊の人!聞こえますか!赤い奴以外を散らします。浮いた敵から墜としてください!』

 

オープンチャンネルの通信だった。幼ささえ感じる声だった。敵も聞いているのにオープン回線だなんて。でも、その声に従った。

 

必死に敵に食らいつこうとした。そうだ、敵を倒すんだ。俺が艦を守るんだ。

 

そのジェガンは、一瞬の交錯で敵を行動不能にしていた。

 

自分はまだ、当然のように敵を追いかけっこをしているような状況だったのに。

 

そしてパーソナルカラーを持つもう一機も、一発も外すことなく攻撃を当て、継戦能力を即座に奪い、寄り道が終わったかのようにガンダムの元へ戻っていった。

 

その瞬間には、俺が相手していた敵は、俺の存在など無視して、早々に味方を回収して戻っていくようだった。

 

させるかと追い打ちをかけようとしたが、出来なかった。

 

敵は、俺相手に本気など出していなかった。攻めれば殺される。そう直感できた。

 

 

 

リゼルの望遠カメラはガンダムの戦闘を捉えていた。

 

シナンジュを追い詰めようと深追いをし、4枚羽に墜とされそうになっていた。

 

危ない!

 

そう思った時には、あのジェガンがガンダムを助けていた。

 

即座にシナンジュに攻撃を当て撃退し、4枚羽にも攻撃を与えて退かせた。

 

 

その後なぜかガンダムとジェガンが戦闘状況に入ったように見えたが、それもジェガンが即座に鎮圧していた。

 

 

 

『こちらジェガン、ハサウェイ・ノアです。ネェル・アーガマへ帰投します』

 

 

 

ただのジェガンだった。ガンダムでもなく、リゼルよりも性能が低い、量産機のジェガン。そんなジェガンがたった1機で、自分たちが壊滅させられた敵部隊を撃退した。

 

理解できなかった。

 

 

 

格納庫に戻ると、そこにはジェガンから降りる少年がいた。

 

少年だった。

 

ガンダムのパイロットよりさらに幼そうな顔で、そんな彼を、メカマンや他のクルーたちが彼を笑顔で出迎えていた。

 

君のおかげだ。

艦を守ってくれてありがとう

君たちは恩人だ

 

英雄譚を見ているようだった。在りし日のアムロ・レイの伝説のような。しかもそれがガンダムではなく、ただの量産機で。

 

 

 

艦を守ってくれたことへの、戦ってくれたことへの感謝。

自分たちの力が及ばず、自分たちの艦を守ることさえできない情けなさ。

 

それと同時に、なぜそこにいるのが自分では無いのかと、どうして君なのかと、そう嫉妬していた。

 

 

 

ハサウェイ・ノア。ロンドベル司令のブライト大佐のご子息、英雄ブライトの息子。

 

彼は3年前のアクシズ事件に13歳ながら巻き込まれ、鉄火場に際して人手が足りず、民間人でありながら戦場に出て、ラー・カイラムを守り、敵と戦い、シャアとさえ戦闘した。そして生き残った。

 

そんな話をミヒロ少尉から聞いた。彼女も人づてに聞いたと言っていた。古参のロンドベルの間では有名な話らしいと。大っぴらに話せるようなことでもないから、ロンドベルだけの秘密なのだと。

 

 

 

そうだ、ブライト司令は奥方が地球の名家の出で、彼は名家の母親と、英雄の父親の間に生まれた、ある意味サラブレッドなのだ。

 

 

 

そうだ、俺と同じボンボンのはずだ。なのに、何でこうも違う?

 

 

 

生き残ったことへの祝福も、僚機が墜とされたことへの悲しみも、何もかもがどうでもよくなっていた。

 

何故俺じゃない?どうして俺はああなっていない?

 

 

 

そんな訳の分からぬ鬱屈が、ただひたすらに胸の中をのたうち回っていた。

 




読了ありがとうございました!

前半楽しかったのに後半暗っ!前半が前の話の補足で、後半がとある人の心情でした。
掘り下げ出来てるかな?解釈違いが合ったら本当に申し訳ない。

次回どうしよう?全然最終決戦までのプロットが練られていません。この段階になって困ってます。明日の私、頑張れよ!

いつも誤字報告ありがとうございます!なぜこんな誤字をする?私は私を信じられない。
そして感想と高評価もありがとうございます!とても嬉しいです!

引き続き感想、高評価いただけるととても嬉しいです!
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