ハサウェイがアムロやシャアに影響される前に機械オタクになった世界線のお話   作:陸奥九十九

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劇パト1が1日限定でYOUTUBEで無料視聴できます。みんなで観よう。

……はい、あんまり話が進んでないように思います。申し訳ねえ。

楽しんでいただければ嬉しです!


作戦会議

宇宙に上がって早々に僕とバナージ、ガランシェールのメンバーと、地上のジオン残党軍として協力してくれたらしいカークス少佐とロニ少尉は会議室に集められた。

 

さらっとした部分をアンジェロさんに聞いたが、どうやら事態は、思った以上に面倒な方向へと転がっているらしい。

 

一仕事終えて宇宙へ上がってきて早々に、渋い顔をしながらミーティングルームへ集まり、それぞれ席に着いた。

 

「……おい」

「え、はい?」

「なぜ私の隣に座る、お前の席は向こうだ」

 

アンジェロさんに肩を押されて、絶妙に釈然とせずにバナージの隣に座る。

 

「ねえハサウェイ」

「え、なに?」

「アンジェロさんって、実は結構優しい?」

「超優しいよ。多分ツンデレってやつ」

「聞こえているぞ貴様ら」

 

いや、何も話してないですよ。もし話した内容が聞こえたなら大したもんですよ、と言わんばかりのスンとした表情でやり過ごす。

バナージは口笛のような隙間風を奏でている。ふふっ、これですべて誤魔化されただろう。

 

怒るアンジェロさんを宥めて、フロンタルさんが会議を始める。

 

「まずは地上での作戦ご苦労だったキャプテン。それにバナージ君も。イレギュラーが様々起こる中で、良く任務を遂行してくれた。そして北アフリカ戦線の諸君も、これ以上ない助力に感謝する。では、報告を頼む」

 

フロンタルさんに促され、カークス少佐が立つ。

 

「まず先立っての作戦に関して、ガルダでのバナージ君救出作戦です。その折に、黒いユニコーンのパイロットから、ミネバ殿下がガルダにいる、とバナージ君は聞いたそうですが、ガルダ、そして脱出用のシャトルにも、ミネバ殿下は確認できませんでした。そして、要人と思われる人物も、アナハイム役員のアルベルト・ビスト氏以外確認できませんでした」

 

その言葉に、バナージが少し驚き、すぐに得心したかのような雰囲気を見せる。

 

「アルベルト・ビスト氏は現在ガランシェールにて保護、これから事情を伺っていく予定です。間違いなく今回の事件の重要参考人かとは思うのですが、何と言いましょうか、捨て石のようにも感じます。それに、明らかにアルベルト氏一人の護送にしては不必要なほど厳重な警備体制でした。それこそ、ミネバ殿下がいて当然だと思えるほど」

「黒いユニコーンのパイロットは、殿下がいるやもしれぬ状況のガルダで戦闘状況を起こしました。それも、ガルダの横腹に穴をあけるかのレベルで。あくまで可能性レベルの推測ですが、ミネバ殿下と他にいたかもしれぬ貴賓客は、ユニコーン確保前後に、別ルートでトリントン基地から移動したのかもしれません」

 

カークス少佐の報告にロニ少尉が補足する。

確かに、もしバーンさんがあの場にいて、その上でNT-Dなど使うとは思えない。じゃあ、バナージへの言はブラフ?……何のために?

 

「既に共有した事項ではありますが、改めて報告します。ユニコーンが示した次なるラプラスプログラムの座標について」

 

 

 

ラプラスプログラムの最終座標は、インダストリアル7、メガラニカ。

 

 

 

キャプテンのその言葉に、思わず、は?と声が漏れてしまった。

 

全員の視線が僕を貫く。

 

「……ああ、お前には言っていなかったな。クシャトリヤの改修があったから」

「え、いや、マジですか……」

「マジだよ。大マジだ」

「まあ、ハサウェイ君の言わんとすることも分かる。つまり、我々は振り出しに戻され、振り出しこそがゴールだったともいえる」

 

その言葉にバナージも少し俯くようだった。

……ええ?なんか、ええ?これを仕組んだ人、性格悪ないか?

 

「だが、むしろ納得もできる。カーディアス・ビストをしてこれほど出し渋ったラプラスの箱が、何処とも知れぬ未知な場所に保管されているより、彼らの本営に保管されていると考えれば、この宝探しの終わりに相応しいとも思える」

 

宝探しの最後の場所は、スタート地点。振り出しに戻ると捉えるか、原点へ立ち返るとみるべきか。まあ、終わりが見えた、それは多分良いことだ。うん、そう思おう。

 

「次に悪いニュースだ。こちらの方が重要度、いや、危険度が高い」

 

フロンタルさんに促され、アンジェロさんがスクリーンに資料を展開する。

 

「まずはジオン共和国に動きがあった。モナハン・バハロが秘密裏に私設武装集団を動かし始めた。規模は戦艦1隻とそれに付随するモビルスーツ部隊」

「その部隊は、大佐とは全くの別系統で?」

「モナハン・バハロから我々に追加戦力や部隊展開で連絡はない。まったくの別系統と捉えて構わないだろう」

「彼らの目的は何なんでしょう?」

「あくまで憶測になるが、モナハン・バハロがとある人物と接触したとの情報がある」

「とある人物、ですか?」

「ああ、マーサ・ビスト・カーバインだ」

 

その場の誰もが一瞬呆ける。

 

「ビスト財団、というかマーサ・ビスト・カーバインは、箱の解放を嫌ってユニコーンの奪取を試みていたのでは?それがモナハン・バハロと繋がるとなると、本末転倒なのでは……」

「真意は分からない。だが、何らかの密約があったことは確かだろう。事実アナハイムは、異常とも思える資材と装備を、モナハンのその部隊へ納入している」

「となると、我々の目的は何処へ着地するのでしょう?モナハン・バハロが秘密裏にビスト財団と繋がっているのであれば、我々はすでにお役御免ということになるのでは?」

 

キャプテンのその言葉に、アンジェロさんはフロンタルさんへ視線を向ける。

それに応えるように、フロンタルさんが口を開く。

 

「キャプテン、それにカークス少佐、ある程度察しがついていると思うが、我々はネオジオンの非公式的な武装集団として活動しているが、それとは別に、命令系統が存在している」

「……それは、シャア総帥からくる命令系統でしょうか?」

「それもある。だが、それ以外にもまた、命令系統は存在する。だが、あくまで私は、君たちにとっての良き上司として存在したいと考えている。率直に言えば、聞けば途中で降りることはできなくなる」

 

フロンタルさんは、かみ砕くようにゆっくりと言葉をつづる。

 

「そして、ラプラスの箱に関連する事件が解決されれば、様々な状況に解決の目途が立つ。その暁には、君たちをシャア総帥直轄の特殊部隊として、正規軍に配置し直すことも可能だ。地上で活動するすべての残党軍に対しての是非は言えないが、少なくともカークス少佐を初めてとする北アフリカ戦線に対しても同様のことが言える。」

 

キャプテンもカークス少佐も、そしてマリーダさんもロニ少尉も、そして活動を共にしていたバナージも、静かに聞き入っている。

 

「だからこそ、あえて言おう。今ここですべてを詳らかにすることは勿論できる。ただ、そうした場合、これからも私の部下として、秘密裏に、そして闇に潜む活動を続けてもらうことになる。それを……」

「聞かせてください。覚悟ならば、とうの昔についています」

 

フロンタルさんの言葉を遮るように、キャプテンが言う。

そして、カークス少佐も、それに頷く。

 

「大佐、我々はあなたの部下です。あなただからついてきた。あなたに恩義を感じてついてきた。そんな寂しいことを仰らないでください」

「私もです、フロンタル大佐。短い期間でしたが、貴方は我々に対し、どこまでも誠実に、敬意をもって接してくださった。地上で燻る我らに、復讐では無く活躍の機会を与えてくださった。それだけでも、返しきれない恩義があるのです」

 

二人の言葉に、マリーダさんもロニ少尉も頷く。

仮面によって表情など見えないが、フロンタルさんからは、どこか暖かい雰囲気を感じられた。

 

「そうか、私は良い部下を持ったのだな」

 

呟くようなその言葉に、アンジェロさんも微笑む。

 

「では話そう。私が進むべきと信じた道を」

 

 

 

フロンタルさんは話す。アンジェロさんをして、ヴィランズミーティングと呼ばれたあの会議を。

ゴップさん、アデナウアーさん、ガバナンさん、父さんに祖父ちゃん、あとシャア。

あるべき平和な未来のために、陰ながら力を尽くすその会議について。

 

 

 

その話を聞いてバナージは酷く驚いた様子だったが、逆にキャプテンたちは合点がいったといった反応だった。フロンタルさんならば、そういう場にいておかしくない。そんな風に思ったのかもしれない。

 

そして、話は今後の方針へと戻る。

 

 

 

「さて、我々としては、モナハン・バハロにしても、マーサ・ビスト・カーバインにしても、彼らの跳梁を許すことはできない立場だ。そのため、彼らとは敵対することになる。何事もなくすべてが済めば、それはそれでよいのだが、状況的にも、それは許されないだろう」

 

話を戻すフロンタルさんに対し、アンジェロさんは酷く驚いた様子で、端末を見た。

 

「大佐」

 

差し出される情報端末をフロンタルさんも確認し、わずかに口元を歪める。

 

「諸君、新たな情報が、アナハイムの監視網から確認された」

 

映像情報が、スクリーンに流れる。

 

「っ!オードリー!」

「一昨日の明朝、ブリスベン基地からシャトルが飛び立った。そのシャトルは12時間ほど前、月へ到着した。搭乗者氏名は、オードリー・バーン、そして、マーサ・ビスト・カーバイン」

 

その映像には、やたら背の高いおばさまと、バーンさんがシャトルから降りるシーンが映されていた。

 

「キャプテン、事実関係を整理したい。保護しているアルベルト・ビスト氏への聞き取り調査を早急に行う。彼をレウルーラへ移すよう伝えてくれ」

「了解しました」

 

キャプテンがインカムを装着しガランシェールへ伝える。

 

「あの!今すぐにでもオードリーを保護できるんですか!?」

「……この映像だけが今になって共有された。そして、月への到着は12時間も前だ、それはつまるところ、一歩遅かったということだ」

 

逸るバナージに対して、アンジェロさんは冷静に返答した。

その言葉に、バナージは力が抜けたように背もたれにもたれる。

 

「彼女は、何処へ護送されたんでしょう?」

「それについても不明だ。ビスト財団保有のシャトルですぐに飛び立ったらしい。その後の足取りは追えていない」

「じゃあもう一つ。フロンタルさんがマーサ・ビスト・カーバインやモナハン・バハロの立場なら、彼女をどのように扱いますか?」

 

足取りが追えないのならば、想定するしかない。そして、それに関しては考える人は多いにこしたことは無い。

 

「そうだな……ミネバ殿下は、何においてもジオンの旗頭になる。それは一年戦争を経験した、旧ジオン公国を支持する者に対して、ともいえるが。であるならば、丁重に保護し、しかし舞台には上げず、協力しうるザビ家派閥の人間に秘密裏に情報を共有する。もしくは大々的に矢面に立たせて、ジオンの象徴としてシャア総帥と対立させた立場を取らせる、といったところかな?」

「ですね。ザビ家の遺児なら、それを求める人も多いはずですし。だからさ、バナージ。とりあえず彼女の身の安全は保障されている可能性が高い。いったんそれで落ち着こう」

「……じゃあ、そうじゃない場合は……?」

「分からない。でも、最後に追い詰められれば、取引の材料としてこれ以上ないほど、バーンさんの身柄は価値がある。残念ながら、僕もバナージもそれを知ってるでしょう?」

 

そうだ、正規軍のネェルアーガマでさえそう言った手段を取った。

彼らがどれほどの余裕を得ているかは知らないけど、ユニコーンをこちらが確保している以上、そしてゴップさんたちがバックについている以上、こちらの有利はある程度確保されている。

そして、追い詰められれば追い詰められるほどに、彼らはバーンさんの価値に気付く。

 

 

 

ああ、いやになるな。まるで人の命を数字で表しているようで。

 

 

 

「大丈夫、今はそう信じよう。そして彼女を助け出そう。相手だってラプラスプログラムの座標データは持っているんだ。だったら、再会もそう遠いものじゃない」

「……そう、だね。うん、助けるんだ、オードリーを」

 

バナージが顔を上げる。うん、やっぱりバナージは強い。その心が、何よりも強い。

 

「この状況の中ですまないが、まだ確認すべきことがある。アンジェロ、例の資料を」

 

フロンタルさんに促され、アンジェロさんがスクリーンに資料を映す。

それは、設計図だった。

 

「ガバナンCEOから、モナハン・バハロが進めた兵器開発計画に関して、情報の共有があった。ハサウェイ君、率直に聞こう。これについて、君はどう感じる?」

 

それは、紛れもないサイコミュマシンだった。思わず身を乗り出しスクリーンの前へと出る。

 

なんだ、これは?どういうサイズのマシンだ?

アルパくらい大きい?いや、それよりも大きい。なんだ、このジェネレーター。

それに何より、何だ、この設計思想は?

 

「なんだあ、これ……」

 

いや、所々に見慣れたような設計がある。これは、ユニコーンの設計思想だ。

ユニコーンのNT-Dはマシンマキシマムの究極だ。あれは究極の個で、恐らくモビルスーツの完成系の一つともいえる。

 

では、この怪物は?

これはその対極だ、究極の全。サイコフィールドを展開し、一騎当千ではなく天衣無縫の様に状況を勝利へ導く、超大型サイコミュマシン。

 

いや、でも待てよ?

 

「これって……」

「おい、自分の世界に浸るな。まずは説明しろ」

 

アンジェロさんに注意されて、ハッと我に返る。

 

「えっと、見て分かる部分だけですけど、これは超大型のモビルアーマーです。多分これは外殻部分で、操縦自体は別のモビルスーツを利用するんだと思います。ユニコーン、まではいかなくても、多分サイコフレーム搭載機を使って」

「性能に関してどういったものが想定できる?」

「そう、ですね。肩部にメガ粒子砲、腹部にこれは、ハイメガ粒子砲、ですかね?……凄いなこの出力、なんだこれ?戦艦のハイメガ粒子砲クラスじゃないか?は?こんなのモビルアーマーに載せてんの?」

 

思わず思考が声に出る。

 

「あとは、インコムですね。……いや、指先にもメガ粒子砲がついてて、その指先をインコムにしてるのか。すごいな、だからこんなサイズのジェネレーターなのか。……ん?なんだこのシステム?」

 

小型のドリル機構?いや、そこから電子デバイスが接続されてて、……なんだこれ?

 

「ねえバナージ、ここのシステム何かわかる?」

「え、ちょっと待って、どこ?」

「ここ。これって……大型施設の設備とかを外部からコントロールするクラックシステム?」

「えっと……だったらこんなに設定する必要なくない?それにこの爪みたいなアーム機構も要らないし」

「じゃあ、なんだ?サイズ的に、戦艦?いやもっと小さい機械?それって……」

「……モビルスーツの、強制制御機構?」

 

ふと漏れたようなバナージの言葉に、思わず顔を見合わせる。

フロンタルさんが、その箇所を後ろから見つめていた。

 

「……二人の予想が正しい気がするな。これは、インコム式のメガ粒子砲と、サイコミュシステムを用いた強制的なシステムジャックの機構だ。多勢に無勢な状況で、敵モビルスーツをジャックし、同士討ちでもさせて戦意を削ぐ目的かな?」

 

この出力のメガ粒子砲を撃てるのなら、敵機をジャックして手駒にする必要などない。ならば、その目的は別にある。

 

悪辣なことだ、とフロンタルさんが言う。

 

「最後に、この背部ユニットだ。これについて意見を聞きたい」

 

仏像の後光のような円形の背部ユニットをフロンタルさんが指さす。

これは、何だ?

 

「サイコフレーム、に使用する、コンピューターチップ?を……サイコフレームを搭載した制御用のモビルスーツのサイコフィールドを用いて、疑似的なサイコフレームをその場で展開させる、のかな?」

「……待ってハサウェイ、これって、サイコフレームで考えたら、とんでもない量になるんじゃ……」

「そう、かも」

 

いや、でもそもそも論として……

 

「これ、誰が操縦できるんだ?」

 

少なくとも僕はできないぞ?

 

「私もその点を考えていた。このマシンは、恐らく別なサイコミュマシンを用いて動かすであろう、超大型のアタッチメントパーツともいえる。このパーツを動かすために、どのレベルのサイコミュマシンが必要か、分かるだろうか?」

「……ユニコーンなら問題ないと思います。ユニコーンと、バナージくらい適性のあるパイロットがいれば」

「その次のレベルで言えば?」

「そう、ですね。……フロンタルさんと、シナンジュくらいのサイコミュマシンなら、行けると思いますけど」

 

でも、そんなパイロットそう居ないんじゃありません?

そう言おうとして、フロンタルさんの異様な雰囲気に気付く。まさか……

 

「あの、さっき言ってたモナハン・バハロの兵隊って、言ってしまえば、立場としてはフロンタルさんと同じなんですよね?」

「……その通りだ」

「じゃあ、もしかして、フロンタルさんクラスのパイロットも、相手にいるってことですか?」

 

フロンタルさんが、それを肯定する。

 

僕は思わず天井を見上げた。

 

「……マジか」

「でも、一人でこれだけのシステムを制御するのは、物理的に不可能じゃない?ハサウェイだったら、出来る?」

「無理だと思う。というか、これだけスペックに余裕があるならポテンシャルだけでどうにかできる気がするし、何だったら複座式で……」

 

いや、複座式なら、どうとでもできるか?

この外殻装置にもパイロット、というかニュータイプ能力者を置いて、システムの処理装置や思念の増幅装置に用いれば、もしかしたら操縦自体もどうとでもできるかも?

 

さらに言えば、さらにその思念を、この疑似サイコフレームで増幅させれば……

 

「フロンタルさん、質問良いですか?」

「何だろう?」

「ジオンで、モナハン・バハロの息が掛かったニュータイプ能力者って、結構居たりします?あと、アナハイムでも」

「……いや、そう多くないはずだ。強化措置を行うにしても、実戦レベルまで能力を上げられた例はそう多くない。それに、今はシャア総帥が強化人間系の技術を凍結している。新たに強化措置を行うことは、不可能に近いだろう」

 

その言葉にほんの少し安堵するが、それでも現状は意外なほどに追い詰められている。

 

「じゃあ敵は、少なくともユニコーンが1機、それに、この怪物の様なモビルアーマーが確定ですか」

「戦闘状況に陥った場合は、恐らくそうなるだろう」

「……アンジェロさん、敵のユニコーンはお願いしますね」

「言われずとも分かっている。そのためのローゼンズールだ。あと、この会議が終わったら早々にクシャトリヤを元に戻せよ?」

 

あ、それもあった。マリーダさんに無言で首を垂れる。その様子を見てマリーダさんが微笑む。良かった、怒ってはいない!

 

「ハサウェイ君、おおよそでいい。この後、このモビルアーマーの資料を纏めて欲しい。戦場に出てくるようなら、間違いなく総力戦になる。戦術考察をしたい」

「分かりました。すぐに作ります」

「大佐、ロンドベルは味方として数えることはできるのでしょうか?」

「その方向で調整を進めてもらっているが、何分連邦の内部状況が混沌としている。状況とタイミング次第では、我々だけでこの件を収めることになるかもしれない。よくよく留意して欲しい」

 

マジか、ラー・カイラムさえ来てくれれば、もはや解決したも同然だと思ってたけど、どうなるかな?期待したいけど、期待しすぎない方が良いか。

 

「情報が更新され次第、改めて戦力状況を確認する。それまでは、各自英気を養ってくれ。戦力を整え次第、メガラニカへとラプラスの箱回収へ向かう」

 

よろしく頼む。フロンタルさんのその言葉で、会議は一旦の幕を閉じた。

 

僕たちの最終決戦は、確実に近づいていた。

 

 

 

 

 

 

下手を打ったな、この愚か者め。ミネバは自らをそう叱責した。

 

戦争を止めねばとひとり飛び出し、結局は何もできずに、バナージを、そして彼の友人たちを戦乱へと巻き込み、関係ない彼らの力に頼ってここまで来た。

 

もっといい方法があったはずだ、戦闘状況を起こさずに、穏便に、平和的に、戦争を回避するための方法が。バナージを、戦禍に巻き込まずに済んだであろう方法が。

 

バナージが戦禍に巻き込まれなお生き延びることができた理由は二つ、彼にユニコーンが託されたから、そして、ハサウェイ・ノアが傍にいたから。

 

ミネバは籠の鳥であり、箱入りであり、温室育ちだ。

幼少期はハマーンが、そしてネオジオン抗争以降はザビ家ドズル派閥の関係者によって、為政者としての帝王学は教育されたが、現場というものを教えられることはほとんどなかった。

 

そんなミネバでさえも聞き及んでいた噂話がある。アムロ・レイの後継者とさえ言われた、その少年の話を。

戦争に巻き込まれ、ロンドベルの勝利のために陰ながら尽力し、少年ながら訓練も無しに戦場へ出て、シャアと渡り合い、最後は落下するアクシズを砕き地球を救った。

 

最初はこう思った。どこまでが作り話なのだろうと。いや、ともすれば、連邦が新たなる英雄を作り上げるためのプロパガンダで、何もかも作り話なのかもしれない、そうとさえ思った。

 

だってあり得ないだろう、常識的に考えて。

 

戦争に巻き込まれることはあり得るかもしれない。だが、ただの一般人が軍艦でどんな手伝いができるというのか。それに何より、軍人とは訓練をされたが故に軍人なのだ。ジンネマンやマリーダといった軍人たちの精強無比なるその資質を見れば、ただの子供が勝てる道理など一片とてありはしない。

ましてや、相手が百戦錬磨のアクシズ事件時のネオジオンであり、総帥シャア・アズナブル本人と、その直下部隊なのだ。足止めとてまともにできるとは思えない。

 

 

 

だから、彼をインダストリアル7で見た時、同姓同名の別人だと思った。そして、バナージの紹介を受けて、ああ、やはり噂は噂だったのだなと。

 

だが、それはすぐに覆された。

 

燃え盛るインダストリアル7から逃げ、連邦の艦に保護され、しかし戦闘に巻き込まれ。

フル・フロンタルと戦わざるを得ない状況になって、私はバナージと彼に救われた。

 

その戦闘を、ネェルアーガマのブリッジで確かに見ていた。

 

彼らを戦場へ送り込んだアルベルト・ビストは言っていた。彼らは死ぬまで、ユニコーンが破壊されるまで戦ってくれると。そしてユニコーンが破壊された暁には、彼らを見捨てて逃げればいいと。

 

フロンタルとの交渉の折、ダグザ中佐に銃口を突き付けられながら、ミネバはこういった。彼は自分を見捨てて殺すやもしれぬと、時により軍人とはそう言った非情な判断をするものだと。

しかし、軍とは何の関係もない一般人を戦場へ送り出して、彼らを見殺しに時間稼ぎをして、自分たちは逃げようなど、当然のように言い放つアルベルトを見て、ミネバは驚嘆し、そして落胆した。

 

人とは、これほどなりふり構わぬものなのかと。

 

ミネバは籠の鳥であり、箱入りであり、温室育ちだ。

良くも悪くも彼女の行動理念は貴族的である。ノブリス・オブリージュは彼女の中で当然の行動規範にもなっているし、ザビ家の遺児という立場を持つ自分、そして軍人という立場を持つジンネマンやマリーダたちが、戦場において命を懸ける、その行動に何ら異議はない。

 

だが、ただの一般人を戦場へ送り出すその行動が、ミネバには理解しがたいものであった。

 

 

 

殺される。ミネバはそう思った。

フロンタルは強い。最新鋭機を持たされるロンドベルのパイロットをして、彼を足止めすることさえできなかった。

ユニコーンを駆るバナージは鹵獲され、ジェガンを駆るハサウェイは殺される。

そして、見ず知らずの自分にここまで心砕いて、一緒に逃げようなどと言ってくれる優しいバナージが、友を目の前で殺され、冷静でいられるとはとても思えない。

 

そして、ユニコーンを鹵獲された先で、バナージが無事でいられるかどうかも、ミネバには分からなかった。

 

 

 

やめて。あなたたちが命を懸けるほどの価値は、この争いには無い。

 

 

 

そんな彼女の心を映した言葉が、しかしミネバは口にできなかった。

そんな発言が許されるような立場に、彼女は立ったことは無い。生まれてから現在に至るまで、一度として。

 

 

 

だが、そんな恐怖の修羅場を、彼らは乗り越えた。いや、あれは踏み潰したという方が適当なのだろう。

 

理不尽なほどに、ハサウェイ・ノアは強かった。

 

ブリッジに居合わせたアルベルト・ビストは、ジェガンではシナンジュの相手にもならない。そう言っていた。

だが結果はこうだ。彼はバナージとともにシナンジュを抑え込み、親衛隊を通り過ぎるかのように蹴散らし、シナンジュを撃退せしめ、マリーダの駆るクシャトリヤさえ撤退に追い込んだ。そして、暴走したユニコーンさえも、当然のように鎮圧した。

 

ブリッジは静寂していた。

 

人知を超える存在を目にした時、人はその存在を信じることが出来なくなる。

 

フル・フロンタルも、シナンジュも、ユニコーンでさえ、彼の前には霞んでいた。

 

 

 

その時理解した。彼の噂話は、極めて現実に即した内容だったのだと。

信じられないような存在が、しかして確実に存在しているのだと。

 

 

 

帰還した彼らを、オットー艦長とダグザ中佐はいたく労ったという。戦場における自分勝手な軍事行動を叱りつつも、よくやってくれたと。よく艦を救ってくれたと。

 

だが、ネェルアーガマの多くのクルーは、どこか彼を畏れていた。先の戦闘で古参兵や隊長機が墜とされ、残ったパイロットが新兵ばかりだったというのも理由にはなるのだろうが。

 

彼らは畏れた。圧倒的な強者を。

きっとそれは、一年戦争後に軟禁されたというアムロ・レイと、状況は近しいものなのだろう。

 

理解できない力を、人は畏れる。

連邦がアムロ・レイを遠ざけたように、ネェルアーガマの一部のクルーは、ハサウェイ・ノアを畏れ、遠ざけた。

 

そしてその状況は、オットー艦長とダグザ中佐には都合がよかった。

ラプラスの箱にまつわる極秘任務を遂行する、敵はネオジオンのフル・フロンタル。

もっとも最適な作戦は、勝てる見込みのあるハサウェイ・ノアとエコーズのみでユニコーンを援護し、電撃戦的に作戦を遂行する。そんなものだった。

 

 

 

ミネバは半軟禁状態でネェルアーガマにて保護されていたが、ラプラスの箱に関わる作戦を、彼女はオットー艦長とダグザ中佐、そしてバナージからも一部聞き及んでいた。

 

それは彼女の為ではなく、他ならぬバナージとハサウェイの為。

 

最悪の事態をオットー艦長とダグザ中佐は想定していた。その事態とは、ハサウェイもバナージも鹵獲され、その上でネェルアーガマもネオジオンに拿捕された場合。

 

その時に彼らが最も尊重する証言は、ミネバ・ザビからの証言に他ならない。

 

二人は戦時状況下の特殊事態において、その危機的状況からネェルアーガマの軍事作戦に関して協力せざるを得ない状況にあった。

 

もしもの時、彼女にそう証言してもらうため。

 

ミネバもその状況を理解していた。

 

 

 

ミネバは呪った。己の無力を。

 

戦争を止めると言ってガランシェールから逃げ出し、結局は何もできていない。

たまたま助けてもらったバナージに、ハサウェイに、ただの学生たる彼らに、ただただ重荷を押し付けて、今もなお安全圏でのうのうと過ごしている。

 

 

 

作戦準備の合間に、バナージがよくミネバのもとを訪れた。

話せないことも多いけど、なんて言いながら、色々な話をした。

 

普段の学校生活や、アルバイトの話や、ハサウェイの話。

そして、ユニコーンを託されたこと、父カーディアスのこと、オードリー・バーンがやりたいこと。

 

ハサウェイが気を遣い過ぎて、一緒にオードリーに会いに行こうと言っても来ないと、でも嫌っているわけでは決してないと、そんな風に弁明するバナージが、酷く眩しく見えた。

 

 

 

私は、彼らを戦場へ送るのだ。望まずとも、私はその状況を作り上げた。

せめて見届けよう。彼らの行く末を。その未来を信じて。

 

 

 

そして、彼らは帰ってこなかった。

 

 

 

未帰還数2。ユニコーンと、ジェガン。

 

小説やドラマで、膝から崩れ落ちるという表現がある。けれど、そんなことにはならなかった。ただただ、呆然とした。

 

鹵獲された、はずだと。しかしその詳細は不明。彼らが生きているのか、死んでしまったのか、それさえ分からない。

 

 

 

ああ、これが戦争を始めた責任か。仕方がないと言い訳をして民間人を戦場へ送り出し、そして帰ってこられなかった彼らに対し、嘆くことしかできない。

 

ああ、戦争とはこんなにも哀しいものなんだ。知っていたはずだ、アクシズを失ったあの日から、ハマーンが死んだあの日から。なのに、私はそれをまた見届けることしかできなかった。

 

 

 

ミネバが失意に沈む中、リディ少尉がミネバの元を訪れた。

彼は言った。マーセナス家は連邦政府中央議会に席を持つ家だと。連邦政府という大上段からの介入が出来れば、この戦争自体を止めることができるはずだと。

彼らの奪還作戦の折、機に乗じて、一緒に地球へ降りないかと。

 

ミネバは、その提案に乗った。いや、そこに一縷の望みをかけるしかなかった。

 

この戦争は、ビスト財団とネオジオンが起こしたものだ。そこに横槍を入れられるのは、アナハイムでも、ましてやジオン共和国でも無理だ。頼るならば、地球連邦政府しかない。

 

ミネバは、リディと共に地球へ降りる決断をくだした。

 

 

 

そして、彼女はビスト財団、いや、マーサ・ビスト・カーバインによって、その身柄を拘束された。

 

 

 

最初から仕組まれていた、とは思わなかった。だが、浅はかだったと後悔をした。

 

危機的状況に際して、都合よくぶら下げられた蜘蛛の糸が、必ずしも自分にとって都合がいいものだと信じるのは、あまりにも都合がよすぎるじゃないかと。

 

ローナン・マーセナス議員は、マーサ・ビスト・カーバインと繋がりがあり、ミネバをラプラスの箱入手のための手札として、その身柄を売り渡した。

 

 

 

そして、ミネバは見た。人の底すら知れぬ悪意というものを。

 

そこに集まった人物を見て、ミネバは絶句した。

 

ビスト財団当主代行、マーサ・ビスト・カーバイン。

地球連邦政府中央議会議員、ローナン・マーセナス。

そして、ジオン共和国大臣、モナハン・バハロ。

 

 

 

その瞬間に悟った。ああ、人というものはここまでどうとでもなってしまうものなのかと。

 

 

 

彼らとの共闘をミネバは蹴り飛ばし、モナハン・バハロの私設軍隊の戦艦へ護送される中で、ミネバは世の無情を呪っていた。

 




読了ありがとうございました。

ずっとシリアスで気が詰まりそうです。もっとわちゃわちゃした話を書きたい。

誤字報告ありがとうございます。大変助かってます。

そしていつも感想と高評価ありがとうございます!お察しの通り結構書くのに苦労してます。感想で、この作品を楽しんでいただいてるの見て、それを励みにしながら何とか書いてます。本当にありがとうございます。

引き続き感想、高評価いただけると嬉しいです!
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