ハサウェイがアムロやシャアに影響される前に機械オタクになった世界線のお話   作:陸奥九十九

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こんな気の抜けた話が書きたかったんだよ、的なお話です。本編進んでません。
でも、書いてて楽しかった!

多分次回から戦闘やら暗躍やら最終決戦やらのお話になるので、息抜き程度に楽しんでいただければ嬉しいです。


休憩時間と井戸端会議

「網?」

「そう、網。イメージとしては、サイコフィールドで網の目を変えて、重金属とか汚染物質だけを除去していく、みたいな感じで」

 

機体整備の休憩時間に、バナージがとある構想を話してくれた。

地球に降りた際に海洋汚染のひどさを感じて、何らかの形で海洋環境の保全に協力はできたりしないか、というものである。

 

「でき、るんじゃない?……うん、多分大丈夫だと思う」

「本当?」

「うん。ただ、誰がそのサイコフィールドを維持させるかだよね。ニュータイプ能力なしで網を維持できるようにする、そのシステムが必要だと思う」

「それって……可能だと思う?」

「可能なんじゃない?ニュータイプ能力って今はざっくりした区分だけど、要は凄く足が速いとか、凄く計算が早いとかと一緒で、今は代替できる仕組みが見つかってないだけのちょっとした特技だと思ってるし、それを解明できれば、全然いけると思う」

 

ええ?とその答えに納得いかないのか、バナージは苦々し気に表情を歪めた。

 

「大丈夫だよ、本当に。アンジェロさんのローゼンズール見たでしょ?」

「ああ、あの肩がでっかい奴」

「そう、あのバランスの悪い奴」

 

とりあえずあの仕様で行くことに決まってるけど、もうちょっと仕様詰めたいよな。時間もないから辻褄合わせレベルのセッティングは出したけど、あのバランスの悪さはもうちょっとどうにかしたい。

 

「アンジェロさんはニュータイプ能力ないけど、あの有線式なら扱えるんだよ。インコムっていうんだけど。あれの技術解明を進めていけば、サイコフィールドを誰でも展開できる仕組みは作れるんじゃない?」

 

そう告げると、バナージが脳内のPCを叩き始めるかのように、虚空に焦点を合わせだした。

 

「……うん、……うん、……いける、かも?」

「あとはコストの問題じゃない?高いよ?サイコフレーム」

 

そう告げると、バナージがぴしりと凍ったように動かなくなった。

 

「サイコフレーム採用機とそうじゃないマシンで、あれだけ明確に性能が違うのは、スペシャル機じゃないとサイコフレームを搭載できないことの裏返しでもあるからね。地球の環境保全で使うにしても、そのために低コストでそこそこの性能の劣化サイコフレームを大量生産できるようにならなきゃかもね?」

 

まあ、実証実験レベルならどうとでもなりそうではあるけど。そういってユニコーンを見つめる。

 

「ええーー……難しいかなあ……?」

「いやいや、サイコフレームは高価だけど、あれ自体の構造はそう難しいものじゃないし、製造コストをある程度落とせるプランさえ考案できれば大量生産も行けると思うよ。」

 

0.01秒の反応速度向上、みたいな高性能化を求めないのであれば、やり方はいくらでもあると思うし。

 

「卒業論文、それ共同でやってみる?結構応用効きそうなテーマだし」

「応用?例えば?」

「水中の汚染物質を、宇宙環境での有害物質に変えたりとか、逆に空気が無い惑星で空気をとどめるための膜として使うとか、かな?」

 

実用化出来たら木星とか火星の開発に役立つかもしれないし、まあアイディアを出すレベルなら結構いろいろできる気がする。

 

「でも良いの?ハサウェイがもし他のテーマでやりたいなら……」

「いやいや、僕が考えてたのモビルスーツのOSと学習コンピューターの改善案とかだったから、正直面白みはないなあって思ってたのよ。だからむしろ良いと思う。それに環境保全をテーマにするとか、めっちゃ学生っぽくていいと思ったんだよね」

 

無理難題の巨大なテーマに挑むなんて、多分これから時間をかけてする機会も無いだろうし。

 

「せっかくだから小規模に実証実験までやろうよ。小型のサイコフィールド発生装置とか作ってさ」

「いいね、じゃあタクヤも巻き込もう。メカ系なら力になってくれるよ」

 

「盛り上がっているな。休憩中か?」

「あ、フロンタルさん。お疲れ様です」

「お疲れ様です、シナンジュのテストですか?出ます?」

「いや、そう言うわけでは無いよ。アンジェロから休憩を取れと追い出されてね。何となく来ただけさ。それより、工専の課題の話かな?」

「えーと、卒論のテーマどうするか、みたいな話ですね。バナージが、地球の海洋汚染の保護とか保全に、サイコフィールドを転用できないかって」

「ほう、興味深いな」

「ほら、サイコフィールドって物理的な干渉力があるじゃないですか。それを指定した細かさの目の網に変形させて、それで海に沈む汚染物質とか重金属とか、そう言ったものを分別できないかなって」

「サイコフィールドで、さながら魚をすくう網の様に、汚染物質だけを拾うのか。面白い発想だな」

「そうしたらハサウェイが、それを応用させて、宇宙で有害な物質を除去したり、もしくは空気を閉じ込める柵として使えるかもねって」

 

フロンタルさんがバナージの言葉に一瞬止まって、口元に手を置く。

 

「……もし上手くいけば、資源発掘衛星の開拓や、惑星開発の初期キャンプ地を作るのに重宝するな。ネオジオンは、その拠点の多くに資源衛星がある。それこそアクシズのようなサイズの衛星だ。もしも先んじて安全なベースとなる拠点を設営できれば、その後の対応策も大きく変わってくる」

 

フロンタルさんがおもむろに格納庫にある電子ボードを広げる。

そしてそこに、過去の戦闘データからくるユニコーンやシナンジュ、クシャトリヤのサイコフィールドの数値を書き出していく。

 

「……範囲としてはそう広いものでは無いな。ユニコーンをして半径100メートル前後か」

「斥力を発生させてる範囲ならその程度ですけど、ここから指向性を一気に限定させますから、実際のところは、その10倍前後くらいですかね?」

「あと、地上でシャンブロを遠隔操作させたときに気付いたんだけど……」

「え、待って。遠隔操作って何?」

「ああ、サイコフレームを搭載させたビットを一定間隔で配置させて、そのサイコフィールド内でモビルアーマーをサイコミュマシンから遠隔操作させたんだよ。フィールド範囲としては、シドニー湾くらい?」

 

フロンタルさんがデータと地図を出してくれる。シドニー湾の大きさは……

 

「直径、約500キロメートル?」

「あ、実際にその全域で操縦ができるわけじゃないよ?その全領域を知覚するなんて不可能だし。あくまでもその領域内にサイコフィールドを薄く広げることができたってだけで」

「実際の活動範囲はどのくらいだったの?」

「データは、これだな。トリントン基地を起点に考えれば、シドニー湾の、およそ1/25といったあたりか?」

 

それでも直径100キロ近いんじゃなかろうか?ええ……?バナージがいつの間にかすっごいことやってる……。

 

「バナージ……そんなヤマトの真田さんみたいになって……」

「いや、数日であのOSを組み上げたハサウェイには言われたくない。あれのセッティング出すのが難しくてこんな力技で解決したんだから」

「ええ?あそこまで組めばバナージが好きなように再設計できると思って」

「天才の尺度で俺を測らないで?読み解くだけですんごい時間かかったんだから」

 

バナージとお互いに、ええ?と見合うと、フロンタルさんが話を戻す。

 

「シャンブロの行動範囲で言えば、さらにその1/10程度まで絞れる。起点となるサイコフレーム、もしくはサイコミュマシンがあれば、その領域内ではほぼ無制限にサイコフィールドを発生できると捉えて?」

「問題ないと思います。ただ、シャンブロはロニさんクラスのニュータイプ能力者がいないと動きませんし、多分他の人が動かそうとしても出力や範囲は落ちると思います」

「あとは、そのサイコフィールドをどの程度張り続けられるか、だな」

「ですね。宇宙空間で拠点を作ると考えれば、常時稼働必須ですもんね」

「海の汚染物質の回収にしても、5分10分で終わる話じゃないですもんね……となると、やっぱりニュータイプに依存しないサイコフィールド発生装置が必要か」

 

うーん、と3人でうなる。

 

「つまるところ最大の課題は、サイコフィールドをニュータイプ無しに発生させる、ないしは、発生させた後にニュータイプ無しに維持させる方法の発見、ということか」

 

うん?……いや、そうだ。サイコフィールドを発生させるのはニュータイプがしてもいい。あとは、そのサイコフィールドを維持させるための、反復的な入力をし続けられる装置を作ればいいんだ。

 

「……サイコフレームに組み込まれているコンピューターチップに、あらかじめ動作の反復のみを設定しておけば、最初に発生させたサイコフィールドの維持だけならできる、か?」

「いや……うん……いける、かも?」

「そうか、現状のサイコフレームの様に、多種多様な機能を発揮する柔軟性を取り除けば、ひとつごとのみを繰り返すようにあらかじめ設計できるやもしれん」

 

そうだ、多機能性を排除して単一行動のみに限定すれば、サイコフレームのコスト自体も落とせる、もしくは、小型のサイコフレームで事足りるかもしれない。

……いや、そもそもサイコフレームにこだわる必要もないんじゃないか?

 

「フロンタルさん、あの、あのでっかいモビルアーマー、会議で見せてもらったあれです。あれに備わってたサイコミュチップを展開させて、サイコミュマシンで疑似的なサイコフレームを作るやつ、あの機能を使えば、サイコフレーム自体も要らなくないですか?」

 

僕のその言葉に、バナージもフロンタルさんも虚空を見つめて思考する。

 

「……そう、だな。あれならそもそもサイコフレームを用いる必要もないし、サイコフィールドの空間も、あのユニットのサイズで設定できる」

「しかも、極論サイコフレーム用のコンピューターチップさえあれば、あとはサイコミュマシンだけでシステムが完結するかもしれない」

 

そうだ、あのユニット自体もそんなに難しい設計じゃない。機能自体はサイコフレームのコンピューターチップを展開させるだけだ。戦闘用に強度を持たせてあるけど、そうじゃないならもっと細部を簡略化してコストも落とせる。

 

「……何かで再現実験できないかな?今あるもので、何かないか?」

「ハサウェイ、ユニコーンのシールド。あれサイコフレームついているよ」

「ナイスアナハイム!相も変わらず変態設計」

「君のそれは褒めているのか?」

 

褒めてますよ!久しぶりに!アナハイムナイス!

 

……いや待てよ?

 

「全然関係ないけど、あのシールドもサイコフレームついてるなら、そもそもユニコーンの腕に付ける必要なくない?ファンネルみたいに、バナージなら動かせるでしょ?」

 

そう言うとバナージが何を言われているか分からないといった風に呆ける。そして数秒の間を置き、バナージが手を叩く。

 

「確かに!」

「次の戦闘からシールド全部持っていきな。何なら常時遠隔操作でもいい」

「いや、それは流石に無理でしょ」

「え?」

「え?」

「……バナージ君、彼はアクシズ事件の時、ジェガンで12基のファンネルを動かした男だ。彼の基準でものを考えない方がいい」

 

フロンタルさんがそう言ってバナージの肩を叩くと、バナージが信じられないものを見るかのような目で僕を見る。

……え?これ僕が変なパターン?

 

「いやいやいや、普通だって!ニュータイプ適性がちょっとバナージやフロンタルさんとずれてるだけで!ほら、多分マリーダさんもアムロさんもシャアも同じことできますよ!」

「ハサウェイ君、君が例に挙げた3人は全て外れ値だ。そして彼らを例にあげた時点で、君も同じ外れ値と言える」

「うん、ハサウェイはちょっとおかしいよ」

 

味方がいない!あとバナージがちょっと辛辣!

 

「バナージ君、それは違う」

 

フロンタルさん!そうだ、優しいフロンタルさんはちゃんと訂正してくれる。言ってやってください、僕はおかしくないって!

 

「ハサウェイ君はちょっとおかしいんじゃない。とてもおかしいんだ」

「そっち!?」

「あ、そうですね、間違えてました。ハサウェイはかなりおかしいよ」

「肯定しないで!?」

 

どうして!?だってアムロさんは自分を平均的なエースだって言ってたもん!ロンドベルにはアムロさんレベルは結構いるって聞いてたもん!

 

何ですか!?じゃあアムロさんが僕に嘘言ってたとでもいうんですか!?

 

「まあ話は逸れたが結論も見えてきたな。この宝探しが終わった後で、ガバナンCEOを通して、あのモビルアーマーの背部ユニットの詳細なデータを貰おう。いや、彼を通して実証実験も同時並行でやった方が効率がいいかな?」

「いえ、まずはユニコーンを使ってやってみるでいいかもですね。ある程度データを集めておかないと。それに、網の目の細かさも調整が必要ですし」

「ああ、確かにユニコーンだと何でもできるしね。ラプラスの箱が片付いたらユニコーンもお役御免だろうし、バナージ貰っちゃえば?」

「どこに置くのこんなの。インダストリアル7にモビルスーツの保管場所なんてないよ?」

「メガラニカなら置けるでしょ?それに、モビルスーツあると楽だよ?すごく作業が捗る」

「ジェガンやリゼルを直すために、その何十倍も高価なユニコーンを使うのは流石に怖いよ」

「なら、レウルーラならどうだろう?」

 

そんなバカな冗談に、フロンタルさんも乗ってくる。

 

「姫様を救出した後、恐らく姫様はシャア総帥のようなジオンの象徴的存在として宇宙と地球を問わずに活躍されることとなる。その時の護衛は、我々が引き受けることになるはずだ。どうだろう?卒業後の進路として、ネオジオンでパイロット兼整備士と言うのは」

「えっと、どう……なんでしょう?そこまでは、考えてませんでした……」

 

フロンタルさんの言葉に、一気に現実味が帯びてきたのか、少しバナージは困惑する。

 

「まあ、もし姫様と一緒にいる道を選ぶのなら、そう言った進路もあるという話だ。今すぐどうこうというものでもない。だが、是非進路の一つとして考えてもらいたいとは思っている」

 

おお、ちゃんとした勧誘だ。でも、たしかにバーンさんと一緒にいるのなら確実な道だ。この一件がこちらの意図通りに解決すれば、ジオン共和国で現状強い力を持った政治勢力も、恐らくモナハンから離れるだろう。けど、シャアへの迎合を嫌う人もいるはずだ。もしそこでバーンさんがシャアと手を取り合えば、それまで分裂していたジオンも一つになるかもしれない。

 

「それにハサウェイ君も、どうだろう?一緒にネオジオンに来ないか?」

「え?」

 

僕も?

 

「君の場合は、ご実家のヤシマ重工もあれば、モビルスーツ開発としてアナハイムと言う進路もあるとは思うが、もしパイロットや現場での整備士を考えるのなら、是非」

 

おお、しっかり勧誘されてしまった。

でも、うーん……

 

「やめときます。戦場の近くはやっぱり怖いですし、それに、地球でやりたいこともあるので」

「……そうか、ならば仕方ないな」

 

フロンタルさんの反応はさっぱりしたものだった。

 

「それに、これっきりとも思いませんし」

「ああ、このサイコフィールド装置が実用化などすれば、顔を合わせる機会も増えよう」

「ですね、もしかしたらバナージの海洋環境の保全が連邦が支援するような事業にまで発展すれば、むしろバナージがバーンさんを連れて地球に来るかもですし。そうしたらしばらくは地球で一緒ですね」

 

ねえバナージ、と顔を向けると、未だ理解追いつかずといった様子だった。

 

「良いんだよバナージ、そんなに重く受け止めなくて。色んな可能性があるってだけだから。その時になったら、改めて真剣に考えればいいよ。それに、目下すべきことは箱とバーンさんの救出だしね」

 

そこまで言うと、バナージも顔を引き締める。

 

「それはそれとしてユニコーンのシールドで実証実験はしたいですね。もし実際にサイコフィールドが特定の物質を排除できるようなら、Iフィールドとかビームシールドの代用が出来ちゃいますし」

「そうだな、まずは平均的なビームライフルで実験してみようか」

「あ、ならセッティングが必要なモビルスーツが何機かありますし、その時の的にできますね」

「セッティングと言うと……」

「カークスさんとロニさんのギラズールに、あとマリーダさんのファンネルですね」

「マリーダ中尉の?何かOSでも変更を?」

「です。元のサイコミュコントローラーがあんまりにもあんまりだったので、そこをちょっと詰めました。あとは感覚合わせ程度ですけど」

「サイコフィールドのシールド転用が上手くいけば、サイコミュ搭載機に保険をかけることが出来るかもしれんな。特にコクピット周辺への直撃を相殺できるやもしれん」

「そこまで出来れば最高ですよね。敵にユニコーンがいる限り、備えはいくらあっても良いですから」

「……そっか!ビームマグナム!」

「まあ、あれの直撃を防げるとは思わないけどね。ただ、上手く攻撃を散らす方向で指向性を持たせることが出来れば、もしもの時の保険にはなると思う」

 

そう、高火力の兵器はかすっただけで致命傷になる。それに、もし敵がファンネルでも使ってくるようなら、鳥かごに囲まれた時点で被弾ゼロはほぼ不可能だ。当たる覚悟、かする覚悟は必要になる。

そして運悪くコクピット周辺をかすめた時に、その攻撃を防ぐことが出来れば、生存率はぐんと上がるはずだ。

 

「こうして考える分には良いですよね、サイコフレーム。3年前はファンネル使えるようにする装置って印象強かったですけど、結構何でもできますね」

「まあ、この艦の特殊性もあるとは思うが、やり様が出てきたな」

「特殊性、ですか?」

 

バナージが思わず聞き返す。

 

「ああ、これほどニュータイプ能力者が集まることはそう多くない。能力の程度はあれど、その多くがエースクラスの実力者か、そうなれる素質を持ったものが多いからな。そんな特殊技能を持ったものが、ひとつの艦に何人も集まることなど、そうそうないものだ」

 

そう言われると確かに。僕、バナージ、フロンタルさん、マリーダさん、ロニさん。この時点でニュータイプ能力を持つ人が5人もいることになる。

そして軍人じゃない僕とバナージ、それに実戦に機会が少ないというロニさん以外は全員がエースだ。

 

アムロさんやシャアは言うに及ばずだし、そう考えるとニュータイプ能力=エースパイロットの資質とも言えなくもない。

 

「恐らくサイコフレームが極めて限定的に使用されている現状は、アナハイムにサイコフレームの発展性を研究できるほどのニュータイプ能力者が多くないからだろう。だからこそサイコフィールドをシールドに転用するなどの応用も思いつけない」

 

それは、そうかもしれない。事実、3年前はファンネルのセッティングすら、現場では僕とアムロさん以外できない状況だった。

セッティングが全く出ていない未完成品をアナハイムがわざわざ渡すとは思えない。勿論緊急の状況で未完成品をアムロさんが無理やり引っ張ってきた可能性もあるが。

それに何より、車の運転ができない状況で、ドライバーとしての経験も無しに、ドライバーの感覚を共有してセッティングを出すことなどできない。

ましてや、その車の発展性の議論や改善案の提案など不可能だろう。

 

「まあ、今回に関してはある程度こちらに有利に働きますね」

「ああ、油断はできないが、サイコミュ技術に関してはこちらにほんの少しアドバンテージがあると言える」

「え、でも、あの疑似サイコフレームと、そこからくるサイコフィールド自体は、防ぎようがないんじゃ……」

「いやいや、あの疑似サイコフレームはサイコミュマシンの命令無ければ疑似サイコフレームにできないっていう最大の欠点があるじゃない。だったら相手のサイコミュマシンが発するサイコフィールドを、こちら側のサイコフィールドで押し返せばいい」

「……そっか、確かに。」

「それに、ユニコーン以上に強力なサイコフィールドを張れるマシンは他にないよ。しかもシールドも駆使すればサイコフィールドの範囲もある程度広げることができるし」

「でも、相手にもユニコーンはいるんじゃ……」

「相手のユニコーンに関しては、アンジェロのローゼンズールと親衛隊で対処予定だ。それで対処不可能なら、ハサウェイ君にも協力してもらう」

 

まあ、アンジェロさん一人でも恐らく対処可能だと思うけども。

どうにもローゼンズールのインコムシステムは、アンジェロさんの適性と異様なほど相性が良かった。

 

 

 

そもそも論にもなるが、アンジェロさんと狙撃特化のギラズールは相性があまり良くない。そして、フロンタルさんとオールマイティなシナンジュも、そこまで相性が良くないのだ。

 

アンジェロさんはマルチタスクに秀でていて、現場指揮官向きの人材だ。格闘戦も射撃戦も狙撃戦もすべからく高得点を出せる人なので、本当なら遊撃手が一番のはまり役なのだ。

そして、ローゼンズールは遊撃、特に大火力でのオールレンジ攻撃と、一撃離脱戦法に特化したマシンだ。そこに今回はサイコジャマーが搭載されていて作戦に要の装備とはなっているが、無くても優秀なマシンコンセプトは残される。

全分野で90点以上を取れるアンジェロさんにハマるマシンだと言える。

 

逆にフロンタルさんは、全分野でアンジェロさん同様90点以上を取れるが、最も優れた技能が狙撃なのだ。狙撃で100点オーバーを出せて、かつ高機動戦もできる人である。

何故その距離で当たる?何故その装備で当てられる?と、理解できないほどに狙撃の能力が高い。ネェルアーガマをビームライフルのみでほぼ無力化できたのがその代表例だろう。

だから本来は、これまでのアンジェロさんのような後方支援及び狙撃、必要になったら中距離支援といったポジションがフロンタルさんの適性とマッチする。

 

これまでフロンタルさんが最前線で切り込み隊長役をしていたのは、ひとえに赤い彗星の再来、というイメージを植え付けるためらしい。

そしてシャアは近接格闘が異様に強い。僕はそれを3年前に身をもって経験した。

 

あれは結構な絶望感があった。クェスがどれほど死角を突いて射撃しても、そして僕がどれほど避けた先に攻撃を置いても、一切の被弾なくするすると距離を詰めてくる。

 

ロンデニオンへ帰る道すがらジェガンのログを見直したけれど、見返すとより実感する。よくこんなのと戦闘して生き残ることができたなと。

そしてアムロさんはよくあんなのを当たり前のように撃墜したものだなと。

 

ニューガンダムのログは、それはもう酷いものだった。あれは装置だ。効率的に敵を排除する装置。最小限の動きで最大限に敵を排除する、そう言うシステムの様だった。

 

その時思ったのだ。軍人さんってこういうものなんだと。そして誓った、軍人さんにだけはなるまいと。

 

 

 

「まあ、敵の出方はどこまで行っても読み切れないものだ。最大限の準備はするが、悲観的になっても仕方がない。現状できることは、可能な限りの準備をし、ロンドベルの応援が来ることを期待し、あとは敵が下手を打つことを祈る程度さ」

 

フロンタルさんの言葉にバナージと二人思わず吹き出す。

 

「フロンタルさんでもそんなこと思うんですか?」

「思うさ。相手の事故や不手際はあって困るものじゃない。それに、祈るだけなら予算を割かずとも済む」

 

ああ、隊長と言う立場ならではの意見な気もする。

 

「まあ、あと祈るべきは、二人の卒業論文が順調に進むことくらいかな?」

「ですかね。そのためにも、この後武装のセッティングはちゃんとデータを残しておかないと」

「大事だね。あとは余剰のサイコフレームで、サイコフレームの量から発生できるサイコフィールドの強度も調べてみるよ。データが出て時間が許せば、どれだけのサイコフレームがあればビームを散らせるだけのフィールドが張れるか確認もできるし」

「よろしく頼む。そうだ、休憩はしっかりととりなさい。あと、糖分の補給も忘れずにな」

 

そう言ってフロンタルさんは去っていった。

 

その時は着実に迫っていた。ただ、なんてことないやり取りが、何とも言えず嬉しく思えた。

 




読了ありがとうございました!

さて、本編が進んでないぞ。明日の私、頑張って書き給えよ!

いつも誤字報告ありがとうございます。なぜ私は誤字をするのか、それは注意が足りないからです。申し訳ねえ!何卒温かい目で見てやってください。

そして感想と高評価ありがとうございます!本当に嬉しい、楽しんで読んでいただけていることが何よりの救いです。

引き続き感想、高評価いただけると嬉しいです!
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