ハサウェイがアムロやシャアに影響される前に機械オタクになった世界線のお話   作:陸奥九十九

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ああ、戦闘描写って難しい。

ユニコーン編も終了が見えてきました。もう一息!

楽しんでいただけたら嬉しいです。


修羅場

宇宙での戦闘は基本的に遭遇戦だ。

ミノフスキー粒子でレーダーは機能せず、敵の情報を目視以外で確認することはできない。

 

レウルーラのレーダーにしても、反応を受け取った直後にミノフスキー粒子によってか敵の詳細を捕捉するには至らなかった。

しかし、それこそが敵の襲来を示唆しているともいえる。敵は来た。ミノフスキー粒子を散布し、レーダーを潰しながら。

そして、どこかにいる。

 

モビルスーツのセンサーは鋭敏だ。動くものにも熱源体にも反応し、何処に何があるかを教えてくれる。ただし、それは光学センサーの感知しうる範囲だけだ。

目に見えるものを確認し、何かあれば教えてくれる。その知覚範囲は、ビームライフルの射程よりもずっと短い。

 

故に宇宙戦は先に見つけたほうが基本的に勝利する。

 

そして、見つけなくてはという緊張感と、見つけられたらという恐怖、そのせめぎ合いを制するものが、宇宙戦を制することができる。

 

 

 

見られている。その感覚はある。戦場特有のひりつくような感覚とは別に、刺すような視線を感じる

 

されど敵は来ず。何かを待っているのか、機を伺っているのか。はたまた戦う気が無いのか。

 

故に警戒する。何らかの策があり、その時を待っている。無策では仕掛けてこない、そんな戦場巧者が、近くで息をひそめているのだから。

 

何処だ?何処から見ている?いや、僕なら何処から見る?

 

遮蔽物はコロニーのみ、奇襲を考えるなら正面からの戦闘は無い。

なら、コロニーの陰から機をうかがう。その瞬間を、僕なら待つ。

 

半身のこの状態は、射線を通せばぎりぎりセンサーに引っかかる。この状態なら、僕は相手に仕掛けない。

 

仕掛けるならそう、相手が焦れて、緊張感を解く、その一瞬。

ふと、視界をコロニーから遠ざける、その瞬間。

 

来い、来い、来い。

 

僕は、マシンを半身、コロニーから反転させた。

 

 

 

瞬間、殺気が走る。

 

 

 

その場をぐるりと旋回し、戦闘機が宙返りをする。そして、迫りくるビームを回避する。

 

来るよね、うん、僕も仕掛けるならここだと思った。

 

 

 

見つけた。コロニーの陰から、ギリギリの射線を通し、確実に狙ってきた、その敵を。

 

 

 

全速前進。こちらが進むと同時に、敵もこちらに迫ってくる。

敵は、白い、シナンジュ?

 

「会敵!敵機はシナンジュ、白い奴です!戦闘を始めます」

『シナンジュだと!?』

 

アンジェロさんの通信が聞こえるが、その声もノイズ交じりで少し遠い。ミノフスキー粒子濃度が確実に濃くなっている。

 

「ファンネル!」

 

瞬く間に6基のファンネルが飛翔する。

 

両肩のファンネルポッドに3基ずつ、計6基装備されていたファンネルを、ファンネルポッドを肩の後ろにも増設したことで、12基まで装備できるようにした。

 

そして、機動力を補うためにプロペラントタンクを装備し、サイコフレームを各部に装備させることで反応速度を向上させた。

 

けれど、そこまでやってもシナンジュの性能には当然及ばない。そして、正面切った戦闘でフロンタルさんとシナンジュに勝てるかと言えば、何とも言えない。

 

手数ではこっちが上かもしれない。けれど、それ以外ではすべて劣っている。

 

さあ、命をかけろ。

 

 

 

『なんだお前、ニュータイプかよ!』

 

速い!

 

ファンネルの攻撃を、搔い潜るのではなく振り切ってきた!

 

シナンジュのサーベルが迫る。それをシールドで受け流し横腹を蹴り飛ばす。が、それも振り切られる。

 

「そこ」

 

死角から迫るシナンジュにファンネルで対応するが、これも避けられる。

 

後ろに回って、死角を取って、そして、真下だろ?

 

そっと後ろへ下がるとビームが目の前を通り過ぎてゆく。

 

よし、理詰めだな。

 

『もっと遊ぼうぜニュータイプ!』

「すみませんけど、今結構立て込んでるんですよ!」

 

真下から迫るシナンジュをファンネルで迎撃するが、これも避けられる。

ビームサーベルが迫る。それを、鍔迫り合いで対応する。

 

『ああそうか、お前がハサウェイ・ノアか!』

「僕ってそんなに有名人ですかぁ!?」

 

出力で押し負ける。スペック勝負はやはり無理だ。

早々に鍔迫り合いを受け流し、距離を取らせようとバルカンとファンネルで応戦するが、シールドで防がれ、さらに避けられる。

 

この人、単純に強い。それに、マシンの特性をよく理解している。

 

『有名人さ!それに、お前は俺たちと因縁があるしなあ!』

「あなたとは初めましてですよ!」

 

それを、相手も分かってる。

多分今の攻防で察しているのだろう。こちらが出力で劣っていて、近接格闘を嫌がっていることを。

 

だから、こうして速力で距離を潰しに来る!

 

『そんなに嫌がるなよ、もっと仲よくしようぜ!』

「後にしてくれません!?ご飯くらいなら奢りますよ!」

『悪いなあ、俺はお前と今仲良くしたくてさあ!』

「困っちゃう、なあ!もう!」

 

正面はまずい!シールドメガ粒子砲でルートを変えさせる。

そうだ、回り込め。

 

 

 

ほら、かかった。

 

 

 

12基のファンネルが、シナンジュを取り囲む。

ファンネルの戦術における優位性のひとつは、敵に気付かれずにリアルタイムで罠を張れることにある。

 

『やっべえ…!』

 

鳥籠の中に入れば、あとは連射と微調整で、確殺に近いオールレンジ攻撃が可能になる。

 

『英雄様が、随分必死に戦うじゃねえか!』

「僕より強いんだから、必死にもなるでしょう!」

 

しかし、それはファンネルの機動力と敵機の機動力が均衡ないしファンネルが上回っているときだけの話である。

 

シナンジュは推力でもってファンネルを引きはがしにかかる。それを、頭を押さえるように狙撃し妨害する。

 

戦力はほぼ拮抗していた。ならば、ほんの少しのイニシアチブを、どちらが先に取れるか。その均衡が崩れた瞬間が、この戦闘の終着点になる。

 

『嬉しいねえ!失敗作にかかずらってくれるか!』

「その謙遜はちょっとうざい!」

 

 

 

おかしい。この規模の戦闘をして、アンジェロさんたちがこちらへ来ない。他で戦闘が始まっているのか?いや、それでもあの人たちが手こずる敵がポンポン湧くとは思えない。

それに、このシナンジュレベルのエース機が敵に何機もいるとも思えない。

 

突破力のあるシナンジュとバンシィが一番槍で来たにしても、セルジさんの手は空くはずだ。

つまり、結構な異常事態が起こっている可能性がある。

 

 

 

『よそ見するなよ、寂しいじゃねえか!』

「貴方だけを見てますよ!」

 

一瞬悩め。今後について。

敵の増援が来ないと仮定して無理せずに均衡状態で戦闘を続けるか、それとも無理してでもシナンジュを墜としにかかるか。

 

……よし、無理をしよう。無理できるときに無理をする。それに、この人と消耗した状態で戦ったら墜とされる。

 

この人は、ここで墜とす。

 

攻め入ろうとしたその瞬間に、殺気が走った。

 

「うわっ」

 

その場を即座に退き、回避行動に入る。遠くに見えたのは、こちらを狙撃するリゼルと、その編隊。

 

『ちっ、時間切れか』

 

シナンジュの殺気が薄れていく。退くのか、いや、退いてくれるのか?

 

『楽しかったぜハサウェイ・ノア。俺はお色直しの時間だ。フル・フロンタルによろしくな』

 

そう言い残し、シナンジュが後退していった。

 

 

 

そして、大いなるプレッシャーを、コロニーに感じた。

 

「っ、なんだ!?」

 

メガラニカで、何かが起こっている。それだけは理解できた。

 

 

 

リゼルが編隊を組んだまま、飛行形態でこちらを撃ってくる。

 

「は?」

 

オールレンジ攻撃持ちに、編隊組んでドッグファイト?

 

「流石に舐め過ぎじゃない?」

 

型落ちのギラドーガだとでも勘違いしてるのか?

シールドの拡散メガ粒子砲で牽制。散開するリゼルの3機編隊の、出鼻をファンネルでくじく。

危険を察知してモビルスーツ形態に変形しながらその攻撃を避けるが、その時点で機体は死に体になっている。

あとは、避けた先にファンネルを置けばいい。

 

両腕、武器、そして足。2機はファンネルの攻撃で戦闘能力を失い、1機はファンネルの攻撃を回避したが、既に両足を失っていた。こちらに向けるビームライフルを、向こうが撃つより先に狙撃する。命中。

 

これで3機とも戦闘能力を喪失した。

 

 

 

ファンネルを回収し、転進。インダストリアル7のコロニー港へ。

 

恐らく、親衛隊の3人が掛かりきりになるほどの相手がいる。そんな敵、ネオジオングで間違いないはずだ。急げ、戦力はいくらあっても足りないはずだ。

 

既にリゼルの編隊が到着している。ゼネラルレビルが来ている。そして、シナンジュを使っていたということは、あれがモナハン・バハロの部隊なのだろう。

 

早くネオジオングを処理しないと、確実に数の暴力で一方的に攻められることになる。

 

急げ。増設したプロペラントタンクがあってなお、コロニー港が遠く感じる。

 

 

 

刹那、避けろと脳が危険信号を出す。

悪寒と共に、バレルロールでその場から逃げた。

 

直後に、極大なメガ粒子砲がその場を通過した。

 

「はあ!?」

 

コロニー港の一部を突き破って、それは姿を現した。

 

そのマシンは、凄まじく大きかった。寸法なんかは図面上で確認していたはずなのに、それでも大きく感じた。

 

赤く塗られたボディ。

その大質量を何とか移動させるために付けたであろう異常なサイズのプロペラントタンク。

肌を刺すようなプレッシャー。

 

 

 

そして、そのマシンに収まった、黒と金のマシン。

 

 

 

「バンシィ!?」

『離れろハサウェイ!』

 

それは想定してなかった!

アンジェロさんの声に反応し即座にその場から退避する。瞬間、その場をメガ粒子砲が突き抜ける。

予備動作がほぼ無い、そして、余波でもまともに当たったら死ぬ。それは、かすってもいないヤクトドーガの装甲が、一部融解していることから、それがよく理解できた。

 

『被害は!?』

「ありません!装甲が溶けたくらいです!」

 

一瞬の間も見逃さないとばかりに、ネオジオングが指先からインコムを放ち、メガ粒子砲でこちらを墜とさんと迫る。

 

「ファンネル!」

 

小手調べといこう。

 

インコムが迫る。速い、けど、結構直線的。うん、これは0.5マリーダさん。

迫るインコムの先にビームを置く。それにインコムは当たりに行ってくれる。それに……

 

「当たれば普通に壊れるな」

 

サイコフィールドを展開するインコムにまで付与できるわけじゃない。なら、出所がマシン本体に依存するインコムより、ファンネルの方がまだ有利だ。

 

ネオジオングから距離を取るように引き気味に戦えば、それを追う様にしてインコムも追ってくる。けど、インコムの速度よりこちらの方が速い。

背を向けて一気に距離を取る。逃がさないとばかりにインコムからメガ粒子砲が放たれるが、囲まれなければちゃんと避けられる。

 

それに、撃つ時はインコムも動きが鈍くなる。

 

動きが鈍くなったインコムに、ファンネルで攻撃する。命中、爆散。

 

よし、距離さえとればある程度は戦える。

 

 

 

そして、インコムを飲み込むかのようにメガ粒子砲が横合いから放たれる。

 

『無事だな、ハサウェイ』

「大丈夫です。バナージとフロンタルさんは?」

『突入から約10分だ。あと5分は稼ぐ必要がある』

「キュアロンさんとセルジさんは?」

『距離を取らせてある。ギラズールでは距離如何では詰められる』

「了解です。インコムは通常兵装で壊せます」

『よし、ならまずは手足をもぐ』

「了解」

 

『ハサ、ウェイ、だと……』

 

その声は、確かに聞いた覚えがあった。ネェルアーガマで、ほんの少しだけ話した記憶がある、その声。

 

「リディ少尉で確定です。不殺ですね」

『はあ、面倒だな……』

 

 

 

そう言って、ふと脳裏に疑問がよぎった。

 

それは、どうしてバンシィがネオジオングに乗る、という推測をしていなかったのだろう、という疑問。

 

バンシィはサイコミュマシンだが、その特性上ニュータイプでなくても乗れはする。

そしてネオジオングのインコムについてだ。こちらも別におかしくない。ある程度の適性や能力は必要だが、インコムもニュータイプでなくとも使用できる。

 

 

 

では、ネオジオングは?

 

 

 

ネオジオングは、サイコミュマシーンを介して操縦する、純然たるサイコミュマシーンだ。その時に必要なのは一定以上のサイコフィールドを発生できるマシンと、それほどのサイコフィールドを発生できるニュータイプだ。

 

彼は、バナージやフロンタルさんレベルの適性を持っていたか?

父さんが用意してくれたリディ少尉のデータに、そのような記載はなかったはずだ。

 

じゃあ、バンシィに乗ったことをきっかけにニュータイプ能力に目覚めた?

可能性がないとは言わない。けれど、ネオジオングを操縦するためには、最低でもフロンタルさんレベルのニュータイプ能力とパイロット技能が必須だ。そして、十全に操縦するのなら、バナージレベルのニュータイプ能力がさらに求められる。

 

それほどの、言ってしまえばエースクラスの能力を持つニュータイプが、ロンドベルの訓練でなく、数度のサイコミュマシンとの感応でその才能を開花させるものなのか?

そして、リディ少尉にフロンタルさんほどの技量はなかった。その技量を、ほんの数週間で身に付けられる物なのか?

 

 

 

『ハサウェイは、ハサウェイ・ノアは、死んだんだ……』

 

オーラを感じる。ネオジオングから、何とも言えない暗いオーラを。

 

『なら……お前は、なんだああぁぁーーー!』

 

『散開』

 

アンジェロさんの声と同時にその場を離れる。

ネオジオングのメガ粒子砲が広域に拡散され、既に短距離での面制圧兵器と化している。

 

「インコムは僕が処理します」

『頼んだ』

 

ファンネルが飛翔する。そして、迫るインコムを迎撃する。

 

距離を取れ。遠距離と中距離の、その間。ネオジオングのサイコフィールドに決して入らない、しかしこちらの攻撃能力が十全に発揮される距離を。

 

ヤクトドーガ、ローゼンズール、シナンジュ、クシャトリヤ、そしてユニコーンのサイコミュコントローラーは全て防御偏重でセッティングし直した。

ネオジオングのサイコフィールドに干渉されても、即座にマシンの制御を奪われないために。

 

今のセッティングなら、例えユニコーンが暴走したとしても、そのサイコフィールドで消し飛ばされるような事態にはなりえない。その程度のセッティングは出した。

 

 

 

インコムが迫る。手数はあちらが上だ。だからこそ、確実に。

シールドの拡散メガ粒子砲で迫るインコムを掃討し、ローゼンズールに迫ろうとするインコムはライフルでも狙撃し撃ち墜とす。

 

『小手調べだ』

 

ローゼンズールのメガ粒子砲が、ネオジオングへ直撃する。

 

結果は、無傷。

 

『固いな。いや、Iフィールドか、サイコフィールドが原因か』

「サイコフィールドを中和するか、貫通するほどの出力が必要ですね」

 

『消えろおおぉぉーー!ネオジオン!!』

 

『うるさいな、どうにかできないのかあれは』

「サイコミュに呑まれたんでしょうね。バナージも一度暴走しましたし」

『やはり欠陥じゃないかサイコミュは』

「それはそうです」

 

『亡霊は、暗黒に還れええぇぇーー!!』

 

その叫び声と共に、ネオジオングの背面ユニットが稼働し始める。

 

『砲撃支援』

 

アンジェロさんのその声と共に、ネオジオングへビーム砲が撃ち込まれる。キュアロンさんとセルジさんのものだろう。

それに合わせるように、ファンネルとビームライフルで攻撃し、アンジェロさんもメガ粒子砲を撃ちこむ。

 

「これでもダメか……」

『退くぞ。サイコフィールドが確実に干渉しえないラインまで下がる』

「了解」

 

距離を取るのと同じくして、ネオジオングの背面ユニットが展開しきる。

 

「リディ少尉!聞こえますか、ハサウェイ・ノアです!僕たちが戦闘することに意味はありません!そのモビルアーマーは危険です!投降してください!」

 

『はぁ、はぁ……ハサウェイ、ノア……?』

「そうです!ハサウェイ・ノアです!インダストリアル7で僕の友人を助けてくれましたよね!もうやめましょう!この戦闘に意味はありません!」

『はぁ、はぁ、ハサウェイ・ノアは、死んだんだ……』

「死んでませんよ!ほら、僕は生きてます!だからもうやめましょう!」

『なんで、死んだお前がここにいる……ダメじゃないか……』

「死んでませんよー!ここにいますよー!」

『死人は、死んでなきゃあぁーー!!』

 

ネオジオングが全てを焼き尽くさんとメガ粒子砲を撃ち放つ。

 

うん、これはもうダメかもわからんね。

 

『説得は無理だな。さてどうするか』

「どうします?ローゼンズールの虎の子使ってみます?」

『効くと思うか?あれはバンシィを想定したものだろう?』

「……微妙かもですね」

『ならやめておこう。それに、じきに大佐もユニコーンも来る。もう少しコロニーから離しておきたい。そうすれば、レウルーラの火砲支援が受けられる』

「了解です。じゃあ、とりあえず囮役行きます」

『頼んだ。敵はお前にご執心のようだしな』

 

嬉しくないなあ。というか本当に接点ない人なんだけども。

 

まあ、行くか。

 

そう思ったところで、戦艦の主砲のようなビームがネオジオングのプロペラントタンクを撃ち抜いた。

 

「お」

 

そうか、もう15分経っていたのか。

 

『ハサウェイ!』

「お疲れ、今修羅場だよ」

『待たせたな。状況は?』

『バンシィはネオジオングとドッキングし戦闘中。ハサウェイは白いシナンジュと遭遇したとのことです』

『なるほど、不測の事態というわけだ』

 

『ユニコーン……バナアァジイィーー!!』

 

その瞬間に、ネオジオングのプレッシャーが溢れ出た。

 

 

 

共鳴という現象がある。分野や捉え方によって解釈が様々発生する言葉だが、この場においては、サイコミュマシンが揃うことで、その能力が時により大きく向上するという意味で使える。

 

ユニコーンは特殊なマシンだ。その根幹たるNT-Dがパイロットの能力で大きく性能を変える上に、パイロットによっては物理的に制御できなくなる瞬間さえある。

 

しかし、サイコミュの根幹はあくまでも通信技術だ。ラジオ電波でラジコンを動かすように、ミノフスキー粒子を感応波で制御しファンネルやマシンを制御する、そこにサイコミュ技術のベースは存在している。

 

そして、その感応波を感じ取り、発することが出来るものこそがニュータイプなのだと考えていた。

 

 

 

このように、ネオジオングから発せられるリディ少尉とは異なる思念波を感じる取るように。

 

 

 

「誰だ?この感覚は……」

 

感じたことがある。そう思った。そしてそれに誰よりも早く反応したのは、バナージだった。

 

『オードリー!』

『どうしたバナージ君!』

『あの中に、ネオジオングに、オードリーが乗ってます!』

『なんだと!?』

 

その言葉を聞いた瞬間に、すべてが腑に落ちた。

 

「……バーンさんには、多分ニュータイプ能力があるんだ。バーンさんのニュータイプ能力でバンシィのサイコミュ性能を底上げさせて、ネオジオングを機能させ、バンシィのNT-Dを利用してネオジオングを操縦する。だから、リディ少尉でもあんな風に戦える」

 

全部推測の範疇ですけど。

そう呟きながら、多分割合当たっているだろうなとも思った。

 

『それが本当だとして、奴ら正気か?姫様を捨て石にするつもりか?』

『……いや、私たちに姫様を殺させることで、我々の政治的正当性の排除を目論んでいるのやもしれん』

『それは……』

 

その推測に、アンジェロさんでさえ言葉もない様子だった。

 

ネオジオングのメガ粒子砲を避けながらも、思考する。

 

「バナージ、バーンさんがネオジオングのどこにいるか分かる?」

『場所は……多分、コクピットのすぐ下!腰のあたり!』

「ジェネレーター付近で、Iフィールド発生装置の近くか……面倒だな」

『どうする?狩場に追い込んで砲撃支援を受けるか?』

「やめときましょう。ネオジオングをバーンさんの発するサイコフィールドで制御しているなら、ノックバックがバーンさんにも伝わるかもしれない」

 

けど、このメガ粒子砲の雨を回避し続けることも、また難しい。それに、これほど強固なサイコマシンを操縦し続けて大丈夫なほど、バーンさんが頑強だとも思えない。

 

「当初のバンシィ捕獲プランを拡張しましょう。基本の操縦がNT-Dであれば、集中力を削れば能力も落ちるはずです。多方面からの射撃で集中力を削り、サイコフィールドを散らすことで出力を落とさせて、ビームマグナムで背部ユニットを破壊。その後ユニコーンを接近させ、サイコフィールドを中和。ローゼンズールのサイコジャマーで捕獲。如何でしょう?」

『よし、それで行こう。バナージ君、行けるか?』

『やります!』

『よし、ならば……』

 

 

 

フロンタルさんがそう言葉を続けようとして、言葉に詰まる。

そして、その場にいた誰もが、センサーに映ったその光景に言葉を失った。

 

 

 

常識というものは厄介で、ありえないだろうと思ったことは無意識に思考から排除してしまう。

 

バンシィがネオジオングに乗る、という発想もそうだ。

リディ少尉のニュータイプ能力ではサイコフィールドの維持がそもそも不可能だし、ネオジオングの最大性能を出力できるとも思えず思考から排除した。

 

あれほど大型のモビルアーマーだ。データで見たシャンブロの様に、3人乗りで操縦する、なんてプランもあるかもしれないのに、ネオジオングはあくまで外殻ユニットで、その上に制御用のサイコミュマシンが乗るのだからと、複数人操縦を思考から排した。

 

ましてや、ジオンのお姫様であるバーンさんを戦場へ出すなど考えもしなかった。

 

 

 

同じような思考があったと、今になって分かった。

 

あの馬鹿げた性能を発揮するネオジオングは、特機としてほぼオーダーメイド的に作られたのだと誰もが思った。

 

そして何より、モビルアーマーとは一騎当千の、ある種戦略兵器的な役割を担うのだ。それゆえに高額で、それゆえに高性能で、それゆえに操作に難がある。

 

クシャトリヤを十全に操縦できるパイロットは現時点でマリーダさんと僕だけだし、シャンブロに至ってはロニさん以外操縦できなかった。さらに言えば、その3人全員がニュータイプ能力者である。

 

そしてそれはネオジオングも同様であり、もっと言えば、先の2機よりさらに尖った仕様をしているネオジオングを操縦できるものは、恐らくジオンも連邦も片手の指で収まる程度しかいないはずだ。

 

 

 

「あー、それは考えてなかった」

 

だから自然と思考から排除していた。

ネオジオングが、2機も存在しているだなんて。

 

ヤクトドーガのセンサーは、白いネオジオングをモニターに映していた。

 

「どう、しましょっか?」

 

さて、どれだけ戦力を割ける?

正直ネオジオング1機の処理にこの場にいる6人、そしてレウルーラの艦砲射撃による火砲支援を含めても、確実とは言えない。

確実な処理を考えるなら、全戦力をネオジオング1機につぎ込んでようやく、そのレベルの怪物だ。

 

ましてや、こちらは不殺が絶対条件だ。一か八かが存在しない戦いを演じる必要がある。

 

そう考えれば、ユニコーンとローゼンズールは外せないし、砲撃支援としてキュアロンさんとセルジさんも外せない。

 

ならば……

 

『……ハサウェイ君、君と私で、あちらの白い奴をやる。行けるか?』

「ですね。ちょうど同じこと考えてました」

『待ってハサウェイ!たった二人であれの相手をするの!?』

「いやいや、レウルーラの砲撃支援は受けるさ。それに、あっちはこっちと違って、多分シナンジュだけで動かしているし、ある程度気を遣わなくて済むからね」

 

それに、どうにも待ってくれているようにも感じる。

 

『……ハサウェイ』

「はい?」

『大佐の隣だ。下手を晒すなよ』

「了解です」

『ハサウェイ!』

「大丈夫だよバナージ、勝算はある。じゃあ、バーンさんとリディ少尉をよろしくね」

 

迫るメガ粒子砲を避けながら、それだけ言って戦線から外れた。

 

さあ、正念場だ。

 

『……すまないハサウェイ君、貧乏くじを引かせた』

「いえいえ、僕でもこの戦力分配でしたよ。めっちゃ妥当です」

『それでもだ。そして、よろしく頼む』

「了解です」

 

 

 

彼は、そこで待ち構えているかのようだった。

 

彼の向こうには無数の戦火が見える。リゼルが、ジェガンが、そしてそれらを圧倒するクシャトリヤが見える。

 

あの戦線がここまで押し下げられた時、それは僕たちの敗北とほぼ同義になる。

ネオジオングの相手をしながら、他のモビルスーツ部隊を押しとどめられるほどの衝撃力はこの部隊にはない。

 

レウルーラの射線は通っている。しかし、そのレウルーラもまた敵戦艦との砲撃戦に対応している。

 

余裕はない。そして、チャンスもそう多くない。

 

『よう、遅かったじゃねえか。ハサウェイ・ノア、フル・フロンタル』

『そう言う貴様は随分と勇み足だな、ゾルタン・アッカネン』

『そう言うなよ成功作。いや、今やお前も失敗作か?』

『貴様とて理解しているだろう。奴らのつけるそのレッテルに、何の価値もないことくらい』

 

彼、ゾルタンさんがくつくつと笑う。

 

『……何がおかしい』

『いやあ、お誂え向きだと思ってよ。失敗作の俺が、ニュータイプと成功作を相手取って戦う。そうだ、俺はこの瞬間を待っていたのかもなあ』

 

プレッシャーが溢れる。来る。

 

『さあやろうぜ本物ども!ここが、この戦場が、俺の魂の場所だ!!』

 

この戦争の、最後の鉄火場が始まろうとしていた。

 




読了ありがとうございました!

ユニコーン編のラスボス的存在はリディ少尉とゾルタン様になりました。
そしてネオジオングが2機出てきます。

正直めっちゃ悩みました。どうすればいいかな?けどネオジオング1機なら割とどうにかできそうだし、リディ少尉+バンシィでアンジェロさんが苦戦するイメージもわかないし。

あ、じゃあネオジオング増やすか!という結論になりました。

本当に悩みました。悩み過ぎていっそインレでも出すか?と血迷いかけたくらいです。死ぬ死ぬ。



いつも誤字報告ありがとうございます!

そして感想、高評価も嬉しいです!嬉しくて何度も読み返してます。

引き続き感想、高評価などいただけると嬉しいです!
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