ハサウェイがアムロやシャアに影響される前に機械オタクになった世界線のお話   作:陸奥九十九

41 / 43
ああ、難産でした。出来は、どうなんでしょう?あんまりよくない気がしてます。

やっぱ私シリアス苦手です!なんかこう、あっけらかんとしたラブコメが書きたい。

戦争ももうすぐ終結なので、頑張りたいと思います。


天衣無縫

光が見えた。

 

宇宙の中に波打つ光。その光は時に伸び、時に戻り、浜辺に軌跡を残す白波の様に、その形を変えてゆく。

 

ハサウェイには、フロンタルには、その光が見えていた。

 

ああ、見える。

 

美しくも危険な、その光が。

 

その光が、疾走る、

 

 

 

『すげえな、何で避けられるんだよ!』

「企業秘密です!」

 

ネオジオングを中心に広がるサイコフィールドは光を放っていた。無論それは物理的に光っているわけでは無い。見えるものだけが見ることのできる光、この戦場に身を置く者のみが、その光を視認していた。

 

波動の様に、波の様に広がるサイコフィールド、あまりにも広すぎるその領域。

ハサウェイとフロンタルは、その光に触れぬように必死になっていた。それは回避行動のそれである。強烈な、強大な光。即座に察した、触れれば最後どうなるか分からない。

 

 

 

だが見える。噴き出すほど強烈なプレッシャーが、そして強力なサイコミュマシンたるネオジオングが、そしてそれを乗りこなすゾルタン・アッカネンが、大きすぎる力は隠すことさえできず、二人にサイコフィールドを可視させていた。

 

『じゃあこっちはどうだよ!』

 

ゾルタンは背面4腕、前面2腕の全ての腕部を展開させ、メガ粒子砲を撃ち放つ。

 

二人はこれを当然のように回避する、しかし、このメガ粒子砲は指先から放たれるものだ。

 

指の稼働によって、その攻撃は薙ぎ払われる。

 

 

 

ハサウェイは、ふう、と息を吐くとともに、薙ぎ払われるメガ粒子砲を、その攻撃を中心にくるりと泳ぐようにして薙ぎ払いを回避する。

 

そしてフロンタルはシナンジュの速力でもってメガ粒子砲そのものを振り切る。

 

 

 

その攻撃が止んだ瞬間にシナンジュとヤクトドーガのビームライフルが走る。そしてそれはネオジオングに命中する。

 

しかし、ダメージは確認できず。

 

『効くかよそんなもん!』

 

お返しとばかりに再びメガ粒子砲が放たれる。そして、それを二人は確実に回避してゆく。

 

 

 

即座に墜とされるものはこの場にはいない。そして、ネオジオングに攻撃は通らず、しかしヤクトドーガとシナンジュには攻撃が当たらない。

 

『楽しくなってきたじゃねえか……!』

 

そうでなくてはこの戦いの意味が無い。ゾルタンは笑う様に、そして睨みつけるように、その目を細め、二人を見つめた、

 

 

 

 

 

 

そしてその光景を、マリーダは見ていた。

 

『マリーダ!2機でネオジオングは無理だ!増援に……』

「近寄るな!」

 

近寄れば、巻き込まれて死ぬぞ。

 

ゼネラルレビルを相手取り、そしてチベ級の増援をほぼガランシェールのみで受け持つ都合上、こちらの戦場もまた兵力はカツカツだった。送り出せる戦力はどこにもない。

 

いや、もし余裕があっても、誰が行けるというのだ。

 

マリーダはそう悪態をつく。

もしもあの戦場へ送り出されたとして、私は果たして役に立てるか?

絶え間ないメガ粒子砲の雨あられを完全に回避しきって、サイコフィールドを常に認識し、ネオジオングにダメージを与えられる策略をリアルタイムで実行し続けられるか?

 

いや、余計なことを考えるな。任務を果たせ。

 

マリーダは頭を振って敵機を睨む。

無数のモビルスーツ、その部隊、そしてわずかに視認できる、ドゴスギア級の超大型戦艦。

こちらもまた修羅場。勝って当然の戦場などでは決してない。

 

迫るリゼルをファンネルで撃ち抜き、メガ粒子砲で焼き払う。

 

「来い、彼らの邪魔はさせない」

 

生きて帰ってこい、ハサウェイ。

 

願うのは、ただ単純なこと。

 

 

 

そこにふと、何かが来るのを感じた。

 

「なんだ、友軍反応……?」

 

センサーは、その迫りくる存在を認識した。

 

「ネェル、アーガマ……?」

 

戦場は、くるりくるりと転がり続ける。

 

 

 

 

 

 

戦いながら、やはり思う。

うん、結構な無理ゲーじゃないか、これ?

 

こっちの攻撃は当たってもダメージないのに、向こうは近づいた時点でほぼ勝ち、もしくは一発当たればほぼ勝ち。

 

ネオジオングはハリネズミの様に絶え間なくメガ粒子砲を撃ち続ける。

回避することはできないことじゃない。けど、これをいつまでも避け続けることは難しいし、なによりも先に限界が来るのはこっちだ。

 

有効な攻撃を当てる必要がある。もしくは、中距離から先に距離を詰める方法を見つける必要がある。

 

『まずは手足を潰す、やれるな?ハサウェイ君』

「了解です」

 

薙ぎ払われるように、そして切り裂くように放たれるメガ粒子砲を避けながら、狙う。

その攻撃が、収まるその瞬間を。

 

「ファンネル」

 

6基のファンネルが飛翔し、ヤクトドーガから離れることなくビームを放つ。

そして、その攻撃がメガ粒子砲を放っていたネオジオングの指先へと吸い込まれてゆく。

 

爆発。

 

ネオジオングの指先が吹き飛ぶ。

 

フロンタルさんも同じようにメガ粒子砲の発射口を潰していた。

 

『すげえな、曲芸かよ!』

「どーも!」

 

よし、これなら攻撃は通る。

そうだ、サイコフィールドもIフィールドも万能無敵な素敵バリアじゃない。攻撃の時にまでフィールドを張っていたらそもそも攻撃は外に出ていかなくなる。

 

ファンネルを即座にラックに戻し、再び回避行動に入る。

 

『じゃあこれはどうだよ!!』

 

あ、やばい。

 

背部ユニットがさらに大きく展開されていく。そして、そこに結晶される疑似サイコフレームが大きくなっていく。

 

『離れろハサウェイ君!』

「了解です!」

 

フル加速で距離を取るが、それでもサイコフィールドの展開速度が速い。

そして、そのフィールドに、微かにビームライフルが触れた。

 

その瞬間、ビームライフルが赤熱を帯びながら、内部から熱爆発を起こし爆散する。

 

「はあ!?」

 

即座にビームライフルを投げ捨て、完全に背を向けて距離を取る。

 

『良いのかなあ、そんなことして!?』

 

ネオジオングが、そのすべての銃口をこちらへと向ける。

 

『死んじまうぜえ!?』

 

そして、極光の如きメガ粒子砲が放たれる。

 

さあ、読み切れ。

 

背中から迫るメガ粒子砲を避ける。発射口をよく見ろ、手の内側に逃げようとするな。

 

クイック、クイック、一呼吸おいて、ここ。

 

メガ粒子砲が目標を飲み込もうと薙ぎ払われる。

 

足を畳み、一気に方向を転換させ、ジグザグに回避マニューバを切る。メガ粒子砲が薙ぎ払われるのとは逆方向に、さあ、避けろ。

 

迫る、迫る、迫る。

 

振り払われる極大なビームサーベルを避けるように、確実に、大胆に。

 

紙一重で避けるな、ちゃんと距離を取れ。かすった時点で多分墜とされる。

 

避けろ、避けろ、避けろ。

 

 

 

避け切ったその先で、

 

 

 

本体からの本命が来るぞ。

 

 

 

『ところがぎっちょん!!』

 

あ、これは避け切れないかも。

 

マシンをゆうに呑み込むメガ粒子砲が迫る。拡散メガ粒子砲だ。だけど、その威力は依然強大。かすっても死ぬ。

 

しかし、その範囲が広すぎる。

 

いや、広いならむしろ楽か。そうだ、弾幕は波じゃない。避けるならば、内側に。

 

 

 

避けろ、そして予測しろ。一瞬先の未来を、そこにいる自分を。

 

正面、左に避けて、まだ動くな、一呼吸おいて、ここで下、そして、すぐに上。

 

 

 

正面には、何もない。

 

「ファンネル」

 

射出と共に狙撃。狙うは、攻撃し終えた肩部のメガ粒子砲発射口。

 

6条のビームが3本ずつの束となり、ネオジオングの、その肩部を撃ち抜く。

 

そして、ダメ押しと言わんばかりにシナンジュのビームが左肩を貫く。

 

 

 

しかし、大きなダメージは確認できず。白い装甲、その表面を黒く焦がす程度のものだった。

 

 

「サイコフィールド強大です。本体は発射後でも携行火器程度じゃ攻撃が通らないです」

『確認した、ビームライフルの爆発は?』

「多分ミノフスキー粒子をサイコフィールドで圧縮してビームを暴発させたんだと思います。サイコフィールドに捕まったら詰みです。絶対避けてください」

『了解した』

 

さて、結構手が詰まってきたな。チャンスはそう多くない。多分1回きりだろう。

あのサイコフィールドを突破するには、兎にも角にも火力が必要だ、ビームマグナム並の火力が。

 

『すげえな、これがニュータイプの力か?普通弾幕の内側をすり抜けられるものかね?』

「できるもんですよ。あと、ロンドベルなら誰でもこの位してくるらしいですよ」

『はっ、嘘つけ!てめえみたいなバケモンがそうそう沢山いるものか』

 

まあいい、本番はここからだ。

 

彼はそう言い、ネオジオングがその力を発揮する。

 

 

 

ネオジオングの背部ユニットから生成される疑似サイコフレームが黄金に輝きを放ち、そして、赤黒いオーラのようなものが噴き出していく。

 

これは僕が幻想を視認しているのか?それとも具現化しそこに実際に存在しているものなのか?

 

プレッシャーだ。そう、凄まじいプレッシャーが、今そこから溢れ出している。

 

 

 

『じゃあ、吹っ飛んじまえよ!!』

 

再びメガ粒子砲が迫る。しかも出力が先ほどよりもさらに大きい。

 

「攻撃の収束と同時に踏み込みます!攻撃中ならサイコフィールドは展開できないはずです」

『了解した、私も斬り込む』

 

避ける、避ける、避ける。

 

やはりこの人は理詰めだ。効率的に敵を排除する戦い方をする。そして、ネオジオングでそれを実行できるほどの凄まじい技量がある。

 

シナンジュの時もそうだった。凄まじい技量と理詰めの戦術。効率的な戦闘方法、フロンタルさんやアンジェロさんと似ている。

 

だからこそ、先が読める。

 

 

 

攻撃が収束する、けど、これはブラフでしょ?

 

「ファンネル」

 

ファンネルをヤクトドーガ周囲に展開させ、シールドメガ粒子砲と共にネオジオングの左肩へ攻撃を集中させる。

 

命中、しかし、装甲に大きな変化なし。

 

やはり効果は薄いか。指と肩とで、恐らく優先順位が違うのだろう。本体のIフィールドは厚く、指先は薄い。そしてサイコフィールドにも同様の優先順位があるのかもしれない。

 

 

 

来る。

 

 

 

ファンネルを回収すると同時に、弾幕を張るように指と肩とでメガ粒子砲が放たれる。

 

指からのメガ粒子砲は一条の光線となって薙ぎ払われ、肩からのは断続的に短く多方向に拡散して発射される。

 

距離を詰めろ。

 

宇宙を泳げ。効率的に、確実に、前へと進め。

 

薙ぎ払いをくるりと避け、拡散式の雨を避け、前へ。

 

指先から放たれるメガ粒子砲が追ってくる。くるりとその場で反転し、一気に加速、指の間を抜けて、尚も前へ。

 

まだ遠い。

 

肩から放たれる拡散メガ粒子砲の弾幕が厚くなってくる。引きつけろ。一足一刀まで踏み込めば射角から外れる。その刹那の呼吸をかぎ分けろ。

 

まだ、まだ、まだ。

 

鬱陶しいでしょう?遠くも無く近くもないこの距離が。

躊躇うでしょう?どの攻撃でも確実には対処できない、この距離が。

 

薙ぎ払いでも、拡散式でも当たらなかった相手がいて、そいつが距離を詰めてきた。

でも、そいつの攻撃は自分には通らない。でも、近接格闘はまだ分からない。

 

だったら、距離を取らせたい。そして、Iフィールドが確実に機能する状況を作ってから、どうとでもなる状況で距離を詰めたい。

 

サイコフィールドが確実に機能する状況であれば、モビルスーツの携行火器なんて怖くないし、近づいてくればミノフスキー粒子を操作して、モビルスーツなんてどうとでもできるんだから。

 

 

 

だから、距離を取って中遠距離を作ろうとする。そして、再び弾幕を張ろうとする。

 

 

 

ネオジオングが、再び弾幕を張り始める。ヤクトドーガから距離を取りながら。

 

 

 

「今」

 

ネオジオングの背部から爆発が起こる。

 

正面に戦闘能力を展開し始めたがゆえに、後方への弾幕に隙が出来た。

背部から放たれるメガ粒子砲を回避しきり、シナンジュがシールドサーベルでもって腕部を切り裂いていた。

 

返す刀で向かう腕をもう1本切り裂いて、シナンジュが距離を取る。

 

『くそが!』

 

ふとネオジオングの注意がシナンジュへ向く。そう、シナンジュはすぐに届く距離にいるのだから。

 

 

 

欲しかったのはこの距離だ。

 

ヤクトドーガを加速させる。一気に懐へ飛び込む。弾幕が迫り、厚くなり、そして、ふと消える。

 

ビームサーベルを、シナンジュへと振り下ろす。

 

 

 

だが、ビームトンファーで防がれる。シナンジュの反応も速い。

 

 

 

『鬱陶しいんだよ!!』

「しょうがないでしょ、そんなの乗ってるんだから!」

 

シナンジュが返す刀でビームトンファーを振る。それには付き合えない。出力勝負じゃシナンジュには勝てない。

 

即座に反転し、スカートを切りつけながらネオジオングの下部へ転進する。

 

超大型のプロペラントタンクを切りつけ、そこにシールドメガ粒子砲を撃ちこむ。

 

誘爆、そして爆発。

 

今ならいけるかな?

 

追い打ちをかけるように大型スラスターの並ぶスカートの中へ。メガ粒子砲を撃ちこむ。

 

結果は、今一つ。そりゃそうか、こんな分かりやすい弱点はちゃんとカバーしてるか。

 

だが、効果は確認できた。ヤクトドーガでもビームサーベルなら攻撃は通る。ビームサーベルによって切り裂かれたスカート部がそれを証明していた。

 

 

 

じゃあ、逃げなきゃ。

 

 

 

中距離を潰し近距離に迫ったことで、ネオジオングがサイコフィールドを展開し直そうと防御態勢に入る。

 

それを察してシナンジュも中距離から一気に距離を取り始める。

 

そして再開されるメガ粒子砲による雨のような弾幕。

 

弾幕に背を追われながら、それを避けつつ、ネオジオングの下部を陣取る。

 

「ヤクトドーガでもサーベルなら攻撃は通ります。次の踏み込みで決めます」

『了解した。座標は?』

「更新し続けてます」

『よし、ならば覚悟を決めようか』

 

『ふざけてんじゃあ、ねえぞ!!』

 

瞬間、ネオジオングのプレッシャーが爆発した。

 

「っ、なんだ?」

 

ヤクトドーガのサイコフレームが、共振している?

 

ネオジオングのサイコフィールドには掛かっていないはずだ。なのに、マシンが鳴動する。まるでネオジオングのプレッシャーに呼応するかのように。

 

「共鳴したとでもいうのか……?」

 

『まずはお前だ、ハサウェイ・ノア!』

 

ニュータイプのお前を、殺す。

 

『この俺を、止めてみせろよ、ニュータイプ!!』

 

ネオジオングが瞬時に方向転換を完了させ、迫る。その機動に、疑問が生まれる。

 

おかしい、速すぎる。

これほどの超重量の巨大モビルアーマーが、そんな動きをできるはずがない。

 

これは恐怖の修羅場で抱く疑問か?いや、この疑問は、生死を分ける何かになる気がする。

 

考えろ。一瞬だけ考えろ。

大出力のスラスターでも、結局初動は如何ともし難いはずだ。そして、重量級のマシンはその初動がきつい。重いゆえに動きにくく、そして動き出したら、重いゆえに止まりにくい。

 

でも、今ネオジオングは、まるで何かに引っ張られるように、押し出されるように、急激に転進した。何故?

 

サイコフィールドだ。原因は間違いなくサイコフィールドにあるはずだ。

 

じゃあ、どうやって?

 

ふと脳裏に思い浮かぶのは、大きく、重く、しかし宇宙でも動き、なおかつ地球でも動ける、そんな機械、そんなシステム……

 

 

 

……ミノフスキークラフト?

 

 

 

そうだ、ネオジオングのサイコフィールドは物理的な影響力さえある。ミノフスキー粒子を操作して、ビームライフルを暴発させるような。

 

その干渉力で、マシンを押し出したり、引き寄せたりすることが出来れば?

別にネオジオングという超重量物を超高速に加速させるほどの干渉力は無くとも、その初動を助ける、補助動力的な使い方が出来れば?

 

そうすれば、シナンジュやユニコーンは無理でも、ジェガンくらいの動きはできてしまうんじゃないか?

 

 

 

ネオジオングから噴き出すプレッシャーと、背中をつたう冷や汗が、得も言えぬ恐怖を生み出す。

 

やばい、このチャンスで決め切らないと、多分次はない。

 

半固定砲と化していたネオジオングだからまだ戦えていた。

こちらの高速機動がちゃんとブラフになっていたから。相手は籠城戦をするかのように、弾幕で罠をはるか、詰将棋の様に追い詰める以外に手立てがなかったから。

 

その前提が、多分今崩れた。

 

 

 

今のネオジオングは、歩兵の速さで進撃する城だ。

こちらが騎兵だからと言って、勝てる道理はほぼ無い。無くなった。

 

 

 

サイコフィールドがこれほどまでに強固になれば、もはやヤクトドーガのサーベルが有効かどうかも分からない。

 

全部かけろ。これで決めろ。

 

 

 

迫るネオジオングに、僕は迎撃の姿勢を取る。

 

 

 

見える。

 

剣林弾雨のその先の、行くべき影と、その光が。

 

 

 

迫るメガ粒子砲を避ける、シナンジュの構えるバズーカを避ける、

 

見えるものは、迫る攻撃と、死の気配。

 

無数の警告音を発しているはずのコクピットが嫌に静かに、音を置き去りにするように、世界から色が消えていく。

 

そして、世界の情報が減れば減るほどに、一瞬先に見える未来が鮮明になってゆく。

 

見える。

 

攻撃の最中は見えなかったはずの、サイコフィールドが見える。

 

ネオジオングの装甲にまとわりつくように、見えぬ装甲を象るように、サイコフィールドを纏っている。

 

遠距離を潰し、中距離を潰し、一足一刀へと踏み込む。

 

切り結ぶ 太刀の元こそ 地獄なれ 踏み込みゆけば あとは極楽

 

前へ、前へ、前へ。

 

 

 

そう、この距離だ。

 

ネオジオングへ向けて、シールドを放り投げる。内蔵メガ粒子砲の爆裂は、ビームライフルよりもなお強い。

 

ファンネルを即座に射出して、放り投げたシールドを一斉に撃ち抜く。

 

 

 

「座標、今!!」

 

 

 

ビームが駆け抜ける。ファンネルが撃ちぬいたシールドが爆発し、そのエネルギーがネオジオングの纏うフィールドを散らす。

 

それはほんの少しだ、ほんの少しだけ、何の攻撃も通さないというようなその強固なフィールドに、ほんの少しだけ、ダメージを与えることができる。

 

 

 

そして、そのほんの少しのほころびを、ヤクトドーガの遥か後方から放たれた2条のビームマグナムが、食い破って貫いてゆく。

 

 

 

『なんだと!?』

 

 

 

そう、座標はいつだって更新されていた。その座標とは、ネオジオングとの詳細な戦闘ポイント。

 

レウルーラに、ガランシェールに、そしてモビルスーツ部隊の全員に、その情報が共有されていた。

 

来るべきその瞬間を、決して取りこぼさないために。

 

 

 

両肩を撃ち抜かれたネオジオングが、刹那その動きを止める。

 

 

 

その瞬間に、レウルーラのメガ粒子砲主砲がネオジオングの背部ユニットを撃つ。

 

ダメージはそう大きくない。恐らく当たり所が悪かったからだろう。

 

でも、体勢を崩すには十分な一撃だった。

 

 

 

『くそ!?』

 

 

 

さあ、最後の仕事だ。

 

彼我の距離、およそ50メートルと少し。ビームサーベルが、まだ届かない間合い。

 

そして、ネオジオングのメガ粒子砲の、その射角の外。

 

迎撃するには、シナンジュの手持ち兵装でどうにかするしかない間合い。

 

 

 

こちらがビームサーベルを構えると、相対するように、シナンジュはバズーカを捨ててビームトンファーを構える。

 

そう、その動きが欲しかった。

 

絶対に射撃兵装を使えない、武器を捨て近接格闘へ動作を移行し、敵を待ち構える、その動きが。

 

 

 

今回の出撃に際して、ヤクトドーガはどこまで行っても火力不足が否めなかった。

ネオジオングの対策にしても、ビームマグナムは持てないし、大口径のビームスナイパーライフルもジェネレーター出力的に装備できず、何よりファンネルが有効に使える状況があまり無いと予測できたため、対ネオジオングに関して言えば、ヤクトドーガは後詰め兼囮以上の働きは出来ないと感じていた。

 

そこで、ちょっとした奇策を用意した。

元々はレウルーラのバックヤードにあった放置されたも同然のパーツから始まった構想だった。

理由は特にない。ただ、バックヤードを見て、何と無しそのパーツに心惹かれた。構造が単純で、機能も単純で、およそ宇宙戦闘で使えるシーンはほぼ無いが、工事用としてはちょっと面白いと思った、ガルスJのアームパンチ機構。

 

その機構をヤクトドーガの左腕に装備させ、撃鉄に見立てた。

ユニコーンのビームマグナムの弾倉たるEパックカートリッジ、それを一本だけ装填させ、弾倉内に貯蔵されたミノフスキー粒子を撃鉄でもって前方に爆裂拡散させる。威力は低く射程も短いが、広範囲に散弾をばらまくような、そんな機構。

 

その機能は、ほんの少しの間だけIフィールドを霧散させることができる、というもの。

費用対効果はそう高くない、けど、ハマるときはそれなりに機能してくれる、そんなロマン兵器。

そして、今回は状況によってはキッチリハマってくれると信じ、隠し武器のようにシールド下に装備した。

 

仮称、ビームバンカーである。

 

 

 

ビームサーベルが届かないその距離で、ビームバンカーを爆裂させる。

 

ヤクトドーガに衝撃が走る。そうだ、どこまで行ってもその衝撃力はあのビームマグナム。前方に衝撃を放とうと、その反作用は容赦なくマシンを襲う。

 

結果、ヤクトドーガの左腕、肘から先は吹き飛び、肩が全く動かなくなる。

うん、想定通り。

 

そして結果も、想定通り。

 

ネオジオングのその前面から、Iフィールドが完全に霧散した。

 

 

 

さあ、真っ向勝負だ。

 

Iフィールドは完全に霧散したけれど、シナンジュのビームトンファーはいまだ健在。

 

死生命なく、死中生あり。何もかもをかけて、飛び込め。

 

振り下ろすビームサーベルが、ビームトンファーと激突する。

 

その衝撃と共に、閃光が走り、そして、

 

 

 

時が、見えた。

 

 

 

 

 

 

それは、人の業。

 

目に見えた現象だけを見て、その力を見て、それを再現したいと、しなければならないと言って、何もかもをした、何もかもをされた、人の軌跡。

 

『これが人間だろ。見えたものしか分からない、分かろうとしない。そして、その本質を見ずに、現象だけを再現しようと、踏み越えちゃいけないところを易々と踏み越える』

 

人の夢、人の望み、人の業。

 

『お前は選ばれた、俺は選ばれなかった。そこにそれ以上の意味はない。けど、じゃあしょうがねえかって、俺の過去を全部洗い流すには、絶望が重すぎた』

 

切りきざまれて、脳みそをいじくられて、何もかもを奪われて。

 

『宇宙に人が住み始めてたった100年だ。人類がどれだけ殺し合ってきたと思っている?たった100年で進化できるなんて、何もかも分かり合えて戦争も無くなるだなんて、夢見すぎだろ?』

 

その夢の為に、夢の為ならばと、多くのものが踏みにじられた。

 

『アクシズ事件で、とある強化人間が死んだ。その最後を、俺たちは感じた』

 

必死に生きた少年が、必死に生きて、戦って、そして死ぬまでの、その軌跡。

 

『あいつは、フル・フロンタルは希望を見出した。死んだあいつに、そして、見送ったお前に』

 

光る宇宙に、影が墜ちる。

 

『俺は絶望した。お前にじゃなく、あいつにでもなく、その状況を生み出した、この世界のすべてに』

 

光が輝くほどに、影は闇に近づく。

 

『その時に道が生まれたんだ。それまでどこにもなかった分かれ道が。絶望を抱えて死んでいくか、すべてを飲み込んで戦い続けるか。その分かれ道が』

 

フル・フロンタルは、戦う道を選んだ。モナハン・バハロの私兵などではなく、希望を夢見て戦い続ける、果てし無く険しい道を。

 

ゾルタン・アッカネンは、戦う道を選んだ。モナハン・バハロの私兵などではなく、絶望を生み出した人類を滅ぼす、果てし無く険しい道を。

 

『奴は、フル・フロンタルは正しい。その位は分かる。奴は鏡のような奴だった。欲しいものを映す神様の鏡。その鏡を見ると、何もかもが素晴らしく映る魔法の鏡』

 

その鏡に意思があることを、多分俺以外は気づいていなかった。

 

『俺は失敗作だった。シャア・アズナブルにも、フル・フロンタルにもなれなかった失敗作。戦闘能力だけはあるが、それだけの劣化モデル。俺を見る奴は何処にもいなかった』

 

いや、フル・フロンタルは気づいていたのかもな。

 

『奴の手を取らなかったことに、理由はない。ただ、取れなかったんだ。その手を取ったら、俺は俺でなくなってしまう。失敗作にだって、心はある。それがプライドなのか、はたまた劣等感からくる憎しみなのかは分からない。でも、取れなかったんだ』

 

いっそ、空っぽの器にでもなれたら気が楽だったのな。

 

 

 

「まだ、間に合いませんか?今からでも、一緒に……」

『それはできない。悪いな』

 

もう、俺は何処へもいけない。これ以上、走りたくもない。

 

『ここが、この戦場が、俺の魂の場所だ』

 

だから、最期までやろうぜ。そうすりゃ、俺も満足するからよ。

 

 

 

『ニュータイプに希望を見出した馬鹿どもが俺を作って、俺はそのニュータイプにはなれなかった』

 

『成功作のフル・フロンタルと、あいつを見送ったニュータイプのハサウェイ・ノア、その二人との戦いが、多分、俺の全部を証明してくれる。俺の全部を洗い流してくれる』

 

『だから、今度は途中でやめたりはしない。最後までだ』

 

『やってみせろよ、ニュータイプ』

 

やってみせろよ、ハサウェイ・ノア

 

 

 

 

 

 

ビームサーベルとビームトンファーが、その刃を打ち合わす。

 

『良いのかよ、その距離で!』

 

サーベルの出力で、ヤクトドーガはシナンジュには勝てない。この鍔迫り合いを続けても、じきに押し切られる。

 

しかし、その鍔迫り合いの間に、1条のビームがネオジオングを貫く。

 

『なに!?』

 

撃ち抜いた場所は、Iフィールドジェネレーターとメインジェネレーター。

 

『お前か、フル・フロンタル!』

 

ゾルタンは逡巡する。それは、ネオジオングを捨てるか、それとも使い続けるか。

絶大なサイコフィールドを再び展開できる可能性に賭けるか、シナンジュ単機でフル・フロンタルとハサウェイ・ノアを相手取れるかという逡巡。

 

そしてそれは、ハサウェイに対して刹那のアドバンテージを与えた。

 

「ファンネル!」

 

ヤクトドーガの背部から展開されるファンネル。

 

視認するより早く、ゾルタンはその気配を感じ取った。

 

一瞬先の未来に放たれるビームを回避すべく、シナンジュはネオジオングの真上へと飛翔する。

 

直後、ファンネルがシナンジュがいたその場所を貫き、爆発。

 

その爆風に押され、わずかに姿勢を崩すヤクトドーガ。

 

その隙を、ゾルタンは見逃さなかった。

 

シナンジュを即座に転進、ビームトンファーを突き立てんと、その速力でもって迫る。

 

ヤクトドーガは完全な死に体、回避行動はとれても、こちらの方が速い。

この距離なら、ファンネルの迎撃よりこちらの一撃の方が速い。

 

そして、フル・フロンタルはネオジオングと言う巨体に隠れ、死角にいる。

 

 

 

殺った!

 

 

 

瞬間、シナンジュの両足をビームが貫いた。

 

『あ?』

 

それは、超長距離からの、そして誰もいないであろう完全な無意識からの狙撃。

ハサウェイが仕込んでいた、超遠距離からのファンネルによる狙撃だった。

 

両足が誘爆し、姿勢が崩れる。そして、ヤクトドーガの迎撃が間に合い鍔迫り合いに持ち込まれる。

 

残る片腕でビームトンファーを振るおうとするが、横合いから蹴り飛ばされる。

 

『ぐうぅぅ……!』

 

赤いシナンジュ、フル・フロンタルだった。

 

吹き飛ばされる。そして、両足を失ったシナンジュに、もはや即応態勢を取れる余裕はなかった。

 

シナンジュの両腕を、ファンネルが撃ちぬき切断する。

 

ゾルタンの視界に映るのは、シールドビームサーベルを構える赤いシナンジュ、自らを完全に包囲したファンネル、そして、もはや半壊の域を超え、大破同然のヤクトドーガだった。

 

 

 

ゾルタンは、笑っていた。

 

『終わりだな、フル・フロンタル、ハサウェイ・ノア』

『そうだ。これで終わりだ、ゾルタン・アッカネン』

 

『不思議な気分だ……お前らに負けたら、もっと悔しいもんだと思ってたぜ』

 

何でだろうな、今は、結構悪くない気分だ。

 

『でも、これで終わりだ』

 

やれ、今度は最期までだ。

 

『……ああ、さらばだ』

 

友よ。

 

 

 

シナンジュが、シールドを振り下ろした。

 




読了ありがとうございました!
多分次回でラプラス事件が終わる、はずです!もうちょっとでシリアスも終わる、頑張ろう!

全然関係ないけど今YOUTUBEでちょうどVガンダムが良い感じです。みんなで観ようVガンダム。傑作アニメVガンダム。でも富野監督は観るもんじゃないって言ってたよVガンダム。

いつも誤字報告ありがとうございます。

そして感想と高評価もありがとうございます!大変うれしいです。なんというか、自分の書いてるものを楽しんでくれる読者の方がいるって知れるのが本当に嬉しいです。

引き続き感想、高評価、頂けると嬉しいです!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。