ハサウェイがアムロやシャアに影響される前に機械オタクになった世界線のお話   作:陸奥九十九

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ラプラス事件終了です。いや、難産でした。
終わらせ方が分からなくなったし、どう終わらせるかも結構悩みました。

とりあえず戦闘やら何やらがこれで終わりで、次回以降で掘り下げとか戦後になると思います。
何にせよ戦争が終わって良かった!

あまり納得のいく出来ではありませんが、これ以上が書ける気もしないのでこれで完成にします。

楽しく読んでいただけたら嬉しいです。

追記:
前書きのラプラス事件終了が、アクシズ事件と書き間違えてました!
なんでー!?


作戦終了

ああ、終わったな。マリーダは何となくそう直感した。

 

ネオジオングとの戦闘が、完全に終結した。大破したであろうネオジオングの残骸がここからでも確認でき、そして、それはゼネラルレビルにとっても同様だった。

 

モビルスーツ5個大隊。それがゼネラルレビルらの投じた戦力だった。隠密作戦に投じるにはあまりにも破格な戦力、もはや拠点攻略戦と言って差し支えないほどの戦力を彼らは投じた。

 

全てはラプラスの箱確保のため。そしてダメ押しのように準備された2機のネオジオング。これだけの戦力があれば、出来ない軍事作戦はほぼ無い。箱の回収など問題にさえならない。考えるべきは、やりすぎないように何処でブレーキをかけるかだ。それほどの戦力を投じたつもりだった。

 

しかし、結果はその真逆となった。

 

 

 

戦略兵器同然のネオジオングが、たった6機のモビルスーツ、およそ2個小隊に完全に制圧され、撃墜0で戦場に散った。

 

そして、奥の手虎の子のゼネラルレビルも、たった1隻の偽装貨物船の部隊に良いように翻弄され、そして後詰めにて参戦したネェルアーガマの攻撃を受け、今まさに潰走しようとしていた。

 

 

 

やりやすい、マリーダはそう感じていた。

 

戦場で多対一を演じるとき、兎にも角にも注意を払うべきは敵との距離だ。

マリーダのキリングレンジは、ほぼ中遠距離で固定されている。ファンネルの性能を存分に活かし、その上でメガ粒子砲の射程を加味した際に、遠距離では遠すぎるし、近距離では近接に意識が向きその他の敵の対応に1歩遅れてしまう。

 

マリーダは以前までそれらの弱点をクシャトリヤの圧倒的な出力で補っていた。

 

遠距離の敵には大推力でもって接近し、近接格闘においてはサーベルの超出力とマシンの馬力で擦りつぶす。そうすることで弱点を弱点とせずに、むしろ誘い込むための罠の一つにしていた。

 

その弱点の内、近接格闘に関してはハサウェイのサイコミュコントローラーのセッティングによってほぼ克服された。

ファンネルの反応速度の向上、そして意思伝達の単純化と高速化である。

 

それまでのファンネルの制御は、言わば完全なマニュアル制御だった。このような機動を描いて、このような角度でもって、このタイミングで攻撃する。そう言ったイメージを個別に独立してイメージし、ファンネルに伝達することで制御してた。

それを時に6個同時並行、12個同時並行とイメージしていく。結果、ファンネルに多くの意識を割くために、意識の外からの遠距離攻撃や、ファンネルを掻い潜られ高速近接戦闘が始まると、対応に一呼吸遅れる。

 

ファンネルを使うがゆえにマリーダは強く、クシャトリヤは強い。しかしファンネルを使うがゆえに、弱点が生まれる。

 

しかし、ハサウェイのセッティングによって、それは解消された。

敵機が撃墜されるシーンをイメージする。それだけでファンネルの制御すべてが完結する。

 

ファンネルの動きは全てオートマチックに実行され、その動きもマリーダの過去の戦闘から学習させ、さらに学習コンピューターとサイコフレームとの連携でもって、ほぼマリーダのイメージ通りに動くように適応された。

 

結果、ファンネルの制御=敵機の視認にまで制御は簡略化され、マリーダはその持ち得る能力のほとんどを、ファンネル以外の戦闘行動に割けるようになった。

 

メガ粒子砲で敵を撃墜、ないし行動を制限させ、ファンネルで確実に撃墜し、それらを潜り抜けた敵はクシャトリヤという超パワーマシンとの近接格闘を強いられる。そしてマリーダのニュータイプ能力からして、マリーダの存在しえない死角を完璧に突き、上記を一切無視しての攻撃など、ほぼ不可能と化していた。

 

マリーダは、この時点でネオジオン最強の殲滅能力を有していた。

 

 

 

そして、その状況をさらに助長したのがネェルアーガマの援護射撃だった。

 

マリーダは全領域に対応した殺戮兵器と化したが、それでも唯一の弱点はある。

それは、長距離からの射撃に対しては接近する以外の選択肢が取れない点にあった。

 

例えばクシャトリヤと同等の移動速度を有するリゼルが、ひたすら逃げながら狙撃を試みようとした場合、クシャトリヤが取れる手段は何もない。

 

もっともそんな状況になれば、その敵を無視して他の敵の殲滅を選ぶし、なによりそれほど逃げ腰では、狙撃でもってクシャトリヤを撃破することはほぼ不可能なので、あまり意味のない想定とはいえるが。

 

 

 

ネェルアーガマは、この戦場において前線での侍働きの一切を捨て、狙撃のみに注力した。それは、ネェルアーガマの現状戦力では、歴戦たるガランシェールとの連携しての戦闘は難しいと考えたためだった。

 

完全な援護射撃、それも、撃破の為の狙撃ではなく、敵機の行動を制限し、前線のモビルスーツ部隊の戦闘を有利に進めるための援護射撃。ネェルアーガマはそれに殉じた。

 

しかし、それだけでは戦況を有利に誘導するには不足と考えた。そのためネェルアーガマはロンドベルとして虎の子を用意した。

本来は指揮官クラスにしか用意されないメガビームランチャーをパイロット分用意し、リゼル全機での遊撃及び狙撃の準備をしていた。

 

死角を取らんとする敵を狙撃でもって排除し、そして機動戦を仕掛けんとする敵を妨害し、ハラスメント攻撃を主体として戦場へ貢献をした。

 

 

 

それらの攻撃は、ほんの少し敵の動きを阻害し、ほんの少し敵の流れを阻害した。

 

そして、そのほんの少しは、殺戮兵器と化したマリーダにとって、十分すぎるほどの猶予を与えた。

 

 

 

バナージの早期決着の判断とアンジェロら親衛隊の注力によって、まずバンシィとネオジオングが撃破された。

 

そして、ハサウェイの機転とフロンタルの支援、そして戦闘を終えたバナージと、レウルーラからの狙撃を準備していたカークスによるビームマグナムでのネオジオングへの狙撃、レウルーラの火砲支援、そして最後はハサウェイとフロンタル、二人の地力でもって2機目のネオジオングを撃墜。

 

そして最後に、既に甚大な被害を被り、ネオジオングの撃破でもって戦意を喪失した敵部隊は、マリーダの殲滅力、ネェルアーガマの援護射撃、最後はネオジオングを撃破したシナンジュの戦線参加がダメ押しとなり、ゼネラルレビル、そしてチベ級は拿捕された。

 

そのようにして、戦闘状況は終わった。

 

しかし、ネェルアーガマはフロンタルらの助力の為だけに来たわけでは無かった。

 

それは、秘匿されていた最後の敵の切り札、その実態をつたえるメッセンジャーとしてだった。

 

 

 

 

 

 

「コロニーレーザー、ですか?」

『そうだ、ブライト司令からの伝令だ。まず間違いない。現在ブライト司令選抜の機動部隊がグリプス2停止に向かっているが、ぎりぎりのタイミングだ。万全を期して、メガラニカからは退避した方が良い』

 

モニター越しにオットー艦長が状況を話す。

 

『ブライト司令はグリプス2に手が加えられているということ自体は以前から掴んでいるようだった。そして、その動きが約1か月前から活発になり、この1週間でより顕著になった』

「1週間……ちょうど姫様が月に上がった頃か……」

 

大破寸前のヤクトドーガで何とかレウルーラに帰還すると、すぐにアンジェロさんにブリッジに上がるように伝えられた。

 

そして、未だ状況が転がり続けている現状が語られた。

 

「グリプス2って、サイド7ですよね?じゃあ、地球の向こうからこちらを撃ってくるのか……」

「連中もコロニー全体を撃つつもりは無いだろうが……いや、確実に当てられるなら、コロニーの一つくらいは呑み込んでも構わんと捉えるか。それに、出力如何ではこの戦域そのものを吞み込むほどの攻撃範囲もありうる」

『直線距離でざっと70万キロメートル程度か。コロニーレーザーの出力ならば問題なく届くな。それに、メガラニカごと我々を纏めて消し飛ばすことも連中は視野に入れているかもしれん』

 

戦闘を終え、状況確認も含め先んじてネェルアーガマと接触したフロンタルさんがシナンジュから話す。

 

「連中がラプラスの箱を焼却するつもりなのか、我々を焼却するつもりなのかもわかりません。それに、撤退を始めれば目標がメガラニカから我々に移るやもしれません」

『理論上では、コロニーレーザーには照射角限界は存在しない。逃げるにしても逃げ場所の確保が必要になる。まずもって、箱とやらをメガラニカから持ち出すのはどうなんだ?というか、箱とは一体何だったのだ?』

 

オットー艦長がそう聞く。

バナージが、それにゆっくりと答える。

 

「……とても、とてもなんてことない物でした。宇宙世紀憲章の、失われていたと思われたオリジナルの石碑。それが、ラプラスの箱の正体です」

 

バナージは、そう話し始めた。

 

『石碑?』

「ただ、その石碑には、ダカールにある宇宙世紀憲章のレプリカには、存在しない一文が記載されていた。その内容は、こうです。『将来、宇宙に適応した新人類の発生が認められた場合、その者達を優先的に政治運営に参画させることとする。』」

 

連邦が消し去ろうとした、そしてビスト財団を繁栄へ導いた、今の連邦が決して受け入れることのできない一文。それが、ラプラスの箱の正体です。

 

バナージの言葉に、沈黙する。

 

 

 

そうか、確かにスキャンダルだ。その一文が結構な痛手になるのもそうだし、その一文を消し去ろうとした事実もまた。

宇宙に適応した新人類、それを、ニュータイプ能力者とするのならば。

 

それは他ならない、スペースノイド、いや、ジオニズムの肯定になりかねないのだから。

 

でも……

 

「ビスト財団は、本当にうまくやったのだな。たったそれだけで、連邦から度重なる譲歩を引き出すとは」

『いや、それだけとは……』

「それだけだろう、オットー艦長。世は回っているのだ、正しくとも、正しくなくとも、少なくとも今の形で。それとも、例えばシャア総帥が正統なる連邦政府の指導者という資料が見つかれば、連邦が今の地位をシャア総帥に献上してくれるとでも?」

 

オットーさんは沈黙した。そしてそれは、他ならぬ答えだった。

 

「争いの火種がまた一つ増えるだけだ、良くも悪くもな。まあ、今はそんなことは良い。まずはコロニーレーザーをどうするかだ。そうでしょう?大佐」

『アンジェロの言う通りだ。オットー艦長、コロニーレーザーの発射予定時刻は?』

『あ、ああ。発射予定時刻はグリニッジ標準時0000。猶予は、約30分』

 

30分。短いな。中にいる人を避難させるには十分だろうけど、逆に言えばそれ以上は難しいとも言える。

 

「30分……大佐、石碑は持ち出せる状態なのでしょうか?」

『大層大事に保管されている、表に出すには重機が必要だ』

「モビルスーツでビスト邸を露天掘りしていけば、行けますか?」

『不可能ではないが、どうだろうな。時間が足りなくなる可能性もある』

『通用口などは無いのか?宇宙世紀憲章ならばそれなりのサイズだろう?』

『ビスト財団がおよそ100年間、後生大事に抱えていた宝物だ。そのような通路はむしろふさいでいるだろう』

 

さて、どうするべきだろう?

映像やら記録証拠やらでは無理なのだろうな。いくらでも融通が効いてしまうから。となると結局はオリジナルが必要になるのか。

でも、制限時間付きで持ち出すのはほぼ不可能。それに、強引に状況を進めようとして石碑そのものを破壊したら元も子もない。

 

「ハサウェイ」

「ん?なにバナージ?」

「コロニーレーザーを、サイコフィールドで防ぐのは、可能だと思う?」

 

はい?と思わず声に出た。

コロニーレーザーを、サイコフィールドで?

 

「いや、無理だと思うよ。コロニーを消し飛ばすほどのエネルギー量となると、ちょっと難しいんじゃないかな?」

「そっ、か」

「それに、それだけの出力のサイコフィールド張るにしても、ユニコーンどころか、ネオジオングを使っても……」

 

難しい、無理だ、と言おうとして、言葉が止まった。

それはサイコフィールドでコロニーレーザーを防ぐ案が出来たとかではなく、何かイメージが出来たかのような。

 

そうだ、引っかかったのはネオジオングだ。ネオジオングの何が引っかかった?

 

サイコフィールドで、ネオジオングは何をした?

 

サイコフィールド内で、ミノフスキー粒子を制御できていた。それを、ビームライフルの暴発という形で体験した。あれはビームライフル内部のミノフスキー粒子をサイコフィールドで制御し、エネルギーを指定方向とは異なるベクトルへ拡散させることで、ビームライフルを内部構造から破壊した。

 

サイコフィールドには、その強度によって干渉できる物質の幅が広がっていく。

 

いや、だからと言ってコロニーレーザーを防げるとは思わない。

 

それは銃弾を雑誌で防げたから、ミサイルも雑誌で防げるというくらいの暴論だ。僕が引っかかったのはそこじゃない。

 

 

 

……ミノフスキー粒子を制御できるのなら、サイコフィールドで加速制御させることもできるんじゃないか?

例えば、NAエンジンでは足りなかった出力を、過給機で空気を押し込んで、2倍3倍とチューニングしていくように……

 

 

 

「バナージ、行けるかも」

「え?一体どうするの?」

「コロニーレーザーを、ノアの方舟をぶち壊すのさ」

 

防げないのなら、当たらないようにすればいい。そもそも、ビームは防ぐものじゃなく避けるものでしょ?

 

「オットー艦長!グリプス2の正確な座標ってわかったりします?」

『あ、ああ。ポイントは分かっている。発射ポイントも発射予定時間も共に』

「あと、ネェルアーガマのハイパーメガ粒子砲は使えますか?」

『勿論だ。だが、それが何を……』

『何か、妙案でもあるのか?ハサウェイ君』

「妙案かどうかは分かりませんけど、思い付きは一つ」

 

ハイパーメガ粒子砲でコロニーレーザーを狙撃して、メガラニカから照準をずらさせる、なんてどうでしょう?

 

防げないのなら、当たらないようにすればいい。

 

『ハイパーメガ粒子砲では、グリプス2に届くほどの出力は得られないと思うが』

「サイコフィールドを使います。サイコフィールドでハイパーメガ粒子砲を加速させ、出力を底上げします」

『勝算は?』

「思い付きです。数的根拠はありません」

『ではプランは?』

「ユニコーンとバンシィを使って、ハイパーメガ粒子砲発射口の左右に加速装置、あとバレルをサイコフィールドで形成します。もし使えるならネオジオングの残骸も使いましょう。加速装置はバナージとマリーダさん、バレル形成をロニさん、僕は制御モジュールを構築して、フロンタルさんにトリガーを」

『彼我の距離は70万キロメートルだ。どうやって当てる?』

「フロンタルさんなら座標さえあれば当てられるでしょう?」

『準備にはどれほどかかる?』

「ネオジオングのユニットが生きていれば、ネオジオングのジャック機能でネェルアーガマと接続できます。それが出来れば10分。無かったとしても15分で行けます」

『コロニーレーザーの完全破壊が可能だと?』

「そこまでは無理です。でも、照射角を1度でも2度でもずらすことが出来れば、それだけで射撃ははずれます。なんせ70万キロメートルもありますから」

 

フロンタルさんが逡巡し、答える。

 

『よし、そのプランで行こう。バナージ君はハサウェイ君を乗せてネェルアーガマへ、先んじてシステムの構築を。親衛隊員はネオジオングの残骸の回収を。マリーダ中尉はバンシィに、ロニ少尉はクシャトリヤに搭乗しネェルアーガマへ。その他の者はサイコフレームを可能な限り集めネェルアーガマへ移動』

 

賭けに出る、と言うのが状況的には正しい。確率で語れば酷い結果になるだろう。しかし、他に代案も無い。

 

『オットー艦長、ハイパーメガ粒子砲に関連するプログラムを用意してくれ。ハサウェイ君が詳細を詰める』

『承知した』

『諸君、最後の仕事だ。ロンドベルがコロニーレーザーを止めてくれるならば良し。しかしダメならばこの作戦が我々の命運を分ける。よろしく頼む』

 

さて、頑張ろう。

宇宙の彼方への、超長距離射撃だ。

 

 

 

 

 

 

その光景は、あまりにも異質なものだった。少なくともオットーの目にはそう映った。

 

ロンドベルの艦に、民間人と、その民間人が乗ったガンダム、さらにはジオンのモビルスーツが集まって、共に作業を進め、まるで一つのチームのように動く、その光景。

 

「エネルギーラインを構築します。工程確認お願いします!」

『粒子加速のシステムはこちらで作るから、ハサウェイは制御システムをお願い』

『照準系とバレル形成はこちらで巻き取ろう。ネェルアーガマの火器管制システムにシナンジュを割り込ませる。システムコントロールは?』

「オープンになってます。入れますか?」

『……問題ない。このまま進める』

『ネオジオングは2機ともまだ使える。ジェネレーターはおしゃかだが、ユニコーン系ならば外部からコントロールできるはずだ』

「ありがとうございます!そのまま持ってきてください」

『だが背部ユニットはどちらもそれなりに損耗している。あてにしすぎるなよ』

「了解です。オットー艦長、メインジェネレーターのシステムに介入します」

「あ、ああ、了解した。システムロックを解放させる」

 

彼は、ハサウェイ・ノアは、なんてことないようにネェルアーガマへ乗り込んできた。

 

お久しぶりです、ご心配をおかけしました、なんて言ってブリッジへ入り、ネェルアーガマのシステムにアクセスし、早々にハイパーメガ粒子砲の回路設計を再構築していった。

 

砲術長のウタルデ・ハッシャーも、システムそのものまで把握しているわけでは無い。ましてやハイパーメガ粒子砲の回路構成など全くの認識外だろう。

 

機関長のシドー・オモキ、機付長のジョナ・ギブニーでさえ、システムの内部構成といった詳細を把握しているとは思えない。

 

しかし、ハサウェイはそれらを当然のように書き換えていく。

 

ブリッジのメインモニターに、無数のシステムプログラムが開かれ、閉じて、その内容が書き換えられていく。ブリッジメンバーは、その様子を何処か呆然と見つめていた。

 

「遅れました。進捗は如何ですか?」

「キュアロンさん!今外部ユニットとの接続システムを構築してるところです。ネオジオングは?」

「今マリーダ中尉がバンシィからコントロールを試してるところです。ところで、加速システムとのクリアランスと効果範囲の設定は?」

「まだです、お願いできます?」

「了解です。それと、ギラズールに後付けしたサイコフレームをすべて引っぺがしてきました。今ロニ少尉がクシャトリヤに装備させています」

「ありがとうございます。そうだ、カークスさんのギラズール大丈夫でした?ビームマグナム撃った後の反動とか」

「駄目ですね、右腕部はアッセンブリー交換だと思います。頑張ってください」

「ああ……」

「加速システムをユニコーンとバンシィに共有します。どうぞ」

『ユニコーン了解です。サイコフィールドで加速装置を構築します』

 

当然のように乗艦するネオジオンの軍人に、気安く接するハサウェイ、そしてそれを気にも留めないバナージ。

この修羅場にあってもなお、そこにはまるで平和の象徴の様にさえ感じられた。

軍属も、ましてや敵対関係も関係なく、この戦場にあってなお、極めて自然にやり取りをするそれが。百戦錬磨の古兵の余裕とも、学生のサークル活動のような気楽さとも、どちらとも感じられた。

 

彼は、彼らは、この戦闘状況に何ら関係のない民間人だったはずだ。だが、今やこうしてネオジオンの軍人と協力し、状況の解決のために力を尽くしてくれている。

かつて、ネェルアーガマにそうしたように。

 

『ハサウェイ、ネオジオングだが外部コントロール可能だ。この、サイコシェード?背部ユニットの展開を始める。サイコフィールド展開のためのイメージボードをくれ』

『それならこっちで用意してあります。マリーダさん、確認できますか?』

『少し待て……確認した。サイコフィールドを展開する。ネオジオングから離れてくれ』

 

彼らに報いなければならない。オットーはそう思った。

 

思うところはいくらでもある。仲間を殺したネオジオンにも、民間人を戦闘に巻き込まざるを得なくなったこの状況にも、その前提を作り出したビスト財団、アナハイム、そして地球連邦。

だが、その先に答えはない。ネオジオンを批判すれば連邦への非難が始まって、その大元をたどればジオン公国へ、さらに戻ればやはり連邦へ、今そこを自問自答している余裕などないのだ。

 

コロニーレーザーの発射予定時刻まで、あと15分。

ロンドベルの選抜部隊は、既にグリプス2へ到着しているはずだ。そして、その観測基地についてもブライト司令が状況を押さえる手はずになっている。

 

だが、その結果は未だ届かず。順調に状況を押さえることが出来ているのか、そうでないのかさえ。

 

であれば、力を尽くさねばならない。彼らのように。

 

「……システムの処理に関しては問題無いのかね?モビルスーツのコンピューター、それにネオジオンの艦のコンピューターもネェルアーガマへ並列的に接続させれば、処理能力をさらに確保できると思うが」

「あ、助かります。手配をお願いしても良いですか?」

「勿論だ。すぐに準備させる」

『ハサウェイ、ネオジオングのジャックシステムが生きている。ネオジオングを中継地にしてレウルーラとネェルアーガマを接続できる。コントロールをそちらに送るが構わないか?』

「問題ない、手配してくれ」

『ハサウェイ君、バレル形成のプログラムが完成した。照準システムも最終チェックだけだ。システムの統合はこちらで進めて良いか?』

「はい、巻き取っちゃってください。こっちはエネルギー管理関係でちょっと手こずってます」

『時間は大丈夫か?余裕はそれほど多くないぞ』

「ちょっときついかもです。バナージ、加速系はどう?」

『大丈夫、もうちょっと……今終わった』

「じゃあこっち手伝って。あと回路形成だけだから」

「大佐、システム統合ですが、照準系を先にお願いします。残りはこちらで進めます」

『了解した』

 

 

 

時間が迫る。刻一刻と。そして、未だ以てグリプス2停止の連絡は来ていない。

 

システムは組み上がるだろう。それは間違いなく。0000のコロニーレーザー発射より早く、エネルギーチャージの時間を加味しても、恐らく問題ない。

 

ただ、何より最大の問題は一切の実証実験なしで、加速投射砲による超長距離狙撃を行うという、この作戦行動そもそもの部分にある。

 

理論構築、システム構築、そしてシミュレーション検証をハサウェイ、バナージ、フロンタルの3人で行ったが、正直なところ何もかもがギリギリなのだ。

 

グリプス2に届く確実なエネルギー量の確保、グリプス2の一部を確実に破壊しうる確実な衝撃力の想定。これらは何とかクリアした。

 

しかし、レウルーラのコンピューターで精密に弾道計算をしたとしても、命中率は、およそ78%。

 

この数値は想定できるあらゆる限りの不利条件と不確定要素を組み込み、それら要素をクリアするための必要要素を組み込み補正した上での数値である。

 

 

 

多分当たるはずだ。そして、当たればグリプス2に衝撃を与え弾道をずらせるはずだ。

 

しかし、何か一つボタンを掛け違えば、何もかもがおしゃかになる。そう言う危険をはらんでいる作戦だった。

 

 

 

そして、皆その事実を理解している。

だからこそ、ミスなく、確実に、しかし最速で超長距離狙撃砲を構築する中で、誰もがロンドベル選抜隊からの連絡を待っていた。

 

コロニーに設定されているレーザー通信ならば、ネェルアーガマに直通で通信を繋げることができる。ネェルアーガマでなくとも、インダストリアル7やメガラニカへの連絡は可能なはずだ。

 

しかし、未だその報は来ず。

 

 

 

そして光陰矢の如し、タイムリミットは刻一刻と迫っていた。

 

 

 

「システム完成しました、行けます!」

『こちらも確認した。ネェルアーガマ、ハイパーメガ粒子砲の準備を』

「了解した。ハイパーメガ粒子砲発射準備!」

 

ハイパーメガ粒子砲発射準備、の復唱と共に、最後の作戦が始まる。

 

『照準始め……誤差修正、仰角+1、旋回+0.5。ガイドレーザー射出』

『サイコフィールド展開。加速装置、起動』

 

ネェルアーガマのハイパーメガ粒子砲、そのシステムが展開され、その左右に、ネェルアーガマの全高ほどもある加速装置が、光の輪となって構築される。

 

「サイコフィールド出力確認。加速装置起動確認。ハイパーメガ粒子砲にクロッシング」

『照準調整、仰角+0.4、旋回-0.2』

「エネルギー充填率、44、48、53……」

 

ロンドベルからの通信は、未だ来ず。

 

グリプス2との距離を鑑みても、またコロニーレーザーの出力を鑑みても、発射予定時刻の3分前にはこちらの射撃を開始しなければならない。

それは、コロニーレーザーの出力からして、発射直前、本当にぎりぎりのタイミングでこちらの狙撃を命中させた場合、それまで充填されたコロニーレーザーの莫大なエネルギーがどこへ暴発するのか分からないから。

そして、もしもそれに巻き込まれれば、モビルスーツどころか戦艦とてひとたまりもない。何の抵抗もなく蒸発するだろう。

 

早く来い、早く、早く、早く。

 

時刻はグリニッジ標準時で2353を指していた。

 

もう、余裕はない。

 

『サイコフィールド展開。バレル形成』

「バレル形成確認。出力問題ありません」

「64、67、71、75……」

 

ハイパーメガ粒子砲のエネルギー充填は滞りなく進む。

サイコフィールドに問題は無いか、加速装置に問題は無いか、照準に狂いは無いか、何か見落としは無いか。

全てはこの狙撃を成功させるために、誰もが仕事をこなしていた。

 

しかし、何よりもこの狙撃が無用になる、その一報を待っていた。

 

「89、94、97、101、オーバーロード」

 

時刻は、グリニッジ標準時で、2355。

 

刻限が来ていた。

 

誰かの息をのむ音が、聞こえた。

 

来い、来い、来い!

 

その一報さえ来れば、すべてが終わるのだ。

 

 

 

オットーは、その指示を出す。

 

「……ハイパーメガ粒子砲発射準備完了。トリガーをシナンジュへ」

 

ハイパーメガ粒子砲の高エネルギーを、長時間ネェルアーガマの砲身で維持することはできない。撃つならば、今しかない。

 

しかし、オットーの言葉に迷いが見えたように、誰もがその瞬間を待っていた。

 

しかし、刻限が先に来た

 

グリニッジ標準時2356。

 

もう、待てるだけの余裕はない。

 

『トリガー移譲確認。ターゲットスコープ』

 

腹を決めろ。フロンタルはそのように断じた。

 

加速装置確認、バレル強度確認、照準確認。システムオールグリーン。

 

エメラルドのような淡い輝きを放つサイコフィールドからなる加速装置とバレルがその光を強める。

 

『ハイパーメガ粒子砲』

 

発射

 

 

 

そう声に出さんとする瞬間に、広域のレーザー通信を受信した。

 

 

 

『こちらグリプス2、エコーズ所属ダグザ・マックール中佐である。発射阻止成功、繰り返す、発射阻止成功』

 

ダグザ中佐?と疑問を呈する間もなく、オットーが反応した。

 

「こちらロンドベル所属ネェルアーガマ、オットー・ミタス大佐だ。コロニーレーザーは阻止されたのだな?」

『はい、ロンドベル、エコーズの合同部隊によって、状況は鎮圧されました。』

 

 

 

ふぅ、とオットーは思わず息をついた。

 

「了解した。貴官の尽力に感謝する」

『はい。いいえ、オットー艦長。我々はあなた方に、彼らに大きな借りがある。それを返しただけです』

 

ダグザはそれだけ告げて、通信を切った。

 

『エネルギー拡散開始。バレル、加速装置共にサイコフィールドの展開を中止』

『了解、サイコミュシステムを終了させます』

「システム終了させます。追加回路閉鎖、ネオジオングのシステム切ります」

『ネオジオングへの接続解除します。……はぁーー……』

 

バナージのついたため息が伝染するように、ブリッジクルー、そしてフロンタルやマリーダといった艦外活動組も思わず息を吐いた。

 

 

 

「ああ……終わったんだ……」

 

ブリッジから覗くサイコフィールドは、綿毛が風に消えていくように、ゆっくりと散っていくように消えていった。

 

闇夜の如き黒い宇宙に、エメラルドグリーンのサイコフィールドの残滓が溶けていく。

 

夜の帳が下りるように、戦争の幕が引かれてゆく。

 

 

 

1ヶ月と少しの、短くも長い戦争は、今ここに終わりを告げた。

 




読了ありがとうございました。

いや、やっと終わった。長かったよユニコーン編。そしてたくさんの反省点があったユニコーン編でした。

たくさんいるキャラの掘り下げがほとんどできなかった。
ハサウェイとバナージの2視点で物語を進めることは決めたんですが、そのどちらからも映ることが無い、例えばオードリーとか、アルベルトとか、マーサとか、そこの深掘りが物語途中で全然できませんでした。

当初コロニーレーザーをヴェスバー式ハイメガ粒子砲で狙撃して、その構築にオードリーが参加するとか、必死に戦うバナージやハサウェイを見てアルベルトが改心するとか、マーサの暗黒視点で悪だくみのパート作るとか考えたんですが、どれも上手く書ける気がせずにさっぱり切ることになりました。

そこら辺を今後ちょこっとずつでも出せていけたらとは思うのですが、いや本当に難しい。
そんな中ユニコーン編で最も書きやすくて楽しかったのはアンジェロでした。
いつの間にやら口が悪いだけのイケメンツンデレお兄さんになってて、「あれ、なんで?」と書きながら困惑しましたが、まあ、良いか!


最後に定型的になってしましたが、いつも誤字報告ありがとうございます。

そして感想と高評価、本当に嬉しいです。ありがとうございます。
書きながら何度も「これ楽しいか?ユニコーン編書いたの間違いだったのでは?」と思ったのですが、たくさんいただけた感想が意欲を湧き立たせてくれました。

今後とも感想や高評価頂けると嬉しいです。

次回以降は設定も何もなくストーリーが展開できる、はず!頑張る!
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