ハサウェイがアムロやシャアに影響される前に機械オタクになった世界線のお話   作:陸奥九十九

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まずは感謝を、前回のお話でたくさんの感想頂けて大変うれしかったです。

書けども書けども「いいのかなあ?これって楽しいかあ?」と苦悩しているので、「楽しかったよ!」「良い話だった!」と感想頂けるのが本当に嬉しいです。

閃光のハサウェイ編までもうちょっとかかりますが、楽しんでいただければ嬉しいです。


100年の時を超えて

宇宙世紀0100、人類が宇宙に住むようになって100年、世界は一つの節目を迎えようとしていた。

 

それは、ジオンの自治権の返還に関してである。

かねてより周知されていた、宇宙世紀0100での自治権の返還。連邦はこれを待ち望んでいた。

 

表向きはこれまでのジオン関係者の様々な活動からくる治安の悪化、その対処の為。

実情を鑑みれば、ネオジオンが生み出した莫大な財産の没収、完全な連邦支配下に置くことでの地球連邦の権力と正当性の強化、そして何より、ニュータイプ論の否定。

 

ジオンと言う旗頭がいなくなれば、スペースノイドは烏合の衆に成り下がる。一年戦争、デラーズ紛争、ネオジオン抗争、アクシズ事件、いずれもジオンが関わった惨事だ。ジオンが旗を振り神輿となったからこそ、スペースノイドはこれほどまでの行動力を示した。

 

連邦はそのように判断した。

 

そして、そんなジオンの名前を連邦が抹消したとあれば、連邦の影響力と言うものは再び強化される。その後数年、確かに世界は荒れるかもしれないが、そんなものは時間をかけ武力でもって弾圧すれば問題ない。何故なら正当性は連邦にあるからだ。

 

自治権の返還は事実上ジオンの解散命令となる。それ以降にジオンを名乗るのであれば、それは連邦が正式に、正当な手順で承認を得た意思決定への反逆に他ならない。

となれば、いくらでも理由が付けられる。

 

連邦は待った。いずれ来るその時を。その時さえ来れば、再び連邦の栄光と言うものはもたらされるのだと、そう確信していたから。

 

 

 

しかし、その未来は、民衆によって拒否されようとしていた。

 

声を上げたのは多くのスペースノイドだった。

サイド3をはじめ、現在多くのサイドの治安維持にジオンが関わっている。彼らを解散させ、その後空いた穴をどのように埋めるのだ?ロンドベルをさらに強化させるのか?それとも連邦宇宙軍を拡張再編するのか?そうするにしても、その資金をどこから出すつもりだ?

 

何よりジオンに自治権を返還させ、その後のサイドの運営計画がこの段階になっても発表されないのは何故だ?ジオン共和国とネオジオンが行っていた政策を踏襲するのか、それとも全く新しい統治システムでもって運営するのか?もし運営システムを刷新するのであれば、何故サイドごとに住民へのレクチャーを行わない?

 

何より税収の使用用途、その多くが秘匿されているのは何故だ?ジオンと言う、いわば連邦最大の敵対組織が消滅するというのならば、これまで軍事機密を理由に開示を避け続けた税金の使い道を開示するのだろうな?

 

多くの市民の声によって、連邦はジオンの自治権返還が世論に真っ向から逆行するものだと思い知らされた。

 

 

 

宇宙世紀0094以降、宇宙で起こった経済成長は目覚ましいものであった。

プチモビとその市場からなる急激な経済成長の発生、その3年後にはミノフスキーネット技術によってコロニー外作業の安全性がさらに担保され、殊更危険な宙域での作業には、基本設計が軍用機であるジムをベースにした作業用モビルスーツが投入されるようになった。

なおかつその容易な操作性によって作業効率は一気に向上し、経済の発展によってコロニー外作業員への賃金も数年で著しく上昇した。

 

それまでの、過酷かつ危険で薄給な宇宙での労働環境、というイメージは刷新され、宇宙移民の促進という強制政策からでは無く、自由意志での宇宙への労働人口の流入が起こり始めた。

 

地球の労働環境も改善されたが、それでも宇宙の方が稼げる。その上住む場所だってネオジオンが保証してくれる。そのバックにはアナハイムやヤシマ、ブッホのような大企業がいる。

 

地球に残っていた連邦政府市民と認定されない不法居住者たちは、地球で短期間の経験を積んで宇宙へ出る。そのようなキャリアアップが自然と確立されていった。

勿論地球に居残るものも多かったが、それでも宇宙移民への危険性や忌避感というものは確実に薄くなった。

もし危険があるとすれば、それは連邦による強制移住だ、もしも宇宙へ上がるのならばヤシマ重工主導の就職支援プログラムを必ず使え。そのような与太話まで流布されるようになった。

 

 

 

経済が回ることで、それまで地球でまともな教育を受けられなかったアースノイド、宇宙でその日暮らしをしていたスペースノイドたちは、仕事の一環で、学校的な教育を受け、世界の流れと言うものを勉強できるようになった。

 

例えば、なぜこのようなルールがある?何故こう言った方法で物が運ばれる?といったような基本的な知識から、コロニー外壁修繕の際にトラブルが発生した、どのように対処する?と言った即断即決が必要な状況まで、順を追って確実に、危険なく対処できるように勉強する必要性が出てきたためだ。また支援企業が大企業であるがゆえに、基礎的な研修に莫大なコストを掛けられる余裕があった。

 

その上で読み書きそろばんを覚え、多くの知識を得て、それまで連邦市民扱いされなかった者たちが、労働環境を確立された上で正規の市民権を獲得できた。

 

 

 

その結果、多くの連邦への不満の声が、世間に流れるようになった。

 

プチモビ開発以降の経済成長で齎された経済効果は、コロニーを10基以上新規建造してもまだ有り余るものだった。

 

そしてそれらを建造するに際して、直接的、間接的に関わった人口は、10億人を優に超える。

 

不満はあったがそれを世に発することが出来なかった。そう言った人々の声は、経済の再発展と共に次第に大きくなり、そして留まることなく大きくなり続けた。

 

 

 

そのような状況でも、連邦はジオンの自治権返還を推し進めた。その後の展望を一切話すことなく、税収増の見込みだけを先行的にメディアを通じて流して。税収が上がる、皆さまの生活がより良くなる。ジオンが居なくなって、治安も良くなる。ほら、良いことづくめでしょう?と。

 

市民の怒りは爆発した。もはやその程度のおべっかで騙されてくれるほど、連邦市民は低俗でも愚鈍でも無かった。

 

抗議の電話、メール、署名活動、デモ行進。多くの手段で連邦の意思決定への抗議が続いた。

 

 

 

そんな中、一人の連邦議員がこう発言した。

 

「今の連邦は、穴の開いた傘である。その空いた無数の穴から降る雨に、苦しみ喘ぐ市民が多くいる。その市民を救っているのは、ジオン共和国やネオジオンといった、宇宙にて市民を助ける宇宙の人々だ。彼らとて連邦市民であり、また彼らの尽力を無為にしてはならない」

 

「今こそ、宇宙世紀100年の節目を迎える今こそ、連邦と言う穴の開いた大きな傘を刷新すべきである。連邦の大きな傘の穴をふさぎ、小振りになっても頑丈なものに改善し、それでも守り切れない場所に、ジオンと言う傘を置けるようにする。ジオンの存在を連邦が認め、共に市民を守っていく。そう言った決断が必要なのだ」

 

「何より優先されるべきは連邦市民の命であり、生活であり、尊厳である。それらを守るために、過去の痛みを呑み込んで、連邦とジオン、共に手を取ることが必要なのではないか?」

 

一人の若く勇敢な新人議員の言葉は、瞬く間に世に広がり、そして広く民衆へと受け入れられた。

 

彼の名はリディ・マーセナス議員。後に語り草となる連邦ジオン協調論演説である。

 

 

 

無論、現行の姿勢を堅持すべき、と言う議員も数多くいた。一年戦争を忘れるな、コロニー落としをしたジオンなど信用できるかと。

 

連邦議会は紛糾した。連邦議会は形式上民主主義の体を取っているが、その実議員になれる者は現行議員の縁者か親類、もしくは年齢から政界を引退した有力者の部下や関係を持った者たちばかりで、殆ど談合が取られていた。

 

にもかかわらず議会は紛糾した。

 

反対派の多くは軍出身の議員。彼らの多くは一年戦争以降でジオンへの憎悪を燃やし続けた者たちでもある。ジオンはここで潰す。その覚悟の表れとも言えた。

 

翻って賛成派は、ジオンとネオジオン、さらに言えばそれらを支援する大企業から莫大な利益を享受できた者たちだ。経済界出身、ともいえる議員たち。

彼らはよく理解している。自分たちのシノギにも、ジオンやネオジオンは関わっている。彼らを形式的にでも、正当な手段でもって連邦と言う枠組みから外した瞬間、自分たちは干上がってしまう。

さらに言えば、彼らによって自分たちがシノギから外されてしまう。そうなれば議員報酬などと言う小銭でこれからの余生を過ごすことになる。それは可能か?いや不可能だ。故に彼らは世論を受け入れた。

 

彼らは無能な俗物であったが、自分たちの首を自分たちで締める程愚かでは無かった。

 

ジオンには確かに多くの瑕疵がある。しかし、今の社会において彼らの存在は不可欠でもある。故に、自治権返還は延期させ、改めてその存在性を確認するのでもよいのではないか?と。そのような提言を行った。

 

10年.あと10年自治権返還を伸ばせれば、その判断に自分は関与せずとも良い。もしその後に自治権が返還されようとも、自分は知らぬ存ぜぬを通せる。今のシノギを続けられる。そのような打算も無数に含みながら、彼らはジオンの存在を肯定しようとした。

 

 

 

議会は割れた。

リディ・マーセナスや若手議員を中心とした、ジオンの積極肯定派。そしてそれに席を並べた穏健派。

軍出身の議員が集まった、ジオンの否定派。もっと言えばタカ派的な排斥派閥。

最後に、今全てを決めるには判断材料が足りないと結論を先延ばしにした、ジオンの消極肯定派。

 

 

 

 

結果として、ジオンの自治権返還は先延ばしにされた。

 

ジオンによって発生した戦争は数多く、その傷跡も無数にある。しかし、全宇宙を統治する地球連邦は、現在のジオンの献身もまた評価する必要がある。

 

ジオン共和国、ネオジオンは地球連邦に忠誠を誓い、宇宙での治安維持行動にてその力を発揮させ、更なる地球連邦の発展に寄与することを条件に、自治権返還を宇宙世紀0105まで延期とする。

 

宇宙世紀0099、連邦は結論の先送りでもって連邦体制批判を乗り切った。

とりあえず5年は様子を見る。それが責任逃れからくる決断であったことは明らかだった。

 

3大企業はこの結論を歓迎し、ジオンも正式に反応を示した。

 

「我々の過去の行いは非難され然るものでもある。しかし、それらを呑み込み、連邦政府議会は我々に機会を与えてくれた。感謝の意を表し、今後のジオンと連邦の協調について、誠実さをもって対応する所存である」

 

ネオジオン総帥たるシャア・アズナブルは会見でそのように回答し、多くのスペースノイドが彼の回答を賛辞した。

 

これらの一連の流れから、宇宙世紀100年の節目に、地球と宇宙は互いに歩み寄ることが出来た。メディアはそのように好意的な報道を行った。

 

 

 

この時打撃を受けたのは、軍出身の連邦議会の議員たちだけだった。

 

 

 

 

 

 

「ミノフスキーフライトシステム、ですか?」

「ああ。アナハイムから技術的なアドバイスを求められたのだが、どこから突っ込めばいいかと中々苦心してね」

 

ガバナンさんから貰ったロトで遊んでいると、そんな風にフロンタルさんに呼び止められた。

 

「どうにもミノフスキークラフトを小型化する構想らしいのだが、どうにもな……」

「へえー、新しい輸送貨物船でも作るんですか?それとも高速の大型航空機?」

「いや、モビルスーツに搭載するらしい」

「……はい?」

 

モビルスーツ?小型化したミノフスキークラフトを?

 

「えっと、小型化するに際して、何かブレイクスルーでも見つかったんですか?」

「いや、どうにもそう言うことではないらしい。ただ、斥力の制御で推進剤なしの移動までは実用化させるようだな」

「ああ……え?じゃあとんでもなく大型のモビルスーツを作るんですか?モビルアーマーじゃなく?」

「かなり大型のモビルスーツだが、その分コストを掛けて軽量化するようだ。そして軽量化したモビルスーツサイズに必要十分な出力のミノフスキークラフトを作ると」

「じゃあ、モビルスーツを浮遊移動させられるだけの小型低出力のミノフスキークラフトを搭載するってことですよね?」

「恐らくな」

「宇宙だとそれってただのデッドウェイトじゃないですか?」

「それはその通りだな」

 

え?よっぽど小型化に成功したのか?

 

「仕様書ってあります?」

「ああ、これだな」

「どうも。えーっと、ほうほうほう……」

 

ああ、ミノフスキーフライトっていうのをアタッチメントユニットに落とし込んで、それをモビルスーツで着こむ形か。まあ融合炉みたいに内蔵するのでなければサイズはある程度自由が利くか。

 

……あれ?全然関係ないけど、ジェネレーターも外付け式にすればモビルスーツってもっと小型化できるんじゃないか?

 

いやいや、今は関係ないな。

で、このユニットのサイズが……

 

「は?全長30メートル超?」

 

地球で?重力環境下で?30メートルの、高機動の格闘用モビルスーツ?を、サイコミュ誘導のミサイルも載せて?最高速度は、マッハ2?

 

「……バカが考えた最強のモビルスーツですか?」

「言ってやるな。アナハイムは時折こういうことをする」

「ガバナンさんこんなのに予算つけたんですか?」

「いや、モビルスーツ開発部門は独自採算がついているらしい。恐らく独断だろう。それを外部に流出させるのもどうかと思うが……」

「汎用性なんて欠片も無いですし、コストも嵩みますよ?戦艦くらい建造できるんじゃないですか?というか何に使うんですコレ?」

 

思わず顔をしかめてしまう程度には酷いコンセプトだと感じてしまう。

 

「そもそも乗れる人いるんですか?バナージくらい耐G適性あって、デカブツの取り回しも出来て、その上でニュータイプ適性もあるエースパイロットでしょう?アムロさんくらいじゃないですか?」

「新型のリニアシートで耐G性能と乗り心地は何とかするらしい。それに今回のコンセプトは新世代のモビルスーツらしい。パイロットや使用環境は、二の次かな?サイコミュを搭載し大型化したモビルスーツの、その集大成、そんなところだろう」

 

うーん、そう言われれば確かに納得できる気もするけど、でもそれで汎用性落としたら人型である意味が無くなるし、そもそも宇宙空間だから人型が有効だったわけで、地上をメインで運用するスペシャルなモビルスーツって、ちょっと本末が転倒してないか?だったら大型の超音速機にサイコミュ誘導のミサイル積んで敵がいる場所を爆撃した方が早くないか?

 

「まあ、実際居れば強いですかね?重力下でも空を自由に飛び回れる超高性能の大型モビルスーツ。……うん、まあ、このスペックを確かに発揮できれば、確かに脅威か……」

「倒すのなら砲撃か飽和ミサイルか、この機体を無視して拠点を爆撃するか、そんなあたりか」

「まあ、地上で使う空中戦も可能なモビルアーマーって感じですね。……うん、モビルスーツで対処できる仕様では無いか」

 

局地戦闘で機先を制する、拠点へ乗り込んで威力偵察、単純明快に敵のエース機を墜とす。

うん、強くはあるか。

 

「でもコストパフォーマンス最悪じゃないですか?ジェガン20機は作れますよ?」

「それにゲタも履かせられるな。2個中隊、いや、展開力込みで3個中隊規模だな」

 

問題は結局コストと汎用性だろう。ワンオフすぎて扱いづらいし、何よりこの機体のお世話ってどうするんだ?専用の修復艦でも用意して同時展開でもさせるのか?

 

もしもこの機体が破損して戦場から戻ってきても、場合によっては直せないから放置になりかねないぞ?

 

「フロンタルさんって地上戦の経験ってあります?」

「殆ど無いな。シミュレーターなら指揮も戦闘もあるが」

「じゃあ地上で作戦展開するにあたって、要ります?この機体」

「要らない」

「即答しないでくださいよ……」

 

まあ、そういうことなんだろう。ごめんなさいガバナンさん、やっぱりアナハイムってバカなんじゃないですか?

 

「おつかれー……って、何かあったんですか?」

「バナージ君」

「あ、バナージ、お疲れ。結婚式の打ち合わせ終わったの?」

「とりあえずね。で、二人そろって格納庫で何してるんです?」

「アナハイムの新型モビルスーツの、企画案かな?それの意見を求められたんだが、何ともな」

「見て見てバナージ、これどう思う?」

「えーっと……」

 

資料を見ながら、バナージが徐々に眉をしかめていく。

 

「まあ、嫌いじゃないよ。全部載せモビルスーツ。うん、重力下の地上戦に限定すれば最強じゃない?」

「欲しい?」

「要らない」

 

即答するバナージに思わずフロンタルさんと一緒に笑ってしまった。

 

「いや、だってそうでしょ?これ全部サブフライトシステムで間にあっちゃうじゃん。ジェガン+ベースジャバーとか、もし空戦をメインで考えるならリゼルで良いし」

 

資料を読み進めるとさらにバナージの語気は荒くなる。

 

「しかもこれ専用設計でしょ?ジェガンと互換性あるの?絶対ないでしょ。どうするの?もしも大破して戻ってきたりでもしたら。格納庫の片隅に運ぶだけで一苦労でしょ?宇宙で直したクシャトリヤでさえあんなに手間だったんだから」

「どうする?例えばネェルアーガマで地上戦してる時、大破したこれが帰ってきたら」

「置く場所無いから捨てる」

 

さすがバナージ潔すぎる。耐え切れずに思わず吹き出してしまった。

 

「いや、だってユニコーンでさえあんなだったんだよ?ハサウェイも想像してみてよ。二回り大きいユニコーンが大破して、いつ来るか分からない襲撃を警戒しながら、他にジェガンもリゼルも準備できる中で、それでも修理する?」

「しなーい」

「でしょ?」

 

うん、誰だってそうする。僕だってそうする。

専用設計のワンオフパーツもりもり、たまに乗って基本飾るなら最高だけど、実用品でそれは現場を殺しにかかってるとしか思えない。

 

「まあ話を戻すとして、君たちならこの機体をどう仕上げる?基本設計は変えられないとしてだ」

「えぇーー……まあ互換性を可能な限り持たせますかね?あとは操作性かな?武装がそれなりに多いし、それにパイロットは専属が付くでしょうけど、機種転換が短くて済むようにしたいですね。バナージは?」

「まあ、ここまでやるなら振り切った性能を発揮できるようにする、かな?せめてコストに見合った性能を発揮できるように、劣化版ネオジオングくらいの性能は欲しい気がします」

「今のままでは、性能面で不満が?」

「不満は無いですけど、コストに対して性能が見合わない気がします。最低限完全武装のユニコーンくらいの性能くらいは欲しいと思って」

 

あー、確かに。もしも重力下でユニコーンやフェネクスほどの性能が発揮できるならこのコストでも納得はできるか。自分で整備はしたくないけど。

 

「じゃあ、ある程度の拡張性を持たせて、あとはOSで操作性を向上させて、武装は割と古典的だから扱いは、難しくは無いか。そんなところですかね?」

「あとは、パイロットの能力次第だな。足きりラインは……エースクラスかな?」

「まあ、この性能ならそんなあたりですかね?でも、ここまで金掛けるんだからパイロットは準アムロさんレベルじゃないですか?」

「そのレベルのパイロットはロンドベルでもそうそういないよ。まあ、私レベルがせいぜいかな?」

「ゴリゴリの魔境じゃないですか……」

 

というかフロンタルさんだってアムロさんと大して実力変わらないでしょ……いやアムロさんは戦闘になったらどんな状況でも殺しに来る殺戮マシーンだから別枠すぎるか。流石白い悪魔。エースオブエースって虐殺王って意味だっけ?

それにしても地球連邦こっわ。そこらへんにフロンタルさんレベルがゴロゴロいるの?一人で一個大隊なら壊滅できるパイロットが?

 

「地球ってこわーい……」

「地元でしょ?慣れっこじゃない?」

「地球に住んでる人が地球の全部知ってるとか思うなよ?大抵みんな地元しか知らないんだから」

 

バナージだって月の事情とか聞かれても困るでしょ?

 

「あとはこのミノフスキーフライトシステムがアナハイムで実用化されるか否かの点だな。状況次第によっては、ビスト技研にも声がかかるやもしれん。その時はよろしく頼む」

「了解です。まあ、ミノフスキードライブの研究も進めてますし、小型化のノウハウも出来れば万々歳ですね」

「今更だが、ミノフスキードライブの小型化はどのサイズまで落とし込めたのだろう?」

「サラミス級なら追加のジェネレーター装備してギリですね。でも出力的にはイマイチです。ゆくゆくはサラミス級のサイズ感でジュピトリスに搭載してるレベルの出力を出したいですね。それが出来れば木星まで1週間です」

「それでも1週間か。やはり木星は遠いな」

「ですね」

「聞くまでも無いことかもしれないが、モビルスーツへの搭載は?」

「まあ、何かしらのブレイクスルーが無いと無理じゃないですかね?モビルスーツの10倍以上あるバックパックを背負えるならありですけど」

「なるほど、理解した」

 

思わず肩をすくめる。

 

「アナハイムには伝えておく。済まないな、時間を取らせしまった」

「いえいえ、気晴らしになりましたし」

「それとバナージ君、明日の打ち合わせには総帥がいらっしゃる。特段何があるわけでは無いが、覚えておいてくれ」

「分かりました」

 

足早に去っていくフロンタルさんを見送る。

フロンタルさんも大変だ。あっちこっちで引っ張りだこだな。

 

「と言うかバナージは良いの?こんなところで油売ってて」

「油売ってない。今日やることは全部やったから。それに、俺がいると出来ない話もあるしね」

「あー、まあジオン関連は難しいよね」

「勿論共有できることはして貰ってるけど、多分、俺が前に出ない方が良い部分が多いしね。オードリーはジオンの姫様で、だから従うって人も沢山いるし。俺が前に出ちゃうと、ジオンがないがしろにされてるって思う人も出てくるから」

 

バナージが俯きながらも答える。

ジオンと言う奴は、まあ難しいのだ。僕でさえふんわりとそう思うのだから、実情を知るバナージはそれをより感じているのだろう。

 

ダイクン派かザビ派か。ザビ派の中でもキシリア派なのかギレン派なのか、それともドズル派なのか。

最近聞いたがダイクン派の中でもシャアは支持していない人もいるらしい。連邦に迎合したシャアに最早ダイクン派の誇りは無いとかで。正直もう何が何だかよく分からない。親がジオン出身者でもないのにジオン残党軍を名乗るアースノイドもいるというし。

 

ジオン支持者は、もはや宗教論のそれなのだ。正しいか間違っているかではなく、信奉するのかしないのかの世界。そして自分が信奉する以外の派閥は、基本的には敵なのだと。

 

矢面にはシャアが立って、バーンさんの存在は仲間になった人にだけ共有される。

今の協調路線のシャアを受け入れられるジオンの人で、ある程度人となりが分かってからバーンさんの存在は明かされて、「実はザビ家の遺児のミネバ様もシャアと一緒にいて、彼女もシャアを支持している。だから今のシャアの在り方はザビ家も認めてるんだよ」といった具合に。

 

その後の口止めはしないので、ジオン支持者の間だけで、ある種都市伝説的にバーンさんの情報は流布される。

実はザビ家の遺児はネオジオンの下で保護され、シャア総帥と共にいる、みたいな感じで。

 

そこで篩にもかけているらしい。

まずは地球連邦と協調できるか否か。今のシャアの在り方を肯定できるのかどうか。

バーンさんの噂を聞いた人に対しても、最初の窓口はあくまでシャアで、そのシャアの在り方が肯定できないのなら弾かれる。

 

結果、ネオジオン内部に新たに反連邦の過激派が入ることは無いし、シャアの支持者はザビ家の遺児がシャアの存在を肯定していることでシャアへの支持を強力にして、逆にザビ家の支持者はシャアを認めてからバーンさんに会うから、自分の考えは間違っていなかったとネオジオンへ居着いてくれる。

 

よくできた仕組みだと思った。

 

 

 

ふとバナージが、神妙な雰囲気で言う。

 

「……ハサウェイ、何度も聞くけど、ビスト技研の代表者は、本当に俺単独で良いの?正直、開発した技術はハサウェイの方が多いし、何より共同代表にしておけば……」

「もうそれは何度も話したでしょ?代表はバナージ単独、ミネバ姫の夫はビスト技研の代表で、ビスト技研はこんな技術を開発してるって納得させて、バナージをジオンで、というか社交界で箔付けさせるために必要だって」

「でも、共同でもそれに支障は……」

「あるでしょ?価値が下がっちゃう。というか二分しちゃう。それにもしもの時はバナージ単独で意見を通せるでしょ?多分あるよ?この場でこの案件を呑み込めって時。滅多なことは起きないだろうし、無理筋はシャアとかバーンさんが弾くだろうけど、帰って検討しますが通じない時。そういう時の為にも、代表は一人の方が都合がいい。でしょ?」

 

理屈では分かってるけど、どこか納得はできない。そんな雰囲気がひしひしと伝わってくる。

 

「それにほら、僕が木星行ってる間とか、地球に降りてる間とか、すぐに連絡つかない時もあるでしょ?逆にバナージはサイド1かサイド3にずっといられる。何か起こった時に即応できる。だからバナージが代表。それに、僕は誰よりもバナージのことを信頼してる、滅多なことを軽々に判断しないって。だからバナージの代表が良いって、そう思ってるんだけど……それじゃダメ?」

「……ダメ、じゃない」

 

呟くように言うバナージに、肩をすくめておどけて言う。

 

「あと社交界とか全然出たくないし」

「あぁーー!今本音が漏れた!絶対理由それでしょ!?」

「いやいやいやいや、何を仰る社長さん。それも含めてですよ。いやぁーー良かった。大丈夫、バナージがやりたいことも僕が現場に出て何とかするから。安心して舞踏会とか行ってきな?クェスにお願いしてタキシード作ってもらう?奢るよ?」

「要らない!これまで通り親衛隊服で十分でしょ!?あとタキシードは必要になったら自分で買うから!」

「いやいや、正装はフルオーダーが基本ですよ?注文して採寸して型とって仮縫いして、もっかい採寸しながらサイズとかシルエットを合わせて、そっから仕上げに入るみたいだから、時間かかるよ?しかもシャアとバーンさんと並んで大丈夫な衣装だよ?今のうちに用意しといた方が良いんじゃない?」

「それはオードリーに聞いておくけど!なんか、なんか腑に落ちない!」

「落ちてる落ちてる。いやあ、めでたい。親友がお姫様と結婚して、しかも社長にも就任する。本当におめでたい。忙しいのも仕方ない。じゃ、僕はロトで遊んで、じゃなかった、研究に戻るから。じゃあねえ」

 

未だわめくバナージを尻目に早々にロトに乗り込み、演習場へと走り出す。

 

宇宙世紀0100。宇宙世紀100年の節目に、バナージは結婚する。

 

ジオンとか連邦とか、色んな柵がある中での儀式めいた行事になりそうではあるが、何であれ嬉しいことに変わりは無かった。

 




読了ありがとうございました。

徐々に宇宙世紀0105が近づいてくる。ちょっと戦々恐々としていたりもします。

そろそろ閃ハサのキャラ出したいなあ。どうやって話を始めようかもちょっと迷ってますが、明日以降の私が良い感じに設定を考えてくれるでしょう。
頑張れ、明日以降の私!



いつも誤字報告ありがとうございます。びっくりするほど誤字が多い。何故なのか、私の目が節穴だからです。申し訳ねえ。

また感想と高評価もありがとうございます。本当に嬉しいです。ありがとうございます。

引き続き感想、高評価いただけると嬉しいです。
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総合評価:3104/評価:8.28/短編:21話/更新日時:2026年06月20日(土) 20:55 小説情報


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