ハサウェイがアムロやシャアに影響される前に機械オタクになった世界線のお話   作:陸奥九十九

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いえーい、書けば書くほど良いんだか悪いんだか分かんなくなってくるぜ!
今回ちょっと文章構成が特殊です。会話文ばっかです。違和感あったら申し訳ない。

宇宙世紀0105までもうちょっとかかりそうですが、お楽しみいただけたら嬉しいです。


ヴィランズミーテング再び

伏魔殿、と言うものはどこにでも存在する。

連邦議会が鵺の住処と言われるように、誰に知られることも無く、しかしその存在を知る者からは、この会合はこのように呼ばれていた。

 

ヴィランズミーティングと。

 

「バランスが取れなくなってきているね。少しばかりスペースノイド有利に働き過ぎた」

 

アレクサンドル・ゴップは小さく息を吐いた。

 

「しかし、あの状況では仕方なかったのでは?ジオンの自治権返還は避けるべき事態でしたが、これほどまで強固に民衆が活動するとは予想できなかった。いえ、どちらかと言えば溜まりに溜まった不満が噴出したような形です。むしろ良いガス抜きになったと思いますが」

 

コウエル・J・ガバナンはそう答える。

 

「スペースノイド、特にジオン勢力圏内は今回の動きに好意的ではある。しかし一部過激な思想を持つ者たちに関しては、これを機に地球連邦の打破さえも可能だと嘯く者たちもいる。そう大きな声ではないが、この流れが続けば対立を煽ることにもなる」

 

シャア・アズナブルが返す。

 

「地球の、特に被災地出身者たちはかなり不満を感じています。何故ジオンに譲歩するのか、ジオンなどなくなってしまった方が良い、といったように。現地でのヒアリングですが、生の声としては適当かと」

 

フロンタルが続ける。

 

「その情報はどこから?」

「ハサウェイ君が試験ついでにシドニーで」

「ああ……」

 

その場にいた誰もが息を吐いた。

 

「シドニーは現在急激な復興の最中にあります。ハサウェイ君が投じた莫大な予算は早々に回収が終わり、そのデータは木星開発に、現地で得た収益はほぼ現地復興に投入されておりますから、恐らく地球で最も極短期間に復興が進んだ地域でもあります。アナハイムと言うスペースノイドが主導してこの復興は為されている、現地民はそう理解しておりますが、それはそれとしてジオンは憎い。そこに集約されるかと」

「まあ、コロニー落としからまだ20年だからね。当然の反応だ」

 

ゴップはその考えに共感できた。仕事として戦争をした。その戦争で大勢の仲間が死んだ。ジオン共和国やネオジオンを恨む気は無いが、コロニー落としをしたザビ家を信奉する連中に関しては思うところなどいくらでもある。

それが自分たちのように実情を知るわけでは無い民衆ならば、ザビ家やジオン公国と、現在のジオン共和国やネオジオンは同じ存在に見えるだろう。

 

それに例え理解していても、その感情は恐らく変わらない。理解と納得は全く異なるものなのだから。

 

「香港の市民感情も複雑です。平和的協調路線は歓迎していますが、連邦にもジオンにも悪感情はあります。連邦はティターンズの悪行、ジオンはコロニー墜としや隕石墜としの悪行が、未だ濃く記憶に残っていますから」

 

ステファニー・ルオはそう続ける。

 

「ただ、それ以上に3大企業への信頼は高まっています。プチモビから始まった経済効果の影響は多くの市民が感じましたし、何より目に見えて生活が豊かになった。問題は、それと反比例するように連邦への信頼感が落ち込んでいる点です。このままでは、無自覚的に反連邦の姿勢を取りかねません。そうなれば連邦はより強硬な手段さえ考えるのではないでしょうか?」

 

ルオ商会は、先のフェネクス捕獲に際していくつかの貸しを作ることが出来た。

ひとつは逃走したフェネクスを、フロンタルたちの手は借りれどもルオ商会主導で捕獲できたこと。

もうひとつは、それら情報取得に関してビスト財団の当時のセキュリティレベルならばルオ商会は問題なく突破できると知らしめたこと。

最後に、ミシェル・ルオらニュータイプ研究所の被験者となった少年少女たちの情報を提供したこと。

 

これら情報を提供したことで、ルオ商会はこのヴィランズ・ミーティングに参加することになった。

報酬は、新技術及び新商品の優先的な購入権と販売権。

 

マフィア同然のルオ商会ではあるが、会長ルオ・ウーミンが現場を退いたことにより、その立場が僅かながら揺らぎ始めた。ミシェルの超人的な未来予知と、ステファニーの堅実な経営手腕でもっても、やはりカリスマと言うものは足りなかった。

何よりも、ミシェルは目標を達成したせいか、以前ほどの気力を維持できていなかった。

 

ステファニーはミシェルの占いと、ルオ商会の情報網でもってこの会合を探し出し、持ち得るすべての手札と恭順に近い協力を申し出ることで、ゴップやアナハイムからの各種支援を得ることに成功した。

 

「地球連邦が何よりも恐れていることは、ジオンにしてもスペースノイドにしても、武力での制圧が、現状不可能であるという点ではないでしょうか?ネオジオンの軍事力は連邦軍を圧倒出来る程です。我々ロンドベル以外で対抗できる武力は無いでしょう」

 

ブライトが続ける。

 

「そして、そのロンドベルには独自行動権があり、おいそれと命令は下せない。虎の子だったエコーズも、ラプラス事件でどうにも内部分裂が起き始めているとも聞く。ゼネラルレビルもあっけなく制圧された。政治的圧力を強くかけ始めたのはそこらへんが原因だろうな」

 

それにアムロも答える。

 

「ジオン憎しの軍派閥が議会で増長されても困るが、それ以上に連邦そのものの影響力が弱くなってもらっても困る。あくまで支配者は連邦、ジオンは連邦と殆ど対等ではあるが形式上従属している、そのような状況でないと制御が効かなくなる」

「制御、ですか?」

 

ゴップの言葉に、ミネバが投げかける。

 

「これまで連邦は完全なる統治機構として機能していた。しかし、現状それは難しいだろう。連邦は弱くなり過ぎた。今後目指すべきは、疑似的な封建制度だと思っている。連邦と言う中央政治機構はあるが、ジオンのような存在は地方領主としてその存在を認め、支援はすれど恭順は求める。御恩と奉公だ。そうすれば、ある程度の平穏は作り出せる」

「しかし、誰もが分かるほどジオンの力がもし大きくなれば、それを認め独立させた方が民衆からの反発は少ないのではないでしょうか?」

「それをしたら最後、宇宙は戦国時代のような戦乱の世になる」

 

余りにも冷たく言い放つゴップに、ミネバは思わず目を見開いた。

 

「ジオンが完全な独立をした。それはつまり、連邦は最早統治機構としての能力を有していないと喧伝することに他ならない。ブッホ・コンツェルンが私設武装組織を有し、その強化に資金を投じている、知っているかい?」

「……いいえ」

「まあ知らなくても仕方ない。ブッホからの極秘裏にされた内部リークだからね。彼らが何を企んでいるかまでは分からないが、武力を有するということは、まあそういうことだろう。ジオンを完全独立させる、もしくは連邦の影響力の低下を分かるようにしてしまう。それはそのまま、武力蜂起をすれば、連邦の支配から脱した新たな国家を作れると認めてしまうことになる」

 

そうなれば、どこから火が付く?

ゴップの言うブッホか、いや、ブッホが独立できるのであれば同等以上の企業規模を誇るヤシマやアナハイムもそうでは無いか?

地球にもジオン残党軍を始めとした武装組織は数多くある。無論宇宙にも海賊や反連邦組織が。火星は今もジオン残党軍の勢力争いが起こっていて、木星だって今後無視できない勢力になるかもしれない。

 

ミネバは思考する。

 

例えば、地球の反連邦勢力が武装蜂起を始めたとして、連邦はそれを正規の手続きで鎮圧出来る程の余裕があるのか?

しかも、地球は復興に際して民間にプチモビと作業用のモビルスーツが山のように卸されている。OSによって武器を装備することはできないらしいが、それでもプチモビもモビルスーツも、移動するだけで人をひき殺せるし、騎兵のようにそれらを足として使うだけでも脅威になりうる。

そんな武装集団を鎮圧するためには、情け容赦のないそれ以上の暴力が絶対不可欠になる。

 

ミネバは背筋を伝う冷たいものを感じた。

 

「連邦は腐った大木だ。しかしまだ倒れてもらっては困る。君も知るリディ君が、今まさに矢面に立って頑張っている。正義感にあふれているし、歳の割に中々どうして青臭いわけだが、その青さも今は良いように働いてくれている。早ければ5年で結果が見えてくるだろう」

「5年……延期されたジオンの自治権返還の期限ですか?」

「連邦がジオンへ管理者的な立場で誠実に対応する、ジオンはそれを受け入れる。その姿勢を作れるようにするのが彼の仕事だね。反ジオンの軍出身者に関しては、その視線をジオン共和国やネオジオンでは無く、現時点でも合流姿勢を見せないジオン残党軍へ向けさせる。そして残党軍をロンドベルが排除することで彼らに協調姿勢を取らせる」

「……それほど上手く行くものでしょうか?」

「上手く行かせるのさ。出来なければ戦争が起きる」

 

その言葉に、ミネバは思わず息を呑んだ。

 

「今の平和は、薄氷の上に燃える篝火のような、本当に奇跡的な平和なんだ。フロンタル君が暗躍する一部アナハイムと連邦、そしてビスト財団を一度に無力化させ、シャア総帥が連邦へ反発するジオン勢力を抑え、アナハイムを始めとする大企業が経済発展に尽力し、連邦がジオンへ譲歩と協調を約束することで、やっと民衆の溜飲が下がった。不満と怒りからくる振り上げた手を、やっと下せるようになった。そんな束の間の平和なんだ。そしてそれは、ほんの少しのほころびで破綻する」

 

ゴップは小さく息を吐く。

 

「我々は、世界を裏から操りたいわけでは無い。ただ、連邦は腐敗しすぎた。もはや彼らの自浄作用には期待できないし、彼らだけの力で治安を維持することも無理だ。だから仕方なく、こうやって裏から手を引いてどうにかしようとしている。だから失敗は許されない。分かるかい?」

「……はい」

 

ゴップは立場上は傅く必要がある。そんなミネバに対して、さながら教師のように接した。そしてそれをシャアもミネバも受け入れていた。

 

「我々は確かに企業や組織を背負う身だ。それ故に利益が無ければ組織を動かすことはできない。だが今回に限ってはその部分は心配する必要がない。ありがたいことにね」

「ハサウェイ君が生み出した市場は莫大な収益を齎した。アナハイムが恐らく最も利益を享受しただろう。彼は連邦もジオンも触れることが出来なかった木星船団公社に対して先方有利での取引を成立させた。あの固い財布をこじ開けられたのは流石としか言いようがない」

「地球復興に関しても同様です。人の流れを整理する、ルオ商会はそれによって適用な手数料を得ていますが、数が数なだけにそれなり以上の収益を取れています。そして、人のの流れが整理されれば、その後の動きもまた進みやすくなる」

 

ガバナンとステファニーが答える。

 

「我々に、多くのアースノイドが持つジオン憎しの感情を変えることはできない。勿論連邦上層部に蔓延る反ジオン感情もね。しかし経済面から生活を押し上げることで貧困からくる悪感情を低減させることは出来るし、ジオン共和国やネオジオンから、今現在でも反連邦の暴力運動をしているジオン残党やテロ組織へ世間の視線を誘導させることもできる。そこまでやって戦争意思がデモや抗議まで縮小化出来れば万々歳だし、ジオン滅亡まで願う強硬姿勢がジオンの権力縮小まで抑え込めればそれも歓迎できる」

「しかし、そうはならない場合もあるはずです。恨み辛みは、そう簡単に癒えるものではない」

「その時は、制御可能な戦争を起こさせる」

 

その言葉に、ミネバは息を呑んだ。

 

「小規模に戦争を企画し、戦争をしたい連中を集めて、殺し合わせて掃除する。戦争を起こした連中にすべての責任をかぶせて、ロンドベルとネオジオンで戦争介入をし我々有利に戦争を終結させる。そして、そこで起きた犠牲はコラテラルダメージとして受け入れる」

「……それは」

「受け入れ難いことだと思うかもしれないし、それは間違っていない。ただそこまでやるんだ。そこまでやらないと、この世界はどうにもならない」

 

それに異を唱える者はいなかった。いや、思うところはいくらでもある。しかし理解もできた。

 

「何事も無く上手く収まればいい。しかしそうならなかったときは、覚悟を持って戦争を起こさせる。そしてそれを確実に制御する。それが、我々が持つべき覚悟だ」

 

そして、その覚悟も意思も、決して知られてはならない。

誰に知られることなく、リスクを想像し、手段を構想して、未来を実現させる。

 

「だから我々は、最後まで悪役を気取っていく必要があるのだよ」

 

そう説くゴップの眼差しは、重く暗く、冷たいものだった。

 

ミネバはその眼差しを、逸らすことなく見つめ返した。

 

 

 

 

 

 

「それにしても、随分と彼には助けられたよ。全部分かっててやっているのかな?彼は」

「恐らくは。彼自身矢面に立ってどうこうする気は無いようですが、根回しと伝手づくりは欠かしませんからね。シドニーの時も木星の時も、必ず私直通で連絡を寄こしてくれました」

「結果が見えなければ企業は動かない。だからこそファーストペンギンは自分でやる。まあ、そのファーストペンギンで世界を動かせるほどの技術と資産を投じているんだから、中々凄いことでもある」

「コロニー運営の年間予算程度ならをポンと投じますから。おかげでアナハイムもヤシマもブッホも大儲けですし、木星船団公社さえ巻き込んでしまっているわけですから。凄まじいことですよ」

「ハサウェイが、そんなことを……」

「おや、ブライト君はヤシマ重工やビスト技研の経営には、特に?」

「ええ。どうにも私は軍人家業が性に合っているようで……」

「それもそれでいいと思うよ。事実ロンドベルによって宇宙の平和は保証されているとも言えるしね」

「もったいないお言葉です」

「気になるとすれば、彼が何を望んでいるか、かな?」

「何を、ですか?」

「ああ、私も気になって、トミナガに聞いてみるように話したんですが、すんなり答えてくれましたよ」

 

戦争はもうたくさんだから、お金儲けをして生活を豊かにして、戦争なんて馬鹿らしいとみんなが思えるようにしたい。

 

「通信で、あの小憎たらしいトミナガの声で聞いても、少し感動しました」

「ああ、なるほど。だからこそ、なのかもね」

「と、仰いますと?」

「ビスト技研は、その気になれば自分たちで完結できるはずなのに、それをわざわざ外部委託でプロジェクトチームを作っている。根幹技術を作って特許を取得し、アナハイムやヤシマに企画させて、その他大勢の人員は現地で調達する。結果、それらは復興支援に繋がった。雇用創成という意味合いで」

「ああ、分かります。ビスト技研の代表をバナージ君に任せ、資産運用はヤシマ重工を経由してご家族にお願いしているようですけど、多分、それらも含めて彼一人で全て出来るでしょうし」

「ハサウェイ君は面倒ごとを押し付けて、自分は気楽な身分が良いなんてうそぶくけど、バナージ君のは殿下との結婚に際しての箔付けの為だし、資産運用は利益分配の為かな?勿論彼の言うこと全部が嘘とは思わないけど」

「チェーミン、娘も確かに言っていました。妻と一緒にハサウェイの資産運用の勉強をしていると」

「利益がそれなりに出ていて驚いたとハサウェイ君が言っていたよ。彼は運用じゃなくて管理のつもりでお願いしたのかもね。まあ、彼自身情勢が読めるタイプだから、どのタイミングでどれだけの予算を投じればいいのか分かって動いている。もしもの時の為にも、資産は多いにこしたことは無いよ」

「実際、結果だけ見れば大勝ちですからね」

「まあ、彼は良くも悪くも為政者の才能があるよ。彼自身は望んでないだろうけど、望まずともそれを発揮している。よく似ているよ、シャア・アズナブルと。彼は否定するだろうけどね」

「シャア総帥はだいぶ彼のことが好きみたいですけど、彼は少し距離感がありますよね」

「同族嫌悪じゃないかな?もしくは、自分のIFの存在として見ているのかもね」

「ああ……」

「まあ、彼は自由に動いてもらった方が良い。そんなわけだから、あんまり無理を言わないようにね。最近エコーズ用の特殊機を彼に融通したんでしょ?」

「おや、伝わっておりましたか?」

「流石にね。連邦が次期主力モビルスーツの開発をアナハイムやその他メーカーに依頼したから、その関係かな?」

「ええ。身内の恥をさらすようで情けないのですが、うちのモビルスーツ部門はどうにも採算や利益と言うものを理解できないようなので……」

「あははははっ、そうだね、言わんとすることはよく分かるよ。それでハサウェイ君にサナリィ謹製の小型モビルスーツを渡したわけだ」

「ええ。参考になればと。連邦はどうにも、大型化し高性能高コストになったモビルスーツからの脱却を図っているようですから。ニューガンダムにしても、量産機にしてはだいぶ高級ですし、ユニコーンはあの様でしたし」

「連邦としては、小型かつ安価で、汎用性の高いモビルスーツ、それこそジェガンの後継機を欲したわけだ」

「ロンドベルとしては、どうでしょう?現場の意見と言うものをお聞かせいただければ」

「……そう、ですね。あえて言うのであれば、整備性に優れた汎用的な高性能機、でしょうか?」

「それで言えば、ニューガンダムなどそうなのでは?」

「量産型も何機か配備されておりますが、コストの問題からかすべてが置き換わることは無いでしょうし、試験的に配備されたジェスタも0097に正式に量産機としてのロールアウトは無いと通達されましたから、現状はやはりジェガンでしょう」

「ジェガンの不満点と言うと?」

「アクシズ事件でギラドーガに性能的に後れを取り、ラプラス事件ではギラズールに後れを取りましたから、スペックそのものに対しての不満はあります。勿論、その為のニューガンダムやジェスタなのですが、連邦はそこに対して予算を割くつもりはないようなので」

「では、ジェガンの価格帯で提供できるニューガンダム、と言ったあたりでしょうか?」

「性能面だけで言えば。ファンネルなどの高級なサイコミュ兵器などはオミットして問題ないので、基礎性能はそこが叩き台になるかと」

「なるほど。参考になります」

「いえ、どちらかと言えば無理難題を言っている立場ですから」

「そうだ、一つ思い出した。確証のない情報を意味ありげに言うのははばかられると思うのだけれど」

 

ゴップは、声色を一つ落として告げる。

 

「連邦上層部の軍関係者の動きが酷くきな臭い。スパイの活動を殊更強化し始めているらしい」

 

ブライトは、口元をさすりながら視線を落とした。

 

「……それは、地上のジオン残党軍の掃討に本腰を上げた、と言うことでしょうか?」

「そうであれば、真っ先に声がかかるのは君のはずだ。連邦はロンドベルを持て余し始めている。お縄をかける意味でも君たちを使うはずだ」

「では……」

「うん。恐らく5年後に向けての世論作りの為だろう。彼らは良くも悪くも愛邦主義者で忠誠心の怪物だ。確信犯的に何でもやる」

「動かしたのは、エコーズでしょうか?」

「別の部隊だ。恐らく見かけ上の経歴は何もかも偽装されている。彼らが何者なのかを掴むにはそれなりに時間がかかる」

「……一体何のために」

「一つは分かる。ハサウェイ君だ」

 

ブライトは息を呑み、ゴップを見つめた。

 

「……ラプラス事件の折に起きた暗殺未遂、その焼き直しでしょうか?」

「分からない。だが彼らは最早主義者だ。そこに正しい正しくないは関係がない。例えハサウェイ君がどれほど地球圏に利益を与えようともね」

「……正気とは思えませんな」

「それは君がアナハイムと言う企業と経済からの視点を持つからだよ。私もブライト君も、軍出身だ。だからこそ分かる。軍や国家と言うものは、何よりも面子が大事なんだ。舐められたままでは終われない。不合理であってもプライドの為に命もコストも掛ける。それが、世界を支配する地球連邦という組織の威信が掛かっているなら尚更ね」

 

場に沈黙が響く。

 

「ハサウェイ君の行動パターンは殆ど決まっている。シドニーか、日本か、サイド3か、木星だ。シドニーの区切りが付くまでもう少しかかるだろうし、その後に掛かるのはアイルランドか北米だろう。そのどちらでも監視の目はつけやすい」

 

息を吐くように背もたれに体を預け、すぐに態勢を戻す。

 

「連邦の諜報部は優秀だ。本気で隠れられたら見つけることは不可能だろう。彼には伝えなくとも良いが、それでも十分に警戒して欲しい」

「……了解しました」

「私からも関係者に言っておきます」

「うん、頼むよ」

 

 

 

「何事も無ければ、いや、それは流石に楽観が過ぎるか……」

 

 

 

 

 

 

「おおーー……」

 

ミノフスキーネットによってシドニー湾から引き上げられたコロニーの残骸は、貝類が付着し苔むし、見かけ上の腐食は進んではいるものの、その形状をほぼ完全に保持し続けていた。

 

「一部外壁だけですが、壮観ですね。こうして地上で見ると」

「ですね。それに流石コロニー、20年程度じゃまだまだ原型留めてますね。これは処理も面倒だ」

「モビルスーツや戦艦と違って、ここからどうもこうも出来ませんしね」

「ですね。予定通り粉砕してから分別しましょう」

「了解しました。コマンドポストよりアルファ1、破城槌の用意を。予定通り試験も兼ねてコロニー残骸を破壊します」

『アルファ1了解』

 

トランシーバーで通信のやり取りをするオリヴァーさんを何と無しに見入ってしまった。

僕の視線に気づいたのか、微笑を湛えて肩をすくめる。

 

「昔取った杵柄、とでも言いましょうか。何分このチーム自体に元軍関係者が多いですから。自然とこんな風になってしまいして」

「いえいえ、カッコイイですよ。オリヴァーさんのそういう面、ちょっと新鮮です」

「まあ、本職は技術者ですが、戦場に出た身でもあります。それなりには、ね?」

 

ウインクする彼がなんともチャーミングで思わず笑顔になってしまったが、その間にもジムIIがモビルスーツサイズの大型バタリングラムを持って所定の位置につこうとしていた。

 

『こちらアルファ1、準備完了』

「こちらコマンドポスト、確認しました。コマンドポストからエリア1で作業する全作業員へ、これより破城槌を用いてのコロニー残骸の破壊を試みます。危険ですので直ちにエリア1から退避してください。繰り返します。全作業員はエリア1から退避してください。3分後に作業を開始します」

 

周囲に人影はない。それでも十分な時間を置いた後、作業は開始された。

 

「コマンドポストよりアルファ1へ。作業を開始してください」

『アルファ1了解。作業を開始する。破城槌、機動』

 

その声と共に、破城槌からモーターが高速回転するかのような甲高い駆動音が鳴る。

これは元々爆発でもってエネルギーを叩きつけていた破城槌を、超振動に置き換え効率的な対象の内部破壊を目指したものである。

 

コロニーは兎にも角にも頑丈なのだ。宇宙に浮かぶ鉄の大地、デブリが飛来した程度ではダメージさえなく、内部でモビルスーツの戦闘が起こったとしても実弾に限定すれば穴が開くことも無い。

 

逆に言えばビーム兵器なら穴が開いてしまうわけだが、そんな状況は通常起こりえないわけだ。

インダストリアル7は穴が開いたけど。さらに言えば火の海になったけど。

まあ、そんな感じで基本的にはコロニーは壊れないようにできている。

 

ただ、今回に関してはそれが少し状況を難しくもした。

 

当然だが、一般的な作業環境においてビーム兵器をぶっ放していい時なんて無いのだ。しかもコロニーを切断できる出力のビームなんて軍事用以外存在しない。必然選ばれるのはビームライフルやビームサーベルになるわけだが、さすがにそんなものの使用許可は早々に下りないし、下りたにしても使用可能環境を整えるのに大変な予算が掛かる。

 

そこでビーム兵器以外でコロニーの残骸を細かく破壊できる作業機械が必要になったわけだ。そして試作したのが、この破城槌である。

 

モビルスーツの核融合炉からエネルギーパイプを直接接続し、超振動という運動エネルギーを対象にぶつける機構である。

機構はそれほど複雑ではないし、コストもそう重くない。上手く行ってくれれば、海中から回収したコロニーの残骸のその後の処理方法もある程度決まる。

 

『エネルギー充填を確認。コロニー残骸を破城槌で破壊する』

 

ジムがゆっくりと破城槌を振りかぶり、コロニー残骸へ叩きつけた。

 

ギャアアァァーーーーン!!

 

瞬間、金属を引き裂くような轟音が響く。

 

それと同時に、ミノフスキーネットによって空中に固定されていたコロニーの残骸は、バラバラになって無数の金属片になり、赤熱を帯びながらも空中に留まり続けていた。

 

「良さげ、ですね」

「そのようです。概ね問題なさそうですね」

 

ほっとして胸をなでおろすと、オリヴァーさんは無線機を取る。

 

「コマンドポストよりアルファ1へ。目標の破壊を確認しました。試験完了です。お疲れさまでした」

『アルファ1よりコマンドポスト。試験完了了解。これより帰投する』

 

ジムが破城槌を持ったままエリア1から離れる。思わず息を吐いた。

 

「お疲れさまでした。上手く行ったようで何よりです」

「ですね。性能も申し分ないみたいなので、様子を見ながら使ってみて下さい。ダメなら修正していくので」

「データは都度記録しておきます。今日の予定は、こんなものでしょうか?」

「ですね。今日はもう終わりにしてご飯行きましょう。ああーー疲れたーー」

「ここのところハードスケジュールだったんでしょう?大丈夫ですか?」

「いやあ作業そのものはなんてことないんですけど、移動が長かったので。木星行って帰って、サイド3寄って、その後月に行って、そこからシドニーでしたから。移動ばっかで疲れた感じです」

「ご愁傷様です。それにしても引っ張りだこですね」

「いやあバナージが色々忙しいので、その分は僕が動かなきゃって感じではあるんですよね。まあ生涯一度きりの吉事ですから。盛大に幸せになってもらわないと」

「ああ、そう言えばご結婚されたんですよね。おめでとうございます」

「あははは、ありがとうございます。伝えておきますね」

「ご年齢は、ハサウェイ君と同い年ですよね?」

「ですね。今年で20?21?そんなあたりですね」

「なんでそこ曖昧なんですか……?」

 

「よぉ、おつかれー」

「あ、お疲れー」

「お疲れ様です。破城槌使用後のマシンの様子は如何でしょう?」

「概ね問題無いな。少なくともエラーやらチェックランプは出てねえよ」

「なら良かった。多分明日以降は毎日稼働するだろうから、何かしら異常が出たら報告よろしく」

「了解。あと現状特に問題はねえんだが、破城槌を撃った後バックラッシュのせいか若干肘関節が鈍い気がする。エラーコードは出てねえんだが……」

「了解、明日にでも見ておくよ。オリヴァーさん、明日以降は破城槌の出力ちょっと落として使ってみましょう」

「畏まりました。調整しておきます」

「まあ、とりあえずご飯行こう!お腹すいたし」

「お、良いねえ。ハサの奢りか?なら肉食いに行こうぜ」

「いや、別に良いけどさ……」

 

10歳も年下に集るのは如何なんだ?

 

「オリヴァーさんも肉で良いですか?」

「勿論です。私は自分で持ちますので」

「いえいえ、せっかくなんで僕が出しますよ。次の時はお願いしますね」

「……では、お言葉に甘えて」

「よし決まりだ。じゃあ行こうぜ。店が混んじまう」

 

そう言って足早に部屋を出ていく。

 

「……行きましょうか?」

「ですね」

 

オリヴァーさんと部屋を出る。

 

「ちょっと待ってよ、ガウマン!」

 




読了ありがとうございました。
やっと閃ハサの登場人物を出せました。ちょっと成し遂げた感があります。

もうちょっと閃ハサ編までの前振りがある予定なので、束の間の平和な雰囲気を楽しんでいただければと思います。



誤字報告いつもありがとうございます。誤字とは絶え間なく起こるもの。またその無様さ。申し訳なく。

感想と高評価もありがとうございます。本当に嬉しいです。感謝の言葉しかありません。本当にありがとうございます。

引き続き感想と高評価、頂けると嬉しいです。

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旧型サラミスで生きる1年戦争(作者:カズkaz)(原作:機動戦士ガンダム)

ありきたりな転生ものです。機動戦士ガンダムをそこそこに知っている主人公が旧型のサラミスに乗り込み、なんとか1年戦争を生き抜こうと奮闘する物語。▼思い付きで投稿していますので続かないかもしれません。▼箸休めにご覧ください


総合評価:3138/評価:8.29/短編:21話/更新日時:2026年06月20日(土) 20:55 小説情報


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