ハサウェイがアムロやシャアに影響される前に機械オタクになった世界線のお話   作:陸奥九十九

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前半のスペースシャトル直す部分は、書きたかったものかけた気がしたんですど、なんか後半迷走してる気がします。
次回はラー・カイラムに付くはずなので、やっとアムロも登場させられますね。先の展開何も考えてないけどどうしよう?
感想や高評価本当にありがとうございます!大変うれしいです。


宇宙と閃光 スペースシャトル

隕石の通過を見送った後、シャトルではすぐにトラブルが発生した。推進系がやられたのか、アポジモーターが動作不良を起こし立ち往生したのだ。おそらく赤熱した隕石が放ったプラズマがコンピューターかセンサーを焼いたのだろう。そしてシャトルは止まることもできず、それまでの慣性に従ってどこまでも進み続ける。宇宙迷子になりかねない危険な状況だ。

そんな状況で僕は、シャトルの制御コンピューターのプログラミングを必死で再構築していた。

 

「どうだ坊主?」

「やっぱり回路が所々繋がってません。安全対策で複数のサブコンが入ってるのが幸いして、遠回りにルートを再構築できれば推進系も復活できると思います」

「おお!」

「ただ、どこかが致命的に焼き切れていると、ハード面から修復が必要です。なので、並行してアポジモーターを直接制御するためのケーブルは繋いでください」

「どこから繋ぐ?」

「ちょっと待ってください」

 

機長の言葉にPCを叩く。

シャトルの構成を必死になって読み解く。思った以上にセキュリティが固い。以前祖父ちゃんに見せてもらった軍事レベル並みのセキュリティに、所々でトラップと攻勢防壁まで設定されている。

何処かで地雷を踏めば、恐らくシャトルのシステム自体が強制的にロックされ、二度とアクセスできなくなる。そうなれば、このまま宇宙を放浪して、助けが来るのを待つ以外なくなる。

 

何故そうまでしてシャトルの修復を試みているのか?理由は単純、戦場が近づいているからだ。

国際救難信号はとうの昔に出している。だが、このタイミング、この場所にシャトルがいること自体がまずい。戦争が始まってどこのコロニーも渡航規制を敷き、民間シャトルなど飛んでいる訳もない。この状況でシャトルに乗れる人間は、連邦政府とそれなりに近い距離にいる人間だけなのだ。連邦が早々に救助に来てくれれば何の問題もないが、この状況でネオジオンが先に発見したら?

拿捕されて人質にされるなら上々、最悪その場で撃ち墜とされかねない。それに、流れ弾が偶然当たる確率だって、決して低いわけじゃない。

リスクを取る必要があった。それもこんな子供にシャトルの心臓部を触らせてまで。状況は、それほどに切羽詰まっていた。

 

「ルート再構成、サブコンに負荷がかかるか、並列処理、キャパが足りない。どこから引ける?メインから直接ストレージを割いて、ダメだ処理できない。やはり命令系統が樹形図的になっている。外部から直接の操作は、このレベルのセキュリティが敷いてあるのか……」

「どうだ坊主!さっき遠くに閃光が見えた、ありゃ戦闘光だ!」

「戦場に突っ込むまでどのくらいです?」

「10分、いや、状況によっては5分かもしれん!」

「内部からプログラミングの書き換えるのは無理です。時間が足りません。ケーブルをつないでハードからルートを構成します!」

「場所は!?」

「3か所です。機体前部のポイントC、中部のL、推進系に直接つなぐV」

「外で作業できる奴は二人しかいない、間に合わんぞ!」

「僕も出ます!ノーマルスーツをください!」

「出来るのか!?宇宙空間での活動経験は!?」

「ありません!ただ、こういう作業は何度も経験があります!」

「……よし分かった!ついてこい!時間が無い!」

 

操縦室からキャビンを突っ切りサブルームへと向かう。その時客室の窓から微かに閃光が見えた気がした。思っている以上に状況が切迫している。

気持ちが急く、しっかりと息をしろ、カノウ先生の言葉を思い出せ、鉄の心を、僕は持っているのだから。

 

「ねえ、ハサウェイ!」

 

クェスが焦ったように話しかけてくる。緊張している。そうだよな、こんな状況だもんな。

 

「大丈夫!席に座ってて!」

 

僕がそう言うと、乗り出していた身を戻し、不安そうな表情のまま席へ座る。足を止めることなくそれを見届け、僕と機長は急ぐ。

 

「恋人か?」

「違いますよ。たまたま席が近かった子です」

「かわいい子だったな」

「そうですか?」

「ああ、かわいい子だった。死なせないように頑張らなきゃならん。そういう時かわいい子の方が気分が上がるってもんだ」

 

機長がそうウインクする。それにつられて、僕も少し口元が緩む。

ノーマルスーツを着ながら、機長がじっと僕を見ながら言う。

 

「良いか小僧、決して焦るな。宇宙で焦れば全てが一瞬でパーになる。船外活動が最速で終わったとしても、戦場に足を踏み入れる可能性は十分にある。外から何が飛んできても、何が過ぎ去っても、決して焦るな」

「はい、心得ます」

「……悪いな、貧乏くじを引かせちまって。俺が出れりゃあ……」

 

そう表情を歪ませる機長に、僕はウインクを返す。

 

「機長がいなくて誰がこのシャトルを操縦するんです?自動操縦ができる状況じゃないですし、何が飛んでくるか分からない状況なんでしょ?気にしないでください。こういうのは巡りあわせです」

「……ありがとうよ。死ぬなよ、ハサウェイ」

「もちろんです」

 

機長の退室後、サブルームの密閉を確認し、命綱を最終確認。問題無いな。僕はハッチを開けた。

 

「ぐっ!」

 

空気と一緒に宇宙に放り出される。焦るな。しっかりと命綱をたどれ。シャトルに張り付け。ゆっくりとエアスラストを吐きながらポイントへ向かう。

既に作業が必要な箇所の装甲は剥がしてもらってあり、あとはケーブルをつなぐだけだ。焦るな、呼吸を整えろ。

装甲が剥がされ露出した制御盤へアクセスする。腰に携えたメインケーブルを接続し、接続をサブコンに直接認識させる。PCケーブルを伸ばし、腕に括り付けた小型PCで緊急制御用プログラムを起動させる。ローディングが始まる。2%、8%、15%……、認識が遅い!何故?呼吸が乱れる。ヘルメットの中で荒くなる呼吸が嫌に響く。それと同時に、閃光がシャトルの上を通り過ぎていった。

 

「なんだっ」

 

吐き出す言葉とは裏腹に、脳はそれを理解していた。ビームだ、ビームの閃光だ。船外に出てからまだ3分と経っていない。

 

「くそっ」

 

20メートルもある巨人が、音速をはるかに超えた速度で飛び回って戦ってるんだ。そういうことも起こるか。ただ、今来てほしくはなかった。

ローディングはまだ半分も来ていない。そうかわかった、ただでさえ重い緊急制御プログラムを3か所同時に認識させているんだ。シャトルのメインPCのキャパをオーバーしかけているんだ!

どうする?何か手段は無いのか?いや、ないからこうして宇宙で作業しているんだろう!?焦るな、落ち着け。呼吸ばかりが耳に響く。時間が引き延ばされたかのようにローディングが進まない。

 

こういうことが、前にもあった気がする。

そうだ、あの時は海だった。苦しく、暗く、自分の呼吸の音だけが聞こえて……。

 

死が、背中から這い寄ってくる。

 

「違う」

 

呼吸が荒れれば集中力は落ちる。そして脳の処理が落ちれば落ちるほど、時間が引き延ばされたように長く感じるときがある。

タキサイキア現象だ。何度も経験してきた現象だ。僕は酷い緊張状態にある、恐怖している、怯懦している。

 

鼻から息を吸え、目いっぱい吸え。そして吸った息を、口からゆっくりと吐き出すんだ。

 

「ふうぅーーー……」

 

もう一度。呼吸が整えば心臓の音のうるささに気づく。息を整えろ。そうすれば自然と心臓も落ち着く。もう一度。

 

「ふうぅーーー……」

 

ローディングはもう9割に迫っていた。ビームは確かに通過した。ただ、それは酷く遠かったはずだ。もし近くにビームが通過していたら、僕は溶けて蒸発していただろうし、シャトルだって無事には済まない。

流れ弾が、たまたま目視できる位置にあって、目視できる光量だった。それだけだろ。

 

ローディングが完了する。

ケーブルを推進系の制御盤へもっていく。焦るな、呼吸はそのままに。シャトルにしっかり足をつき、体を少しかがめて、ゆっくりとエアスラストで移動しろ。ゆっくりと、少しだけエアを吐けば、あとは確実にポイントへ行ける。怖がって足をシャトルに強く置くな、反作用でシャトルと逆方向へ飛んでいくぞ。

 

ポイントへ到達。ケーブルを接続し、認識させる。PCを繋ぎ、実行。ローディング開始。このロードは時間はかからない。5秒と掛からずに完了する。

 

「終わった」

 

思わず息を吐きそうになり、止める。ここは宇宙だ。シャトルに戻るまで、安全なんて存在しない。そうだ、他の作業は?そう思って目をやると、他二人も撤収作業を始めていた。

 

「よし」

 

そう息を切り、僕もシャトルへと戻っていった。

 

 

「よくやった小僧!」

 

シャトルへ戻ると、機長がそう迎えてくれた。思わず脱力する。そうだ、やり切れたんだ。急に疲労感が全身をめぐる。

 

「ありがとうございます。動きますか?」

「問題ない、お前を回収してすぐアポジモーターをテストしたが、完璧だ。今は戦場から遠ざかるように進路を取っている」

「通常航路へは、戻れそうですか?」

「当座無理だろうな。だが、救助信号を拾った連邦の艦から連絡があった。ラー・カイラムという艦らしい。すぐに安全地帯まで曳航してくれるろうさ」

「そうですか……」

 

よかった。それ以上の言葉はない。

 

「その、ラー・カイラムという艦とのランデブーポイントは?」

「そう遠い場所じゃない、早々に回収してくれるさ」

「そうですか……よかった……あ、そうだ、変更したプログラミングを書き起こさないと。あとで不便ですよね」

「あ?いや、そんなもんは……」

「あと、回復用のキットも作った方が良いのかな?それに操縦用のシステムチェックも……」

「おい小僧?」

「救難信号……そうだ、戦闘宙域が近い中で、ネオジオンが近づいてくるかも、そうしたら……」

「ハサウェイ!」

 

機長が僕の両肩を強く握り、目を見つめる。

 

「そんなもんは後ででいい。考えなくていい。良いかよく聞けハサウェイ、お前が今すべきことは、そのノーマルスーツを脱いで、休憩をとることだ。飯も食え、疲れてるなら寝ろ。いいか、お前はちゃんと仕事をした。十分なほどにだ。だから今はちゃんと休め」

 

いつの間にか、僕の呼吸は浅くなっていた。ゆっくり息を吸え、ゆっくり吐け。目をつぶれ、呼吸を整えろ。

ゆっくり目を開くと、にやりと笑う機長の顔があった。

 

「よし、落ち着いたな」

「……はい」

「そうしてるとやっぱりガキだな。恐怖と緊張で、テンションがハイになるところなんかな」

「……すみません」

「謝るなよ。むしろいいと思うぜ。お前はガキなんだ。無理して大人ぶる必要なんてねえよ」

 

まあ、たくさん頼っちまった俺が言えることじゃねえがな。機長が苦笑する。

 

「キャビンの方が温かい。ノーマルスーツはそこらに脱ぎ捨ててくれて構わん」

 

そういって機長が戻っていく。しかし、ドアの前で立ち止まり、ハサウェイ!と僕に呼び掛ける。

 

「……ありがとうよ」

 

それだけ残して、機長は戻っていった。

終わったんだ。改めてそう理解できた。

 

 

キャビンに戻ると、戦場から離れたからか、シャトルが直ったからか、ほんの少し平穏を取り戻していた。

席へ戻るとすぐに、乗務員さんがコーヒーを用意してくれた。ブラックを渡されたが、飲めないからとミルクと砂糖をたくさん用意してもらうと、それを見て笑っていた。

良かった、皆落ち着いている。

 

甘いカフェオレになったコーヒーに口をつけると、誰かに袖を引かれたことに気づいた。小さな女の子だった。

 

「どうしたの?」

「お兄ちゃんが、この飛行機を直してくれたの?」

 

期待のこもった真ん丸な目で、僕にそう言う。それに思わずはにかんだ。

 

「違うよ。この飛行機の運転手の人や、色んな人が直してくれたんだ。僕はちょっとお手伝いしただけさ」

「そうなの?」

「そうさ、だから降りるときに、皆にお礼を言ってあげて」

 

うん!と納得したように女の子が去っていく。手を振り返すと、その子の親御さんが笑って会釈してくれた。

 

「なんで嘘言ったの?」

 

振り返ると、どこか不機嫌そうなクェスがそう言ってきた。

 

「嘘って、何が?」

 

疲労のせいか思った以上にぶっきらぼうな声が出た。それにクェスが少し怯んだが、流石に訂正する元気はない。

 

「このシャトル、あんたが直したんだろう?お父さんが言ってた。シャトルを直したのは殆どあんたがやったことだって」

「違うよ、それは多分勘違いだ」

「っ!違くない!なんでそう言う風に良い子ちゃんぶるんだ!気持ち悪い!」

 

クェスが激高する。いちいち声が大きいなこの子は。

 

「確かに僕が制御プログラムを直そうとした。でも無理だった、状況的にね。だから原始的にケーブルをつないでシャトルを動かせるよう手順を作った。でも、機体制御でずっと気を遣ってたのは機長だ。通信を必死に飛ばしてたのは副機長で、宇宙に出てケーブルを刺したのは僕だけじゃなく他に2人いる。そして直った機体を戦場から遠ざけ、今もこうして安全に乗っていられるのは、僕じゃない、クルーの人たちが必死に仕事をしてくれたからだ」

「でも、そんなの詭弁だ!」

「どこが詭弁だ?僕には分からない」

「優れた人間ってやつは、もっとその力を主張しなくちゃならないんだ!あんたには……」

「その、あんたって呼ぶの、やめてくれるかい?」

 

語調が思わず強くなる。落ち着け、疲れすぎてないか僕?

 

「僕はハサウェイ・ノアだ。僕を呼ぶときはハサウェイか、それさえ嫌ならミスター・ノアと他人行儀に呼べ。お前やあんたなんて呼ばれるほど、僕と君は親しくない」

 

口を慎めよ。そう言葉が零れた。クェスはそれに言葉が詰まってしまった。……言い過ぎてるな、体がだるいし心も重い。だってそうだろ?インドくんだりまで長距離移動したと思ったら、カレーを食べる暇さえなく、その日のうちに家族と別れて一人宇宙上がって、その上戦場の近くで船外作業をしたんだよ?僕はよく頑張ってる。本当に頑張ってる。なのに何でこんなにしんどいんだ?これも全部ネオジオンのシャアってやつのせいなんだ。死ねばいいのに。

 

息を吐いて、気持ちを整える。

 

「ごめん、言い過ぎた。けれど、ちゃんと相手の話を聞きなさい。自分はこう思ってる、だからこうなんだって、それじゃあ上手く話もできないよ。君はどう考えてて、どうして欲しいか、それを、まずちゃんと伝えよう」

 

言えるかい?そう促すと、クェスは呟くように言い始める。

 

「……ハサウェイは、誰にもできないことをしたんだ。それは誇るべきことだろう……なのに、なんで嘘をつくんだ……」

「クェスは、僕に誇って欲しいのかい?このシャトルを直したのは僕だと。すごいことをやってのけたのだと?」

「そうだっ。ハサウェイだって、あの火の玉が来るのを分かってたんだろう?あれはきっと、ニュータイプの力なんだ!ハサウェイだってそうなのに、なんで普通の大人みたいなこというの!?」

 

会話が成立できていない気がする。ただ鬱屈とした気分だけは伝わってくる。

 

「クェスは自分が特別だと思っているのかい?その、ニュータイプだと?」

「そうよ!あたしはインドで修行したのよ、人類がみんな共感しあえるニュータイプになれるようにって。あたしはハサウェイがニュータイプだと思った、なのに!」

 

「人間を、2つのパターンに完全に仕分けられる方法がある。でもそれは、ニュータイプか、そうじゃないか、なんかじゃない。好きか、嫌いかの二択だ」

 

分かってきた気がする。この子は小さな女の子だ。自分が可愛いお姫様と信じてやまない女の子で、そんな自分の特別を探している、憐れで幼い女の子だ。その子供の感情に、ニュータイプという思想を当てはめてしまった。

 

「クェス。他人がこう言った。その考えが好きだった。だからそれが正しい。その考えに沿わないものは全部悪いものだ、なんて、世の中簡単に出来てないよ」

 

言って理解できるかは知らない。でも、この子は叱られずに生きてきたのかもしれない。していいこと、悪いこと、言っていいこと、悪いこと。人との接し方を教わってないから、受け入れるか拒絶するか、それを好悪でしか判別できない。

 

「素晴らしいと思ってたものに、ダメな部分が一か所あった。じゃあ、その一か所だけで、それまで素晴らしいと思ってたものは、ガラクタ同然になってしまうのかい?」

 

この子を突き放すことはできる。けれど、それはあまりにも憐れだろう。

 

「クェス、ちゃんと自分で考えるんだ。好きか嫌いかだけじゃない。相手が何をしたくて、何を言いたくて、それが自分とどう違うのかを。知ろうとするんだ、分かろうとするんだ。やれること全部やって、その上で結論を出そうよ。全部やった先で、やっぱり嫌いだ、やっぱり間違ってる、そう思ったら、相手から離れなさい」

「はな……れる?」

「そう、離れなさい。相手を屈服させようとか、自分の思い通りにしようとか、相手を変えてやるんだとか、そんな風に考えると、目に見えるもの全部と戦わなくちゃならないよ?それじゃあ生きることさえ難しくなってしまう」

 

伝わってるだろうか?伝わってるといいなあ。

 

「全部を嫌いだと跳ねのけていたら、君は誰とも分かり合えないよ」

 

揺れる瞳を見つめ、そう伝えた。

 




読了ありがとうございます。
あと自分で言うことじゃないけど、なんか機長めっちゃカッコよくないですか?名前さえないのにめっちゃいぶし銀な感じで、オットー艦長味を感じる。
そして後半ちょっと説教くさいかも……あとクェスのキャラが掴み切れない……頑張ります!

創作の励みになりますので、感想や高評価頂けると大変うれしいです。
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