ストライクフリーダムアリス Go!   作:バオウ・ザケルナ

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これは二番煎じか。

つまり――――何を意味する?

わたしにもわからん。





はい! アリス、ハカセを殴ります!

「アリスは、必ずハッピーエンドを見つけます」

 

 

……

………

…………

 

 

 

【音声記録114514810】

 

 

 

 

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[10秒のノイズ]

 

[爆発のような破裂音が断続的に続く]

 

[10秒後]

 

[合間を縫うように、耳鳴りのような甲高い音がその場を支配した]

 

『チャージ120%! これでっ…………光よ!

 

[解放(リリース)]

 

[少女と思しき声の後、空を切り裂くような音が遅れて流れる]

 

[衝撃により大きなノイズが入り込む]

 

[3秒の間、少女の喘ぐ呼吸が記録される]

 

 

 

『はぁ…………第6陣の殲滅を確認。残存電力(バッテリー)は0%――アビ・エシュフⅡ(アーマー)をパージします』

 

[ガシャガシャと機械が地面に落ちる音]

 

『12000先に第7陣を確認。戦闘行動に…………』

 

『光の剣は…………ないのでした』

 

『でも、まだ歩けます』

 

『でも…………』

 

[数秒の沈黙]

 

『ケイ…………どうして』

 

[再びの沈黙。風の音が静かに入り込む]

 

 

[通信にノイズ]

[接続]

 

 

『A……ス…………生きて か、アリス』

 

[別の少女と思しき声が記録される]

 

博士(プロフェッサー)! ご無事ですか!』

 

[一段高い声でアリスと呼ばれた人物が答える]

 

『まぁ、今のところだろうがな』

 

『今のところ…………?』

 

[通信先で爆発音が数度発生する]

[その他数人の声が小さく入り込む]

 

『ッ! 博士、まさか!』

 

『すまんね、時間がないんでな』

 

[咳込む声]

 

『だが喜べアリス。ついに完成したんだ、お前の新しい剣が……!』

 

[散発的に入り込む戦闘音]

[少女の叫び声が入り込む]

 

『アリスの? いえ、それよりも! 脱出してください博士!』

 

『いいや、こちらが先だ! 今、ビーコンを送信する。確認してくれ』

 

『…………確認しました』

 

[不機嫌な声]

 

『よろしい。なら今すぐビーコンの場所に向かえ。それで脱出しろ』

 

『博士たちは、どうするんですか』

 

[1秒の沈黙]

 

『まぁ…………せいぜい多く巻き込むとするよ』

 

『話が違います! アリスが時間を稼ぐ間に脱出すると!』

 

『悪いが、ビッグシスターにも許可は取ってるんだ』

 

『アリスは納得していません!』

 

[接続]

 

『これが一番合理的なのよ、アリス』

 

[第三者の声が通信に入る]

 

『……! リオまで! そういやってまたアリスをのけ者にするんですか?

 だったらアリスにも考えがあります!』

 

『アリス、馬鹿な真似はよせ』

 

『いいえ! 今から戻ります! アリスはみんなが揃ったハッピーエンドが良いんです!』

 

[興奮したように捲し立てる声]

[戦闘音は次第に大きくなる]

 

『ほら、言ったじゃないかリオ。絶対反対するんだよアリスは』

 

『わかっててやった人間が良く言うわね。よく聞きなさい、アリス』

 

[大地に転がる砂利を踏みしめる音]

 

『……なんですか』

 

『私は…………貴女を希望だと、思いたいのよ』

 

[アリスは答えない]

 

『あなたは勇者アリス、そうでしょう?』

 

[沈黙]

 

『…………はい、アリスは希望を届ける勇者です』

 

[足音が止む]

 

『なら、貴女は進み続けなさい。それが、()()()を救うことになるの』

 

[この時点で最終防衛ラインが突破されたと思われる]

 

『アリスは…………』

 

『騙すようなことをしてごめんなさい。でも、アリスにしかこれは出来ないの。

 私でも、ハカセでも、他の誰でもダメ。このキヴォトスに縛られた私たちでは』

 

『アリスはわかる(諦めない)だろう? もう、()()()()()()ハッピーエンドは目指せない』

 

[博士と呼ばれた人間も問いかける]

[咳込む音]

[3秒の沈黙]

[通信状況の悪化によりノイズが入る]

 

『何を…………アリスに、何をさせようとしているんですか?』

 

『時間跳躍。理論上は可能なんだ。

 フリーダムユニット――新装備に組み込んだVL機関とアリスの神秘が合わされば*1

 

[アリスの声が割り込む]

 

『そんな、ゲームみたいな話を! アリスはみんなと一緒がいいんです! 

 たとえ、たとえ…………』

 

『アリス、思ってもないことを言うものじゃないぞ』

 

[アリスは答えない]

 

『貴女に背負わせてしまうのは申し訳なく思っているわ。でも、貴女には生きて欲しいという私たちのわがままを聞いて頂戴』

 

『アリス、お前は生きろ。それでまぁ、馬鹿なボクを殴ってくれ。こんなことしかできない間抜けをな』

 

『3発くらい殴っていいわ、アリス。私が許すもの』

 

『えッ!? それはちょっとちが――――』

 

『生きなさい、アリス。貴女にはその権利がある』

 

[ひときわ激しい爆発]

[けたたましいノイズ]

[通信途絶]

 

 

 

 

[しばし無言が続く]

 

 

 

 

 

『…………ひとりに、なってしまいました』

 

『それでも、生きろと言うんですか』

 

『…………わかってます、ケイ。アリスには…………責任があります』

 

『モモイの、ミドリの、ユズの、ユウカの、ネルの、トキの…………みんなの』

 

[空から物体が急降下する音]

 

[大地を大きく揺らす振動]

 

[開閉音]

 

『ここまで来た、みんなの思いを…………』

 

[装着音]

 

『だから』

 

[ジェット音]

 

『アリス、いきます』

 

 

 

【再生終了】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミレニアムサイエンススクール。

 学園都市キヴォトスの中で新興ながら最先端を走る学園である。

 最先端は必ずしも便利を意味するわけではないのだが、それはそれ。

 千年難題を解明しようとする組織が前身となり、関連する研究機関が集まることで形成された背景を持つ。

 そのような成り立ちだからこそ、学園の研究棟地下には秘匿された研究室がひとつやふたつ存在していた。

 そのうちの一室。

 

 ガラクタが散乱する部屋の中で机の上に置かれた計器がある。

 それはさまざまな機械に繋がれており、特にコンピュータ端末では演算が行われていた。

 そしてパラパラと数値を変えていく計器をニヤニヤと眺める女がいた。

 女は身長が低いせいか、机にしがみつくようにしている。

 ふらつくせいで無造作に束ねられた赤髪はゆらゆら揺れていた。

 纏った白衣もぶかぶかという生活力のなさそうな女である。

 

 そしてその胸は平坦だった。

 

 女は計器を見続ける。

 

 そして計器が表示する数字、その桁が変わった瞬間。

 

「いやったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 女は突然叫んだ。

 

「来た! 来た! 来た! やっぱりボクの理論は正しかった! 最後の扉が!」

 

 興奮冷めやらぬ様子で部屋を歩きまわる女。

 しかしすぐに息が切れる。

 足を止めて深呼吸。

 そして、気づく。

 

「…………妙だな。もちろんボクの理論は完璧だが、このタイミングで完成するのは考えにくい。鍵がないっていうんだから。なら、外部からの干渉を受けている? 色彩…………は考えにくいし、神々でもないだろう」

 

 小さな頭を揺らしてうんうんと女は考える。

 しかし、その思考は中断された。

 

 ドアの開閉音を耳にした女は振り返る。

 

「ん? リオぉ、珍しいじゃないか。時間より速いなんて…………」

 

 そして絶句した。

 それは想定外の人物が立っていたから。

 

「エッ? アリス…………? なぜここに!?

 アリスナンデ!? まだ一章も始まってないはず!?」

 

 女は幻覚を疑い、頬をつねる。しかし目の前の少女は消えない。

 それどころか少女は明るいオーラまで放っている。

 

「はい! アリスはアリスです!」

 

 背中にメカメカしいものを背負った黒髪の少女はアリスと名乗った。

 名乗られたのならば、名乗り返さねばならない。

 ジェリコの古則にもそう書かれている。

 

「アッ、自己紹介ありがとう。

 どうもアリスさん、夜鷹ハカセです。

 じゃなくて! オヌシはなぜここに!? セキュリティは!?」

 

 それはそれとして、女もといハカセは混乱していた。

 いるはずのない人物が、秘匿されている研究室にカチコミに来た事実に。

 混乱のまま質問までする。答えてくれるかわからないのに。

 だが、少女改めアリスは律儀に答えた。

 

「ハカセに貰ったフリーパスがあります!」

 

 アリスが手に掲げたカード。それは確かにこの研究室の許可証(パス)だった。

 しかしその事実がハカセを余計に混乱させた。

 なぜなら、今自分が持っているのだから。 

 

「えっ、あげてない。どういうこと!? 

 知らないよ、そんなもの! なに、何が起きてるの!? こんなのデータにない!

 まさかサンクトゥムタワーを爆撃した復讐に!?*2

 

 混乱のせいで意味のわからないことまで口走る始末。

 それに対してアリスの反応はというと。

 

「はい! アリス、ハカセを殴ります!」

 

 決断的バイオレンスだった!

 

「アイエェェェ!? ナンデ!? どういうこと!?」

 

 ハカセがあたふたしているうちにアリスは行動に移っていた。

 すなわち、ハカセの目の前まで移動している!

 そして。

 

「イヤーッ!」

 

「グワーッ!?」

 

 一発。

 小さな拳がハカセの横面に突き刺さる。

 へなちょこ女のハカセは地面に倒れた。

 

 ひりひりと痛む頬を抑えてハカセは口を開く。

 

「なんで!? ちょ、ちょっと待って欲しい! 話し合おう! ボクらは」

 

 だが、その口は物理的に閉じられた。

 

「イヤーッ!」

 

「グワーッ!」

 

 二発目。

 先ほどよりも強い衝撃がハカセを地面に張り倒す。

 

「な、なんで!? 二度もッ」

 

 ハカセは錯乱しそうだった。アリスという人間はここまでバイオレンスなキャラクターだっただろうか? いや、ない。ならばアリスは既に少し錯乱しているのではないか? いや、ない。

 アリスの瞳は正気に見える。

 ゆえに解が見つからない。なにゆえ殴りかかってきているというのだろうか!

 

 ひりひりどころか燃えるような痛みを自覚し、ハカセは恐怖のまま必死で口を動かす。

 

「アリス! 頼む、どういうことなのか説明が欲しい!」

 

 その返答はシンプルだった。

 

「はい! アリス、ハカセを殴ります!」

 

「どういうこと!?」

 

 もう頭がどうにかなりそうだった。催眠術とかチャチなものでアリスが操られるとは思えない。やはりアリスは正気で殴りに来ている。もっと恐ろしい何かがいた方がわかりやすくていいまである。

 

 ただ、ハカセは一方でも理解していた。

 殴られた時の威力はキヴォトス人としては普通であるということ。

 銃撃爆撃強盗上等なマッポー世界たるキヴォトスで殴るというのは――基本的には――じゃれあいの延長戦である。

 特に、背中のメカメカしいモノで攻撃してこないのだから、アリスに敵意(?)がないのは理解できた。

 

 なので、問題は。

 

「イヤーッ!」

 

「グワーッ!」

 

 夜鷹ハカセという人間はキヴォトス人としてもへなちょこということだった。

 三発目。

 ハカセは意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハカセが目覚めたとき、柔らかい何かに包まれているような心地を味わっていた。

 ふわふわの布団にくるまっているような心地の良さ。

 なんだかもう少しそのままでいたいような気もしたが、直前の記憶が戻って来た途端、血の気が引いて飛び起きようとする。

 しかし、それは叶わなかった。

 

「んっ。ハカセ、お目覚めですか?」 

 

「ファッ!? クゥーン…………」

 

 視界一杯に広がるのはアリスの顔。

 どうやら抱きしめられているらしかった。身長的にもなんだか食われているような気分になる。

 つまりそれは、先ほどの記憶が夢などではないということ。

 もう一度気絶しかけたハカセだったが、その頬を優しく撫でられたことで現世に留まる。

 

「ごめんなさい、ハカセ。痛かった、ですよね」

 

「ァッ、その…………アッハイ」

 

 文句のひとつでも言ってやろうという考えは、慈愛に満ちたアリスの表情を見たことで霧山した。

 あまりにも顔がよかった。美形。美人。傾国の姫。

 落ち着いたころに実物を目にしたことで細部まではっきり見えてしまう。

 代わりに言葉にもならないような声が漏れる。

 記憶が確かなら殴られたばかりだというのに、ハカセはアリスの表情に見惚れていた。

 これがナントカ効果とやらだろうか。とぼんやり考える。

 

 さらにアリスはハカセの胸に顔をうずめてきた。

 

「よかったです。ハカセがいてくれて…………」

 

 さらに湿っぽいセリフまで飛び出してくる。

 シリアスな雰囲気を感じ取ったハカセは欠片も事情が分からないものの、アリスの背に手を回した。

 決して抱きしめて来る手が意外ときつくて背骨が折れそうになったからではない。

 

「ハカセの平たい胸は安心します」

 

「喧嘩売ってるのか君は!?」

 

 意外と余裕あるな? ハカセは訝しんだ。

 

 なんだか事情がありそうだが、聞くに聞けないまま時間は過ぎ去る。

 暫しの時が経って、状況は変わった。

 ドアの開閉音。

 

「アッ」

 

 ハカセは思い出した。今日は誰を待っていたのか。

 ドアの方向を向いているハカセ。その視界に現れたのは、予想通りの人物たち。

 

「…………突発的な誘拐は、合理的とは言えないわ」

 

「そこまで飢えていたとは。このトキの目をもってしても見抜けませんでした」

 

 すなわち長身の美女、このミレニアムにおいて最高権力者たる調月リオとその護衛、おもしれー女こと飛鳥馬トキである。

 

「勘違いすなーっ!」

 

 状況が悪かった。アリスは背中を向けている――背中の機械はキヴォトス的には特に気に留めるものではない――ので、見知らぬ少女をハカセが抱きしめているように見えたのだ。

 

「勘違い…………? この場所に連れ込んだ時点で言い逃れは出来ないわ」

 

「ボクは連れ込んでない! 勝手に来たんだよ!」

 

「合理性に欠ける言い訳は自分の立場を悪くするだけだとわかると思うのだけれど」

 

 表情の変わらない様子でリオはハカセを詰問していく。

 

「むっきー! そんなこと言っていいのか!? ボクの特許がいくつエリドゥの建造費に消えていったか忘れたとは言わせないぞ!」

 

「…………」

 

 ハカセの反撃にリオは黙り込む。

 だがそれは反論をしないという意味ではない。

 

「あっ、今セミナーから横領すればいいとか考えただろ! 状況が悪くなればすぐ『合理』に犯罪考えやがって…………!」

 

「それは、大義のための致し方のない犠牲というものよ」

 

「はいはい、コラテラルコラテラル。だから誘拐じゃないんだって! アリスからも言ってよ」

 

 ハカセは黙ったまま何も言わないアリスに助けを求める。

 一方、リオもリオでアリスに声をかけた。

 

「そこの貴方、安心して頂戴。

 この場所を見た記憶は消させてもらうけれど、きちんと家に帰すわ

 このままここでその誘拐犯と一緒にいるより生存率が高いはずよ」

 

「命にかかわることなんてしないよ!?」

 

 むしろされた方だが。

 

 リオはしれっととんでもないことを言っているが、本人はまじめだ。

 この場は秘匿された研究室。それこそ自身の所属するセミナーにすら伝えていない。

 そんな場所を見られたのだから口封じする……のだが、別にそれは記憶を消せばいいのだから、存在を抹消するよりも合理的な考えなのだ。

 

 トキはリオの背後に侍る。

 そうしてふたりから水を向けられたアリスは顔を上げて、リオたちを見た。

 

「はい! アリスはハカセが大好きだから大丈夫です! もちろんリオやトキも大好きです!」

 

「ファッ!?」

「!?」

「!?」

 

 三者それぞれに緊張が走る。

 ハカセは突然の告白に驚き。

 トキは名前を知られていたことに驚き。

 

 そしてリオはフリーズした。

 

 それは突然の大胆な告白をされたからではない。

 いや、それも理由のひとつかもしれないが、大部分は違う。

 

 この顔を見た一瞬でリオの頭脳は理解したのだ。目の前の少女が誰か。

 

 リオはアリスを知っている。

 否、正確にはAL-1Sを知っている。その肉体も。

 名もなき神々の手先。このキヴォトスを破壊し尽くす魔王の器として。

 

 そんな魔王が目の前に突然現れた。

 最初の街でえっさほいさと冒険の準備をしていた勇者の目の前に魔王が予告なしに出現したのだ。

 しかも臨戦態勢。

 ゲームであればとんだクソゲーである。

 今、この場で出来ることは何もない。

 もしもAL-1Sがその気になればこの瞬間にキヴォトスは()()()

 

 ならばどうするのか?

 リオの優れた合理的思考はその解をすぐに弾き出した。

 それは、どうしようもないということ。

 

 それでも何もしないわけにも行かない。

 そうして14万2千通りの可能性を走馬灯めいて思い描いた結果――――。

 

 リオの肉体(のう)が限界を迎えた。

 

 ばたんきゅー。

 

 そんな擬音がなりそうな姿勢で調月リオは気絶した。

 

「リオー!?」

 

 幸い、地面に倒れる前にトキがその体を受け止めた。

 驚いたとはいえそれは一瞬。C&Cのエリートが仕事をするのに影響はない。

 

「流石私。完璧なキャッチ」

 

「ナイスゥ!」

 

「ところで、部屋に上がっても?」

 

「ああ、もちもち」

 

 許可を得て――得なくても入るつもりだったが――トキはリオを抱えて研究室に入る。

 入口から見えていたが、トキはため息を堪えるのに努力した。

 

「相変わらずハカセはこのゴミ……廃棄……ネズミの住処がお好きなようですね」

 

「辛辣ゥ!」

 

「アリス、ネズミは好きです」

 

「ああ、うん。フォローありがとうね」

 

 毒を浴びながらハカセは動線を確保するためにガラクタを避ける。

 一方トキはそのまま勝手知ったるように進み、眠ったリオを仮眠用のベッドに横たえた。

 ハカセは問う。

 

「ところで、今日のリオは何時間寝たんだい?」

 

「3時間ですね」

 

「またか」

 

 『必要最低限度の睡眠が合理的。時間は待ってくれないのだから』なんてセリフを思い出したハカセ。少し思案して決める。

 

「起こすのはもう少し後にするか」

 

「同感です。『ご主人様』はもう少し睡眠をとるべきかと。……いえ、余計に大きくなられては困りますが」

 

 この従者は一言多かった。

 

「トキも寝てるんだろうな?」

 

「もちろん。8時間ぐっすりすやすやしています」

 

 トキはすました顔で答える。

 しかし。

 

「トキの睡眠時間は2時間34分で今週の平均睡眠時間は3時間2分です!」

 

 アリスが指摘する。

 

「だ、そうだが」

 

 なんでわかるんだ? という疑問をハカセは飲み込んだ。

 

「…………」

 

 ふいっと目をそらすトキ。

 

「きちんと休める時に休んでよ、リオもトキも」

 

 ハカセの指摘に分が悪いと判断したトキは話題を変える。

 

「善処します。 と こ ろ で ハカセが拉致したその少女は一体どなたでしょうか。説明を求めます」

 

「だから拉致ってもいないって! あー、なんだかな」

 

 ハカセはアリスに目をやる。

 すると何を思ったのか、アリスは自己紹介をする。

 

「はい! アリスはアリスです!」

 

「どうもアリスさん。飛鳥馬トキです」

 

「はい! ぱんぱかぱーん! アリスとトキは友達になりました!」

 

「はい、友達です。…………面白い子ですね」

 

「君も大概だよ」

 

 はて? と言わんばかりのトキを無視して、ハカセは続けた。

 

「とりあえず、アリスのことはリオが起きてから話すよ。というかボクも状況はよくわかってないんだから」

 

 なにせ殴られて抱きしめられただけである。どんなDV彼氏?

 なんとなく、察してはいるのだが。

 

 トキは問う。

 

「ではご主人様が起きるまでどうするつもりですか? ハカセをごみ捨て……失礼、この研究室のごみ捨てでもしましょうか」

 

「ボクはゴミと同列なのかい!?」

 

「まさか、そんな恐れ多い。ゴミに失礼です」

 

「ゴミ以下かい!」

 

「身近な範囲の整理整頓も出来ず、ごみを増やし続ける分、ごみとして存在するより『下』では?」

 

「ぐっ…………善処、します」

 

「ハカセの負けです! 勝者、トキ!」

 

 いつの間にか移動していたアリスがトキの右手を天に掲げる。

 

「あいむ、うぃなー」

 

 トキもトキでそれに乗っかった。

 

「ぐぬぬ…………」

 

 このふたり、相性がいいのかもしれない。

 自分を出汁にされているのは何とも言えないが、お互いの印象はよさそうでハカセは安堵した。

 

 勝敗?が決まったところで話は戻る。

 

「それで、どうするかだけど…………」

 

「はい! アリスにいい考えがあります!」

 

 ハカセとトキは声を上げたアリスを見る。

 

「お、なんだいなんだい」

 

「アリスはハカセとトキと友達になりました! 友達とは、ゲームで友情を深めます!」

 

「ゲーム、いい響きです」

 

 得意に語るアリスはバックパックから何かを取り出した。

 それは。

 

 少し色あせたテイルズ・サガ・クロニクルだった。

 

 

 

 

:(

 

*1
知らないよ!そんな機能!

*2
「キヴォトス人ならこれくらいしないといけないかなって……」と供述。事後矯正局送り











ついに来た!ついに来た!
実装!実装!


夜鷹ハカセ

学園:ミレニアムサイエンススクール2年生(留年)
部活:[検閲済み]
年齢:17歳
誕生日:9/4
身長:137cm
趣味:新説の提唱



信じていた日常が失われるとき、人は過去を想う
恐怖に膝を抱く間も与えぬ現実
最後に笑えたのはいつか
記憶すら定かでないというのなら、加速した今を歩く足だけが、自らの証明
次回、機動勇者アバンギャルドSeed
「テイルズ・サガ」
希望を胸に、進み出せ!アリス!

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