原因は原作を一気見したのと他の方の二次創作を見たからですね。
この作品が人生で最初の小説なので温かく見守ってくださると幸いです。
それではどうぞ。
1.始まりはいつも唐突に
喧騒の中、綺麗な栗色の毛が揺れる。揺れる、と言っても過多までのショートヘアなのでそこまで揺れてもいないのだが。
とりあえず行ってみたい場所に目星をつけながら歩く。
「…相も変わらず騒がしい、というか広すぎる。」
JGE……正式名称はジャパン・ゲーミング・エキスポだったか。
日本が「国土が狭いのなら土地を広げればいいじゃない」を大真面目に実行して作られた人工島に広がるゲームの祭典。
GGCというものが世界規模ならJGEは日本規模、とは言っても神ゲー、良ゲー、凡ゲー、クソゲーなどの混沌としたゲーム文化を築いてきたゲーム大国である日本のゲーム会社の殆どが集結するのだからそこそこの規模になる。
ボクは人混みを掻き分け、だだっ広い会場を迷子になりかけながらもメールにて送られてきた場所へと向かう。
しばらく歩き続けると、大きなステージと大きなスクリーンが目に入った。舞う様に、それでいて確実に相手を仕留める様に立ち回る真紅のロボ。アレが操作性がゴミ以下の人を選ぶロボゲー、『ネフィリム・ホロウ』の二作目なのだろうか、あの機体を操っている人はどんな人なのか、そんなことを考えていると、聞き慣れた声が聞こえる。
声の聞こえた方向に視線を飛ばすと、ボクはようやくステージの上で紫のロングヘアを靡かせて話をする一人の女性を目で捉えた。
そして丁度ボクを呼びつけた張本人、天音 永遠も私のことを見つけた様で
『あ、琥珀ちゃんこっちこっち!ほら上がっておいでー』
なんて言ってきた。
あいつわざわざマイクの音量上げやがったな、ハウリングやら雑音やらがクソうるせぇ。
「うっさい、不特定多数がいる場所でマイク使って呼ぶんじゃねぇ!」
そう言いながらボク、浅霧 琥珀という名の女はステージに続く階段を登っていく。登りきったところでマイクの片割れを永遠から受け取る。ってかそのマイクどっから取り出した、その衣装物入れれる場所ないだろ
『ごめんねぇ。と、いうわけでスペシャルゲストの琥珀ちゃんでーす!』
「何も『というわけで』になってねぇよ」
『いいのいいの、はい拍手ー!』
…と、永遠がコールしてもレスポンスが帰ってくることはそうなかった。
まぁ自分で言うのもアレだが、ボクは一応雑誌の表紙を飾ったことがある。ので、反応が薄いと少し寂しい。
それでもボクは永遠よりも知名度があるわけでもないので拍手をしてくれた心優しい方々には感謝が尽きない。
「というかスペシャルって…ボク精々雑誌の表紙一回飾ったくらいだよ?知ってる人なんてそう居ないって。それにほら、
ボクは伸びた前髪で隠している左眼を軽く抑える。数年前、ちょっとした地震が発生した際にボクの左眼に鉄筋だったかが刺さって失明してしまったのだ。今では義眼生活を余儀無くされている。
別に日常生活においてそう支障があるわけでもないのだが、やはりこの眼に嫌悪感を抱く人も少なからずいる。
その点で言えば永遠は偏見なく接してくれる数少ない親友なのだが。
「それに関してはあんま気になんないんじゃない?私はかっこいいと思うなぁー、そのおめめ。みんなもそう思うよねぇ?」
「あんまこの眼の話題には触れてほしくないかな、場の空気を和ませようとしてくれてるのはわかるんだけど」
「…ごめんね?」
彼女にしては珍しく素直だ。いつもならさらに茶化すのに。
「べつにそんな気にしてないよ。それより永遠はなんでボクを呼んだの?わざわざチケットまで発送してもらっちゃって」
「ふっふっふー、実は私が紹介するゲームはこのネフホロ2だけじゃないのさ!もう一つ私が紹介するのはぁ?」
デレレレレ…と何処からともなく鳴り響くドラムロール。
え、これ永遠が口から発してんの?上手すぎでしょ。
それはそうと、デン!の音を声で鳴った後に彼女が言ったのは
「皆さんご存知!参加者三千万人以上を記録した大ヒットMMOゲーム、『シャングリラ・フロンティア』のアップデートについてでーす!あ、因みに琥珀ちゃん呼んだのは今のご時世で珍しくこのゲームをプレイしたことのない琥珀ちゃんにお勧めしたかったからなんだよねぇ」
「余計なお世話だよバカヤロウめ、ボクがMMO苦手なの知ってんだろ…」
「それを含めて、だよ。現に私もどハマりしてるしぃ?」
マジか、素直に驚いたぞ。あの他人が並べたジェンガを蹴り飛ばすことを純粋に楽しみ、鉛筆王朝とかいうバカみたいなのを立ち上げた生粋の外道である
…まぁどうせあっちでもPKerなんだろうなぁ。でもボクは優しいからね、こんな公衆の面前で奴のプレイスタイルを晒すつもりなど毛頭ないがな。
「へぇ、どんなプレイスタイルなの?参考にさせてよ」
誰も本人に聞かないとは言ってないよね。ペラッペラの仮面と、その下にある魔王の如き本性の格差をいじるためにわざと聞いてやった。
永遠がわかってて聞いてるなこいつ、みたいな表情でこっちを見てくる。
知るかオメェのプレイスタイルが真っ当だったら迷うこともねぇだろ、と思いつつも無言の笑顔で
「槍使いだよ、それもゆうsy…結構レアな武器も持ってるよ。ふふふ、いいでしょう?まぁ端的に言えば廃人に分類されるのかな?」
ふむ、こいつの口振りからして恐らく槍使いなのは確定、と。でもレア武器の前に言いかけた単語、多分『勇者』なんだよねぇ。
「ちょっと気になることがあるからスマホいじっていい?」
「全然いいよー」
永遠から許可をもらい「シャンフロ 槍使い PKer」で検索する。ヒットした名前は結構あるものの、やはり一際目立つのはアーサー・ペンシルゴンとかいうPN。鉛筆要素があるしほぼ確定だろうけど、今度は「シャンフロ 勇者 槍使い」で調べる。またしてもアーサー・ペンシルゴンがヒットする。
こーれは…黒だな
「多分永遠のキャラ特定したかも」
「っへ!?」
「みんなも知りたいんだろうけど…ボクは敢えて言わないよ。頑張って探してみてね」
「ちょっ…後で見せてよ」
「後で、ね?今見せようとするともしかしたらバレちゃうかもだし」
「…ま、まぁ私の垢バレは置いといて…今回のシャンフロアップデートでは『エクゾーディナリーモンスター』が追加されまーす!イェーイ!」
「一応聞いておくけどこの観客さんたちの中でシャンフロやってる人ー?」
手を挙げたのは…ざっと七割。つまり三割にとって微塵も興味のない話題だ。
というかそんなことよりボクは顔文字を映し出すヘルメットを被った観客の方が気になる。
なぜこんな公共の場で間抜けな格好晒してんだろ、このお客さん。
「…ボク、そろそろ行こっかな。なんかボクが居ても空気みたいになっちゃってるし、ボクにトークスキルないから…」
「そ、そうだねぇ、じゃ、バイバーイ!」
***
「シャンフロ、か…」
ボクが今までMMO系のゲームに手を出してこなかったのはある種のトラウマがあるからなのかもしれない。芸能デビューしたての頃は浮かれていたせいか、ネットでボクに浴びせられた心無い言葉の数々は特に刺さった。
『ウザい』
『不細工』
『キモい』
そんなものはまだ優しいもので、遠回しに悪口を書かれたり、長文で誹謗中傷されたり、まぁ色々あった。おかげでほぼほぼネットとのつながりを切っていた。
そしてあの頃、被災して左眼を失ったボクはさらに叩かれた。いやこれに関してはよくわからん、もっとボクに同情をしろや。
「…ううん、忘れよう。せっかくの祭典なんだし楽しまなきゃ」
その後ボクは気持ちを切り替えてシャンフロを開発したユートピア社のブースやARのシューティングゲームがあるブースなどを巡り、日が暮れ始める頃にはほぼ全てのブースを回り切った。勿論ブースに落としていったリアルマネーも馬鹿にならないレベルだが。やはり資本主義…その観点で言えば諭吉くんはとっても偉大だね。
そろそろ帰ろうかと思っていた時、唐突にチケットから音が鳴る。
『今日はジャパン・ゲーミング・エキスポに来てくれて本当にありがとう! 貴方のヴィジットボーナスを計測するね!!』
「うわっびっくりした…ヴィジットボーナス…あぁ、あのブースに金を落とすと貰えるやつか。」
『計測完了! 貴方のヴィジットボーナスは合計480ポイント! ノルマたっせーい!! 達成報酬として本日訪れたメーカーがリリースするゲームで使用できるアイテムコードをプレゼントするね!!』
本日訪れたブースの会社が作ったゲームで使えるシリアルコード…え、シャンフロのシリアルコードもあんの?あんな現実とかけ離れてそうなのに…?
「と、取り敢えず特典の確認をば…」
♢シャンフロ:スタートダッシュパス
まだシャンフロを始めていないあなたに!キャラメイク画面で使用してね!
貰える恩恵はこちら!
・収納鍵チェストリアをプレゼント!この中にポーションや聖水などのお役立ちアイテムが盛りだくさん!
・レベルアップ時に獲得するステータスポイントが二倍に!
・なんと初期武器を全種プレゼント!いろいろ試して自分に合った武器種を見つけてみてね!
♢フィジカルリモデルパス
現時点では使用できないよ!ストーリを進めてから使用してね!
「なんか破格すぎない!?」
びっくりした、特典豪華すぎるでしょ。
シャンフロは武器防具に耐久値を採用しているから武器は使い続ければぶっ壊れる。お金や素材が少ない初心者の頃は武器は結構大事に扱わなければならない。そこを初期武器を全種進呈なんてされたら格段に攻略スピードが上がる。なんなら警告が出るまで武器の耐久気にしなくてもいいじゃん。
でもアイテムは持ちすぎるとステータスにデバフがかかる。そこを解決してくれるのはチェストリアの存在。重量無視の無限収納とか強すぎ。
そして恐らく、何よりもぶっ壊れ特典なのは…
「この獲得するステータスポイントの倍増…下手したらこれが一番チートかも。だって単純計算他の人の倍強くなれるんだし」
ここまでいろいろお膳立てされて、ボーナスも付く。据え膳食わぬは男の恥って言葉もあるくらいだし…ボク女だしそもそも意味ちょっと違うか?まぁいっか。
「…これはちょっと、ううん、だいぶやってみたくなったかも」
ボクは帰り際に行きつけの中古ゲームショップ『ロックロール』に立ち寄ってシャングリラ・フロンティアを購入、早くプレイしたい気持ちを抑えつつも帰路を急ぐのだった。
家とかの場所どうしよっかなー、と思った時に他のキャラと絡みやすくするためにも主人公の家の近くにしました。何なら次話で出てくると思います。
評価・感想など、お待ちしています。