謝肉祭イベとか電車イベとか、書きたいヨォ〜!!
書きたいよう!一年生編やったら書くもん!やっぱり、二年生編後がいいな。
トリニティ総合学園での生活が始まり早四日が経過した。制服というものがなかった俺は、その間ずっと自室にいた。制服の完成と学生証の証明写真作りの撮影。それを済ませてからでないとダメらしい。その準備が昨日全て整い、今日が俺の初登校の日となった。
寝ぼけた目で、少し早めに目が覚めた。まだ眠かったので、そのままもう一回目を閉じようとして……。
俺を現実に引き戻したのは、目覚まし時計の音ではなく、容赦なくドアを叩く音だった。
「おはよーっす、ケンゴくん! 準備はいいっすか? 登校初日から遅刻するっすよ〜」
扉が開くと、そこには既に制服を着ているイチカが立っていた。イチカはそのまま窓にかかったカーテンを開け放ち、暗がりの部屋に陽光を入れる。
「……朝から元気だな。監視役の仕事にゃ、モーニングコールも含まれてるのか?」
「当然っす。貴方の生存確認もしないといけませんし。貴方の新しい生活がようやく始まるんですから、遅刻せずに行かないと私が怒られるっすよ」
「……お前も大変だな」
「そうでもないっすよ?意外と貴方と話すの、まあまあ楽しいっすから」
とは言っても、一方的に彼女が話を振ってくれるだけなのだが。別にそれがウザいとか迷惑とかではない。何も知らない俺からすれば、たとえあまり関係のないことでも聞いてて退屈はしないし、楽しんでいる。一応、苦にはならなさそうだなと、これからの生活に少しだけ光を見る。
「ほらほら、さっさと着替えるっすよ。外で待っとくんで、早めに来てくださいね」
そう言い残し、イチカは部屋から出て行ったのだった。俺はベッドから立ち上がり、ハンガーに立て掛けられた俺専用の正義実現委員会の制服に身を包む。黒のカッターシャツに真っ赤なネクタイ、黒のズボン、それと黒のブレザーを身に纏いカバンとそこに学生証と手帳、勉強道具を入れ部屋を出る。
なぜ、俺の制服があの部活の服なのか……。それは、二日前に遡る。
□□□
二日前。俺の処遇について新たな通達があると言われ、俺はまたあの取り調べ室……ではなく、正義実現委員会部室を訪れた時のことだ。
「天堕さん。あなたには、正義実現委員会の制服を着用し、私たちの新たな部員として籍を置いてもらいます」
ハスミ先輩は、俺の「脆さ」を再確認した上で、淡々とその理由を告げた。
「この学園は、外から見えるほど清廉潔白な場所ではありません。派閥争い、家柄の優劣、そして異分子に対する冷酷な視線。特にあなたのような特異な存在は、格好の攻撃対象になります」
「……いじめ、ってことか。お嬢様学校の割に、世知辛いな」
「否定はしません。ですが、あなたが我々というトリニティ最大の武力組織の看板を背負っていれば、話は別です。不用意に手を出せば、委員会やその生徒会に対する謀反と同義ですから」
つまり、この黒い制服は、俺という一般人並みの耐久力しかない獲物を守るための、最も効果的な盾――『魔除け』というわけだ。
「他にもありそうだな。……安易に触れて問題を起こさせないためのものなんだろ?一武力組織の一員つう事は、その者の行動によって仲間の立場を危うくする可能性もある。つまりは、一種の首輪だ」
「言い方はともかく、それがあなたを学園に馴染ませるための最短ルートです。この制服を着ていれば、他者はあなたを正義実現委員会だと認識し、不用意な嫌がらせや接触を抑えられます」
確かにそれはその通りだ。
アリウスにいた時間は1時間にも満たないが、ここトリニティも十分きな臭い場所だ。
話に聞く限り政治的な要素がとにかく強いようだし、ティーパーティーの部員を見ている時、妙なドロドロ感がした。学園だというのに、マトモな青春活動ができる場所ではなさそうだなとそう思った。
「でもハスミ先輩?彼の耐久面を考えると……それはちょっと難しくありませんか?」
「……と、言いますと?」
イチカの言葉に、ハスミは真剣な顔でイチカの方を向いた。
「うちは治安維持のために度々出動しますよね?パトロールだって交代制とはいえ毎日のようにしてます。そうでなくても、ここキヴォトスでは銃撃戦は日常茶飯事ですし……彼にその対応をさせるのはあんまりじゃないっすかね?」
「その心配はもっともですね。ですが、この決定は、ティーパーティーホストのナギサ様が決められた事です。それに、これからの活動に関してはルイ委員長に一任されており、その委員長の判断でもあります」
「ルイ委員長の……?」
「それに、彼にはツルギ以上の再生能力があります。欠陥もありますが、天堕さんのあの片翼ならば大丈夫とも思っています。」
「ですがご安心ください。決してあなたに無理はさせません。何かあればすぐに私やイチカ、正義実現委員会のお仲間にお伝えください。私たちができる限りあなたをサポートしますので」
「信用はされてないはずなのに……やけに手厚いご厚意だな」
その優しさに疑いを向けている自分に腹が立って思わず少しだけ顔が歪むが……バレないようになんとか押し殺した。
触らぬ神に祟りなし、不用意に手を出して何かの引き金を起こさないための予防でもあるし、いつでもすぐに処罰できるようにというのもあるんだろう。
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回想を終えて寮を出ると、出入口で待っていたイチカが誰かといた。友達だろうか。……銀髪に頭に羽根の生えた少女と会話している。
すると、イチカがこちらの存在に気付いたのか、その子と別れ、次に俺に手を振った。
「待ってたっすよケンゴくん、ちゃんと降りてきたっすね」
「一応な」
イチカは、俺を見て顎に手を当てながら舐め回すようにこちらを見る。その視線は一体なんだ?と思いながらイチカを見る。
「いや、結構似合ってるなと思いまして。やっぱり、黒い翼には黒がよく似合いますね。……カッコいいっすよ」
「…………そうか。ありがとう」
何故か少し、顔が赤くなる。“似合ってる”とか“かっこいい”とか言われ慣れない褒め言葉に照れくさくなり、顔を斜めに向けて逸らす。
「そんなに嬉しいっすか?その制服……」
「……そうだな。俺も結構気に入ってる。気に入ってる服を似合ってると言われたら、誰だって嬉しいだろ」
「あはは、それもそうっすよね。それじゃあ、行きましょう」
少し雑談の後、俺たちは校舎を目指して歩き出したのだった。
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トリニティの教室は、外観に違わず白や金などを基調としたまさに、豪華なお嬢様学校を彷彿とさせる空間だった。校舎を歩く中、周りを見ると。俺と似た制服の子やシスター服、白を基調とした品のある制服を着た人がいた。この学園では、制服はある程度自由なのだろうか?もはや、制服と言っていいのかもわからないのがあったが、校則では大丈夫とのことで気にしないことにした。そうこう考えてるうちに、教室に辿り着いた。
「ここがケンゴ君の教室っす。今日からここが一緒に学ぶ場所っす」
扉を開けろと言わんばかりにその横に移動して、扉に手を指し示すイチカ。自分で開けろということだろう。俺は意を決して、扉に手をかけ、そのドアを開け放ち……。
瞬間。教室の視線が俺に集まる。大勢が奇異な目でこちらを見ている。
「……男の子?」
「あのヘイロー、本当に壊れてる……」
「男の子、あれが男の子なの……?」
「翼が片方しかない」
「なんでだろ?」
「男なんて穢らわしい」
向けられる視線は、昨日よりもさらに刺々しい。好奇、畏怖、そして明確な拒絶ともとれた。キヴォトスの理において、壊れたヘイローを持つ存在は、彼女たちにとって死んでいるはずの人間でそれが普通に歩いているのだ。恐怖しないわけもない。
「ほら、ケンゴくん。席はあそこっす。私の隣、空けといてもらったっすから」
イチカが何食わぬ顔で俺の背中を押し、窓際の席へと誘導する。彼女が隣に座っているだけで、周囲のざわめきがわずかに引くのがわかった。正義実現委員会だからというのもあるだろうが、それならこの教室にいる黒い制服の数人もそうだ。おそらく、それだけ彼女は信頼されてる存在……なのかもしれない。それもそのはず。あの部活はこの自治区の治安維持組織……面倒を避けようとするのは当たり前のことだ。俺だってそうする。
オートマタが手際よく再生したBDの映像授業は、驚くほど高精細で、かつ淡々としていた。ホログラムで映し出される戦術マップや過去の抗争記録。周囲の生徒たちは手元の端末で熱心にメモを取っているが、その視線は時折、モニターを通り越して俺のヘイローへと突き刺さる。
「……授業をディスクで済ませるのか。合理的というか、味気ないな」
「まあ、人によって教え方が違うよりは公平っすから。……ふわぁ、でもやっぱり眠いっすね……」
隣の席でイチカが大きな欠伸をした。彼女はこの形式に慣れきっているようで、投影される光を心地よさそうに浴びながら、器用にもノートにメモをしている。映像に出る情報に俺は目を釘告げにしながら、この世界の常識を学ぶのだった。
□□□
放課後。チャイムと共にイチカはパッと覚醒し、愛用のライフルを肩に担いだ。
「さて、ここからは部活動……初めての部活動の始まりっす〜!ケンゴくん、準備はいいっすか?」
「ああ。……で、俺の装備は?」
俺の問いに、イチカは申し訳なさそうに、タクティカルベルトに装着された救急キットと小型の無線機を指し示した。
「ナギサ様から、君に銃を持たせるのはまだ許可できないって言われてるんすよ。……君、身体能力自体は悪くないみたいっすけど、何せその、ヘイローのこともあるし……」
「……まあ、当然か」
「まあ、そういうことっす。でも、もしもの時は私の後ろに隠れてくれればいいっすからね。監視対象とはいえ、あまり怪我させるわけにもいかないので」
俺たちは放課後の賑わう学園街へと繰り出した。白亜の建物が並ぶ美しい街並みだが、路地裏には不穏な気配が漂っている。それがこの学園の、そしてキヴォトスの日常なのだと、授業の映像が教えてくれた。
「――こちら、パトロール中の1年生チーム。北区の第3路地で乱闘騒ぎを確認。介入するっす」
イチカが無線に報告を入れる。その声は、教室での怠惰な姿からは想像もつかないほど冷徹で、鋭い。
「ケンゴくん、遅れないでくださいよ!」
現場に辿り着くと、数人のスケバンが一般生徒を囲み、威嚇射撃を繰り返していた。
「正義実現委員会っす。大人しくしてくださいよ」
イチカが飛び出した。無駄のない挙動、正確無比な射撃がスケバンたちに飛ぶ。それを横目に観察しつつ、敵の注意を引きつけている間に、俺は逃げ遅れた生徒を物陰へと誘導する。
「おい、あいつ! 委員会の一年坊と一緒にいる男!そいつはアタシらの獲物だぞ!」
「……っ、こっちに気づいたか」
敵の一人が俺を狙って引き金を引き、弾丸が空を切り裂く。俺は咄嗟に左の黒い翼を大きく広げ、盾のように構えた。
――ガガガガガッ!!
昨日と同じ、鉄板を叩くような硬質な衝撃が翼を打つ。翼自体はびくともしない。だが、敵は一人ではない。イチカが残りを相手してくれていたから、油断していた。もう一人が横から回り込み、翼の防御範囲をすり抜けて俺の肩を狙う。
「させないっす!」
イチカが叫ぶが、敵の方が一瞬早かった。
――ドスッ!!
「っ……!!」
鋭い衝撃。キヴォトスの生徒たちのように「弾き返す」ことはできなかった。弾丸は容易く俺の制服を食い破り、その下の肉を裂いた。現実世界の人間と同じ、剥き出しの耐久力。弾丸が肉を抉る生々しい感覚が脳を焼く。
「ぐっ、あああああ!!」
鮮血が吹き出し、黒い制服の肩口を瞬く間に真っ赤に染め上げる。
「ケンゴくん!?」
イチカの瞳が、大きく見開かれる。彼女は一瞬で敵の懐に踏み込むと、容赦のない零距離射撃でスケバンを吹き飛ばした。そして、他の仲間にも同じのを浴びせ、敵が完全に沈黙したのを確認するやいなや、彼女は銃を放り出すようにして俺へ駆け寄った。
「……大丈夫っすか!傷は、傷まないっすか?!」
「……ハァ、ハァ……。ああ、大丈夫だ。……ほら」
俺が血に濡れた手で制服の肩を強引に捲ると、そこには不気味に蠢く「黒い霧」があった。
霧が傷口を埋めるように渦巻き、数秒も経たないうちに、裂けた肉が元通りに繋がっていく。痛みだけが、尾を引くように残っていた。
「…………治ってる。でも、その血……」
イチカは、俺の腕から滴り落ちる血を見つめ、震える手でそれを拭った。彼女たちにとって、銃で撃たれてこれほど鮮やかな血を流す存在は、もはや恐怖に近い異質なものなのだろう。
「……悪い。折角の制服を汚しちまった」
「……そんなこと、どうでもいいっすよ。君、本当に……」
イチカはそこで言葉を切り、唇を噛んだ。彼女の瞳には、監視対象への警戒ではなく、一人の同級生に向けられた、痛々しいほどの不安と心配が混ざっていた。
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