記憶喪失の男子生徒と仲正イチカ   作:松花 陽気

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ブルアカの今やってる復刻ガチャ。


仲正イチカがでましたー!!!そして、ガチャ引きました!
110連で出ましたー!!やったぁーー!!!

トリトリトリのイベスト常設してたので、それも見なくては。
因みに、今回は後書きに新キャラの設定貼ってあります。


第五話:休暇

第五話:休暇

俺がこの学園に通い始めて、早数週間が経過した。今、俺たちは慣れない書類仕事をやっていた。まあ、慣れないのは、俺だけだが。

パトロール中の負傷が絶えない俺を見兼ねて、ルイ委員長から下された命令だった。

 

――傷は治れど痛みは残るもの。毎日のようにそれを受けるのは心身ともに辛かろう?

 

とルイ委員長から一時的な事務作業を割り振られたわけだ。怪我が治るまでの数日間、俺は正義実現委員会の事務室で、イチカと共に山のような書類と格闘する。

 

書類の多さに項垂れながら、俺はふとイチカの方を見る。急ぎのものというと、備品や弾倉の発注書類とか経理的なものを除けば、どれも期限のない報告書ばかりだ。だから、やることと言えば書類の仕分けぐらいしか俺にはできない。

隣のイチカを見て、意外だなと思う。いつもパトロールに出ているイチカ。仲間の指揮を取ったり、怪我した仲間や民間人に応急処置したり、自分も戦闘で前に出たりと臨機応変に忙しくしている印象の彼女。特に闘いに関しては一目あると思っている。

 

その理由は。所謂、雑務に近い事務的な仕事を難なく片付けていたからだった。入ったばかりの一年生にしては、テキパキと特に悩んだり躓く事なくこなせており。その淡々とした動きは、まるでロボットのようだった。

 

「…………」

 

「……ん?えと…こっち見てどうしたんすか?私の顔になにかついてます?」

 

書類をめくる手が止まっていることに気づいたイチカが、不思議そうに首を傾げた。事務机に積まれた書類の束を、彼女は素早く捌いている。内容を精査し、不備があれば付箋を貼り、次々と仕分けしていくその手つきは、戦場でのライフル捌きに負けないほど正確で無駄がない。

 

「いや、すまんな。あまりに仕事が早いから、その凄さに見入っちまっただけだ」

 

「そうっすかね? ……まあ、そんなに難しい仕事じゃないのでサクッといきますね」

 

「サクッと、ね……。一年生でこれだけ事務処理ができるのは、普通に凄いと思うよ」

 

因みに俺が担当しているのは、日付順に書類を並べ替えるだけの単純作業だ。それでも慣れないうちは手間取るというのに、彼女は片手間でコーヒーを啜りながら、鼻歌混じりに仕事を終わらせていく。

 

「パトロールだけが正義実現委員会の仕事じゃないっすから。……はい、これでおしまい。ケンゴくんの方も、あと少しっすね?」

 

「ああ。これでおしまいだ」

 

最後の一束をトレイに置く。 夕暮れの事務室に、心地よい達成感が漂った。 いつも銃火器に囲まれている彼女が、ペンを握って真剣に机に向かう姿。そのギャップに、俺はほんの少しだけ、彼女という一人の少女への理解が深まった気がした。

 

「今日もお疲れ様。お二人とも、よく頑張ってくれましたね」

 

部室の扉からそんな声が聞こえてくると、2人は声の方へと振り向いた。現れたのは、ルイ委員長であった。彼女は手元に、それなりに重量感のありそうな黒いアタッシュケースを抱えて俺たちの前まで近づいた。

 

「ルイ委員長。……それが、例の?」

 

シズミ副委員長の姿は見当たらないが、イチカが期待に満ちた目でその箱を見つめる。ルイ委員長は優雅に微笑み、俺の前の机にそのケースを置いた。

 

「ええ。イチカの熱心なプレゼンと、ナギサ様への粘り強い交渉の成果です」

 

「プレゼンっていうほどのものでも……ただ、このままだとやばいなぁって心配でお願いしただけですし」

 

「そうかな?結構必死さもあったような気がした……まあ、そういうことにしておこう」

 

「……さっ!開けてみてください、ケンゴくん」

 

俺が言われるままにラッチを外すと、中には整然と並べられた装備品が収まっていた。

防弾ベスト。艶消しの黒で統一された、重厚そうな作りの物。そして、スタングレネード(閃光手榴弾)と、スモークグレネード(発煙筒)が数個と入っていた。

 

「銃ではありませんが、今のあなたにとって最も必要な装備品です」

 

ルイ委員長は、指先で防弾ベストの表面をなぞった。

 

「このベスト、実は特別製らしいですよ。キヴォトスの一般的な防弾繊維に加えて、正義実現委員の重火器の反動にも耐えうる特殊合金が編み込まれています。……あなたのその体を、物理的に守るためにね」

 

ベストの前面や側面には、先ほどのグレネード類を吊るせるホルダーが備わっている。これを装備すれば、ただ逃げ惑うだけではなく、敵の視界を奪い、自ら有利な状況を作り出すこともできるはずだ。

 

「……ありがとうございます。大切に使わせてもらいます」

 

「よかったっすねケンゴくん! これで私の心臓への負担も少しは減るってもんすね。改めて、ありがとうございますルイ委員長!」

 

「気にするなイチカ。なんてたって、大切な後輩からのお願いなんだ、断る理由などないさ。それに、君が言ってくれなければ私もこうまでしなかったさ」

 

「またまた〜?私が言わなくてもそのうちルイ委員長ならやってたんじゃないっすかぁ?」

 

「ん〜……そうかもしれないね。だが、今回は君のおかげだ。後輩を導くものして礼を言うよイチカ。素直に受け取りたまえ」

 

「そういうことなら、はい。どういたしましてっす!」

 

「イチカ、ありがとうな」

 

「いいっすよ!これも仕事のうちっすから」

 

イチカが自分のことのように嬉しそうに笑う。 記憶もなく、ヘイローも壊れた俺。けれど、この重たいベストだけは、俺がこの学園にいていいという「許可証」のようにも感じられた。

 

「あーそうそう、ケンゴくん?」

 

「はい?なんですか?」

 

これから寮に戻ろうと準備をしていると、ルイ委員長が呼び止められた。

 

「いやなに、君ここに来て休日はあったかなと思ってね?」

 

「休日……ですか?」

 

そう言われて、通い始めてからのことを思い返す。毎日の1日の生活を見直す。授業に出て、正義実現委員のパトロールに行き、鎮圧、帰ってきて風呂入って寝る。その繰り返し、土日の日は授業がない代わりにいつも通りパトロールに勤しむ日々……。言われてみれば、ここ数週間の間は、マトモな休みがなかったような気がする。

 

「君が来てからもうそこそこ経つだろう?監視のためとはいえ、ずっと学園の中に縛り続けるのもよくない」

 

「あー、確かにっすね。ここ最近は、私も休みが取れてなかった気がするっす」

 

「そうだろ?それに、パトロールで街に出ることがあってもマトモに案内だってできていないのだし、この際だから二人で出掛けてみてはどうかな?……というわけだから、明日は休みにしといてあげるよ」

 

「えっ!?そんな急に休みなんて入れて大丈夫なんですか!?」

 

「大丈夫さ。二人減るくらいさほど問題ではない。君たちはなにも気にせず二人で楽しんできなさい」

「それでは私はこれで失礼するよ。なにかあれば、気軽に聞きにきたまえよ!」

 

元来た道を戻りながら、そう言い残して、委員長はその場から去っていくのだった。急に与えられた休暇に俺たちは少し困惑しながらも、理解して委員長の計らいに甘えることにして、明日のために今日は早めに就寝するのだった。

 

□□□

 

翌朝。 編入以来、初めての完全な休日が訪れた。 昨日の事務仕事の疲れもあり、俺は目覚まし時計を止めて、シーツの温もりに身を沈めていた。二度寝という贅沢を享受しようと、再び目を閉じたその時。

 

「おはよーっす! ケンゴくん、起きてるっすかー?」

 

遠慮のないノックの音と共に、聞き慣れた声がドア越しに響く。

 

「……イチカか。悪いが、今日は非番のはずだ。あと三時間は寝かせてくれ」

 

「そんなこと言わずに!気を利かせてくれた委員長の想いを無碍にするわけにはいかないっすから。今日は私がプランを立ててきたんで、今日はとことんこの街の魅力を伝えるために案内して行くっすよ〜!」

 

「え〜……眠いんだけど?」

 

「この時間からまた寝たら、昼夜逆転しちゃうっすよ?それに、ケンゴ君も昨日は、ようやく街をゆっくり見られるのかーって少し期待した目でしたよ。こっちも結構頑張って練ったんすから、私の苦労も考えて欲しいっすよ」

 

「……はぁ。わかったよ、そこまで準備されちゃう断るのも悪いしな」

 

眠いのは眠いが、街観光が楽しみなのもまた事実。今しかできないことを優先するのなら、おそらく街観光が正解だろう。それに、さっきもあったが、やっぱり断りづらいというのもある。

 

「あはは、話がわかる同級生で助かるっす! 準備ができたら寮の外に集合っすよ。あんまり女の子を待たせないようにっすよ!」

 

そう言って、イチカは上機嫌に扉を閉めた。

俺は重い身体を引きずりながらベッドから抜け出し、昨日ルイ委員長から受け取ったばかりの防弾ベストを手に取る。

 

鏡の前でシャツの上からそれを着込み、上から黒いブレザーを羽織った。見た目には少し肩幅が広くなった程度で、違和感はない。だが、ズッシリとした特殊合金の重みが、それの硬さを再確認させる。

 

「……よし。行くか」

 

左手側にある大きな翼を少しだけ動かして位置を整え、俺は部屋を後にした。

 

□□□

 

寮の外に出ると、そこにはいつものライフルとカジュアルなバッグを肩にかけたイチカが待っていた。この世界では、銃の携帯は普通の事だ。だから、本当なら俺も持っておくべきなんだが……今は許可無しでは使えない。だから、もう戦闘になったら前線をイチカに任せるしかないな。……ちょっと、心苦しいが。

 

「お待たせしました! さぁ、記念すべき初休日のスタートっす!」

 

そんな俺の悩みを吹き飛ばすかのように、元気よく声を上げるイチカに連れられてしばらく街を歩いた。いつもの通学路とは違う道を歩いていると、そこにはパトロール中には意識していなかった、輝くような光景が広がっていた。

 

「……すごいな。戦いがないと、こんなに綺麗に見えるものか」

 

「でしょ? いつもは不審者がいないかとか、銃声がしないかとか、そんな殺伐としたことばかり気にして歩いてるっすから。今日はただの同じ学校の友達として街を歩くっすよ」

 

「……友達、か。監視役じゃなくて?」

 

「もー、今日はそういうのナシっす! ほら、行くっすよケンゴくん」

 

イチカは俺の腕を軽く引き、白亜の街並みへと歩き出した。

 

□□□

 

「まずはここっす! このカフェのスコーン、絶品なんすよ。……実は二年生のハスミ先輩、ここに週三回は通いたいって言ってるくらいお気に入りだって。……でも最近、体重が気になるとかでっ控えてて、とても辛そうな顔してたっすね」

 

「……あのストイックなハスミ先輩が? 意外だな」

 

「あはは、あの人も私たちと同じで、甘いものには目がない普通の女の子なんすよ。私たちも一個ずつ買って、食べ歩きしちゃうっすか?」

 

「こういう店って、そういうのできないんじゃないのか?」

 

「大丈夫っすよ。この店はトリニティじゃ珍しいタイプの店で、買い食いができるんす。ちょっと行儀が悪いのでトリニティ生でそうする人はそういないんすけどね」

 

「まあ、クレープ屋台みたいなもんってわけか」

 

「そうそう!そんな感じっすね。あ、すみません!プレーン二つ、砂糖多めでお願いするっす!」

 

イチカが慣れた様子で注文を済ませると、焼きたての甘い香りが漂ってきた。手渡されたスコーンは驚くほど軽く、口の中でホロホロと解けていく。

 

「……美味いな」

 

「でしょ? でもこれ、ハスミ先輩の前で食べるのはダメっすよ。流石に目の前で食べられたりしたら、ハスミ先輩も黙っていられないと思うんで」

 

いったいなにをされるんだろう?少し気になったりするが特に触れないことにした。

 

「……あ、そういえばツルギ先輩も、実はこういう可愛いお店のショップカードを集めるのが趣味だって噂があるんすよ」

 

「ツルギ先輩が? ……失礼だが、暴れること以外に興味があるようには見えなかったが」

 

「あはは、ひどいっすね! でも、あの人も制服を脱げば、恋愛小説の好きな女の子なんすよ。……まぁ、現場に出ると、あんな感じになっちゃうっすけど」

 

イチカは楽しそうに笑いながら、スコーンの欠片を口に運ぶのだった。

 

□□□

 

広場に出ると、多くの生徒たちが談笑していた。彼女たちの頭上には色とりどりのヘイローが輝き、銃を抱えてはいるものの、その表情は穏やかだ。

 

「ケンゴくん。見てください、あのベンチで居眠りしてる子たち。平和そのものっすよね」

 

「……そうだな。俺がここに来てから見たのは、怒号と銃声ばかりだったから。……少し、不思議な気分だ」

 

「これもこの街の一面っす。私たちが委員会で泥臭いことやって守ろうとしてるのは、ああいうなんてことない昼寝の時間だったりするんすよ」

 

イチカはそう言って、並んで歩く俺をチラリと見た。

 

「得体の知れない存在だって、最初はみんな怯えてましたけど。こうして同じ制服を着て、一緒にアイス食べてれば、そのうち誰も気にしなくなるっす……ただ」

「もし、君がこの平穏を乱すようなことがあれば、私はその時、私の仕事を全うしなきゃいけなくなるっす。……わかってますか?」

 

不意に投げかけられた冷徹な言葉。 あの時見た彼女の瞳が俺の目に映る。イチカは変わらず微笑んでいたが、その手はライフルのスリングに添えられていた。 彼女は俺を同級生として気遣いながらも、同時にいつでも排除すべき対象として見ている。

 

「……わかってるよ。今更言われなくてもな」

 

「ならよし! 重苦しい話はここまでっす。次はあっちの雑貨屋を見に行くっすよ」

 

そうしてまた、いつものイチカが出てきていつも通りに会話するのだった。

 

□□□

 

日が傾き始め、街がオレンジ色に染まっていく頃。 俺たちは高台にある公園のベンチに座り、街を一望していた。

 

支給されたベストの重みは、一日歩いたせいで少し肩に食い込んでいる。 隣に座るイチカとの距離は、手を伸ばせば届くほど近い。

 

「……イチカ。今日は、連れ出してくれてありがとう」

 

「……仕事っすから。でも、そうですね。君が大人しくいてくれたおかげで、私も少しはリフレッシュできたかな」

 

イチカはそう言って、満足げに背伸びをした。 夕闇が迫り、街の灯りがポツポツと灯り始める。

 

「さぁ、暗くなる前に帰りましょう。明日からはまた、監視……じゃなくて、パトロールが待ってるんすから。……君の隣、明日もちゃんと空けとくっすから。一番近くで見張るのが、私の役目なんで」

 

「……ああ。気が済むまでどうぞ?」

 

俺は立ち上がり、彼女の隣を歩き出した。 いつか、この「監視」という言葉が別の何かに変わる日は来るのだろうか。 沈みゆく夕日の中、俺の長い影が、彼女の影と重なりそうで、決して重ならないまま続いていった。




■ 天堕 ケンゴ(Amada Kengo)

【基本情報】

所属:トリニティ総合学園

所属部活:正義実現委員会(監視対象兼、準構成員)

学年:1年生(仲正イチカと同級生)

年齢:15歳

誕生日:11月24日

趣味:散策、散歩、街歩き

身長:162センチ

パトロールをしている間に、街を歩く事が好きになったそう。
それを恥ずかしくて言えていない。あと、自分に対しては結構ルーズでマイペース。観察眼に優れており、イチカの心を見抜いた。
今の所、仕事の関係上イチカと行動を共にしている事が多く。一番話す間柄である。スズミという生徒ともたまに話す事がある。聞いている曲の話をしてくれるが、あまりよくわかっていない。とりあえず頷いて聞いてる。私物という私物が全くない。自分が何者かについて、少し気になっている。

【身体的・神秘的特徴】

ヒビ割れたヘイロー: 通常、ヘイローの破壊は死を意味するが、彼は割れた状態で平然と存在している。デザイン自体は他者と大差ないように見えるが、その存立自体がキヴォトスの神秘に対する「バグ」のような状態。テラー化に思えるが、まだテラーには至れていない未完成状態。精神は結構屈強なので折れない心を持つ。

簡単に血が流れる脆弱な肉体: キヴォトスの住人が銃弾を受けても「痛い」で済むのに対し、彼は肉体が損壊し、多量の赤い鮮血を流す。

超再生能力: 致命傷に近い傷であっても、数秒から数分で完治する。ただし、流れた血は消えず、「痛み」もしっかりと残るため、精神的な摩耗は激しい。

漆黒の翼: 彼の体には翼がある。左手側に生えている左翼だ。翼は大きく、非常に硬い。これを盾のように使い、弾丸を防ぐことができるが、大きさの割にさほど重さに困ってはいない。
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