次の話で一通り終わります。
Q1.なぜほかの武器じゃなくて狩猟笛なの?
A1.作者が好きで使っているから。
Q2.狩猟笛のシーン全然なくね?
A2.……。
第一章:崩れ去る日常と一通の「退学届」
アビドス高等学校。その荒廃した部室に、重苦しい沈黙が立ち込めていた。
机の上に置かれた一通の封筒。そこには、見慣れた、しかし今はあまりにも冷たく感じる「退学届」の文字。
「……嘘、だよね? ホシノ先輩が、自分からアビドスを捨てるなんて」
セリカの声が震えていた。
シロコは無言で拳を握りしめ、ノノミは潤んだ瞳で窓の外の砂漠を見つめている。
「ホシノは、自分を犠牲にしてアビドスを守るつもりなんだと思う」
先生の声は低く、しかし断固とした意志が宿っていた。
「カイザーコーポレーション、そして多額の借金……。彼女は一人でそれらすべてを背負い、闇に消えようとしている」
「そんなの……先輩一人に背負わせるわけにいかないわよ!」
セリカが顔を上げた。
だが、敵は巨大な資本と軍事力を持つカイザーだ。対策委員会だけの力では、ホシノが連れ去られたであろう「秘密施設」の場所にたどり着けるか分からない。
「先生……何か、手はないんですか?」
先生は、自分のスマートフォンを取り出した。
その画面には、先日ハンターと交換した「モモトーク」のアイコン。
そこには、連投された怒りのアイルースタンプの跡がまだ残っていた。
「……最強の助っ人に、クエスト(依頼)を出そう」
第二章:緊急クエスト発令
ブラックマーケット。ハンターズギルドの拠点。
深夜、ハンターのスマートフォンが激しく鳴り響いた。
「……ぬう。またこの鉄の板が騒いでいるのか」
寝惚け眼でスマホを掴んだハンターだったが、通知の内容を見た瞬間、その瞳に野生の鋭さが戻った。
クエスト名:アビドス生徒会、小鳥遊ホシノの救出
依頼主 :シャーレの先生
報酬 :アビドスの未来
「……先生からの『緊急クエスト』の依頼か。それにしても報酬がなんと曖昧な……、はっはっは!……面白い!これこそがギルドの存在意義だ!」
ハンターが勢いよく立ち上がると同時に、部屋の扉が開いた。
入ってきたのは、顔を青ざめさせたユメだった。
「マスター……。今の、見ました」
「ユメ。夜更かしは肌に悪いぞ。……だが、何か感じたようだな……」
「小鳥遊ホシノ……ホシノ……。ホシノちゃん……。その名前に、胸が締め付けられるんです。さっきから、頭の中で知らない景色が……砂嵐の中で誰かが泣いている声が……っ!」
ユメは突然、激しい頭痛に襲われたように頭を抱え、その場に崩れ落ちた。
ハンターは即座に駆け寄り、彼女の肩を支える。
「ユメ! しっかりしろ!」
異変に気づいたギルドのメンバーたちが、次々と集まってきた。
「そんなに騒いでどうしたんd……ユメ先生!? 大丈夫っすか!」
「ギルマス、ユメ先生が……!今すぐ救護室に……!」
生徒たちが心配そうに見守る中、ユメは脂汗を流しながら、ハンターの腕を強く掴んだ。
「ハンターさん……。私を、連れて行ってください。その、ホシノちゃんという子のところに……。行かなきゃいけない気がするんです。私が、彼女を助けなきゃいけないって……」
「……記憶が戻るきっかけになるかもしれん。だが、戦場は地獄だぞ。カイザーの連中は、今度こそ本気で来る」
「分かっています……。でも、私が私であるために……逃げちゃいけないんです」
ユメの瞳には、かつてない強い光が宿っていた。
ハンターはそれを見て、静かに笑った。
「よし。緊急クエスト受託だ!依頼主の望みを叶え、かつ、お前の『因縁』に決着をつけろ!……スズナ! 留守は任せたぞ! ギルド戦力の7割を出動準備させろ!残りは戦闘準備を整えて待機だ!遅れるなよ!」
「了解っす、ギルドマスター!全員、武装しろ!ユメ先生とギルマスの道を作るぞ!!」
「「「おおおぉぉぉっ!!!」」」
ブラックマーケットの闇を、ハンターズギルドの鬨の声が震わせた。
第三章:砂漠を往く古龍の鼓動
カイザーコーポレーションの秘密軍事拠点。
そこには、黒服と取引し拘束されたホシノと、彼女を拘束している施設を取り囲む圧倒的な数のオートマタ、そして重武装の傭兵たちが待ち構えている。
別室にてカイザーの重役がモニターを眺めながら嘲笑う。
アビドス対策委員会が近づいているとの報告は受けているが、圧倒的な武力の前では塵芥になるのは目に見えていた。
その時だった。
拠点の前方の砂丘が、まるで火山の噴火のように爆発した。
「……なんだ!? 地震か!?」
砂煙の中から現れたのは、戦車でもヘリでもない。
雷鳴のような旋律を轟かせる、二メートルの巨漢。
狩猟笛を担ぎ、あたりを蹴散らしながら突進してくるハンターの姿だった。
「はっはあ! 随分と物々しい歓迎じゃないか! だが、俺のクエストを邪魔するには、火力が足りんぞ!」
ハンターが振るった一撃が、カイザーの外壁を粉砕する。
その後ろからは、ハンターズギルドのメンバーたちが「ユメ先生を守れーーっ!」と叫びながら、マーケットで鍛え上げたゲリラ戦法で突入を開始した。
「先生、遅れたな! ターゲットの場所は特定しているか!」
通信機(ユメが持ってスピーカーモードにしている)の向こうから、先生の声が響く。
『ハンターさん! ホシノは地下三層の部屋です! アビドスの生徒達が正面から道を作ります。ハンターさんは最短ルートで地下へ!』
「了解だ! ユメ、俺の背中にしっかり捕まっていろ!」
ハンターはユメを片腕で抱え上げ、文字通り「壁を突き破りながら」地下へと直進した。
飛竜の巣を強襲するような、あまりにも荒々しい動き。
「ハンターさん……。近いです。彼女が、近くにいます……!」
ユメの頭の中で、霧が晴れていく。
断片的な記憶が、一つの線に繋がろうとしていた。
第四章:再会、そして覚醒
地下実験室。
ホシノは、意識が朦朧とする中で、誰かの呼ぶ声を聞いていた。
(……ホシノ。ホシノちゃん……)
(……ダメだよ、先輩。おじさんは、もう……。アビドスを……みんなを……)
(……いいえ。あなたは、誰よりも強くて、優しい子。だから……)
「……ユメ、先輩……?」
ホシノが目を開けた。
そこには、実験室の鋼鉄の扉を、巨大な狩猟笛の一撃で粉砕して踏み込んできた、一人の男性と。
そして、その後ろで肩で息をしながら、自分を見つめる一人の女性がいた。
時間は止まった。
機械の作動音も、地上の爆音も、今のホシノには聞こえなかった。
そこに立っていたのは、記憶の中の姿よりも少し大人びた、しかし間違いなく、自分が片時も忘れなかった先輩の姿。
「……ホシノ、ちゃん?」
ユメの声が、実験室に響いた。
その瞬間、ユメの脳内にすべての記憶が濁流となって流れ込んだ。
アビドスの生徒会長だった日々。
ホシノと過ごした穏やかな放課後。
そして、あの砂嵐の日、帰り道を失い、砂漠を彷徨ったあの日。
「……あ。あああぁぁぁ……っ!」
ユメは膝をつき、嗚咽を漏らした。
失われていた時間の重みが、一気に彼女を襲う。
「……本当に、ユメ先輩……なの?」
ホシノの瞳から、大粒の涙が溢れ出した。
「おじさん……夢を、見てるのかな……。死んじゃったのかな……」
「……夢じゃないぞ、嬢ちゃん」
ハンターが、静かに、しかし力強く二人の間に立った。
「俺が拾ったのは、ただの遭難者じゃなかった。キヴォトスの未来を担う、大切な希望だったようだ。……感動の再会を邪魔する奴らは、俺がすべて片付けてやる。ユメ、行け」
ハンターは背負った狩猟笛を構え、今もなお戦っているギルドメンバーとアビドス対策委員会、そして先生のもとへと向かう。
「……ホシノちゃん!」
ユメが走り出し、拘束から解放されたホシノを強く、強く抱きしめた。
「ごめんね……。ずっと一人にして、ごめんね……! 私、生きてたよ。あなたのところに、帰ってきたよ……!」
「うぁぁぁぁぁん! 先輩! 先輩ぃぃぃ!」
ホシノは、子供のように泣きじゃくった。
数年間、背負い続けてきた「後悔」と「孤独」という名の鎧が、ユメの体温によって溶けていく。
第五章:ハンターズギルドの「意地」
地上では、カイザーの戦力と、アビドス対策委員会・ハンターズギルドの連合軍による激しい戦闘が続いていた。
「なんなんだ、このギルドは……! たかがブラックマーケットの寄せ集めが、なぜ我が社の軍隊と対等に戦えるのだ!」
カイザーの指揮官が絶叫する。
「寄せ集め? 笑わせんなよ」
スズナがマシンガンを乱射しながら笑った。
「アタシたちは、ギルドマスターに鍛えられた『ハンター』なんだよ! どんな強い獲物だって、工夫と根性で狩り取るのが、アタシたちのプライドなんだ!」
「ん、日ごろの恨み……」
シロコが冷静にターゲットを狙撃する。
対策委員会とギルドの息は、驚くほど合っていた。
正面をアビドスが支え、側面をギルドの遊撃隊が崩す。
そして、地下からは……。
ドォォォォォォン!!
施設の中央が内部から爆発した。
中から現れたのは、ホシノを背負ったユメ。
そして、その二人を護衛するように、ハンターが飛び出してきた。
「クエスト達成だ、先生! ターゲットは無事回収したぞ!」
ヘリから降りてきた先生は、再会を果たした二人の姿を見て、深く、深く安堵の息を吐いた。
「……ありがとうございます、ハンターさん。そして、おかえりなさい、ユメさん。……いえ、アビドスの生徒会長」
第六章:砂漠に昇る太陽
夜が明け、砂漠の地平線から太陽が昇り始めた。
カイザーの拠点は陥落し、ホシノは無事に仲間たちの元へと戻った。
「……ふふ。おじさん、もう隠居しようかな。ユメ先輩が帰ってきたんだし」
「ホシノ先輩まだ高校生でしょ」
ホシノが、照れくさそうに笑いながら紡ぐ言葉にセリカが突っ込む。
「ダメだよ、ホシノちゃん。これからはみんなとアビドスを、もっと素敵な学校にしなきゃ」
ユメの表情は、記憶を取り戻したことで、以前よりもさらに慈愛に満ちたものに変わっていた。
「……さて。俺の仕事はここまでだな」
ハンターは若い空気に当てられすぎたのか、ちょっと居心地悪くなってきたためさっさと退散することにした。
「ハンターさん。……本当に、ありがとうございました。私を見つけてくれて。私に、『居場所』を与えてくれて」
ユメが深々と頭を下げる。
「気にするな。俺はただ、美味いメシが食える場所を守りたかっただけだ。……それにしても、ギルドのメンバーたちは、お前がいないと勉強が滞るだろうな……」
ハンターは豪快に笑い、掲げた拳をホシノに向けた。
「嬢ちゃん。……いや、ホシノ。お前は立派な戦士だ。……だが、たまにはギルドにメシを食いに来い。俺の作ったこんがり肉は絶品だからな」
「……うん。ありがとう、ハンターさん」
ホシノも、最高の笑顔でその拳に応えた。
アビドスの物語は、ここから新たな一歩を踏み出す。
借金の問題も、カイザーの脅威も、まだ完全になくなったわけではない。
だが、もう誰も一人ではない。
ブラックマーケットの王たるハンター。
記憶を取り戻したユメ。
そして、絆を取り戻した対策委員会。
彼らの進む先には、かつての絶望を焼き尽くすほどの、輝かしい未来が広がっていた。
「さあ、帰るか! 今日はギルドを挙げての特大の宴だ! ジンオウガの丸焼き……は無理だが、最高級の肉を用意させるぞ!」
「ハンターさん、また食べ物の話ばっかり……」
笑い声が、砂漠の風に乗ってどこまでも響いていった。
【重要報告】アビドス緊急事態終了後の戦況まとめ
1. クエスト完了報告
依頼名:アビドス生徒会長、小鳥遊ホシノの救出
達成状況:ターゲットを無傷で回収。追加目標(ユメの記憶奪還)も成功。
報酬:アビドス高等学校とハンターズギルドの正式な友好条約の締結。
2. ハンターズギルドの動向
今回の作戦により、ギルドの戦術的有用性が証明された。
ギルドマスターは、アビドスの「守護者」としての地位も確立しつつある。
ブラックマーケットにおける唯一の「更生の場」として、シャーレ及び連邦生徒会からも(非公式ながら)一目置かれる存在となった。
3. 今後の課題
ユメの記憶復活によりギルドを脱退、ギルドの「教育者」の補充の必要あり。
カイザーコーポレーションの残存勢力による報復が予想される。
しかし、アビドス対策委員会との連携強化により、防御力は飛躍的に向上。
ギルドマスター武力があれば、キヴォトスの如何なる脅威も、一掃されるに違いない。
記録者:ハンターズギルド広報・スズナ
追記
「ユメ先生っ~!!行かないで~~~!!!」byギルドメンバー全員
追追記
「報告書は日記ではありません。私語は慎むこと。
……私も同じ気持ちです」byスズナ