狩猟笛使い、ブルアカ世界へ   作:教頭

7 / 10
アビドス編クライマックスです。
次の話で一通り終わります。

Q1.なぜほかの武器じゃなくて狩猟笛なの?
A1.作者が好きで使っているから。

Q2.狩猟笛のシーン全然なくね?
A2.……。


07.緊急クエスト:砂漠の夜明けと失われた記憶

第一章:崩れ去る日常と一通の「退学届」

 

アビドス高等学校。その荒廃した部室に、重苦しい沈黙が立ち込めていた。

机の上に置かれた一通の封筒。そこには、見慣れた、しかし今はあまりにも冷たく感じる「退学届」の文字。

 

「……嘘、だよね? ホシノ先輩が、自分からアビドスを捨てるなんて」

セリカの声が震えていた。

シロコは無言で拳を握りしめ、ノノミは潤んだ瞳で窓の外の砂漠を見つめている。

 

「ホシノは、自分を犠牲にしてアビドスを守るつもりなんだと思う」

先生の声は低く、しかし断固とした意志が宿っていた。

「カイザーコーポレーション、そして多額の借金……。彼女は一人でそれらすべてを背負い、闇に消えようとしている」

 

「そんなの……先輩一人に背負わせるわけにいかないわよ!」

セリカが顔を上げた。

 

だが、敵は巨大な資本と軍事力を持つカイザーだ。対策委員会だけの力では、ホシノが連れ去られたであろう「秘密施設」の場所にたどり着けるか分からない。

 

「先生……何か、手はないんですか?」

 

先生は、自分のスマートフォンを取り出した。

その画面には、先日ハンターと交換した「モモトーク」のアイコン。

そこには、連投された怒りのアイルースタンプの跡がまだ残っていた。

 

「……最強の助っ人に、クエスト(依頼)を出そう」

 

 

 

 

 

第二章:緊急クエスト発令

 

ブラックマーケット。ハンターズギルドの拠点。

深夜、ハンターのスマートフォンが激しく鳴り響いた。

 

「……ぬう。またこの鉄の板が騒いでいるのか」

寝惚け眼でスマホを掴んだハンターだったが、通知の内容を見た瞬間、その瞳に野生の鋭さが戻った。

 

クエスト名:アビドス生徒会、小鳥遊ホシノの救出

依頼主  :シャーレの先生

報酬   :アビドスの未来

 

「……先生からの『緊急クエスト』の依頼か。それにしても報酬がなんと曖昧な……、はっはっは!……面白い!これこそがギルドの存在意義だ!」

 

ハンターが勢いよく立ち上がると同時に、部屋の扉が開いた。

入ってきたのは、顔を青ざめさせたユメだった。

 

「マスター……。今の、見ました」

 

「ユメ。夜更かしは肌に悪いぞ。……だが、何か感じたようだな……」

 

「小鳥遊ホシノ……ホシノ……。ホシノちゃん……。その名前に、胸が締め付けられるんです。さっきから、頭の中で知らない景色が……砂嵐の中で誰かが泣いている声が……っ!」

 

ユメは突然、激しい頭痛に襲われたように頭を抱え、その場に崩れ落ちた。

ハンターは即座に駆け寄り、彼女の肩を支える。

 

「ユメ! しっかりしろ!」

 

異変に気づいたギルドのメンバーたちが、次々と集まってきた。

「そんなに騒いでどうしたんd……ユメ先生!? 大丈夫っすか!」

「ギルマス、ユメ先生が……!今すぐ救護室に……!」

 

生徒たちが心配そうに見守る中、ユメは脂汗を流しながら、ハンターの腕を強く掴んだ。

 

「ハンターさん……。私を、連れて行ってください。その、ホシノちゃんという子のところに……。行かなきゃいけない気がするんです。私が、彼女を助けなきゃいけないって……」

 

「……記憶が戻るきっかけになるかもしれん。だが、戦場は地獄だぞ。カイザーの連中は、今度こそ本気で来る」

 

「分かっています……。でも、私が私であるために……逃げちゃいけないんです」

 

ユメの瞳には、かつてない強い光が宿っていた。

ハンターはそれを見て、静かに笑った。

 

「よし。緊急クエスト受託だ!依頼主の望みを叶え、かつ、お前の『因縁』に決着をつけろ!……スズナ! 留守は任せたぞ! ギルド戦力の7割を出動準備させろ!残りは戦闘準備を整えて待機だ!遅れるなよ!」

 

「了解っす、ギルドマスター!全員、武装しろ!ユメ先生とギルマスの道を作るぞ!!」

 

「「「おおおぉぉぉっ!!!」」」

 

ブラックマーケットの闇を、ハンターズギルドの鬨の声が震わせた。

 

 

 

 

 

第三章:砂漠を往く古龍の鼓動

 

カイザーコーポレーションの秘密軍事拠点。

そこには、黒服と取引し拘束されたホシノと、彼女を拘束している施設を取り囲む圧倒的な数のオートマタ、そして重武装の傭兵たちが待ち構えている。

 

別室にてカイザーの重役がモニターを眺めながら嘲笑う。

アビドス対策委員会が近づいているとの報告は受けているが、圧倒的な武力の前では塵芥になるのは目に見えていた。

 

その時だった。

 

拠点の前方の砂丘が、まるで火山の噴火のように爆発した。

 

「……なんだ!? 地震か!?」

 

砂煙の中から現れたのは、戦車でもヘリでもない。

雷鳴のような旋律を轟かせる、二メートルの巨漢。

狩猟笛を担ぎ、あたりを蹴散らしながら突進してくるハンターの姿だった。

 

「はっはあ! 随分と物々しい歓迎じゃないか! だが、俺のクエストを邪魔するには、火力が足りんぞ!」

 

ハンターが振るった一撃が、カイザーの外壁を粉砕する。

その後ろからは、ハンターズギルドのメンバーたちが「ユメ先生を守れーーっ!」と叫びながら、マーケットで鍛え上げたゲリラ戦法で突入を開始した。

 

「先生、遅れたな! ターゲットの場所は特定しているか!」

 

 

通信機(ユメが持ってスピーカーモードにしている)の向こうから、先生の声が響く。

『ハンターさん! ホシノは地下三層の部屋です! アビドスの生徒達が正面から道を作ります。ハンターさんは最短ルートで地下へ!』

 

「了解だ! ユメ、俺の背中にしっかり捕まっていろ!」

 

ハンターはユメを片腕で抱え上げ、文字通り「壁を突き破りながら」地下へと直進した。

飛竜の巣を強襲するような、あまりにも荒々しい動き。

 

「ハンターさん……。近いです。彼女が、近くにいます……!」

ユメの頭の中で、霧が晴れていく。

断片的な記憶が、一つの線に繋がろうとしていた。

 

 

 

 

 

第四章:再会、そして覚醒

 

地下実験室。

ホシノは、意識が朦朧とする中で、誰かの呼ぶ声を聞いていた。

 

(……ホシノ。ホシノちゃん……)

 

(……ダメだよ、先輩。おじさんは、もう……。アビドスを……みんなを……)

 

(……いいえ。あなたは、誰よりも強くて、優しい子。だから……)

 

「……ユメ、先輩……?」

ホシノが目を開けた。

 

そこには、実験室の鋼鉄の扉を、巨大な狩猟笛の一撃で粉砕して踏み込んできた、一人の男性と。

そして、その後ろで肩で息をしながら、自分を見つめる一人の女性がいた。

 

時間は止まった。

機械の作動音も、地上の爆音も、今のホシノには聞こえなかった。

 

そこに立っていたのは、記憶の中の姿よりも少し大人びた、しかし間違いなく、自分が片時も忘れなかった先輩の姿。

 

「……ホシノ、ちゃん?」

ユメの声が、実験室に響いた。

 

その瞬間、ユメの脳内にすべての記憶が濁流となって流れ込んだ。

アビドスの生徒会長だった日々。

ホシノと過ごした穏やかな放課後。

そして、あの砂嵐の日、帰り道を失い、砂漠を彷徨ったあの日。

 

「……あ。あああぁぁぁ……っ!」

 

ユメは膝をつき、嗚咽を漏らした。

失われていた時間の重みが、一気に彼女を襲う。

 

「……本当に、ユメ先輩……なの?」

ホシノの瞳から、大粒の涙が溢れ出した。

「おじさん……夢を、見てるのかな……。死んじゃったのかな……」

 

「……夢じゃないぞ、嬢ちゃん」

ハンターが、静かに、しかし力強く二人の間に立った。

 

「俺が拾ったのは、ただの遭難者じゃなかった。キヴォトスの未来を担う、大切な希望だったようだ。……感動の再会を邪魔する奴らは、俺がすべて片付けてやる。ユメ、行け」

 

ハンターは背負った狩猟笛を構え、今もなお戦っているギルドメンバーとアビドス対策委員会、そして先生のもとへと向かう。

 

「……ホシノちゃん!」

ユメが走り出し、拘束から解放されたホシノを強く、強く抱きしめた。

 

「ごめんね……。ずっと一人にして、ごめんね……! 私、生きてたよ。あなたのところに、帰ってきたよ……!」

 

「うぁぁぁぁぁん! 先輩! 先輩ぃぃぃ!」

 

ホシノは、子供のように泣きじゃくった。

数年間、背負い続けてきた「後悔」と「孤独」という名の鎧が、ユメの体温によって溶けていく。

 

 

 

 

 

第五章:ハンターズギルドの「意地」

 

地上では、カイザーの戦力と、アビドス対策委員会・ハンターズギルドの連合軍による激しい戦闘が続いていた。

 

「なんなんだ、このギルドは……! たかがブラックマーケットの寄せ集めが、なぜ我が社の軍隊と対等に戦えるのだ!」

カイザーの指揮官が絶叫する。

 

「寄せ集め? 笑わせんなよ」

スズナがマシンガンを乱射しながら笑った。

「アタシたちは、ギルドマスターに鍛えられた『ハンター』なんだよ! どんな強い獲物だって、工夫と根性で狩り取るのが、アタシたちのプライドなんだ!」

 

「ん、日ごろの恨み……」

シロコが冷静にターゲットを狙撃する。

 

対策委員会とギルドの息は、驚くほど合っていた。

正面をアビドスが支え、側面をギルドの遊撃隊が崩す。

そして、地下からは……。

 

ドォォォォォォン!!

 

施設の中央が内部から爆発した。

中から現れたのは、ホシノを背負ったユメ。

そして、その二人を護衛するように、ハンターが飛び出してきた。

 

「クエスト達成だ、先生! ターゲットは無事回収したぞ!」

 

ヘリから降りてきた先生は、再会を果たした二人の姿を見て、深く、深く安堵の息を吐いた。

 

「……ありがとうございます、ハンターさん。そして、おかえりなさい、ユメさん。……いえ、アビドスの生徒会長」

 

 

 

 

 

第六章:砂漠に昇る太陽

 

夜が明け、砂漠の地平線から太陽が昇り始めた。

カイザーの拠点は陥落し、ホシノは無事に仲間たちの元へと戻った。

 

「……ふふ。おじさん、もう隠居しようかな。ユメ先輩が帰ってきたんだし」

「ホシノ先輩まだ高校生でしょ」

ホシノが、照れくさそうに笑いながら紡ぐ言葉にセリカが突っ込む。

 

「ダメだよ、ホシノちゃん。これからはみんなとアビドスを、もっと素敵な学校にしなきゃ」

ユメの表情は、記憶を取り戻したことで、以前よりもさらに慈愛に満ちたものに変わっていた。

 

「……さて。俺の仕事はここまでだな」

ハンターは若い空気に当てられすぎたのか、ちょっと居心地悪くなってきたためさっさと退散することにした。

 

「ハンターさん。……本当に、ありがとうございました。私を見つけてくれて。私に、『居場所』を与えてくれて」

ユメが深々と頭を下げる。

 

「気にするな。俺はただ、美味いメシが食える場所を守りたかっただけだ。……それにしても、ギルドのメンバーたちは、お前がいないと勉強が滞るだろうな……」

 

ハンターは豪快に笑い、掲げた拳をホシノに向けた。

「嬢ちゃん。……いや、ホシノ。お前は立派な戦士だ。……だが、たまにはギルドにメシを食いに来い。俺の作ったこんがり肉は絶品だからな」

 

「……うん。ありがとう、ハンターさん」

ホシノも、最高の笑顔でその拳に応えた。

 

アビドスの物語は、ここから新たな一歩を踏み出す。

借金の問題も、カイザーの脅威も、まだ完全になくなったわけではない。

だが、もう誰も一人ではない。

 

ブラックマーケットの王たるハンター。

記憶を取り戻したユメ。

そして、絆を取り戻した対策委員会。

 

彼らの進む先には、かつての絶望を焼き尽くすほどの、輝かしい未来が広がっていた。

 

「さあ、帰るか! 今日はギルドを挙げての特大の宴だ! ジンオウガの丸焼き……は無理だが、最高級の肉を用意させるぞ!」

 

「ハンターさん、また食べ物の話ばっかり……」

 

笑い声が、砂漠の風に乗ってどこまでも響いていった。




【重要報告】アビドス緊急事態終了後の戦況まとめ

1. クエスト完了報告

依頼名:アビドス生徒会長、小鳥遊ホシノの救出

達成状況:ターゲットを無傷で回収。追加目標(ユメの記憶奪還)も成功。

報酬:アビドス高等学校とハンターズギルドの正式な友好条約の締結。

2. ハンターズギルドの動向

今回の作戦により、ギルドの戦術的有用性が証明された。
ギルドマスターは、アビドスの「守護者」としての地位も確立しつつある。
ブラックマーケットにおける唯一の「更生の場」として、シャーレ及び連邦生徒会からも(非公式ながら)一目置かれる存在となった。

3. 今後の課題

ユメの記憶復活によりギルドを脱退、ギルドの「教育者」の補充の必要あり。
カイザーコーポレーションの残存勢力による報復が予想される。
しかし、アビドス対策委員会との連携強化により、防御力は飛躍的に向上。
ギルドマスター武力があれば、キヴォトスの如何なる脅威も、一掃されるに違いない。

記録者:ハンターズギルド広報・スズナ


追記
「ユメ先生っ~!!行かないで~~~!!!」byギルドメンバー全員

追追記
「報告書は日記ではありません。私語は慎むこと。
 ……私も同じ気持ちです」byスズナ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。