【第二部完結】各務に想う 〜いつになったら財務会計ってもんをみんな覚えてくれるんだろうか〜   作:ふぃーあ

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Don't来い特異現象

 あのキャンプの日から数日。いつも通りに仕事や部活動に精を出す僕は、珍しくひとりの知り合いの依頼を聞くことになった。

 

 その人物の名は、明星ヒマリ。ミレニアムの誇る頭脳、そのもう片方。調月リオに並ぶ学園の双翼とも言える大天才である。

 

『チハヤ、ぜひチーちゃんとあたって欲しいお願いがあるんです』

 

 そんなヒマリの願い事にはひとつ特徴がある。それは、大抵が……

 

『カイザーPMCへ諸事情あってハッキング攻撃をしました。誰がやったかはわかってないとは思いますが、報復攻撃されるかもしれないので一応対策と対処をお願いしますね』

 

 彼女の気まぐれの後始末なのだ。

 

 詳しく事情を聞くと、ヒマリは今、デカグラマトンなる存在を追いかけているそうで、その道中、調査対象になった『デカグラマトンの預言者』なる者たちのひとつがアビドスの砂漠にいることを知ったのだとか。

 

『この超絶美少女天才ハッカーでも、フックがなければ限度というものがあり……そう、致し方なく、ですね』

 

 ただ、アビドスに立ち入るという訳にも行かなかったヒマリは、知己の持つ触り程度の情報からカイザーPMCならば戦闘のデータを持っていると判断。より多くの情報を得るためにカイザーPMCに対してハッキングを実行した、ということらしい。

 

「まあ別にいいんだけど、それはそれとしてあとでシバキ倒す。もちろん君もやるだろ? チヒロ」

「……まあ、説教くらいは。後始末、ほんとは自分でさせたいところだよね」

 

 全くだ、とぼやきつつ、念には念を入れて防壁のセキュリティチェックを行っていく。ヴェリタスの部室でこの作業を行っているので、目が疲れるのだがもう仕方ないものと思うしかないか。

 

「ここはこの方式でいいのか? こっちと差し替えるのは無くはないんだが」

「それねー……連携してる場所がここにあって、こっちを守るための切り捨てに近いんだよね。そっちに時間回すようならそれはそれ、みたいな」

「ブラフとかダミーみたいなものか。……たしかに、直接繋がってるのはどれも大したことない権限だな」

 

 防壁に繋がった、学内のトイレを遠隔で流すだけの権限を見て苦笑する。こういうところはやっぱりチヒロも、ヴェリタスという問題児集団を預かる者なのだと改めて思わされる。

 

「この辺りでいいかな……何もないにこしたことはないんだけど」

「そうだな。心からそう思うが、だいたいそう言ってる時はなんか起きるぞ」

「全くその通り……嫌になるね。何が起きるのやら」

 

 ふたりして溜息をつき、缶コーヒーを傾ける。

 

「そもそも、特異現象捜査部なんて形だけのものだと思っていたんだが」

「デカグラマトン、ね。私も気になったから、できる範囲で少し調べてみた」

 

 そうチヒロが言うなり、チヒロはパソコンを操作して僕に画像を見せる。

 

 鯨と蛇の合成体のような存在が、砂漠から巨躯を覗かせる画像だ。

 

「これがビナー。画像は先日のアビドスで先生が撮影したもので、定期的に巡回するルートがあり、その上に出現するらしい」

「あれ、チハヤ先輩。最近は良く来てるねー、やっぱり副部長と一緒にいるのがいいんだ!」

「まあ、否定はしないけどそれはそれとして、チヒロとは仕事のパートナーでもあるからね。公私共に支え合うってやつさ」

 

 ひょっこりと現れたマキが、画像をのぞき込む。

 

「あれ、ビナーくんだ。なんで先輩たちがビナーなんて」

「知ってたの? マキ」

「知ってるも何も……私、先生にお願いされてたまにビナー撃退作戦に出てるんだけど」

 

 あぁ、とチヒロがようやく腑に落ちたような声を出す。

 

「それでシャーレからマキへ協力要請の手紙が届いたんだ。不思議に思ってたんだけどね」

「システム面でのサポートになるのか。……僕らでも良さそうなものだが」

「え? 私、結構ちゃんと戦う役回りなんだけど」

 

 チヒロと首を傾げる。マキが、戦闘要員。全然イメージができないが、まあそういうことも……いや、ビナーとは超危険な存在に違いないのだから、あっちゃいけないだろう? 僕の後輩になんて危ない橋を渡らせるんだ。

 

「どういう腹積もりなんだ、先生とやらは……」

「なんでも、ビナーに対しては私のアートが有効みたいなの! やっぱり理解してくれる人がいるんだなぁって……それがビナーなのは複雑だけど」

「有効……? マジでなんでだ……?」

 

 頑張って解釈しても、マキのペイントボールの材料の中に金属腐食を齎す素材が入っていてそのために金属が腐食し、攻撃が有効打になるとかしか考えられないのだが。

 

 まあ……いい。曰くシャーレの先生は「才能を見抜く」ことにかけてはトップクラスだそうだし、ビナーとマキには噛み合いがあると見抜いたのだろう。

 

 キヴォトスでも屈指の最高戦力をさしおいて、在野のさしたるものでもないような生徒を指揮し、それで数々の難事を突破しているような人間だ。

 

 これもまた、僕の理解しなくていい才能の部分なんだろう。

 

「とにかく、ビナーについて知ってるのか?」

「え? うん。ミサイル打ったり、ビーム口から出したりする。あと先生が言うには砂嵐を起こすこともできるらしいけど、私が行った時は一度もしてこなかったよ」

「……預言者? 最早単なる大怪獣じゃないか。そんなもんがなんで砂漠にいる?」

 

 僕は呆れたが、同時に納得もした。アビドスが衰退するわけだ、こんな怪物。シャーレの力をもってして撃退にのみとどまっているのも、本体の怪物性に依存するものなのだろう。

 

 そして、こんな化け物を『預言者』……つまり、手下同然に扱うデカグラマトン。ヒマリも、調査に全霊を注いでいるのだろう。後始末を放り投げられるなら投げてしまいたいのだ、理解はしてやる。それはそれとして説教は絶対にするが。

 

「……デカグラマトン、って聞いてなにか知ってることとかあったりはしないの? マキ」

「知らないかも。ビナーってそういうグループみたいな感じのやつだったの? って感じだよ」

「そっか。ありがとうマキ」

 

 マキが部室の自分の机に戻り、パソコンを開いているのを尻目に、僕とチヒロは話を続ける。

 

「ちょっと心配ではあるけど、まあ本人も望んで力を貸してるっぽいしビナーとマキについてはいいや。今のところさしあたっては、カイザーのことを考えておくべきだね」

「異存なし。だが、一区切りついたんだ。昼飯の余裕くらいは貰えるだろう」

「そうだね……またなにかデリバリーでも取ろうか」

 

 ふたりであぁでもないこうでもないと迷っていると、マキがまた後ろから声をかけてくる。

 

「先輩お昼食べるの? 私今からバーガーゴッド行くつもりなんだけど」

「……ハンバーガーか。悪くないかもね、たまには」

「そうだね。僕もあんまり食わない類だ」

 

 頷いてから、僕は財布の中からカードを1枚、マキに向けて放り投げる。

 

「君ついでに僕と、あとチヒロの分を買ってきてもらえるか。金は君の分も含めてそのカードで払ってくれ。奢ってやる」

「……私の分は、さすがに私出すけど?」

「さんざんコーヒーなりなんなり差し入れられてるんだ。ツケを返させてほしい」

 

 むっ、とチヒロがそれを言われると、みたいな感じで黙り込む。僕とチヒロは、結構このやり取りをしがちだ。飯を奢る、割り勘にするの対立によるやり取りを。

 

だいたい、先手を取った方が勝つ……ゲーム性はまるでないな、そういうと。

 

「ほんと? じゃ、ごちゅーもんをお伺いしまーっす!」

「僕はワッパーのセットかな。野菜だけ足してもらってくれ。サイドがポテト、ドリンクが野菜のジュース」

「私は……そうだね、アボカドワッパーのジュニアのセット。あったらでいいから。なければ普通のジュニアのやつ買ってきて欲しいな。サイドとドリンクはチハヤと同じで」

「はーい! じゃあ行ってくるね!」

 

 元気よく走り出すマキを、元気だな、と思いつつ見送って、僕らは再び確認作業に戻るのだった。

 




主人公の関わらない、原作に影響を及ぼさない部分はどんどんダイジェストして簡潔にどんどん進めていきましょう。

今回もありがとうございました!モチベーションに繋がるので評価感想等よろしくお願い致します。

事前予告で逃げ道消しておくんですけどバレンタイン編はちゃんとやります。忘れないように頑張ります。
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