【第二部完結】各務に想う 〜いつになったら財務会計ってもんをみんな覚えてくれるんだろうか〜   作:ふぃーあ

45 / 62
予約投稿失敗!!(明日の6:02になっていました)(9:02に投稿し直しじゃい)


幕間:テイルズ・サガ・クロニクル!!!

 天峰チハヤ……つまり、僕という人物の完全な休みは貴重だ。

 

 それはなんの皮肉でもなく、事実の列挙に過ぎない。

 

 だからこそ、チヒロと同じ時間を過ごすのに充てたり、趣味の充足を図ったりしているわけだ。

 

 その上で、言いたいことがある。僕は心のままにヴェリタスの部室の扉を開き、集まる視線の前で一言言い放った。

 

「このゲームをくれてやる。僕にジャンケンで負けたヤツがプレイするように」

「うっそでしょチハヤ先輩!!?」

 

 テイルズ・サガ・クロニクル……略称「TSC」。あえてネット評価の一切を絶っていたが、それでも『クソゲー』の呼び声高いこの作品を遊ぶのに、僕は僕の休みのうち半日を浪費したわけだ。

 

 そして、感想がこうだ。

 

「なにをどうしてこうなったのかさっっっぱりわからん。ラーメンの味付けで寿司を作って、すき焼きした卵でチャーハンを作る、みたいなごちゃ混ぜを強く感じる」

「ストーリーの考察の余地のない意味不明具合、指示のない行動を最適解どころかそれ以外の解法のない回答とする理不尽性、妙にリアルのキヴォトスに属する自覚のあるカスみてぇなスライムによる『銃殺死』……挙げ出せばキリがない」

「やってみろ、3分でキレて10分で投げる。面白いことにディスクはかなり遠くまで飛ぶぞ、いちばん面白いのがフリスビーになることとは思わなかった」

 

 キヴォトスクソゲーオブザイヤーのノミネートはおろか、ブッチギリダントツの一位を獲得したクソゲーは伊達ではなかったということだ。

 

 何がいちばん腹が立つかといえば、そう。

 

「ただ、恐ろしいことにバグはなかった。つまり、全て意図した仕様であるということらしい」

 

 そういうことらしい。致命的な進行不可能バグや、UIの利便性の低さ、メニュー画面にも関わらずいちいち話し始める無能なNPCのセリフを読み飛ばす手間などは特になかった。

 

 他にクソゲーオブザイヤーにノミネートされた作品は『遊ぶことそのものが難しい』やらでそもそもゲームとしての成立が怪しかった中、ゲームのユーザーインターフェースとプログラムになんら問題が存在しないにも関わらず『クソゲー』というのは異様というか、元のクソゲーオブザイヤーの理念に忠実というか。

 

「……そんなの私たちにやらせようとしてるの先輩」

「ハレ。テイルズ・サガ・クロニクルはいいぞ。……オンで対人やるよりよっぽどコスパ良くキレることができる」

「その説明でやる理由がまるで見いだせない……!」

 

 まあどう頑張って言っても「テメーらも苦しめ」ではある。カスの道連れだ、こんなもの。

 

「ちなみに、天童アリスが持ってきたということは次アリスに会った時ワンチャン感想聞かれるぞ」

「「「えっ」」」

「僕も礼儀としてプレイしたんだ、お前たちも苦しめ」

 

 そう地獄の底から手を伸ばすように言い放って締めると、黙って最後まで僕の言葉を聞いていたチヒロは一言。

 

「鬼かなにかかな?」

「チヒロは今度僕に付き合ってくれ。一緒にTSC2の方やろう。なんかギリゲームとして成立してるラインらしいから」

「そうなんだ……」

 

 そうらしい。初代がカスすぎたので2を触る気力もなかったのだが、ここに来る途中でレビューを見た感じなんというか、奇妙な評価がされていた。

 

「なんだろうな、本当に奇妙な評価なんだよな……」

「世界観が噛み合ってないのにゲームとして面白いって書いてある……普通によくわかんないな。チハヤ、いつやるの?」

「時間があればすぐこの後にでも」

 

 チヒロと合意をして、ついでに初代TSCをじゃんけんに負けたコタマに押し付ける。

 

「……いらないんですけど」

「んなの百も承知だ。最悪投げれば遠くまで飛ぶ」

「贈り物ですよ? そんなこと出来るはずがありません……」

 

 うーん、良心的。これで盗聴器をどこにでも仕込む癖がなければいい人だな、で済むのだが。

 

「ま、頑張りなよ。僕もやったんだからさ」

「その理屈を捏ねてる時ってだいたい相当苦しんだあとじゃないですか……!」

「正解」

 

 僕はコタマがキレて暴れる姿はちょっと見てみたいな、などと思いながら、ゲーム機のある情報処理準備室にチヒロを連れて戻るのであった。

 

 チヒロと共にTSC2を最後まで遊び切る頃には、日は傾いていた。

 

「……意外と?」

「まあ、意外と、だなこれに関しては……」

 

 なくはない。それが僕とチヒロの下した、TSC2に対する評価だ。レトロチックな雰囲気、不思議な世界観を持ち合わせ、突飛な展開をするのだが。

 

「なんか……ちゃんと伏線自体はあるんだよな……」

「それに、最後ちゃんとまとまって着地してたしね……」

 

 投げっぱなしな訳でもないし、伏線は用意されていた。粗雑なシナリオとは呼べなくなっており、心底感動したものだ。

 

「あのな、チヒロ。今の僕の評価はあてにならないんだ。TSCに価値観を破壊されたから色んなゲームに今なら100点をつけられる」

 

 チヒロはその言葉にふふ、と笑いながら髪に触れた。

 

「まあ、だろうね。ちなみに2要素は何があったのさ」

「……そういや、ほぼなかったな。地名とかだけか?」

 

 ある種いい判断だろうなあ、とこっそり思う。TSCがあまりにもクソすぎてキャラ流用でもあったのならTSCの恨みで殺したくなる可能性があった。

 

 そんな僕を尻目にして、チヒロは言葉を紡ぐ。

 

「あとさ」

 

 チヒロは恥ずかしそうに、僕の方を向いて呟いた。

 

「今更言うけどこの体勢、なに?」

「なにって、そりゃゲームやるんだ。この体勢が一番に決まってる」

 

 僕があぐらをかいて、チヒロを座らせて、腰元に手を回す。チヒロの腹の前にコントローラーが来るような感じ、と言えば伝わるか? 

 

「……その、6時間もよく足が耐えたね……?」

「耐えてない。でも攣ってないなら耐えか?」

「痺れはしてるんだ……ふふ、えい」

 

 僕はそのまま抱きしめて、足をつつく邪智暴虐な恋人を拘束した。

 

「……あー、その。チハヤ?」

「なに?」

「悪いとは思ってるけど、仕方なくない?」

 

 チヒロへノータイムで擽りを開始。言い訳は無用だ。

 

「んひっ……うぅっ! ぁ……ふふっ、ふふふっ、や、やめっ!」

「辞めるわけないだろ……! んのっ、たまに悪戯好きになるのはなんなんだよ!」

「あは、あははっ! ほ、ほんとにやめ……!」

 

 チヒロは存外こういう擽りに弱かったりする。というか、僕もチヒロも肌がいたって敏感なのだ、恐らくは。

 

 あんまり動かないし、触れ合いの経験も薄いから余計に。

 

「ふぅっ、酷い目にあった……」

 

 散々ぱら擽られたチヒロは、肩で息をし、上気した頬をこちらへ向けている。ジト目が僕を射抜くが、僕も負けじと冷ややかな目線を送ると、馬鹿らしくなって同時に吹き出した。

 

「あー、面白……とりあえずTSC2の総括はそんなところでいいか」

「だね。上手いことまとまっててかつ『絆で魔王を倒す』ってコンセプトがしっかりしてた」

「この路線で行くにしろ、そうでないにしろ、エリドゥの一件、ひいては天童アリスの加入は彼女たちにとっては大きなプラスに働いたのかもしれないね」

 

 そうであってほしい。リオの横領をなんとかなかったことにする天才的な資産運用の辣腕を見せつけたユウカの横で、ひたすら帳簿と数字とでにらみ合いをして、これ以上何か起きていないかを精査していた僕としては、リオの起こした一件がどこかでなにかのためになっていてくれればいいと思う。

 

「結果として何も起きていなかったとしても、それが残したものがあるのなら、少しは意味があったということになる」

「そういう意味じゃ、TSC初代にも意味があったって?」

「………………そういう、ことに……なる……! 2に地名と汚名は残したしな。うん」

「ものすごい言い淀むじゃん……素直にキツかったって言いなよ……」

 

 クソキツかった。とはいえ、まあゲーム開発部の成功……成功? に祝福を送る想いは本当だ。

 

 仲間たちがあれだけ頑張っていたんだ、これで実績が出なかったので解散はちょっと可哀想だった。

 

 無論そうなれば、情報処理部部長としては彼女たちを引き入れる用意があったが、そうならず何よりだ。

 

「ところで、チヒロ」

「なぁに、チハヤ?」

 

 僕はチヒロに、問いかける。

 

「僕は君に何かを残せているかな」

「うん。たくさん、貰ってる」

「そうか。……なら、いいんだ」

 

 僕の道筋が、チヒロになにか与えているのなら、それほど嬉しいことはない。ふと、そう思った。何かを残していくことに、人の道筋の意味があるのなら、僕の道筋が何かを残せる余地はそう多くなかったから。

 

「もう。すぐそうやって、考えを完結させる。……私にも聞かせてよ、考えの中身」

「そうだな。この後暇?」

「うん。暇。……喫茶店でも行こうか?」

 

 喫茶。いつだか二人きりで行った、あの店のコーヒーを思い出す。

 

「悪くないな。……あそこ行こう、前僕が連れて行った場所」

「いいね。今日の日替わりケーキセット、なにかな?」

「行ってみてからのお楽しみでいいんじゃないかな。……行こうか」

 

 手を差しのべる。普段僕が手を伸ばす側になることは少ない。それでも、今手を伸ばすのは、この瞬間がチヒロの中に残ってくれたらという感情ありき。

 

 チヒロが僕の手を取る。その感触が、確かに僕に伝わる。

 

「ん。行こう、チハヤ」

 

 白と紺のアウター。チヒロの愛用するそれをチヒロが羽織る。僕もまた、黒と紺のアウターを羽織って、二人で同じ差し色、反対のメインカラー。

 

「あぁ。どこまでも」

 

 一度は離した手を、今度は絡めるように繋ぐ。僕とチヒロは、茜色に染まった道をゆっくり、大切に歩んでいった。

 




予約投稿ミスってたので9:00に再投稿です。申し訳ありません。

今回もありがとうございます。そろそろまたすすめるか、まだ幕間書くかは分からないのですが、元々ラブコメを書くためにやっていたので、今のこの広げた風呂敷の中から使えるネタを擦り倒している時間は楽しいですね……。

さて、また作者のモチベのために評価感想よろしくお願いいたします。ここすきも拝見しておりますのでね、是非。

それではまた明日。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。