【第二部完結】各務に想う 〜いつになったら財務会計ってもんをみんな覚えてくれるんだろうか〜 作:ふぃーあ
戦闘は順調に進んでいる。サンクトゥムを破壊し、各学園を防衛し、先生曰く『色彩』なる、キヴォトスに迫る脅威の魔の手を払い除けていく行程は極めて順調に推移して行く。
ある種、不安すら覚えるほどに順調だった状況は、最後の攻略戦、第六のサンクトゥム攻略戦にて一気に難しくなるかに思われた。
『ペロロジラが守護者として出現!』
なんて? ……僕の耳がおかしくなったのでなければ、とんだトンチキ存在が現れたのでは? 自分の正気を疑うが、現実がなにか変わる訳じゃあない。
D.U.に現れた最後の守護者は、モモフレンズの主人公と言われる『ペロロ様』が巨大化した謎の化け物だったのだ。
そして、その上で更なるトンチキが待ち受けている。こっちには、僕も関わっているから余計頭が痛いのだが。
「理論上は、そうなんだよ。理論上はそうなんだ。あぁクソ、腹立つなぁ! この状態なら確かに出来なくもないんだろうけどさぁ!」
「……チハヤ、諦めて。これが一番現実的にアレを倒す方法なんだし」
「そうですよ、チハヤさん。できることをできると受け入れることも重要です」
僕を静かに慰めるチヒロとヒマリ。だがその実、僕を苦しめるトンチキ兵装の理論開発者と調整者であり、つまるところ諸悪の根源だ。
その理論というものをこれから説明しよう。チヒロが。
「このサンクトゥムという概念は、エネルギーを収集している。それがいくつもあるこの状況下において、歪みが生じていて……この歪みを利用してエネルギーを引っ張ってくることで、特殊な現象を起こせるかもしれないの」
「起こせることの影響の操作が難しく、私たちが操作できるような範囲で起こす現象となると限定的ではありますが……私たちはひとつの現象に目をつけました」
「『巨大化』。理論上、最も長く維持できる現象、かつ操作できる中で最も有効に打点を与えることのできる現象だね」
そういうことらしい。問題は、巨大化の対象。そう思っていたのだが、どうも先生には心当たりがあるらしく、巨大化の方針で話が進んでしまったのが想定外その1。
そして、想定外その2は……。
『我々の出番が来たようだな!』
そう高らかに叫ぶ、マグロの寿司の被り物に赤いヒーロースーツを装備した人物。
まあなんだ、うん。コイツらなんだ、その先生の言う心当たりが。彼女たちこそは『カイテンジャー』。正式名称は『無限回転寿司戦隊カイテンジャー』らしい。……ちなみに、超特級の指名手配犯かつ史上最悪のテロリスト一歩手前の激ヤバ集団なのだが、何をもって先生は彼女らを心当たりに……?
僕の不安と対極に、ノリノリで参戦したカイテンジャーたちは、そのままヒマリの理論の被験者となる。対象は当然、カイテンジャーの作り出した合体ロボ『KAITEN FX MK.0』だ。
そして、その結果。
「……僕もう寝ていいか?」
「さすがにそれは……いやまあ、勝ちそうだけど」
「いや、そういうアレじゃなくてもうアレを現実として認めたくないんだよ。僕が関わったとはいえ……ここはアニメじゃねぇんだぞ、なんで巨大怪獣と合体ロボが街中で殴りあってんだふざけろ!」
僕には到底受け入れられないとんでもトンチキバトルが始まってしまったのだ。……あ、剣折れた。
「……盾も逝った?」
「おいおいおいおいおいさすがに二打目はないんだぜこれに!」
『まあみんな、ヒーローは追い詰められてから本番! だから、ねっ!!』
先生のテンションが妙に高い。噂として『先生は特撮やロボ物が好き』みたいな話を聞いたことがあるのだが、どうも本当らしいな、このテンションじゃ。勘弁してくれ。
雷撃がペロロジラの目から放たれ(この時点で割と僕はふざけんなよと思っている)、それに直撃しながらも合体ロボは折れた剣に手を伸ばす。
『ぉ、おぉ……うぉおおおおおぉっ!!!』
『行け! カイテンジャー!!』
『勝利の未来! 寿司の如く握り締める!!』
頭が痛い。本気で。寝かせてくれ。
『これが!! 必殺っ!! ファイナルゥゥゥゥッ!!』
『鯖ッ!!』
『『スラァァァァァァァァッシュッ!!!!!』』
怖いよ。なんで必殺技の名前知ってんだよ。なんで当然のように一緒に叫んでんだよ。そんなツッコミが過ぎる。言葉にならない叫びが僕の喉から迸りそうになる。
欠けた刃が、ペロロジラの胴に深く突き刺さる。そのまま、横一文字に振り抜かれた刃、交錯する両者。
次の瞬間、大爆発。ペロロジラが爆発に消え、合体ロボは時間切れにより元のサイズに戻っていく。
「……本当に、もう二度と見たくない光景だよクソッタレ……」
科学の完全否定は脳に深刻なダメージを与える。僕はそれを再認識しつつ、全てから逃避するために立ち上がった。
「一時間後に起こしてもらっていいか?」
「……まあ、勝ったからいいけど……仮眠?」
「そういうわけだよ。……ここが夢じゃないか確認するために今寝なきゃな」
未だにあのトンチキ大怪獣バトルが夢であって欲しいと心から思っているのだ、僕は。
僕はそうして、半ば現実から逃げるように眠りにつき……。
そして、眼を開く。見知らぬ空間にいる。ここはどこだ。なんだ、これは。木目の床、アンティークな照明。覚えがある、これは確か……。
「チヒロと来た、あの喫茶……」
違うとするなら、人気がまるでないことか。温かみある雰囲気はどうやらあのマスターありきのものだったらしい、いっそ不気味な気配を醸すようになった喫茶を見回す。誰かいないのか?
『ようこそ、チハヤ』
聞き慣れ親しんだ声が聞こえる。それでも、僕はその声音にこう返さなければならなかった。
「誰だッ!」
『……私はチヒロだよ、各務チヒロ。忘れちゃった?』
目の前のテーブルに座り、緩く手を振っている女子。見紛うわけもない、各務チヒロがそこにいた。そして、僕は。
「騙るとしてもそれ以外にして貰えないか」
そう皮肉げに呟く。チヒロには、この間ペアリングを渡した。ソレの指に、光はなかった。それがコレは『僕の知る各務チヒロではない』という答えを示している。
『言ってみただけだから気にしないでほしいなぁ。じゃあ……そうだね、こうすれば満足かしら?』
姿がブレることすらなく、いつの間にかそこにリオが座っている。リオの姿に成り代わったソレは、僕に小さく手招きした。
『この場所には、銃器などは持ち込めないようになっている。同じように、毒に類するものも。互いに互いを害せないのよ』
「……その言葉を信じる他なさそうだな。相席しろと?」
リオの形をしたソレは頷き、僕はソレと同じテーブルについた。
その瞬間、二人の前にブラックコーヒーが現れる。
『粗茶だけれど』
「珈琲にも粗茶って概念があるのか? まあ、いただこう」
互いにまずは一口とばかり、同時に同じだけ飲む。
『自己紹介のためのティータイムのつもりだけれど、思ったよりは悪くないわね』
「……懐かしい味だな。そんな時間も経ってないはずなんだが」
僕の独白にソレは答えない。かわりにソレは珈琲で唇を湿らせて、口を開いた。
『そうね、チハヤ。説明が少し面倒なので、あなたに質問を認めるわ。一問一答形式と行きましょう』
その言葉に、僕は頷く。まず最初に聞くべきことは、そうだな。
「ここはどこだ?」
『夢と現実の狭間、とでも言っておこうかしら。人間の認知の中間点、どこでもない場所、そういうものよ』
なるほど。つまり、眠りが原因で落ちた場所であることには違いないと。次の質問だ。
「出る方法は?」
『眠りから覚める、もしくは私があなたを追い出せば、かしら。ここのホストは私だから』
戻れない、という訳では無いらしい。つまるところ、僕がチヒロに起こしてと頼んだ一時間が事実的なタイムリミットということだろう。
「じゃあ、お前について聞かせてくれ。一問一答形式だから、そうだな。まずは名前か」
『私に名前はないの。そうでなければこのように曖昧な存在であることはできない、違う?』
「……ごもっともだ。名前こそが全ての起点であることに相違はない」
ならば、代わりの質問を。
「お前はどういう存在なんだ」
『そうね、色彩と死の神を観測する観測者、視点を持つもの、考える人……そういう枠にいるものと思ってくれればいいわ』
「……色彩側の人間なのか、お前」
随分重要そうな情報を気軽に落とすものだ。少しは躊躇えばいいものを、律儀なヤツ。
「目的は?」
『私は識りたいの。この世界がどう繋がっていくか、あるいはもうここで終わるのか、ということを』
「知ってどうする?」
『確かめて、違えば見切りをつける。もし、求めたものならば……その時は、私のやるべき事をするだけよ』
なんだろうな、リオの顔でそういうことを言われると違和感が仕事をしない。リオならやるだろ、というような気持ちにさせられる、心理戦もクソもないなこれ?
「……そうだな、仮にお前のことを呼ぶとしたらなんと呼べばいい?」
『そうね、好きに呼べばいいわ? 調月リオでも、各務チヒロでも、謎の存在Xでもね』
「……ま、仮にXと呼ぶことにしようか」
Xはその言葉に小さく笑った。本当にそう呼ばれるとは思ってもみなかったのだろうか。
『悪くないセンスね。あなたのことはよく識っているわ、天峰チハヤ。話したいことが沢山あるの、付き合ってもらえる?』
「彼女の嫉妬が怖い身だ、手短に頼むよ」
Xはその言葉になぜか面食らったようにわずかの間沈黙した。平静をすぐに取り戻したXは、その上で小さく首を竦めて皮肉を述べた。
『その歳で女持ち?』
「好きな女に想いを伝えることができるのは青春の間だけだろう?」
『…………違いない』
Xは微かに呻くようにそう呟いた。そうして、Xは僕の目を真っ直ぐ見つめる。
『まあ、いいわ。……いろいろ、腰を据えて話しましょう? 互いに面白い話が聞けるかもしれないし』
Xの瞳が僕を貫く。調月リオのそれと全く同じなはずなのに、中身の理知が本質を異にしている感覚があるからか、また違って見えた。
「少しは聞いてやることにした……どうせ、すぐ目覚めるという訳でもないのだからな」
『そうしてくれると助かるわ。私もあなたがまさか丸一日寝ないとは思っていなかったから、この喫茶店にあなたを招待するのに一日待ちぼうけだったの』
そういうわけでどういうわけか、僕は不気味な存在との対話を開始した。
温度差でグッピーを殺す(挨拶)
今回もどうもありがとうございました。また次回もよろしくお願いします。シリアスはやっぱり他の人が専門でやってくれるからとっとと巻いて巻いてイチャつかせたいのでね。書くべきところを書いたらすぐ戻りますよ!!
感想評価、ここ好きもよろしくお願いします。見てます。モチベになります。見てるからこそさっさとイチャつかせなきゃなと思うのです!