【第二部完結】各務に想う 〜いつになったら財務会計ってもんをみんな覚えてくれるんだろうか〜   作:ふぃーあ

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はい。予約投稿失敗でございます。エピローグでもミスるんだこの人……ごめんなさい!!


エピローグ:各務に想う

「ね、聞かせてよ。色んな話」

 

 戻ってきたミレニアムの、僕の拠点……つまり、情報処理準備室。チヒロを迎えるのももう何回目かわからない、僕専用の私室となっているこの部屋で、僕はチヒロに詰め寄られていた。

 

「どこから話せばいい?」

「全部」

「……ガチで長くなるぞ?」

「平気だから。話して」

 

 長くなるだろう話の、おおまかの流れだけかいつまんでおくとこう。

 

 山海経の外れに降り立つまでは、砂狼さんと話した通りだが。山海経の外れに降り立って以降を話そうと思った。

 

「キサキ、ルミ……頭が痛い。聞いたことある名前だよどっちも……」

 

 僕に手を差し伸べてくれた少女の名は、朱城ルミという。……僕の中華作りの師匠だ。そして、連れていかれた山海経で出会った、もうひとりの少女。そちらの名前は、竜華キサキ。……こっちには、麻雀を教わった。

 

「だろうな。……とはいえ、僕も驚いているんだ。あんなビッグネームになるなんて思ってもみなくて」

「……なーんか、ありそうだなぁ」

 

 ちなみに、竜華キサキは今山海経における生徒会組織『玄龍門』の主である『門主』の座にあり、朱城ルミもまた、山海経における革新派を多く含む商会グループ『玄武商会』の商会長を務めている。

 

 そうなってしまった今、僕はうっすら、思っている。正直今あの二人に会えばまずいことになるのではないか?と。

 

「確か、山海経に進学しろって話を断ってこっちに来たんだもんね……?」

「そうだな。うん。基礎学力検査を受けて、問題なしと認められてすぐに、受験シーズンだったからミレニアムに出願した」

「……ちゃんと会ったら謝りなよ、というべきなのかなあ」

 

 僕に彼女ができたと知ったら何を思うか分からないのだろうか。僕も分からないのでその辺はなんとも言えないのだが。僕が山海経ではなくミレニアムを選んだ時の、二人の反応といったら、もう。

 

「泣かれ……てはないんだっけ?」

「ギリ、ね。どうして、とは詰め寄られたし、山海経に気に入らないことがあったのか、と威圧感たっぷりに聞かれもした。思えばあの時からキサキは今の立場につくだけの威風があったな」

 

 言ってる場合? とばかり、チヒロの生暖かい視線が僕に向く。僕はそれを受け流し、とにかく、と言葉を続ける。

 

「そういう感じだ。ミレニアムに入学して以降もちょくちょく玄武商会がミレニアム近郊への出店をしたから、バイトで出向くことがあったな」

「その時のミレニアム支店の厨房長、朱城さんだったんだっけ? チハヤ、もう諦めなよ。……朱城さん、相当重いもの持ってるって」

「……何でだろうな。さすがに、僕もそう思うよ」

 

 僕は諦めてひとつため息をつく。当時は特に人の心というものに配慮がなかったから気づかなかったが、さすがに露骨なものにすら気が回らないとなるとカス野郎もいいところだ。

 

「まったく……それで? これでチハヤの過去は終わり?」

「うんまあ、そうだな。覚えてることは全部話した。この世界に来てからの記憶はちゃんと全部話したよ。前の世界のことは……悪いけど、そんなに覚えてないし思い出したくもない」

「うん。そこは聞くつもりはない……とはいえ、この世界に来てから、ってのがあるのもまず驚きなんだけどね」

 

 結局、そこが一番受け入れ難いところだろうなとは思っている。

 

「……チヒロはさ、僕の過去を聞いてどう思った?」

 

 僕はそう問いかける。愛する人に、失望されていないかと言下に秘めた想いを込めて。

 

 チヒロは、その言葉にすぐさま答えた。

 

「ほんとに『天峰チハヤ』って人間の成り立ちから今まで、何も変わってないことだけが確かめられたって感じかな。ずっと、ひとりで戦うだの誰かを置いていくだの、そういうことばっかりしてたんだね、チハヤは」

「……まあ、そういうことをしなくなったのは君と喧嘩してからだからね。それまでの僕はずっととんでもないやつだったよ」

 

 そう、と。チヒロは頷いた。ならいいんだけど、と彼女は笑って、こちらへ向いた。悪戯げに笑みを深め、口を開く。

 

「私は初めてあなたを変えた女ってこと?」

「事実その通りだよ、チヒロ」

「私はチハヤの初めての女」

「それは語弊があると思うが?」

 

 軽口を叩くチヒロには、影はまるでない。それでいいのか、と僕は静かに彼女へ問う。

 

「いいのか、僕は他の世界から来た人間だって話だったけど」

「……? それに何か問題でもあるの?」

「いや、今は特に思いつかないけど……それでも、なんかあるかもしれないと思って」

「チハヤはチハヤ。私の……だ、大好きな人、だから?」

 

 ややぽしょぽしょと、恥ずかしそうに言葉を続けるチヒロ。僕は僕。最初にそう誤魔化しのために言った僕と、最後の結論としてそう導いたチヒロはなんとも対比的だと僕には感じられた。

 

 その上で、僕が言うべき言葉はひとつ。

 

「……ありがとう。チヒロ。僕を、好きでいてくれて」

「ほ、ほんとに、恥ずかしいな……なんでだろ? でも、うん。当然のこと、だからね?」

 

 恥ずかしさに顔を赤に染めているチヒロは、頬に左手を当てて熱さに驚いたように、触れた手を顔の前に持ってきて見つめる。

 

「……そういえば、さ。チハヤ」

「どうしたんだ? チヒロ」

「私を、抱いてくれない理由。もしかして、これだったの?」

 

 ……あぁ。なんて、チヒロは賢くて。僕はなんて浅ましい。

 

「……そうじゃない、と言ってももうわかっちゃってるか」

「うん。今ならわかるよ……あなたは、私との関係に線を引こうとしてた。でもそれは、学生だからとか、そんな理由じゃない」

 

 チヒロは、問に答えを出した名探偵が、犯人に推理を聞かせるように言葉を繋げていく。

 

「たぶん、チハヤは不安だったんだ。……自分が、この世界の人じゃないって知ってたから、居場所を見つけることができなかった。まだ、あなたの自認は『寄生虫』のまま。違うかな」

 

 その言葉に、僕は小さく息をついた。やはり、チヒロは僕を暴くことにかけては、鋭すぎる。視線を僅かに逸らそうとして、逸らせない。

 

「……そこまで、見抜かれてるのか。参ったな」

「わからないことなんてないの……大好きなんだよ、焦がれて、不安で、作戦の遂行の間、帰ってくるのか分からない時間が、ずっと怖かったんだよ。それくらいには、好きなの。だから、わかる」

 

 チヒロはそう、心をさらけ出す。たとえ本人が『勝つ』と言っていたとしても、送り出すことしか出来ないことは嫌だったのだと。

 

「ね、チハヤ。私を守ってくれるんでしょ」

「当然」

「私と一緒にいたいから、私を守る。そういう風に、なってよ」

 

 ……チヒロは、本当に優しすぎる。僕の、本当に欲しい言葉を知っている。だから、きっと、次に来る言葉は。

 

「あなたは、この世界の天峰チハヤ。私のそばにいる、私を大好きで、私の大好きな天峰チハヤ、だから」

「……うん。そうするよ。君のその言葉が、こんなにも……こんなにも、嬉しいなんて思わなかった」

 

 世界に僕の存在を認めると。僕の居場所は、チヒロの側だと。他ならぬ、チヒロがそう言うから。なら、それでいい。いや、それがいい。

 

 ……チヒロの言葉で、こんなにも楽になる。単純な男だが、こと今はそれでよかったと思う。単純でも構うものか、僕はここにいていいんだって言われることの、その喜びに比するものはない。

 

 だから、その喜びを、僕は彼女と分け合おう。

 

「あ……っ」

 

 優しく、その身体を抱き締める。決意、覚悟。その一切をもう済ませたと伝えるために。

 

「チヒロ。もう逃げない。君とずっと一緒にいたい。だから……」

「ずっと待ってた。もう逃がさない。誰が相手でも……もう、私だけの、チハヤ」

「あぁ。君だけの、僕だ。僕だけの、君だ」

 

 そう言って、ひときわ強く抱き締めたあと、体を離す。

 

「……チヒロ。僕の家に、来ないか」

 

 そう、誘う。次は、誤解などさせない。させる必要も無い。

 

「今回こそ、そういうことでいいんだね?」

「……言わせるなよ」

「うん……行く。行き、たいな」

 

 優しく手を差し伸べ、掴まれた手を引く。言葉少なに、真っ直ぐに。心なしか早足で、僕の家へ。

 

 手を繋いだまま、いつもよりも高い体温を交換する、たった5分もかからない帰り道。

 

「……まだ、かかるんだっけ」

「もう少し、のはずだけど」

 

 それでもやけに長く感じた道程の先、扉の鍵を急いで開けて、玄関に入った、その瞬間。

 

「ふー……」

 

 後ろから、長い息。それは、緊張を消すための深呼吸? いや、違う。それは、スイッチの切り替え。

 

「チハヤ、もう、いいんだよね?」

「……来なよ、チヒロ」

「んっ……ハグ、して」

 

 言われるまま、抱き寄せるとチヒロは身を擦りつける。原始的な欲求に従っているかのようだった。

 

「キス、も。そのくらい、わかるでしょ」

「可愛いねだり方だな」

「……いじわ、んっ……!?」

 

 愛しいチヒロの望み通り、次は唇を奪い、口を塞ぐ。後頭部を優しく抑えて、向こうから離れられないように。唇を離したのは、チヒロの息が上がった頃。

 

「ぷぁ……はぁっ、ふぅ……」

「良かった?」

「うん……すごい、良かった」

 

 玄関先で乳繰りあうという訳には当然行かない。そのまま、なし崩し的に僕の家の、僕の寝室までチヒロは到達し。

 

「いい、よ……しよ? チハヤ」

 

 ベッドに自ずから倒れ込んだチヒロが、両手を広げる。飛び込むことに、僅かに逡巡する。それでも、チヒロが欲しくなった。

 

 互いを失いたくない、もう離れたくない、君しかいない。そんな想いの交換。

 

 繋がって、結ばれて、愛し合って。言葉で足りない愛の伝え方を、身体で伝え合う。

 

 そうして、僕は君に深く沈む。ここが僕の居場所だと、チヒロはそう言った。なら、もう迷うことはない。僕の居場所の中で、どこまで深く沈んでも、もう恐れることはなにもなかった。

 

 

 




第二部完結です。どうもありがとうございました。

シリアスはもう書かねぇ……と言いたいんですけど、デカグラがあるんですよねぇ……デカグラ読みたい人がちゃんといるなら間のイチャイチャ書いてる間にアンケート取ってまたやるか決めますね……。

次以降はラブコメやるんだーっ!あと山海経絡みーっ!!

また次回があれば!よろしくお願いします!!

追記:この後のシーンを投稿しておきました。R-18にあります。えぇ。よろしくお願いします。
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