【第二部完結】各務に想う 〜いつになったら財務会計ってもんをみんな覚えてくれるんだろうか〜   作:ふぃーあ

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プラスワン・エピローグ

 朝。鳥の鳴く声に、目が覚めた。

 

 結局のところ、チヒロを求め、チヒロに求められ、互いを埋め尽くす愛の交換は、到底一度きりでは足りなかった。

 

 何度も何度も混ざりあったわけで、一日を擲って楽しんでしまったわけで。なんとも言えない顔になる。

 

 まず最初に僕がしたことは枕元にぶん投げた僕の着替えを身につけることで、次にするべきことは彼女の寝顔を観察することだ。

 

「んぅ、チハヤ……?」

「今起きたところだ。……おはよう、チヒロ」

 

 優しくチヒロの頭を撫でながらそう言うと、チヒロも徐々に目が覚めてきたようだ。

 

「ん、おはよ、チハヤ。今何時?」

「朝8時ってところだ。……体は平気?」

「あはは……全然だめ。まだちょっとね」

 

 昨日の僕らはどうかしていた。徹夜明けの朝方に疲れ果てていたにもかかわらず混ざり合い、そしてそのまま泥のように一度眠り、起きたら夜だったから互いをもう一度貪り、そして眠る。

 

 なんとも欲望と煩悩に満ちた僕……ひいては男の悲しきサガなことで。

 

「コーヒーは?」

「飲む……チハヤの淹れるコーヒーか。ちょっと気になるね」

「インスタントだよ? まあちょっといいの選んではいるけども」

 

 ふぁ、と可愛らしく欠伸をして、チヒロはぐっと体を伸ばした。ぱさりと落ちた掛け布団の先に、本来着ているべきものはなにもない。

 

「あ……まあ、いいか。裸とか今更、でしょ?」

 

 その通りではあるが。とはいえ、男として彼女に全裸で居られるとまた理性が怪しくなるので、放置はできない。

 

「目のやり場にはちゃんと困るよ……チヒロはたまにとんでもなく無頓着になるというか……投げやりになる時あるよな。ほら」

「わっ……これ、ワイシャツ?」

「僕のですまないが。君の服はまとめて洗濯して乾燥までかけてるからまだ向こうにあるだろ。取ってきなよ」

 

 んー……と、チヒロは少し考えるように声を漏らしてから、うん、と頷いて裸身に一枚羽織る。

 

「ちょっと考えたけど、とりあえずこれ着てそばに居る。あんまり離れたくないし、膝まだ笑ってるし」

「本当にごめん。……互いに初めて、だったのに。はい、できたよ」

「ありがと。いっぱいしてもらったし、こんなに幸せだからいいよ」

 

 チヒロはそう甘やかに笑う。蕩けるような笑みで、僕のワイシャツだけを着て彼女は僕の手渡したコーヒーをベッドの上で楽しんでいた。

 

「いい香り……」

「良いコーヒーだろ?」

「ん。それもそうだし、チハヤの匂いも、すき」

 

 ……なんだ、これは。チヒロがあまりにも可愛い生き物すぎる。コーヒーを飲むついでに袖口の匂いをすんすん、と確かめている様子が特に。

 

「本当に、僕をどうしたいんだ? 君は……」

「私から目を離して欲しくないだけだよ?」

「とうに離れられないんだが?」

 

 チヒロがコーヒーを一度ベッドの横の机に置いたと見るや、僕はチヒロを抱き寄せる。

 

「あ……ふふ。まだ、足りない?」

「いや。満ち足りてるさ。けど、君が望むなら吝かじゃない」

「もう……まあ、このままぎゅってしててよ」

 

 抱きしめたまま、僕はチヒロに「今日は何して過ごしたい?」と問う。チヒロはしばらく考えてから、口を開いた。

 

「まあ、みんなの様子見にでも行きたいかな。足腰が治ればいいけど……」

「……湿布いる?」

「……貰っとく」

 

 僕は僕で未来の僕にスカイハイブレーンバスターをぶち込んだせいでまあまあ足腰が痛いので、常備薬のところから湿布を引きずり出し、互いの腰に貼りあう。

 

「あー……初めてお世話になったけど効き目はすごいね……」

「伊達じゃないよな……僕はぎっくり腰一回やらかしてお世話になった。そこから常備薬になった」

「……運動ちゃんとしなよ、それは」

 

 それに対しては僕も言いたいことがあるぞ、チヒロ。僕はチヒロに追求すべく口を開く。

 

「君も大概では? 上に乗った時」

「……それを言うのは、なしっ! え、えっちのときの体力はまた別でしょ!?」

「とはいえマウント取って2桁しないうちに動けなくなるのは……」

 

 そう、チヒロもたいがいなんというか絶妙な体力をしていたのだ。僕が潰したせいだろうと言われればそうかもしれないのだが。

 

「……ちゃんとトレーニングでもしよっかなあ……」

「その時は付き合うよ。……スミレにだけは巻き込まれたくないからな」

「まあ大変な目にあうだろうね……」

 

 若干スミレには失礼だが、まあ仕方あるまい。アイツの行いの問題だ。

 

「……とりあえず、だいぶ起きる気概も出来てきたし、動こうかな」

「朝飯はなにがいい? トリニティ風か百鬼夜行風か」

「……トリニティ風で」

 

 ならば今日の朝飯はスクランブルエッグとトーストと言ったところだろうか。すぐできそうだが、急かすことはない、といった時間感覚だ。

 

「了解。すぐ取り掛かる。その間に顔でも洗って洗濯機から服を出して着替えでもして……ま、朝の支度を済ませておくといい」

「うん。そうする……作らせてばっかりかな私?」

「そんなことは。むしろ普段埃を被るばかりの調理器具を使ういい機会だ。ぜひ作らせて欲しい」

 

 実際、チヒロのためにご飯を作るのはたまらなく楽しい。軽い足取りで厨房に立つと、冷蔵庫を開けて中を覗く。……おぉ、ソーセージがある。日付は……大丈夫だな。スクランブルエッグに添えておくこととしよう。茹で焼きどちらが美味いかは……うーん、悩ましいな。

 

「チヒロー?」

「なぁにー?」

 

 そんなわけで、遠くに呼びかけるように声をかければ、すぐに声が帰る。

 

「ソーセージやるんだけど茹で焼き好みはあるかー?」

「……茹で! それと、ワイシャツどこに返せばいいの?」

「適当にそこの洗濯カゴに入れておいてくれー!」

 

 ……好みは茹でか。そこは僕と違いがあるな。僕はパリッと焼くのが好みなのでな。まあとはいえ、好みには合わせてやりたい。となると、チヒロのスクランブルエッグはとろとろ気味にしておくのが良いか。

 

「……あ、作ってる作ってる」

「まあね。今日の朝飯はスクランブルエッグとソーセージ、それからトーストだ」

「随分と贅沢だね?」

 

 戻ってきた、いつもの服を纏ったチヒロへ僕は腕を止めず笑う。チヒロにはこれに慣れてもらわねば困るのだ。

 

「こんなもの贅沢にも入らんさ。僕の趣味は料理だぞ?」

「ふふ、そっか。これからも楽しみにする。それから、私にも時折作らせてよ?」

「もちろん。以前の鍋の約束は忘れてないし、色々と楽しみにしているものもある」

 

 そんなわけでさっと作った朝食、1人前はふわとろのスクランブルエッグに茹でのソーセージ。もう1人前は硬めのスクランブルエッグに焼きのソーセージで。

 

 焼きあがったトーストがチーン! と軽妙な音を立てトースターから跳ね上がる。

 

「あ、私これ皿に乗せて持ってっちゃうね?」

「助かる。冷蔵庫にジャム入ってるから好きなのを持って行ってくれ」

「あぁ本当に? へぇ、すごい……気分的にイチゴかな」

 

 イチゴのジャムと共にチヒロが食卓へトーストを運ぶ後ろから、僕もまたスクランブルエッグとソーセージの皿を届ける。

 

「さて、今日の朝食だ。トリニティの方でよく食べられるトースト系の朝食だが、フルブレックというには少し足りてないな。それはごめん」

「いや……これ以上なにか出されても困るけど?」

「あそうだ。ヨーグルトだけはつくけどね」

 

 チヒロがその言葉に軽く嬉しそうな笑みを浮かべる。

 

「プレーンのやつだね。さっき入ってたの見たよ」

「あとで食後に持ってくるよ。いいのを見かけたから買ってしまったんだ。一緒に食べよう……朝にはヨーグルトに限る」

 

 いい蜂蜜もあることだ。ジャムをヨーグルトに使うのは悪くないが、どうせなら蜂蜜とかでもいいと僕は思っている。蜂蜜の甘さがよく出て美味いんだこれが。

 

「さっと食べたら、僕も支度をする。そうしたら行こうか」

「そうだね。それから、シャーレにも細かいところの報告が必要なんじゃない?」

「いらないさ。もう終わったことで、二度と起きないことだ。こっちは何とかなった、って向こうには確かさらっと伝えたろ?」

 

 そう言いながら、ソーセージを齧る……うん。やっぱ僕は焼きだな、焼き。チラリと顔を上げて見れば、はふっ、と熱そうな息を漏らしながらチヒロが茹でソーセージを食べているのが見えた。

 

「美味しかった……ありがとう、チハヤ」

「お粗末様でした。こんなレベルのもんで良ければ毎朝作るつもりだからね」

「楽しみにしてる。次は私だけど」

 

 本当に朝が楽しみになるな。早いところチヒロを正式に同棲関係として迎えたくなる。

 

 そんなことを思いながら、チヒロと朝食、それからついでのはちみつヨーグルトを食べきれば、あとは出立するだけだ。

 

「結局ろくすっぽ挨拶もできてないままここまで来てるからね……戻ったらいろいろ謝ったりなんだりしなきゃ」

「チヒロらしい律儀さだな。状況が状況だ、そこまで言われることもないだろうと思っているんだが」

「ま、そこをちゃんとやるから信頼が育つってね」

 

 ごもっともな事で。どちらからともなく、言葉の最中に手を繋ぎ、靴を履き、扉を開く。

 

 チヒロが悪戯げな微笑みを浮かべ、手を繋いだまま僅かに前に出て僕の方を向いた。

 

「またここに、帰ってきていいんだよね?」

「……当たり前だ。僕らの、家。そういうことにしてくれた方が、嬉しい」

「そっか。私も、嬉しいな」

 

 どうやら内心は見透かされていたようだ。僕は彼女に勝てそうもない……とはいえ僕の青春はまだ、始まったばかりだ。

 




ッシャーッ

これで本当に第2部は終わりです。これはブルアカ本編における最終編終わったあとにしれっと追加された後日譚1,2,3みたいなものなので。

今回までありがとうございました!次回あればよろしくお願いいたします!やりたいネタが思いつけばその日のうちに書き下ろして次の日の朝、みたいな感じで投稿していく予定ですのでよろしくお願いします!

ちなみにエイプリルフールは……たぶん、やらないかなぁ……?いや、ネタはあるんですけど……。やってたら我慢できなくなったと思ってください()
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