【悲報】聖剣を引き抜いたヒキニートのワイ、魔王を討伐するまで家に帰れない   作:ハギワラ

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 スレ内のやり取りを全部書くと長くなるので、経緯説明は飛ばしています。
 表現がわかりにくかったら申し訳ありません。
 また、作中内で健全でない描写がなされます。
 ご注意ください。
 


ヒキニート、神と戦う。

 

【NTRは】魔物に関するアブノーマルな性癖を語るスレ Part261【悪しき文明】

 

1:名無しの勇者

 

○注意書き

・基本的に荒らしとフィレモア教徒の書き込みはスルーしてください。

・次スレは>>950が建てて下さい。踏み逃げされた場合は>>970が建てて下さい。

・魔物に関する話題は取扱いが難しいので、スレ内の書き込みを外部に流出しないで下さい。

・ほんわかレス推奨です。

・他人の性癖を馬鹿にするのも禁止です。

 

前スレ:【萌えよ】魔物に関するアブノーマルな性癖を語るスレ Part260【ドラゴン娘】

 

 

357:ニート勇者

やだやだやだやだやだやだー!!!

もうワイおうちかえりゅううううう!!!

 

358:名無しの勇者

黙れ

 

359:名無しの勇者

キモい

 

360:名無しの勇者

幼児退行するな

 

361:名無しの勇者

成人男性が駄々をこねる姿ほど、見苦しいものはない

 

362:ニート勇者

神殺しなんてやりたくないいいいい!!!

魔王を倒した後に出現する隠しダンジョンで戦うRPGの裏ボス枠やん!!

絶対、強いやん!!

ワイみたいなニートなんて一捻りやーーん!!!

 

363:名無しの勇者

どんだけぐちぐち言うねん

 

364:名無しの勇者

いい加減に腹括れや

 

365:名無しの勇者

男を見せろ

 

366:名無しの勇者

そんなに嫌なら、神殺しを提案しなければ良かったのでは?

 

367:ニート勇者

>>366

お前らはいいよな、スマホやパソコンでカチカチカチカチカチカチ。

ワイの立場になって考えてみろや。

絶対に出れない結界が貼られてる場所に閉じ込められて、サイコパスな聖女ちゃんに解体されそうな状況で、正気でいられる訳ないやろ。

あの時のワイは、ヤケクソやったんや。

外に出たい一心で、神を身代わりにしたんや。

 

368:名無しの勇者

自業自得やんけ!

 

369:名無しの勇者

その場しのぎで、神を生贄にするな

 

370:名無しの勇者

アホ、ここに極まれり

 

371:名無しの勇者

考えなしのノータリン

 

372:ニート勇者

今すぐ無かったことにしたいけど、流石に無理よな?

聖女ちゃん、本気にしとるもん。

ワイの提案に乗った後、迷う事なく、自分の腹を開き始めたもん。

マジキチスマイルで、貴方を信じますと言いながら、自分の内臓をぐちゃぐちゃにしとる。

血がドバドバ出てて、めちゃグロい。

 

373:名無しの勇者

は????

 

374:名無しの勇者

なんでやねん

 

375:名無しの魔族

こわい

 

376:名無しの勇者

頭おかしい奴しかいないんか

 

377:名無しの勇者

聖女様がご乱心召された!

 

378:名無しの転生者

どうしてこうなったのだろうか。

真相を解明するために、スレ民は聖地へと向かう……事はせず、家に引き篭もってスレに張り付くのであった。

 

379:ニート勇者

聖女ちゃん曰く、神から自死するよう言われたらしい。

だから、自分を解剖しとるんやって。

聖女ちゃんが持つ『解剖』のスキルで死ぬギリギリのラインを攻めて、神の命令を実行している判定にしとるらしい。

それと、分け与えられている神性を自分の中に押し留める事で、神を弱体化させてるみたいや。

 

380:名無しの勇者

脳が理解を拒んどる

 

381:名無しの勇者

聖女ちゃんの覚悟ガンギマリすぎない?

 

382:名無しの勇者

禁忌とはなんだったのか

髪を裏切る気満々やんけ

 

383:名無しの勇者

ニート勇者は、はよ神を殺しにいけや

聖女ちゃんが保たん

 

384:名無しの勇者

こんな状況でもスマホをいじる異常者

 

385:名無しの勇者

>>382

神を裏切る、な。

髪を切ってどうすんねん

 

386:ニート勇者

>>383

ド正論やけど、神の居場所が分からんのや。

聖国の何処かにおるのは確実やけど、正確な位置が分からんって聖女ちゃんが言うてる。

でも、ワンチャン、スレ民なら知っとるかもって。

私を育ててくれた人々なら、進むべき道を指し示してくれると信じてるって。

 

387:名無しの勇者

>私を育ててくれた人々なら、進むべき道を指し示してくれると信じてるって。

育てた覚えはありません!

 

388:名無しの勇者

だれか、知ってる奴おる?

 

389:名無しの勇者

知らん

 

390:名無しの勇者

分からん

 

391:名無しの勇者

皆目検討もつかん

 

392:名無しの勇者

物知り魔族なりきりニキネキに託した

 

393:名無しの魔族

>>392

申し訳ないけど、分からないわ。

そもそも、神って実在するの?

 

394:名無しの勇者

どうなんやろ

 

395:名無しの勇者

いる筈です

 

396:名無しの勇者

聖国民やが、見た事はないな。

存在するという確信だけある。

 

397:名無しの勇者

神は実在します。

聖国民なれば誰もが熟読する聖書には、創世記における神の活躍が事細かに記されています。

また、聖女は神性を有しており、天使に分け与えている事実が動かぬ証拠です。

 

398:名無しの勇者

聖女様!

神を討つなど、考え直してください!

 

399:名無しの勇者

うむむ

スレが混沌としてきたな

 

400:名無しの転生者

ニート勇者くんが探している存在は、祭祀場の隠し部屋にいるよー。

儀式する所に置かれてる初代聖女像の下に隠し階段があるから、それを降りてけば辿り着くはず。

あと、ニート勇者くんが一人で戦わないとダメかも

 

401:名無しの勇者

>>400

有能

 

402:名無しの勇者

>>400

天才

 

403:名無しの魔族

>>400

何故、知っているの?

 

404:名無しの転生者

>>403

エスパーだから

 

405:名無しの魔族

えすぱー?が何なのか知らないけど、答える気がないのは伝わったわ。

 

406:ニート勇者

>>400

よく分からんが、感謝や!

早速行ってくるw

一人で戦うのはマジで嫌だけど、聖女ちゃんに中身を見られる方が嫌やからな!

 

407:名無しの勇者

神殺しソロチャレンジ開始ー!

 

408:名無しの勇者

大丈夫や、ニートニキが負けても仲間がいる。

魔族が生み出したドラゴン娘ちゃん、ヘレティア家の当主だった元メスガキちゃん、王国騎士らしきストーカー。

こんなにも豪華メンツがいる。

神なんて、もうこわくない!

 

409:名無しの勇者

>>408

上二人はいいけど、最後が不安すぎる

 

410:名無しの勇者

ストーカーは瞬殺されそうですね

 

411:名無しの勇者

無駄にタフそうだし、へーきへーき

 

412:名無しの勇者

殺しても死ななそう

 

413:名無しの勇者

いくら聖女様であろうと、神殺しは許されません

 

414:名無しの勇者

今すぐ考えをあらためてください。今すぐ考えをあらためてください。

 

415:名無しの勇者

聖国民バグってね?

 

416:名無しの勇者

壊れた玩具みたい

 

417:名無しの勇者

バグってるのは聖女ちゃんの方やろ

まさか、スレ民だったなんて

 

418:名無しの勇者

その話はやめろ、ワイに効く

 

419:名無しの勇者

生物の中身を見たがる解剖好きのスレ民が、聖女ちゃんだなんて信じたくないんやが

 

420:名無しの勇者

もっとレス返せばよかった

頭おかしい奴がおると思ってスルーしてた

 

421:名無しの魔族

私は結構会話していたわ。

性癖が猟奇的なだけで、悪人ではなさそうだったし。

 

422:名無しの勇者

普通に荒らしだと思ってたワイが通ります

 

423:名無しの勇者

人間は何考えてるか、分からんもんですな

 

424:名無しの勇者

お前ら、少しはニートニキ達の心配をしろ!

神殺しを成し遂げようとしてる勇者と、命を賭して神を裏切る聖女ちゃんに、スレ民パワーを送るんや!

 

425:名無しの勇者

>スレ民パワー

そんなもん送ったら、逆に弱体化しそう

 

426:名無しの勇者

文字越しに見てると、実感が湧かんのよな

率直にいうと、現実感が無い

 

427:名無しの勇者

>>426

ニートニキが破茶滅茶すぎる

 

428:名無しの勇者

勇者は大変な仕事や

 

429:名無しの転生者

神なんて居ないから大丈夫だよ

あそこに居るのは、神を気取った愚か者だけ

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は、神だ。

 名も無い低俗な存在から、人間に神と呼ばれる存在へと昇華した上位存在。

 そんな俺は、かつて醜悪な化け物だった。

 親兄弟は、緑色の肌をした小鬼。

 当然、俺も全く同じ容姿。

 醜く悍ましいゴブリンそのもの。

 

 だけど、中身は違った。

 親兄弟は、腹が減ったら周囲の動物を襲って肉を喰らい、興味が湧いたものは他の生物から奪う。

 何よりも、性欲が旺盛だった。

 ゴブリンにはメスがいない。

 だからこそ、他種族のメスを見つければ、誰彼構わず襲って、強制的に性行為に及ぶ。

 ゲヒャゲヒャと笑いながら、自らの欲を満たす。

 本能のままに生きる知性のない化け物。

 

 ……でも、俺はそうじゃない。

 見た目は同じだが、中身は全く別。

 知性があり、特別な力がある。

 俺には、レアスキルという才能があったのだ。

 そのスキルの名は『催眠』。

 対象に暗示をかける事で、精神を歪ませる事ができる力。

 発動条件は、相手の目を見るだけ。

 

 この性能を自覚した時、俺は確信した。

 これは、偶然ではない。

 他のゴブリンとは違って知性がある俺に、レアスキルが与えられたのは必然に違いない。

 天は、俺を選んだ。

 特別な存在である俺がこの世界を支配するべきだと、事外に伝えているのだ。

 

 そうと決まれば、話は早い。

 俺は早速、準備を始めた。

 まずは、親兄弟に催眠のスキルを用いて、下僕にする。

 次いで、手近な魔物のメスを集め、親兄弟達と繁殖させて、手駒を増やしていく。

 

 この世界で最も醜悪な魔物と呼ばれて、人間達に目の敵にされているゴブリンが絶滅していない理由は、繁殖力の高さにある。

 ゴブリンの子種は特殊であり、如何なる種族であっても孕ませる事ができる。

 また、成長するペースも早く、妊娠してからたった一月で生まれ落ちて、一年もあれば生体になる。

 手軽に戦力を増やしたい俺にとって、好都合にも程がある生態。

 加えて、俺のスキルを受けている個体の子供にも催眠は引き継がれるため、管理も楽だった。

 

 そうして、戦力が揃ったら次の段階へと進む。

 領土を広げるため、積極的に多種族と交戦する。

 戦いにおいて、数の優位は絶対。

 最底辺の魔物であるゴブリンであっても、個体数が多くて統率が取れているのならば驚異になる。

 上位種のオークにも、魔法が使えるメイジゴブリンにも、果てには人間相手でも負けはしない。

 こちらから攻めて、打ち倒すこともあれば。

 領土を広げていく俺の存在を危険視した連中を返り討ちにする事もある。

 いずれにせよ、オスは殺し、メスを苗床にする。

 そうすればするほど、領土が増える。

 領土が増えれば、手駒の住処が増える。

 住処が増えれば、手駒をより増やせる。

 手駒が増えれば、強い敵にも勝てる。

 この流れが始まれば、もう止まらない。

 俺の力は、万物を超越する。

 誰にも負けないと、心から信じていた。

 

 けれど、呆気なく敗北した。

 伸びきっていた俺の鼻をへし折ったのは、聖女が率いる聖国の軍勢。

 奴らの武力は圧倒的だった。

 俺達の戦術を調べ尽くした上で、攻撃を仕掛けてきた。

 こちらの強みである数の暴力は、遠距離からの魔術砲撃で制圧する。

 奥の手として用意した人間のメスから生まれたスキル持ちの個体は、聖女が力を分け与えた天使という名の精鋭が対処する。

 

 そこには、油断も隙も無かった。

 今までの敵のような驕りも無かった。

 機械的に淡々と、敵勢力を沈黙させる。

 ただでさえ人間より劣っているゴブリンが、本気になった人間に勝てる道理はなく。

 数年かけて作り上げた俺の軍勢は全滅した。

 

「いやだ、嫌だぁ……!」

 

 俺は、ぶるぶると震える。

 迫り来る聖国軍の迎撃に向かったため、近衛兵は一人もいない。

 誰もいない部屋の片隅で、頭を抱えて蹲る。

 頭の中は、死の恐怖で埋め尽くされていた。

 そんな中、無情にも扉が開く音がする。

 

「……ひっ」

 

 視線を向けると、反射的に声が漏れる。

 そこには、人間の女が立っていた。

 ゴブリンの血で赤く染まった純白のローブを着用している、長い金髪の女。

 そいつは、間違いなく聖女本人だった。

 

「…………」

 

 無表情のまま、聖女はこちらに近づいてくる。

 奴の手には、白い刀身の剣が握られていた。

 確実な死が、目前に迫っているのを感じる。

 その時、俺の口と体は、考えるよりも先に動いた。

 

「お願いします……殺さないでください……!」

 

 地面に頭を擦り付け、こうべを垂れる。

 少し前に本で読んだ、帝国の謝罪方法。

 その名も、土下座。

 つまり、俺は命乞いをしたのだ。

 藁に縋るような気持ちで、死にたくない一心で。

 

「…………っ」

 

 降り注ぐ聖女の視線を肌で感じる。

 時間は止まっているようで、激しく鼓動する自分の心臓の音しか聞こえてこなかった。

 

「頭を上げなさい」

 

 厳かな声が、閑静な部屋に響き渡る。

 それに呼応するように、俺は顔を上げて、聖女の顔を視界に捉えた。

 

「神は言いました。如何なる存在にも、慈悲を与えるべきだと。たとえ、相手が人類に仇なす……」

 

 聖女の言葉は、耳に入らない。

 俺の心の中は、感謝で埋め尽くされていた。

 彼女は、なんて慈悲深いのだろうか。

 命乞いをした魔物の命を助けてくれるとは。

 とてもじゃないが、俺には出来ない。

 心の底から、ありがとうと言いたい。

 聖女様、ありがとう、本当にありがとう。

 

「馬鹿でいてくれて、アリガトウ!!!」

 

「な、なに……を……」

 

 既に、仕込みは終えた。

 聖女の顔を見て、スキルを発動させた。

 俺の催眠の等級は、白金級。

 如何なる存在であっても、逃れる事は出来ない。

 

「……何なりとご命令下さい、ご主人様」

 

 俺の勝ちだ。

 聖女の瞳は虚で、何も写してはいない。

 催眠の抵抗力には個人差がある。

 捻くれた性根の人間ほど催眠にかかりにくく、真っ直ぐな性根の人間ほど催眠にかかりやすい。

 きっと、彼女は純朴な人間だったのだろう。

 真面目で清らかで、誰にも愛される人柄をしているのだろう。

 だが、それが仇になった。

 心根が優しいからこそ、俺の命乞いに応じて術中にハマってしまった。

 あーあ、もったいない。

 俺の戯言に耳を貸す事なく殺していれば、彼女の勝利だったのに。

 いずれにせよ、聖女は俺のモノだ。

 聖女が支配する聖国も、俺の国になった。

 

「ク、クク、ギャヒヒヒヒヒヒッ!」

 

 やはり、俺は特別な存在だ。

 天だけでなく、運さえも俺に味方する。

 俺は、下等なゴブリンとは違うし、上等ぶってる人間とも違う。

 人も魔物も超越した、神なのだ。

 全ての存在の頂点に立つ存在、な筈なのに。

 何故、どうして、俺は……。

 

「オラオラ、どうした! そんなもんか、神様よォ!」

 

 たかが人間に、追い詰められている!?

 

「ぐっ……、よせ、勇者よ! ここで剣を納めるのならば、聖国の半分をお前にやろう」

 

「聖国の半分なんていらねェ! てめぇを殺さないと、オレの中身を見られちまうんでなァ!」

 

 こちらの言葉に耳を貸す事なく、勇者は幾度となく攻撃を仕掛けてくる。

 俺が放つ魔術を難なく躱して、聖剣を振るう。

 隙をついて勇者の顔を目視し、催眠のスキルを発動しても、効き目が一切ない。

 前述した通り、俺のスキルは白金級。

 いくら効き目が薄くとも、動きを止めさせる程度、造作もないのに。

 

(やはり、こいつも……特別な存在なのか?)

 

 そんな考えが、脳裏をよぎる。

 世間一般的には、レアスキルは血筋によって継承されるものだと言われている。

 その理屈は正しい。

 けれども、俺の両親も祖先もレアスキルなど有していない下等種族たるゴブリン。

 血筋による継承は行われていない。

 

 要するに、レアスキルを得るための条件は、血筋による継承だけではないのだ。

 寧ろ、そちらは副次的効果に過ぎない。

 本来の取得法は、天に選ばれる事。

 世界を変える資格を持つ者こそが……オリジナルの白金級のレアスキルを有するのだ。

 血筋によって受け継がれるのは、劣化版のレプリカに過ぎない。

 

「ハァ……ハァ……」

 

「ハァハァ言うな、気持ち悪い。野郎の荒い息は需要ないぜ?」

 

 およそ、30分。

 ずっと動きっぱなしだと言うのに、全くと言っていいほど呼吸に乱れがない。

 桁違いの身体能力を有していて、魔力による強化なしで俺を追い詰めている。

 加えて、こちらのスキルを察知したのか、仲間を既に下がらせている。

 

 認めたくはないが、勇者も天に選ばれた存在だった。

 だからこそ、俺はコイツの力を欲した。

 脅威になる前に、手中に収めたかった。

 けれど、何もかも想像以上だった。

 精神汚染耐性? 超人的なフィジカル? 無尽蔵のスタミナ? 危険察知能力?

 白金級と思わしきスキルをいくつも有している。

 ……なんだ、コイツは。

 お前が持つ、特別は何なのだ!!!

 

「すまねーな。オレが平穏に生きるために死んでくれや」

 

 ふざけたガキが……!

 本気を出せば、お前なんぞ敵ではない。

 しかし、今の俺はフルパワーを出せない。

 全部、今代の聖女のせいだ。

 あのガキが、俺の力を半分持っていった状態で、死んだフリをしているせいだっ!

 

 催眠のスキルで隷属させた聖女は歴代聖女から受け継いできた『魔術継承』のレアスキルを有していた。

 その性能は文字通り、魔術に関するスキルを継承するというもの。

 簡単に言えば、『魔術継承』のレアスキルを受け継いできた歴代聖女達が習得した魔術全てを使用できるスキル。

 その権限の半分を、今代聖女に握られている。

 

(何故、こうなった?)

 

 増長した結果、死にかけた経験を活かして、俺は慎重に事を運んできた。

 聖国を手中に収めた後は、表に出なかった。

 表向きの指導者である聖女を影で操り、聖国を統治してきた。

 心根が真っ直ぐな民衆を選別し、催眠のスキルで従順な信徒にする。

 そうなれば、後は簡単。

 俺のスキルの効果の一つである、子孫にも催眠が受け継がれる性質は人間も例外ではない。

 従順な信徒と異性が子を設けて、新たな信徒を生み出してくれる。

 そうでないものや、催眠が効きにくい人間は、適当な言いがかりをつけて処刑する。

 時間はかかるが、着実に聖国を俺色に染めていく。

 

 計画の成就は、目前だった。

 聖国民の殆どが、俺の催眠の影響下に陥り、他国にも引けを取らない国力を得ていた。

 後は、目障りな魔王や王国や帝国を潰すだけ。

 俺が神になる日は、決して遠くなかった。

 ……それなのに。

 

「ぐ、ギィ!」

 

 無様な悲鳴を上げて、俺は地面に這いつくばる。

 勇者が振るう聖剣によって、両足が切り飛ばされて動けない。

 元々、そう多くない魔力は底をつき、抵抗できる余力は残っていない。

 認めたくはないが、俺は敗北した。

 そして、勇者は俺を見下ろしていた。

 あの時の、聖女のように。

 虫ケラを見るような目で、俺を見ていたのだ。

 

(クソッ、クソがッ! 俺が、こんな所で……)

 

 現実を認めたくない。

 だが、認めねば、未来はない。

 奇しくも、あの時と同じように。

 俺の体と口は、考えるよりも先に動いた。

 

「お願いします……殺さないでください……!」

 

 全く同じ体勢、全く同じ言葉。

 我ながら、芸がないと思う。

 けれども、これでいい。

 どんなに悪ぶろうとも、奴は聖剣に選ばれた勇者。

 命乞いする者を斬れはしまい。

 悪態をつきながらも、命は見逃すはず。

 そうなれば、こちらのもの。

 隙を見せた瞬間に、最速の魔術で命を奪う。

 

 優しさなど、クソの役にも立たない。

 善人など、喰い物に過ぎない。

 世の理を、この俺が教えてやる。

 俺に慈悲を与えた結果、魂のない人形になった聖女のように、尊厳を踏み躙ってやる……!

 

「あ、そういうのは、オレじゃなくて……この子に言ってもらってもいいか?」

 

「……あえ?」

 

 想定外の言葉を耳にした俺は、間抜けな声を出す。

 勇者の背後から現れたのは、今代の聖女だった。

 それも、内臓が丸見えの。

 

「お初にお目にかかりますね、神様。申し訳ありませんが、命乞いはお断りさせて頂きます」

 

 俺の命乞いは無碍にされる。

 あまりにもグロテスクな今代の聖女の姿を見て、困惑を隠せないが関係ない。

 勇者が相手でないならば、チャンスがある。

 あの時のように、すればいい。

 コイツの目を見て、隷属させればいい。

 

「でも、安心してください。そう簡単に、殺したりはしませんよ。じっくりと、中身を見たいので」

 

 今代の聖女は、満面の笑みを浮かべる。

 どういう訳か、催眠が一切通用していない。

 コイツもまた、俺がスキルを用いて信徒になった人間の血を引く者。

 俺のスキルの影響下にある筈なのに。

 

「楽しみです。聖国の神となった貴方の本質はどんなモノなのでしょう。想像するだけで、興奮が止まりません。今にも、絶命しそうです」

 

 キラキラと輝く瞳には、底知れぬ狂気が宿っていた。

 そうして、俺は思い出す。

 何故、この少女を聖女に選んだのか。

 

 ……俺は、怖かったのだ。

 如何なる魔物を前にしても、探究心の赴くままに戦いを挑む彼女を見て、恐怖を覚えた。

 戦闘に勝利した後、動かぬ魔物をバラバラにしながら笑みを浮かべる彼女を見て、悍ましいと感じた。

 故に、聖女の座に就かせる事で、支配下に置いた。

 イレギュラーな行動をしないように……こんな状況にならないように。

 でも、その努力も水の泡。

 今この瞬間、俺の催眠の効力を、今代の聖女が内包している狂気が凌駕したのだ。

 

「個人的な恨みがあるので、麻酔は無しにしますね。どうか、出来る限り長く……悶え苦しんで頂けると嬉しいです」

 

「あ、なんていうか、その。お、オレは、こいつが暴れないように手を抑えとくね」

 

「ふふっ、ありがとうございます、勇者くん」

 

 ようやく、理解した。

 コイツらは、悪魔だ。

 俺が隷属させてきた聖女や民衆とは違う。

 自分の欲望を満たすためならば、手段を厭わないタイプの人間。

 

(こんな気持ち、だったのか。聖女も他の人々も)

 

 異常者に好き勝手にされるのは、ただ殺されるよりも恐ろしい。

 俺は、そんな行為を他者にしていた。

 自分の歪んだ欲望を満たすためだけに。

 催眠のスキルを使って、多くの人を不幸にしてきた。

 嘘偽りなく、心の底から反省する。

 自分にできる償いならば、なんでもする。

 だから、だからっ……。

 

「俺のそばに近寄るなァァァ!!!」

 

 勇者に腕を抑えつけられている俺の体に、聖女が刃物を入れる。

 容赦なく切り開いて、中身を見る。

 あまりの痛みに悶絶して、苦しんで。

 俺の意識は、暗い闇へと沈んでいく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「い、ぎゃああああああ!!!! いたい、いたいい!!!! もうやめてええええ!!!」

 

「やめません。まだ、全然満足してないのでっ」

 

「踏ん張れよ、神様。死ぬ気で頑張って、俺の身代わりになってくれ……!」

 

 ……なんて事はなく、聖女の回復魔法で一睡も出来ずに、体を切り裂かれていった。

 

 

 





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