クインテットの日常   作:戦竜

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れな子、サバイバルゲームをやる!

わたしには、放課後のささやかな楽しみがある。

 

教室のチャイムが鳴り終わり、帰宅して制服を脱ぎ、

部屋着に着替えてベッドに腰を下ろす。

そして机の上のコントローラーを手に取る。

彼氏の電源を入れるとテレビ画面が光り、ヘッドセットを装着した瞬間、

わたしの世界は一気に戦場へと変わる。

 

FPSゲーム。

 

銃を持ち、マップを駆け回り、敵を倒すゲームだ。

リアルな銃声、飛び交う弾丸、爆発、仲間との連携。

わたしはその世界が好きだった。

 

もちろん、現実とは違う。

実際に銃を撃つことなんてありえない。

日本に住んでいる普通の高校生が、

そんな経験をする機会などないはずだ。

 

――少なくとも、わたしはそう思っていた。

 

あの日までは。

 

放課後の教室。

夕方の柔らかな光が窓から差し込み、教室の床をオレンジ色に染めている。

 

わたしは机に座りながら帰り支度をしていた。

ノートを鞄にしまい、ペンケースを閉じる。

 

そのとき。

 

「れなちん、ちょっといいかにゃ?」

 

聞き慣れた声がした。

 

顔を上げると、香穂ちゃんが立っている。

その隣には紗月さんもいた。

 

二人ともどこか少し真面目な顔をしている。

 

「な、なに?」

 

香穂ちゃんは少し言いづらそうにしながら口を開いた。

 

「お願いがあるんだけどさー」

「お願い?」

「うん」

 

香穂ちゃんは一度視線を紗月さんに向け、そしてまたわたしを見る。

 

「今度の日曜、サバゲ行くんだけどさ」

「サバゲ?」

「サバイバルゲーム」

 

わたしの思考が一瞬止まった。

 

サバイバルゲーム。

 

それって――

 

「エアガンで撃ち合うやつ!?」

「そう!」

 

香穂ちゃんが笑顔になる。

 

「実はさ、コスプレ仲間で行く予定だったんだけど、

一人風邪で来れなくなっちゃって」

 

紗月さんが腕を組みながら静かに言う。

 

「人数が減るとチーム分けの都合が悪くてね。代わりを探してるの」

 

そして香穂ちゃんは言った。

 

「れなちん、どう?やってみない?」

 

わたしは少しだけ考えた。

 

サバゲ。

 

FPSの世界にかなり近い遊び。

 

迷彩服。

エアガン。

フィールド。

戦闘。

――正直。

 

ちょっと、興味がある。

 

「……行く!」

「ほんと!?ありがとうっ!!」

 

香穂ちゃんの顔がぱっと明るくなる。

 

「FPS好きだし……ちょっとやってみたい」

 

紗月さんが小さく微笑んだ。

 

「甘織なら楽しめそうね」

 

こうして。

わたしの人生初サバゲが決まった。

 

その日の放課後。

わたしたちは香穂ちゃんの家に来ていた。

玄関を開けた瞬間、わたしは思わず声を漏らした。

 

「おぉ……」

 

装備が並んでいる。

テーブルの上。

床。

棚。

 

そこにはまるで映画の小道具のような装備がずらりと並んでいた。

なんでもコスプレ用でも実戦用でも使えるのだと言う。

 

迷彩服。

ゴーグル。

フェイスマスク。

タクティカルベスト。

ポーチ。

そして――エアガン。

 

「すご……」

 

わたしは思わず近づいた。

ゲーム画面で何度も見た形の銃が目の前にある。

香穂ちゃんが説明を始める。

 

「まずこれがフェイスマスク」

 

黒いメッシュのマスクを手に取る。

 

「BB弾が顔に当たると危ないから絶対つける」

「BB弾ってプラスチックの弾だよね?」

「うん。6ミリのやつ。でもバイオ弾で土に帰るやつを使う」

 

紗月さんが迷彩服を広げる。

 

「服も厚めのほうがいいわ。近距離で当たると結構痛いから」

「そ、そうなんだ……」

 

思っていたより本格的だ。

 

そして。

いよいよ――銃選び。

 

香穂ちゃんがガンケースを開ける。

 

「じゃーん!!」

 

中には三丁の10禁エアガンが入っていた。

 

「まずこれ」

 

コンパクトな黒い銃「H&K MP5」。

 

わたしは目を輝かせた。

 

「うわ、カッコイイ!」

 

FPSで何度も使ったことがある。

 

「サブマシンガン。軽いし初心者向き」

「甘織はこれ使う?」

「うん!」

 

わたしは迷わず手に取った。

意外と軽い。

でも質感はリアルだった。

 

香穂ちゃんは「M4A1」というアサルトライフルを持つ。

小柄な香穂ちゃんでも使いやすいバレルを切り詰めたコンパクトタイプ。

 

「じゃあ私はこれ」

 

そして。

紗月さんは長い銃を手に取った。

黒くて細長いアサルトライフル「M16A2」。

その形を見た瞬間。

わたしと香穂ちゃんは同時に叫んだ。

 

「「ゴルゴの銃だ!」」

 

紗月さんが少し驚く。

 

「え?」

「ゴルゴ13!」

「デューク東郷!」

「スナイパー!!」

 

紗月さんは一瞬ぽかんとしたあと、くすっと笑った。

 

「確かに似てるわね」

 

わたしは思った。

 

「(似合う……)」

 

背が高くて。

落ち着いていて。

冷静沈着。

 

紗月さんならきっと、静かに標的を仕留めるスナイパーになる。

そんなイメージが自然に浮かんだ。

 

 

サバゲ当日。

まだ朝の空気に少し冷たさが残る時間帯だった。

 

駅のホームには休日特有の、どこかゆったりとした空気が流れている。

平日の通勤ラッシュのような押し合いへし合いはなく、

代わりにリュックや細長いケースを持った人たちがちらほら見える。

そのケースの中身を、わたしは知っている。

 

エアガンだ。

 

わたし――甘織れな子は、香穂ちゃんと紗月さんの隣に立ちながら、

胸の奥でじわじわと広がっていく不思議な高揚感を感じていた。

 

「なんか遠足みたい」

 

ぽつりとそう言うと、香穂ちゃんが笑う。

 

「わかる。サバゲの日ってちょっとイベント感あるよね」

 

紗月さんは静かに言った。

 

「ただし、遠足より運動量は多いわよ」

 

その言葉にわたしは少しだけ不安になる。

 

「(FPSって、こんなに体力使うのかな……)」

 

でも同時に思う。

 

「(ゲームの戦場がリアルで体験できるんだ)」

 

そう考えると、胸が高鳴った。

 

電車に乗り、さらにバスに乗り換えると、街の景色は少しずつ変わっていく。

ビルは減り、代わりに林や畑が増え、遠くには山の稜線が見えるようになった。

そしてバスが止まる。

 

「着いたよー!」

 

香穂ちゃんが言う。

バス停から少し歩くと、

木々の間にネットフェンスで囲われた広い敷地が見えてきた。

そこがサバゲフィールドだった。

 

森の中に人工的に作られた戦場。

木々の間にはコンパネで作られたバリケードや木製の小屋、

ドラム缶、廃車などが配置されていて、

まるで映画の戦闘シーンのセットのようだった。

 

「……すごい」

 

思わず声が漏れる。

想像していたよりずっと本格的だった。

受付の前にはすでに多くの参加者が集まっている。

迷彩服の人、タクティカル装備を身に着けた人、

映画の兵士のような装備の人。

中にはフルフェイスマスクで完全装備の人もいる。

 

「(なんか、場違いじゃないかな……)」

 

一瞬そんな不安がよぎる。

しかし香穂ちゃんは気にする様子もない。

 

「れなちん、先に席取ろ」

 

わたしたちはセーフティエリアと呼ばれる休憩スペースに向かった。

そこにはテーブルと椅子が並び、

プレイヤーたちはそこで弾を装填したり装備を整えたりしている。

 

装備を身につけていく。

 

迷彩服。

ゴーグル。

フェイスマスク。

タクティカルベスト。

そしてエアガン。

 

MP5を手に取ると、金属と樹脂の混ざった独特の重量感が手に伝わった。

ゲームで見慣れているはずの銃が、今は現実の重さを持っている。

 

「安全装置はここ」

 

紗月さんが落ち着いた声で説明してくれる。

 

「撃つとき以外は必ずセーフティをかけること」

「うん」

 

わたしは真剣に頷いた。

やがて全プレイヤーがフィールド中央に集められ、ルール説明が始まる。

 

スタッフの声が山の空気に響いた。

 

「ヒットされた場合は必ず手を上げて退場してください!」

「ゾンビ行為は禁止です!」

「ゴーグルは絶対に外さないこと!」

 

真剣な声だった。

それを聞きながら、わたしは改めて思う。

 

「(これは遊びだけど、ちゃんとルールのあるゲームなんだ)」

 

 

説明が終わると、スタッフは参加者全員を見渡しながら次の指示を出した。

いよいよチーム分けである。今回は赤・青・黄の三チームに分かれる殲滅戦。

スタッフが色の目印を配り始めると、

プレイヤーたちはそれぞれ自分のチームの集合場所へと移動していく。

フィールドのあちこちで装備を確かめる音や小さな会話が聞こえ、

さっきまでの見学気分だった空気が、

少しずつゲーム前の緊張に変わっていくのがわかった。

 

わたしたちは青チームだった。

香穂ちゃんは「よし」と小さく拳を握り、

紗月さんは周囲の人数やフィールドの方向を静かに確認している。

わたしはというと、胸の奥が妙にざわざわしていた。

FPSでは何度も戦場を走り回っているはずなのに、

現実で銃を持ってゲームをするとなると、やはりどこか違う。

ゲームのロビーでマッチングを待つのとは違い、

人の足音や装備の擦れる音、森の匂いまで感じられるからだ。

 

青チームのスタート地点はフィールドの端の森の中だった。

木々が密集していて、ところどころに木製のバリケードやドラム缶が置かれている。

地面には落ち葉が積もり、踏むと柔らかく沈む。

ゲーム画面では平らに見える地面も、現実では細かな起伏があって、

少し走るだけでも足に負担がかかりそうだった。

 

香穂ちゃんがこちらを振り返る。

 

「れなちん、最初はついてきて。無理に前出なくていいから」

「う、うん」

 

紗月さんも落ち着いた声で言った。

 

「状況を見ながら動けば大丈夫よ。焦らないこと」

 

二人の言葉に、わたしは少し安心する。

ゴーグル越しの視界はいつもより狭く、

フェイスマスクの中では自分の呼吸音がやけに大きく聞こえる。

それでも、不思議と嫌な緊張ではなかった。

むしろ、ゲームのスタート直前に似たワクワク感が胸の奥で膨らんでいる。

 

「ゲームスタート!」

 

その声が響いた瞬間、さっきまでの静けさが一気に割れて、

青チームの人たちが前へ動き出した。わたしも反射的に走り出す。

最初の数歩は軽い。だけど、すぐに足元の落ち葉が滑る感覚が来て、

地面の凹凸が脚に響き、思っていたより自分の体が重いことに気づく。

ゲームならスタミナゲージなんて飾りで、

走り続けても気持ちよく視点が流れるだけなのに、

現実は一歩ごとに筋肉が「はい、使ってますよ」と主張してくる。

 

前方では香穂ちゃんが迷いなく遮蔽物へ向かっていく。走るフォームが軽い。

普段は明るいのに、この瞬間の香穂ちゃんは、

楽しんでいるのに真剣で、どこか頼れる隊長みたいに見えた。

紗月さんは少し遅れて、でも落ち着いたペースで位置取りを考えているようだった。

高台や視界の通る方向を確認しながら進み、慌てて集団と一緒に突っ込むよりも、

味方が動きやすい背中側を作るような動き方をしている。

 

「(なるほど。これが役割分担ってやつか)」

 

わたしはその二人を追いながら、頭の中でFPSの言葉を探した。

エントリー、カバー、ライン維持、クロス……。

でも、言葉にするより先に、体が先に理解していく。

視界の端で何かが動いたら、反射的に身体が固まる。

撃つか、隠れるか、見送るか――判断する時間は短い。

だけど、その短さがむしろ気持ちいい。

考えるより先に、体と心が一緒に動いていく。

 

最初の交戦は、思っていたよりも突然やってきた。

前方の木々の間、ほんの一瞬だけ人影が見えた。

遠い。はっきりとはわからない。でも、動き方が味方のそれじゃない。

わたしがそれを認識したときには、すでに香穂ちゃんが身を低くして、

遮蔽物の横から様子を見ていた。

わたしも慌てて同じようにしゃがみ込み、

MP5を胸に寄せて、ゴーグル越しに目を凝らす。

 

「(見えない……でも、いる)」

 

ゲームなら敵のシルエットは輪郭がはっきりしている。コントラストで見える。

だけど現実は木も影も同じ色味で、動かない限り本当にわからない。

わたしは自分の目が頼りないことに焦って、呼吸が少しだけ速くなる。

 

そのとき、遠くで誰かの声が響いた。

 

「ヒットヒット!」

 

それは別の場所での交戦の合図だった。

つまり、戦いはすでに始まっていて、

わたしたちの周囲にも相手が確実に存在している。

わたしの背中にぞわっとした感覚が走る。

怖いわけじゃない。むしろ、嬉しい。興奮に近い。

 

香穂ちゃんが小さく言った。

 

「れなちん、焦らないで。見えたら合図して」

「う、うん」

 

その直後、木の陰がわずかに揺れた。人影が移動している。

わたしは反射的に銃口を向けたが、撃つタイミングがわからない。

撃つのは簡単だ。だけど、撃って外したら居場所がバレるかもしれない。

わたしの指先が迷っている間に、香穂ちゃんが先に決断した。

短く狙いをつけ、連続して射撃し、相手が手を上げるのが見えた。

 

「ヒット!」

 

その声が響いた瞬間、わたしは自分の胸が思ったより大きく跳ねたことに気づいた。

やった、というより、本当に当たるんだという驚き。

ゲームのキルログの軽さとは違って、

現実では人が手を上げ、声を出し、動きが止まる。

その変化がはっきりと見える。わたしはその場面を目に焼き付けながら、

ようやく自分が戦場の空気の中に入ったのだと実感した。

 

そこから先は、もう単純な一本道じゃなかった。

走って隠れて撃つ――それを繰り返すだけなのに、

フィールドは広く、音も情報も錯綜していて、わたしの頭はずっと忙しい。

味方の声が近くで聞こえたと思えば、遠くから別チームの喊声が飛んでくる。

木々の間を抜ける風の音に紛れて、どこかで弾が当たる軽い音がした気もする。

自分が立てた足音が敵に聞こえていないか気になって、

無駄に慎重になったりもする。でも慎重になりすぎると置いていかれそうで、

結局、香穂ちゃんの背中を見失わないように必死で追いかけた。

 

そして、紗月さんの存在が、さらにフィールドの空気を引き締めていた。

紗月さんは高い場所や見通しのいい方向を選び、

無理に突っ込まない代わりに、

味方が前へ出る瞬間の背中を守るような場所にいる。

わたしが「紗月さんどこ?」と不安になりかけた頃、

遠くから短い音がして、次の瞬間には誰かが「ヒット!」と叫ぶ。

声の方向を追うと、木陰の向こうに紗月さんの姿がちらりと見えて、

まるで映画のワンシーンみたいに落ち着いて構えているのがわかる。

 

「(やっぱりゴルゴだ)」

 

その安心感があるだけで、わたしは少し前へ踏み出せる気がした。

 

ただし――現実はゲームよりずっと厳しい。

 

気づけば、わたしの息は上がっていた。

喉は乾き、足は重くなり、しゃがむたびに太ももがじわじわ痛む。

テンションで誤魔化していた疲れが、遅れて襲ってくる。

頭の中では「まだいける」と思っているのに、体が「きつい」と正直に訴える。

わたしは自分が思ったより体力のない人間だと知らされて、少しだけ悔しくなる。

 

その悔しさが、油断になった。

 

敵の接近を許したのは、たぶんその瞬間だった。

 

木陰から出ようとしたとき、すぐ近くで気配がした。距離が近い。

視界に入った時には、もうそこにいる。

ゲームならミニマップで分かるかもしれない。

足音で予測できるかもしれない。

でも現実は、木や影が多すぎて、情報が散らばっている。

わたしは反射的にMP5を構えて撃とうとした――

そのとき、指先の感触が空振りする。

 

「(あ、出ない!)」

 

弾切れ。

 

その事実がわかった瞬間、頭が真っ白になる。

焦りで視界が狭くなって、相手の動きがやけに速く見える。逃げたい。

でも背中を見せたくない。撃てない。

どうする――と考える暇もなく、わたしの手は腰へ伸びた。

 

サイドアームのハンドガン「M1911コルト・ガバメント」。

 

FPSでサブ武器に切り替えるボタンを押す感覚とは違う。

現実では、手が動き、ホルスターから抜き、グリップを握り直し、狙いをつける。

その一連の動きが一秒もないはずなのに、わたしにはやけに長く感じられた。

心臓がどくどく鳴り、息が喉に引っかかり、指先が震えそうになる。

それでも、狙う。撃つ。

 

「ヒット!」

 

相手が手を上げた瞬間、わたしの中で何かが弾けた。

勝った、というより、できたという実感。

わたしは声にならない声を上げそうになって、思わず笑ってしまう。

 

「(やった!リアルでサブ武器が刺さった!)」

 

その喜びは本物だった。ゲームのスコアとは違う。

体が動いた、判断した、成功した――それが全部自分の中に残る。

わたしはその余韻に一瞬浸ってしまった。

 

そして、その一瞬が命取りだった。

 

乾いた音がした。

遅れて声が飛ぶ。

 

「ヒットー!」

 

わたしだった。

 

背中側から、別の相手に取られていた。

わたしは呆然として、手を上げる。

今度は悔しさと可笑しさが同時に来て、変な顔になるのを自分でも感じた。

香穂ちゃんが少し離れたところから駆け寄ってきて、

わたしの手を見て状況を察すると、くすっと笑った。

 

「あるあるだねぇ~」

「うそでしょ……今、めっちゃ気持ちよかったのに……」

「気持ちよかったなら勝ち!次、取り返そ!」

 

香穂ちゃんのその言い方が、悔しさを笑いに変える。

紗月さんも遠くから状況を見ていたのか、

こちらに目を向け、ほんの少しだけ口元を緩めていた。

 

退場してセーフティエリアへ戻る道すがら、

わたしは自分の心がまだ熱いままだと気づいた。

疲れている。息も上がっている。足もだるい。

なのに、頭は冴えていて、「次はこうしよう」「あそこは危ない」

「あの動きは香穂ちゃんに合わせたほうがいい」と、勝手に反省会を始めてしまう。

たぶん、これがハマるってことなんだろう。

 

やがてゲームが終わり、結果が告げられる。

 

青チーム勝利。

 

「やったー!」

 

思わず声が出た。

初めてのサバゲで、しかも最初のゲームで勝てたのだ。

ゲームとは違う、体を動かして得た勝利の感覚が胸に残った。

 

その後もゲームは続き、開始直後にヒットされたり、

逆に敵をヒットさせたりしながら一日が過ぎていった。

昼にはセーフティエリアでカレーライスを食べ、他の参加者とも少し話をした。

みんな気さくで、「初心者?」「動きいいね」と声をかけてくれる人もいた。

 

帰るころには体がぐったりしていたが、不思議と充実感があった。

 

 

そして翌日。

 

朝、ベッドから起きようとして――

 

「うごごご……」

 

体が動かない。

 

腕も脚も背中も、すべて筋肉痛だった。

なんとか登校し、教室の机に突っ伏す。

 

「うごごご……」

 

香穂ちゃんが笑う。

 

「初心者あるある」

 

紗月さんも穏やかに言った。

 

「でも、また行きたくなるでしょう?」

 

わたしは顔を机に埋めたまま思った。

 

「(二度と走りたくない……)」

 

でも。

たぶん。

また行く。

 

そう思いながら、わたしは再び小さく唸った。

 

「うごごご……」




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