機動戦士ガンダム二次創作  ミリしらシャア・アズナブル列伝   作:泉 とも

1 / 14
書き溜めって大変。


シャアはララァを抱いてるからアムロは一生シャアに負けてる

 宇宙世紀0080。一年戦争と呼ばれた大戦が終結し、スペースノイドたちはコロニーの自治と独立、搾取的税制の撤廃等を勝ち取った。

 

 地球連邦政府は壊滅し、地上の十割をジオン軍に占領され、戦力も開戦時の二割を切り、首脳部に至ってはほぼ全滅という、惨憺たる結果となった。

 

 圧倒的な優位でもって和平交渉(笑)を締結したデギン公王は、長男ギレン・ザビに政治を任せ引退、世界は正にジオニズム一色。生き残ったスペースノイドたちは、我が世の春を謳歌していた。

 

「大佐、私、幸せです……」

「私もだ。ララァ……」

 

 無論、この男もその一人だった。

 

『ジオンの赤い彗星、シャア・アズナブル電撃結婚!』

 

 ジオン公国の名で知られるスペースコロニー、サイド3ではそのようなニュースが一面に躍った。

 

 戦勝を記念にゴールインしたジオン軍地上司令官、ガルマ・ザビのブーケトスを皮切りに、士官たちの結婚ラッシュが相次いだ。

 

 その中にジオン軍切ってのエースパイロット、シャア・アズナブルも含まれていた。

 

「おめでとう、シャア!」

「結婚はいいぞ、シャア!」

 

「坊やたちも家庭を背負うか。月日が経つのは早いものだな」

 

「大佐!おめでとうございます!」

「ララァ少尉ー!こっちにブーケ投げてー!」

 

 ザビ家の面々や部下たちに見送られ、この日シャアはマスクを外した。

 

 傷を隠すためという方便も、実は治っていたということにして、素顔を晒した。

 

 シャアは皆に祝福されて、ハネムーンへと出発した。

 

 

 それから一週間後。

 

 

「まさか兄さんがジオン軍にいて、結婚までするなんて、今でも頭が追い付かないわ」

 

「私も結婚式にお前が来てくれるとは思わなかった。まさかあんな風に再会するとは」

 

 ハネムーンから帰還したシャアは、サイド3に私邸を構えていた。

 

 基本的にはこれまで通り軍属だが、帰る家を持ちたかったのだ。

 

「サイド7にいたのに気付かないとは、とんだ擦れ違いを果たしたものだ」

 

 一年戦争初期、当該コロニーで地球連邦軍が新型モビルスーツ及び新造戦艦並びに新型通常兵器を開発していることを、住民からのタレコミにより察知したジオン軍は、シャアとその部隊を偵察任務に派遣した。

 

 自分たちの縄張りに加え、ぶったるんだ危機意識と杜撰極まる管理体制から、連邦軍はいとも容易くこれを奪取されてしまった。

 

 そのまま量産体制は遅れに遅れ、ジオン軍は強化され、良い所無しのまま戦争は終結したのだった。

 

「兄さん地上で式を挙げていたら、この時間も無かったでしょうね」

 

「有り得るな」

 

 ガンダムと木馬の奪取はその実、ジオン軍にとって喉から手が出るほど欲しかった、支援型MSを齎した。

 

 これにより火力は大きく向上し、キャノン系の機体も充実。

 

 頭にヒートホークを食らっても傷一つ付かないガンキャノンの足を吹きとばせるほどの威力をザクバズーカに持たせられるなど、戦況は更に劇的に好転した。

 

 連邦のとある士官などは最強のMSガンタンクを奪われたことで敗戦を確信したほどだったという。

 

「それに連邦のMS量産を最後まで邪魔できたのも大きい。アレがなければ命が幾つ有っても足りなかっただろう」

 

 木馬ことホワイトベースには新型量産のために、地上の補給部隊との合流とデータの引き渡しの予定が残されていた。これによりその後の展開はなし崩しになったと言っても過言ではない。

 

 何せ避難民の子どもたちもいないので、発見されたジャブローの地下基地も爆破され、およそ50年分にも及ぶ外伝・戦記の連邦勝利が吹き飛んだのだ。

 

 納期が遅れるということは即ちそういうことである。

 

「コロニー内でMS戦でもすれば、私は反ジオンになっていたかもしれないわ。そうしたら、兄さんと戦場で出会っていたかもしれない」

 

「ぞっとしない話だ。連絡を付けてくれたラル大尉には、今度また礼をせんとな」

 

 ジオン軍地上攻撃部隊の指揮官の一人、ランバ・ラル大尉の父、ジンバ・ラルこそキャスバルとアルティシアを匿っていた人物である。

 

 親の復讐のために飛び出したシャアとは違い、アルティシアの養子縁組をして、定期的にその消息を追っていた。

 

「入ります」

 

 ドアがノックされると、ララァ・スンがお茶と菓子をトレイに乗せて入って来る。

 

「あなた、幾らご家族でも、お茶の一つもお出ししないのはいけませんわ」

 

 柔らかな笑みを浮かべ、彼女はセイラに会釈する。

 

「すまないララァ。ありがとう」

「今日はよく来てくれました、義姉さん」

 

「あらそんな結構です。たかだか3ヶ月程度の違いじゃないですか。セイラで結構です」

 

 ※0079時セイラとララァは17歳。

  現在18歳。犯罪ですよ……!

 

「ありがとうセイラ。これから仲良くしてくれると嬉しいわ」

 

「こちらこそ、兄さんを引き留めてくれ感謝します」

 

 全てを見透かすかのようなララァに対し、セイラは何か大いなる意思のようなものを感じた。

 

 基本的にヒステリックで、兄という人間に対して無理解で、女と妹というエゴを煮詰めて固めたようなこの人が、ゴネて話が良い方向に転がった例がない。

 

 そのセイラが、何故かララァに対しては安心できた。

 

(この人と一緒なら、兄さんもおいそれとは妙なことを考えないはずだわ)

 

(とでも思っているのであろうな。アルティシア)

(兄妹揃っておかわいいこと)

 

 ニュータイプ能力の上下関係は思考の伝達に関わる。この場ではララァの超能力レベルが最も高い。

 

「それにしても、まだ十八なのにこんな兄と一緒になるなんて、本当によかったのですか」

 

「こんなとは酷いな。これでも頑張っているほうだと思うがね」

 

「ええ。この人は頑張り屋さんで、でも報われない人だから、ここで捕まえておかないとって思ったの」

 

 その言葉にシャアは顔を赤くし、少しだけ泣きそうになった。その兄を見て、セイラも僅かに嫉妬心と、罪悪感を覚える。

 

「善い人に、捕まったのね、兄さん」

「ああ。尻に敷かれるのも悪くないよ」

 

 馴れ初めは一年戦争、制宙権を確固たるものとしたジオン軍は、いよいよ大詰めとばかりに、地上へ増援を派兵した時のことである。

 

 ジオンとコネを持ちたがった風俗業者が、ガルマのパーティに娼婦たちを連れてやって来た。

 

 ガルマはキレそうだったが、怒鳴っても仕方がないので、同席していたシャアとラルに相談した。

 

 酒が入っていた二人は、いっそ全員買い取って潰してやれと息巻いていたが、真に受けたガルマは本当にそうしてしまった。

 

 言った手前娼婦たちの身受け先の手配に、奔走することになったシャアとラルだったが、ララァはこの時シャアと知り合った。

 

「軟弱ですよ、兄さん」

「よく言われるよ」

 

 その後はシャアの個人的な我がままで連れ回されたが、非凡な才能を示したことで、ララァは戦時特例で少尉となり、ニュータイプとしての能力を発揮。

 

 戦争の趨勢が一方的過ぎて、開設が絶望的だったフラナガン機関が、今日存在するのは彼女の功績が大きい。

 

「……親の仇を討つと息巻いて家を飛び出したのに、今やジオン軍のエースパイロットで戦勝の立役者。何をやってるんだと何度も思ったさ」

 

「兄さん……」

「あなた……」

 

 話が上手く転がり過ぎて、復讐の好機はとうとう訪れなかった。

 

 それどころか終戦後にララァから結婚を申し込まれた際、ガルマに真っ先に相談したほどである。

 

 その際に周りからは。

 

『お前ここで逃げたら根性なしだぞ』

 

 という身も蓋もない反応だった。ちなみに話し掛けられる部下や同僚、上司全員からも概ねこの反応が返って来た。

 

 十八歳になったばかりの少女から結婚を切り出されたのだ。高三のJKから『先生、卒業したから結婚しよ!』って言われてるようなものだし当然である。

 

 また人の役に立ちたいとか、私情を二の次にしがちなシャアからすれば、肉親の復讐ほど彼に不似合いなものも無かった。

 

「私は、軟弱者なんだよ」

 

 シャアは自嘲した。自分自身を茶化して、情けなさを噛み締める。

 

 しかしセイラはそんな兄に安堵した。

 

「きっとそれでいいんだわ、兄さんは。私はそんなことを望んでいませんし、ララァにも迷惑が掛かります。彼女はあなたに付いて行ってくれるでしょうが、兄さんもそれは避けたいでしょう」

 

「そうだな」

「だからそれでいいのです」

 

 ララァなら自分と破滅してくれるかもしれない。ある種究極の甘えがシャアの脳裏を過るが、それよりもララァを大切にしたいという気持ちが勝る。

 

「本当は私と一緒に来て欲しかったけれど、もう奥さんがいるのでは、諦めるしかないわね。ララァ、不束者で軟弱者の兄ですが、どうかこれからも良くしてやってください」

 

「よしなに」

 

 セイラは深々と頭を下げると、セイラも礼を返した。

 

 相手の事情も考えず、かといって自分が折れることもしないセイラにとって、我がままを言えない状況というだけでも、十分効果的だった。

 

 即ち、自分の出る幕では無い、と。

 

「ありがとう、アルティシア、ララア」

「軟弱な所だけは治してくださいね、兄さん」

「気を付けよう」

 

 それから幾らかの会話を経て、セイラは帰って行った。これからは医療を志し、そのための勉強に励むのだと言って。

 

「気難しい方ですのね」

 

「私たちのことには興味がないんだ。長い間疎遠にしていた、罰が当たったのさ」

 

 セイラはシャアとララァのことはよく分からなかったし、分かる気も無かったが、何か大それたことはしそうにないと思うと、それで満足した。

 

 少なくとも不和や確執もなく、話が終わったことに、彼等はほっと息を吐くことになった。

 

 宇宙世紀0080。某月某日。

 

 シャア・アズナブル邸宅に、少し冷たい風が差し込んだ日のことである。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。